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「異世界Role-Players」第8回:吸血鬼とゾンビ〜やつらは死んでも滅びない
ある夜の真紅に染まる冒険
語り部:というわけで,君達は吸血鬼退治を依頼されたわけだが
戦士:とりあえず,十字架とニンニクを用意すればいいんだろ
魔術師:この世界の神のシンボルは十字架じゃないぞ。そもそも,信仰心のない我々が使っても効果などなかろう
戦士:そういやそうか。ニンニクはどうだ?
魔術師:ニンニクに限らず,匂いの強い植物が魔除けとされることは多いが……
語り部:サンザシの藪(やぶ)を抜けようとして,とげにひっかかれて滅んだドラキュラ伯爵もいたぞ。映画だが
戦士:……マジか
魔術師:とりあえず,太陽神と嵐の神の司祭を募集するのがいいかもしれん
戦士:おお,太陽に照らされると焦げるのは定番だよな。あれ,でも嵐じゃあ,日光がさえぎられるぞ?
魔術師:吸血鬼は流れ水をわたれないという伝承があるのは知っているか? その応用でな,シャワーを延々と浴びせられて滅んだ吸血鬼もいるんだ
語り部:映画だけどね
戦士:えええぇぇ……
今回はアンデッド――死してなお死せざるものについて語っていくと予告しましたが,この分類に入る種族のほとんどは,ゲームにおいて,敵役であるモンスターとして登場するに留まります。ですが,そんな中でも別格として,主人公格になり得る種族もいます。敵としても,ボスかそれに準じるクラスで登場する……それが吸血鬼です。20世紀にはホラー映画の主役を何度も務めた種族ですね。
しかし,時代は変わります。今世紀に入って最もメジャーなアンデッドといえば,かつては雑魚中の雑魚だったあのモンスター。いえ,今でも雑魚扱いでなのですが,その知名度と人気でトップを独走。ホラーやファンタジーに興味のない人だって名前や特徴は浸透しているであろう“奴ら”――ゾンビです。今回は,アンデッドの中でもとくに,この2種族に絞ってお話していきます。
まずは吸血鬼の特徴をまとめてみましょう。
- 生者の血液,もしくは生命エネルギーを吸収して存在を永らえる
- 摂取対象(早い話が噛んだ相手)を仲間にする
- 太陽の光に弱い
- 美しい
弱点でいえば,ゲームでは銀製の武器でないとダメージを与えられない,なんて設定がよくあります。ですが,これも本来の吸血鬼の伝承にはありません。1979年のコメディホラー映画「ドラキュラ都へ行く」では,George Hamilton(ジョージ・ハミルトン)演じる吸血鬼が,美女とのディナー中にその美女の恋人から銀の銃弾を撃ち込まれ,「いや,きみ。それは狼男の弱点だ」って平然と指摘する,なんてシーンもありました。
とはいえ,人狼(ワーウルフ)と吸血鬼の間に,伝承の時点で明白な一線が引かれていたわけではないので,人狼の弱点が吸血鬼に適用されてもおかしくはないのですが。吸血鬼が狼に変身する伝説もあるわけですし。あと変身といえばコウモリもありますね。これは,南米でチスイコウモリが発見された影響……だと思っていたんですが,どうもヴァンパイアの語源を探ると「鳥に似て非なるもの」というスラヴ語に辿り着くそうで。もとから空を飛べるイメージだったようです。
昏きもの,そは既に死するものなれば滅ぼさんと唱うべし
血を吸う死者の伝承は,紀元前からヨーロッパ文化のあちらこちらに,そして世界中に点在しています。墓場からよみがえって,生きた人間を襲う,おぞましい怪物です。ボロボロの着物をまとい,腐乱した肉体を持つ,今の観点ではむしろゾンビに近いものです。その実在は広く信じられており,18世紀に至ってなお,セルビアやボスニアの新聞では吸血鬼の出現がニュースになっておりました。
現代で一般的な“貴族風の吸血鬼”が姿を現すようになったのも,その18世紀です。元祖はJohn Polidori(ジョン・ポリドリ)の小説「吸血鬼」でしょう。その後に幾つかの大衆向け娯楽小説が続いたあと,その吸血鬼像を完全に定着させたのが,今なおビッグネームであり続けるドラキュラ伯爵です。中世ハンガリーに実在した英雄,ブラド・ツェペシュ公をモデルに,Bram Stoker(ブラム・ストーカー)によって創造された偉大な吸血鬼。その名には「ドラゴンの子」という意味があり,蛇の子=「誘惑者」としての悪魔のイメージが取り入れられています。
1897年に出版された小説「ドラキュラ」は,新聞記事や色々な人の手記などを組み合わせて一つの物語にするという,当時としては斬新な構成が採られていました。もちろん今読んでも非常に面白いですが,ドラキュラの名前がこれほどまでに広まったのは,舞台演劇と,そして映画の力によるものでしょう。
