インタビュー
歴代怪獣が大進撃。ゴジラ愛にあふれた「ゴジラ ディフェンスフォース」について,開発と東宝に話を聞いてみた
本作は都市の防衛システムを強化し,侵攻してくる怪獣たちを迎え撃つ“放置型都市防衛ゲーム”となる。今回は新作映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の公開間近とあり,ぜひその前にとネクソンの小会社であるNeople STUDIO42と,版権元の東宝のキーマンに話を聞いてきた。
「ゴジラ ディフェンスフォース」公式サイト
「ゴジラ ディフェンスフォース」ダウンロードページ
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怪獣の強大さを表現するためのゲーム
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは各々が「ゴジラ ディフェンスフォース」でどのような仕事をされているのか教えてください。
ファン・ジェホ氏(以下,ファン氏):
本作のディレクターのファンといいます。僕がいるNeopleはネクソンの子会社でして,中でもSTUDIO42は新規開発を担当する韓国のスタジオです。これまでも「エビルファクトリー(Evil Factory)」や「アフター・ジ・エンド:忘れられた運命」といったタイトルを手がけてきました。
砂子達也氏(以下,砂子氏):
東宝の砂子です。私は「ゴジラ」に関する国内の商品化の窓口をしています。昨年は作家の坂崎千春さんと一緒に,幼児向けの新ブランド「ちびゴジラ」などを立ち上げました。
原口絵美氏(以下,原口氏):
同じく,東宝の原口と申します。私はゴジラのライセンスを海外に発信する部署に所属していまして,本作では“全世界で配信していきたい”の思いで,砂子とともに企画段階から携わってきました。
4Gamer:
はじめに,本作の開発のきっかけをはなんだったのでしょう。
ファン氏:
僕たちSTUDIO42ではこれまで,もっと面白いゲームをとの思いで,いろいろなゲームジャンルのプロトタイプを作ってきました。その中に“怪獣を倒す放置ゲーム”があって,これが結構イケると感じたんです。
そうしたとき,「東宝のゴジラのIPを使わせてもらえるかも」という話を小耳に挟みまして,先行きは決まっていませんでしたが,実際にゴジラをはじめとする怪獣たちをゲームに乗っけて,ネクソンをとおして東宝さんに提出したところ,GOサインをいただけたんです。
4Gamer:
すると,企画はNeople側からスタートだったんですね。ゴジラ関連となると,てっきり“東宝マスト”なのかと。
砂子氏:
ゴジラのメインコンテンツは映画ですので,映像関連についてはそうやっています。ただ今回のように,他社さんにIPをお任せする,他社さん主導で持ち込みいただく例は古くからあります。ゴジラは日本のIPの中でも,早くからライセンスアウトに取り組んでいましたしね。
原口氏:
私は当初,ネクソンさんから「ゴジラのゲームを作りたい」と話をいただいたとき,コア向けのやり込みゲームになるのかなあ……と思っていました。
ですが,ファンさんからあがってきた企画は,誰でも遊べるゲーム内容でいて,プレイヤーが怪獣を操作するのではない,“これまでと違う目線の怪獣ゲームにしたい”の思いがあふれてて,そこが印象的でした。
ファン氏:
僕は個人的にゴジラが大好きで,昔から「ゴジラを使ってなにかやってみたい!」と考えていました。ゴジラは魅力的なIPなのに,ゲーム的に評価されている作品が少ないと感じていたので。
4Gamer:
これまでのゴジラゲームといえば,「怪獣王ゴジラ」「ゴジラ 爆闘烈伝」「ゴジラ・ジェネレーションズ」「ゴジラ VS」のように,怪獣を操作するアクションゲームが多かったですね。例外に「ゴジラ 列島震撼」などもありますが。それでいうと,本作のキモはいかがでしょう。
ファン氏:
僕はゴジラが飛び蹴りしたり,攻撃されてダウンしたりするのは「なにか違う……」と思っていました。やはり怪獣ですから,ものすごく強くて,ちょっとやそっとじゃ倒れない,そういう強大な存在として表現したかったんです。