版権がとれず,ドラキュラがオルロック伯爵という名前で登場するサイレント映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922年,F.W.Murnau監督)では,彼は尖った前歯で血をすする,醜い姿で描かれていました。古くからある,墓から甦った死者の姿であり,ペストをまき散らすネズミのイメージが投影されています。吸血鬼と疫病の関係も,考察すると色々興味深いのですがそこはさておき。
きちんと版権をとって制作された1934年の「魔人ドラキュラ」(Tod Browning監督)では,「女性を魅了するダンディな男性」として,ドラキュラ伯爵が描かれています。そして1958年,イギリスの映画会社ハマープロが制作した「吸血鬼ドラキュラ」(Terence Fisher監督)で伯爵を演じたクリストファー・リーこそが,いまなお継承され続ける“ドラキュラ・オブ・ドラキュラ”のイメージとなりました。
日本映画でなら「呪いの館 血を吸う眼」「血を吸う薔薇」(共に山本迪夫監督)の2作で吸血鬼を演じた俳優,岸田 森を押さえておきましょう。リーのイメージを引用しつつ,独自の「無機質な恐怖」を感じさせる怪演で,彼の代表作の一つとなっています。のちにセルフパロディとして,コメディ番組で陽気な吸血鬼を演じたりもしていましたね。
20世紀の吸血鬼像において,もう一つ重要なのが「美少女の吸血鬼」の系譜です。
近年の創作でしょ? と思うかもしれませんが,その源流は古代ギリシャ・ローマまで遡ることができます。文豪・ゲーテが記した「コリントの花嫁」に登場する美女が,まさにこうした伝承を元にしているのです。
そのほかにも19世紀のフランスの作家・ゴーチェが書いた「吸血女の恋(ほか「死霊の恋」など邦題多数)」など,若い男性と愛をかわして,その命を吸い取ってしまう美女の吸血鬼は,さまざまな物語に登場してきました。日本の怪談「牡丹灯籠」(元は中国の説話ですが)の“お露さん”も,愛する男と交わることで,その命を奪ってしまいます。つい先日,2019年10月にNHKで放映されたドラマ版でも,あれは完全に吸血鬼でありました。
こうした美少女吸血鬼で特筆すべきは,Joseph Sheridan Le Fanu(シェリダン・レ・ファニュ)が1872年に著した「吸血鬼カーミラ」でしょう。ドラキュラよりも古く,むしろドラキュラに大きな影響を与えた作品ですが,その主役たる吸血鬼,カーミラ・カルンスタインがターゲットにするのは,物語の語り手である美少女ローラ。そう,つまりは百合! 19世紀に時代を先取りしすぎですね。
暗黒の世界に踊るものたち
古風な貴族から,現代のスタイリッシュな美形青年達を主役に据え,なによりも「耽美」という言葉が似あう吸血鬼達の葛藤のドラマは,若い女性層を中心に大きな人気を博しました。この支持層が,いわゆる「ゴス」文化と重なってゆき,さまざまなカルチャーにおいて「ゴシックパンク」と呼ばれるムーブメントを生み出していきます。
……とまあ,世界的にはそんな流れとなるわけですが,我が国の場合はちょっと事情が違います。なにせ,これに先駆けた作品がすでにあったのですから。吸血鬼といえば「美しく」「哀しく」「苦悩するもの」という固定概念を筆者に植えつけた作品――萩尾望都の大傑作「ポーの一族」です。漫画作品ではありますが,その後のあらゆるジャンルの作家に多大な影響を与えました。発表は1972年ですが,それから40年を経た2016年に,新たなシリーズもスタートし,今なお連載が続いています。
さて,20世紀の後半から今世紀にかけて,吸血鬼像はさらに多様さを増しました。吸血鬼を扱った小説,映画,コミックを紹介しはじめると,シリアスからギャグまで本当にきりがありません。「吸血鬼ハンターD」「ヘルシング」「ダンス・イン・ザ・ヴァンパイアバンド」「となりの吸血鬼さん」「吸血鬼すぐ死ぬ」などなど……。
ゲームにおいても登場例は枚挙にいとまがなく,その大半において,吸血鬼は強力な敵として登場します。ファンタジー世界が舞台となれば,多くの弱点はほぼ無意味になります。ダンジョンの奥深くには太陽光が届きませんしね。かの「ウィザードリィ」の最下層で,大ボスであるワードナの居室前を守っていたのがヴァンパイアでした。ボスとしての登場となればまず「悪魔城ドラキュラ」が思い出されます。アクションゲームは苦手で,苦労しましたけどずいぶんと遊びました。
主役として吸血鬼を演じるテーブルトークRPGなら,まずは「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」(邦訳ではリブート版の「ヴァンパイア:ザ・レクイエム」もあります)を挙げないわけにはいきません。なにせプレイヤーは皆,吸血鬼なのですから。先の「夜明けのヴァンパイア」の影響を受けて生まれた同作は,1990年代のアメリカにおける,吸血鬼ブームのけん引役の一つでもありました。
「ワールド・オブ・ダークネス」という,超自然的な存在を扱ったゲームシリーズの中の一作でもあって,吸血鬼のほかにも人狼や魔術師,幽霊などをテーマにしたテーブルトークRPGが存在しています。こうした闇の住人達が,世界の裏側で複雑に絡みあった社会を形成しているわけですね。吸血鬼だけを見ても,その内部ではさまざまな氏族・血族に分かれていまして,複雑な陰謀劇を繰り広げては,愛と憎しみのタペストリーを織り上げているのです。
ファンタジーものに目を向けるなら,「ソード・ワールド2.0」には吸血鬼であるノスフェラトゥと人間との間に生まれたラルヴァという種族がいまして,これがプレイヤーキャラクターとして使用できます。プレイバイウェブからスタートし,のちにテーブルトークRPGにもなった「シルバーレイン」では,人狼と吸血鬼が物語の節目に登場します。この世界の吸血鬼には,先天的な吸血鬼である「貴種」と後天的な「従属種」があり,さらにラスボスに近い立ち位置として,強大な力を持つ「伯爵」が登場しました。
そのほか「ナイトウィザード」「下僕系イケメンテーブルトークRPGダークデイズドライブ」「常世国騎士譚RPGドラクルージュ」といったテーブルトークRPGでも,吸血鬼関連のキャラクターがプレイできます。とくに最後のドラクルージュは,吸血鬼同士の交流の耽美な雰囲気を味わいながら,苦悩の戦いやメロドラマが楽しめる,実に21世紀の吸血鬼らしい作品となっています。
吸血鬼を受け継ぐもの――ゾンビ
ある日の墓場での冒険
戦士:うわ,噛まれた!
魔術師:またか
戦士:あっさり言うなよう。ゾンビに噛まれたら,ゾンビになっちゃうんだろ? ゾンビはかっこ悪いし弱いし……
魔術師:魔法で動かされてるゾンビなら感染系じゃない。心配するな
語り部:ところが,このゾンビは呪いによるもので伝染するんだなー。わはは,ゾンビかっこ悪いとかいう奴はゾンビになれ(真顔)
戦士:ダメじゃん!(悲鳴)
語り部:それが証拠に,ゾンビをかじったサメがゾンビになり,ゾンビを食ったチワワが巨大化してゾンビになり
魔術師:いや待て。どっちもかじられたんじゃなくて,かじってるじゃないか
語り部:うむ,心配するな。結果に大差はない。呪いを解く試練は用意してある
墓場からよみがえり,生者を襲い,噛みつくことで同類にしてしまう。この特徴を吸血鬼と共有しているのが,いわゆるゾンビというモンスターです。とはいえ動く屍である彼らは,腐って醜くぎこちない動きしかできません。優雅で美しい吸血鬼とは正反対。けれどこうした特徴の面から,吸血鬼に最も近い種族と言えるかもしれません。
ここで“いわゆる”と前置きしたのは,もともとのゾンビがブードゥー信仰に関わる魔術によって使役された――ときに肉体的ではなく社会的な――死者の呼び名であるからです。彼らは食物を必要としない,ただ動き続ける安価な労働力でしかなく,人を襲ったりするものではありませんでした。
なんにせよこの映画のインパクトはすさまじく,そのあとには多くのフォロワーが生まれてきました。そして1978年,ロメロは「夜」に続いて「夜明け」を描きます。アメリカ公開時のタイトルは「Dawn of the Dead」。前作ではアメリカの片隅,一夜のできごとだったゾンビパニックは,世界に拡大しています。地獄がいっぱいになって屍者が地上に帰ってきたのです。この映画は,イタリアで「サスペリア」「フェノミナ」など多くのホラー映画を手掛けたDario Argento(ダリオ・アルジェント)によってヨーロッパに配給されました。この折に付けられた国際タイトルが「Zombi(ゾンビ)」であり,日本でもこのタイトルで公開されました。その結果として,ゾンビという呼び名が定着したのです。
低予算で人を怖がらせる映像が撮れるということで,貧乏な映画製作者達がこぞってゾンビ映画を粗製乱造しました。もちろん(一部の人にとっての)傑作もありました。「サンゲリア」「死霊のはらわた」「ゾンゲリア」「バタリアン」などなど。その一方で,この章の冒頭の語り部のセリフにあったような“変なゾンビ映画”も続々生まれてきたわけです。ついには「ゾンビ・ストリッパーズ」と「ストリッパーVS.ゾンビ」と「ストリッパー・ゾンビランド」が,それぞれ別に作られるに至るまで!