それに,ゴジラ映画は人類側の視点で描かれています。こうした世界観に即すとなると,自分が怪獣になるのではなく,人類としてゴジラに立ち向かうべきでしょう。そこで,都市の防衛施設をアップグレードして,ユニットを生産し,怪獣たちに立ち向かうゲームを選んだんです。
4Gamer:
怪獣の強さを,ゲームシステム的から表現したいと。
ファン氏:
本作を発表した際に「怪獣同士が対決するゲームをやりたい!」といったお声をいただいたのは確かです。それはそれで魅力があるのは分かっていたので,本作では一案として,一部のゲーム内カードを使って怪獣を呼び出し,侵攻してきた怪獣と戦わせられるようにしています。
4Gamer:
それがカード集めの楽しみにつながるんですね。では,東宝としてはプロトタイプを見たときの感想はいかがでしたか。
原口氏:
早い段階から,怪獣の動きや光線の吐き方など,細かな“ゴジラっぽさ”をしっかり研究したうえで作っていただけていると感じました。これまでも週に1度,関係各位でゲームをチェックしてきましたが,バージョンが変わるたびに「そうきたか!」と感心していましたよね。
砂子氏:
それと,放置ゲームということでプレイするためのハードルが高くないので,誰にでも気軽に遊んでもらえると感じています。ゴジラファンはもちろんですが,ゴジラを知らない人でもすんなりはじめられそうな点が,すごく良い企画を考えてもらえたと思っています。
ゴジラの魅力は,勧善懲悪に留まらない奥深さ
4Gamer:
ファンさんはゴジラが大好きとのことですが,韓国でのゴジラの知名度というのは,どういったものなのでしょう。
ファン氏:
ゴジラの名前は誰もが知っているが,モスラやキングギドラなどのほかの怪獣はそうでもなく,ファンもコア層が中心でライト層があまりいない……というイメージでしょうか。
4Gamer:
そうなんですか。それでも,ゴジラが知られていること自体はちょっと驚きです。知名度を疑うというよりも,カルチャー的に。
ファン氏:
最も大きいのは,ハリウッドの映画「GODZILLA」が公開されたことですね。そこから知名度が一気に上昇しました。アメコミ映画と同じ流れですね。というのも,元となる東宝さんのゴジラ映画は,韓国ではこれまでリリースされていませんでしたから。
でも,今年5月から歴代のゴジラ作品が正式販売されるようになりました。それに伴い,イベント上映なども盛んです。5月31日に公開される新作映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」や,我々のゲームをきっかけに,ファン層が広がってくれたら嬉しいです。
4Gamer:
となると,ファンさんの場合はどのように出会ったんでしょう。
ファン氏:
僕は子供のころに日本に住んでいたので,それでゴジラ映画を見ていました。そのころから“人間が倒せないほどの強大な怪獣”という存在が,僕の嗜好に根付いていたんです。
弊社の開発スタッフは先にお話しした事情から,当初はハリウッド版しか知らない状況でした。でも開発中に映画を勧めていたところ,大勢が「これすごい魅力的ですね!」と言ってくれるようになりました。
4Gamer:
そんなファンさんが思う,ゴジラの魅力とは?
ファン氏:
僕がとくに好きなのは,設定が奥深いところです。いずれの作品も「悪い怪獣が攻めてきたから,やっつけろ!」といった,ただの勧善懲悪に留まっていないじゃないですか。
4Gamer:
そうですね。人間の核実験で住み家を追われ,変異した恐怖の大怪獣。太平洋戦争で犠牲になった人々,その怨念が集まった存在。いずれの映画でもゴジラの存在は,単純に悪とは言い切れないところがあります。
ファン氏:
それに人同士の戦いとは違って,ゴジラをはじめとする怪獣映画は,一目で敵わないと分かる強大な存在に,人々がみんなで力を合わせて対抗していきますよね? ゲームで言うと,みんなで強力なボスに立ち向かうのって面白いじゃないですか。
4Gamer:
レイドバトル,みたいな。
ファン氏:
そうですね,ゲーム的に言えば“勝てないレイドバトル”みたいな(笑)。ゴジラ映画の場合はさらに,その勝ち負けに納得感を与える,物語の深みがいいんですよ。
4Gamer:
怪獣映画の魅力を面白く表現できている一言ですね。ちなみに,ファンさんが一番好きなゴジラ作品はなんでしょう?