ゲームでも大人気のゾンビ達
さて,もちろんゾンビはゲームにも多く登場します。そのほとんどは敵側としてですけどね。いくつものシューター系タイトルで頭を吹き飛ばされ続けているゾンビですが,有名どころではやはり「バイオハザード」でしょうか。そのほか比較的最近ので思いつくだけでも,「Left 4 Dead」「7 Days to Die」「デッドライジング」「ダイイングライト」「Killing Floor」「The Last of Us」と,挙げればキリがありません。
テーブルトークRPGだと,「All Flesh Must Be Eaten(すべての肉は食われるためにある)」なんてのがあります。残念ながら未訳ですけど。ゾンビというテーマに,プロレスや歴史などあらゆるジャンルを掛け合わせて遊べるのがウリになってまして,覆面レスラーがゾンビと戦うシナリオや,47体のゾンビが吉良邸に討ち入る忠臣蔵っぽいシナリオなんかが用意されています。ただこれ,プレイヤーはゾンビじゃなく,ゾンビに襲われつつサバイバルする側なんですが。
また,やはり未訳ですが,映画「死霊のはらわた」シリーズ第3作の「キャプテン・スーパーマーケット」もテーブルトークRPGになってまして,中世ヨーロッパでチェーンソーとショットガンを手にゾンビと戦えちゃいます。
ボードゲームにも,ゾンビものはたくさんありますが,やっぱりプレイヤーはサバイバー側となるものがほとんどですね。立体ボードを使う「ゾンビタワー3D」や,氷河期も一緒にやってきた「デッド・オブ・ウィンター」,中世ヨーロッパの暗黒時代が舞台の「ゾンビサイド ブラック・プレイグ」なんかがあります。グループSNE作品の「ダイス・オブ・ザ・デッド」(ボドゲだけでなくテーブルトークRPG版もあります)では,プレイヤーはゾンビ化ウィルスに冒されつつも,かろうじて理性を残しているハーフゾンビになりますが,こちらも立場はサバイバルする側。
死者をつなぎあわせて作られた美少女「ドール」が主人公のテーブルトークRPG「永い後日談のネクロニカ」は,個人的にはゾンビではなく「フランケンシュタインのクリーチャー」という解釈ですので,これは次回に詳しく語りたいと思っています。
ゾンビ側になれるものだと,どうしてもお手軽なカードゲームや,コメディタッチのタイトルが多いですね。ユーモアあふれるカードゲーム「脳トレゾンビ」「ゾンビバーガー」は,ファストフードレストランで酷使される,ある意味オリジナルな労働力としてのゾンビとなって,お仕事にはげむゲーム。脳みそやショットガンが描かれた特殊なダイスをふって,十分な脳みそを食えるか,その前にショットガンで吹っ飛ばされるか,という「ゾンビダイス」なんてダイスゲームもありました。
アンデッドの気持ち(あるのか?)になって考えよう
さて,恒例の「演じ方」なんですが,吸血鬼なら,まずは何より美しくあってほしい,と個人的には思います。吸血鬼の特徴に「かつては人間であった」というのがありますよね。人の血を――つまりは命を奪わずには存在を維持できない怪物。けれど,心は人間のまま。吸血鬼の美しさとはそのギャップ,苦悩にこそ宿るのではないでしょうか。
ドラマチックな吸血鬼を演じるためのキーワードは,ずばり「板挟み」です。血が欲しいという自己保存への本能と,血を吸ってしまえば,その他者を失いかねないという感情との「板挟み」。あるいは血をすするケダモノのような自分と,貴族としての誇りの「板挟み」。対象への独占欲と,自由を尊重したいという愛ゆえの「板挟み」,などなど。
もちろん献血の血液パックでまかなっちゃう,苦悩のないお気楽な吸血鬼も,それはそれでいいのですけどね。
こういった「人でなくなった苦悩」を抱えない,生まれながらの吸血鬼を演じるのなら「尊大」とか「傲慢」をキーワードに,どんどん冒険者を見下していくのがいいんじゃないでしょうか。そういう立ち位置なら敵の側でしょうから,憎まれてなんぼです。不死であることから起こりがちな,愛する対象との別離,時によって隔てられた感覚の違いなどは,エルフの回で語った内容も参考になると思います。
さてもう一方のゾンビですが,これを演じる機会って,ゲームではやっぱり少ない気がします。むしろ機会としては,現実のほうが多いくらいじゃないでしょうか。やっぱりホラーもののコスプレで最も手軽ですし。
これは自慢なんですが,いまから25年ほど前に「ゴーストハンター 黒き死の仮面」というデジタルゲーム(機種はなんと3DO!)がありまして。我々グループSNEの面々も,実写取り込み素材として,制作に参加しておりました。それで皆でゾンビを演じることになったんですが……そのときの監督さんに「皆さん,もっと友野さんみたいに」と言わしめた実績があります。私,言わばセミプロ級のゾンビというわけですので,その神髄をここで皆さんにお教えしたいと思います。
まずですね。恨みとかつらみとか,そういう感情はすべて捨てさりましょう。ゾンビなんですからもう死んでるわけで,脳みそも腐っているから,そんな高度な感情はありません。本能だけです。そこに動く生肉がある。かぶりつかねば。そういう純粋な反射だけで動きましょう。より正確には動こうとしましょう。神経も筋肉も骨も,もはや「つながって」いないのです。であるのに,なお動こうとしている,そういう感覚が大切です。のろのろとした動きはあくまで結果であって,本当はもっと速く動きたいのだということも忘れずに。呻き声とて,体が動くことで各所に溜まったガスや空気が押し出されることで自然発生するものなのです。
そしてこれらすべてを意識せず,無の境地で行える悟りを開いたとき……あなたは真のゾンビになれるはずです。……人生で1,2を争うくらい,「ならなくていい」ものだと思いますけど。
ちなみにこれはロメロ派のゾンビの演じ方でして,感染者系の動きの速いやつや,本来の労働力としてのゾンビ,自意識や生前の衝動がまだわずかに残っている哀しいゾンビとなると,また細かい仕草にいろいろ違いが出てきます。そこは自分で工夫を加えて,あなたなりのゾンビ像を作り上げてみてください。
吸血鬼とゾンビは,非常に近しい一方で,大きな隔たりもあります。死によって強力な力を得てもなお,社会のしがらみには縛られ続ける吸血鬼達。死によってすべてを失なうが,本能以外のすべてから解放されるゾンビ達。ゾンビになった途端,人は自由を得るのですが,吸血鬼は自由を失うのです。始祖であるロメロ監督は,ゾンビ達を我々自身の戯画として描きました。21世紀というこの時代に,人が吸血鬼でなくゾンビを求める理由は,こんなところにもある気がします。
さて次回ですが,ネクロニカのくだりで申し上げたように「フランケンシュタインの怪物」をはじめとする「造られた命の種族」について話そうと思います。ゴーレムやホムンクルス,あるいは使い魔などなど。あと,余裕があれば機械系の種族についても。
年末ということで,掲載は1週早い12月24日となる予定です。またお付き合いください。
■■友野 詳(グループSNE)■■ 1990年代の初めからクリエイター集団・グループSNEに所属し,テーブルトークRPGやライトノベルの執筆を手がける。とくに設定に凝ったホラーやファンタジーを得意とし,代表作に「コクーン・ワールド」「ルナル・サーガ」など。近年はグループSNE刊行のアナログゲーム専門誌「ゲームマスタリーマガジン」でもちょくちょく記事を書いています!(リンクはAmazonアソシエイト) |
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- ライター:友野 詳(グループSNE)
- イラスト:鈴城 芹
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