ファン氏:
僕は「怪獣大戦争」が好きです。
4Gamer:
1965年の映画ですね。渋いです。どのへんがお気に入りなんですか。
ファン氏:
悪役の「X星人」が怪獣を操る設定ですね(水を求めて地球を狙った異星人。自作自演で事件を起こして地球人に取り入るなど狡猾)。今回のゲームでも「X星人をなんとか出したい!」と思って,“彼らが昔の怪獣を復活させて2019年の地球に襲ってきた”という設定にしました。
4Gamer:
それなら,いろんな怪獣が出てきても丸く収まりますね。
砂子氏:
僕らもチェックの際,X星人が出てくるのを見て,ニヤリとしちゃいました(笑)。
原口氏:
本当に,ゴジラ作品を研究されているんですよね。東宝が1954年から2016年の間に作ったゴジラ映画は,全部で29本になりますが,それらは共通した世界観がありつつも,細部の設定がそれぞれ異なっていたりします。だから,そうした差異をひとつのゲームに収めるのは大変だと考えていましたが,作品ごとのエッセンスを上手に拾われましたよね(笑)。
東宝の厳しい監修を経て,ゴジラを再現
4Gamer:
ゲーム内では「怪獣の強さ」に違いがあるかと思いますが,それらはどういった基準で決められたのでしょう。
ファン氏:
カードの強さやスキルに関しては,Neopleで決めました。基準は映画内での設定と人気ですね。当初,怪獣を登場年代別に並べて強さを決めてみたんですが,そうすると知名度の低いガバラが,人気怪獣のキングギドラより強くなってしまうなど,チグハグが生まれてしまって。
4Gamer:
ミニラにも負けているガバラが,キングギドラより強いとなると,怪獣ファンからの物言いが入りそうですね。
ファン氏:
そうした経緯があり,“ゴジラ ディフェンスフォースというゲームにおけるフィクション”を定めて,映画の設定と人気を重視するようにしました。やはりキングギドラは強力ですし,デストロイアも凶悪ですから,強くないといけません。
それにゲームの都合として,同じ怪獣が何度も出てきたり,進めるほど強くなったりしていきますので,ゲーム内の強弱はあくまでゲーム内のもの。実際の映画における強弱とは関係ないものとしています。
4Gamer:
ゲーム的な部分としてゲームナイズしていることは強調しておきましょう。特撮の最強談義はゴールが見えませんからね。
砂子氏:
そうですね。我々もあくまで,「ゴジラ ディフェンスフォースに必要な味付け」として設定していただいたので,ゲーム外での怪獣に格付けしたわけではないとしています。
4Gamer:
ゴジラに関しては,何体くらい登場するのでしょう。おそらく作品単位ではなく,着ぐるみ単位になりますよね(ゴジラ映画では同じ着ぐるみを数作品で使用したり,作品ごとに造形を変えたりしている)。
ファン氏:
ゴジラだけで15体います。いずれも東宝映画の着ぐるみから選定していて,そこにハリウッド版やアニメ作品などは含みません。
4Gamer:
怪獣たちの解釈が最高だったアニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」が出ないのは残念ですねえ。
砂子氏:
とくに平成ゴジラシリーズ(1984年以降の作品群。VSの文字が特徴)の監修については,細かな造形の違いが伝わりにくくて,ウチもファンさんも苦戦しましたが,結果的にいいものができましたよね。
4Gamer:
各作品のゴジラですものね。これは個人的な質問ですが,私はシンゴジ(出展「シン・ゴジラ」)が登場するまで,最恐はGMKゴジラ(出展「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」)でした。どっちも“尻尾が怖い”ので。まぁ,今もGMKゴジラが最恐だと思っていますが,こういうところで,一番怖いゴジラって今だとどれなんですかね。
砂子氏:
それは見る人によるでしょうね。近年の造形や設定ではその2作が挙げられやすいですが,84(出展「ゴジラ」1984年版)という人もいらっしゃるはずですし,今でも54(出展「ゴジラ」1954年版)が一番怖かったという人もいらっしゃるでしょうし。
4Gamer:
なるほど。それぞれが心の中で思う「一番怖いゴジラ」は,確かに違いがありそうです。では,ほかの怪獣に関してはいかがでしょう。
砂子氏:
最初にファンさんから「本気の怪獣をいろいろ出したい!」とうかがっていたので,こちらも監修にかなりの熱を入れさせていただきました。
ファン氏:
資料と同じように作ったつもりでも,「ここのシワをもう少し目立たせたい」「手をもうちょっと短くしてほしい」など,おかげさまでかなり細かいご指摘をいただけました。
砂子氏:
特徴を捉えたうえで,造形の違いを出さないと,ゴジラファンがガッカリしてしまうので。我々もシビアに見させてもらってしまって。
ファン氏:
ちょうど昨日なんか,「モスラ幼虫の歯形を原作に近づけてほしい」とご指摘をいただきました。立体物である着ぐるみを,二次元のイラストに落とし込み,それをゲーム画面上で少し角度をつけて表示する。このルールでやっているので,見え方を工夫しなければいけない怪獣もいて。
砂子氏:
どちらかというと,ゴジラより「モスラ」が難しかったですよね。とくにモスラ成虫。本当,どうすれば似るのかが分からなくって(笑)。
4Gamer:
それは平成三部作の違いを出す,という意味ですか?(平成モスラシリーズの「モスラ」「モスラ2 海底の大決戦」「モスラ3 キングギドラ来襲」の意)
ファン氏:
いえ,もっと根本的な問題で,「ちょっと角度のついたモスラ」を表現するのが難しかったんです。
砂子氏:
モスラ成虫って,映画のときは水平に近い姿でいることが多いんです。でも,このゲームではスマートフォンの画面的に「身体をちょっと立てて,お腹を見せたポージング」にしないと姿が映りきらなかったんです。その姿が普段見慣れないものだったのもあり,余計大変で。
4Gamer:
ゲームならではの難しさがあったんですね。
ファン氏:
アンギラスも難しかったですよ。こちらは造形云々というより,アンギラスボール(出展「ゴジラ FINAL WARS」。正式名称は暴龍怪球烈弾。身体を丸めて体当たりする必殺技)を表現したかったので,いろいろ試しはしたんですが,どうにも納得がいかず,泣く泣く省略しました(笑)。
4Gamer:
無茶しましたね(笑)。怪獣はエビラやカメーバといったラインナップもそうですが,バリエーションも細かいですよね。作品ごとのラドンやガイガン,ビオランテの花獣形態と成獣形態,三式機龍もアブソリュート・ゼロの有無があったりと(「ゴジラ×メカゴジラ」2002年版と「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」に登場した,メカゴジラの違い)。
砂子氏:
細分化しすぎているわけではありませんが,ちゃんと違いがあって,具体的に存在している怪獣については,しっかり分けましたもんね。
ファン氏:
やるからには出したかったので!
4Gamer:
人類側の兵器も「妖星ゴラス」のマグマや,「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」に出てくる赤イ竹戦闘機など,マニアックなものが多いです。これらのセレクションはどうされたんでしょう。
ファン氏:
選んだのはNeople側ですが,リストは東宝さんにいただいたものなので,そこからゲーム的に面白いそうなものをピックアップしていった形です。兵器の監修もとてもがっつりでした。
4Gamer:
そのエピソードなどはありますか。
ファン氏:
「スーパーX(陸上自衛隊の移動要塞兵器)の機体側面に書かれている文字が違う」ですね。実際に資料を見てみると,言われたとおりの文字が書かれていたりして,東宝さんの監修チームのすごさを感じました。
原口氏:
今回は国内で3人,海外で3人の監修体制でしたが,ほとんどが「あらゆる年代のゴジラの特徴を“そら”で言える人たち」でした。ただ,我々も厳しく監修しましたが,それはファンさんがきっちり応えてきてくれたからなんですよ。ときには想像以上の出来を見せてくれましたし。
4Gamer:
中でも印象に残っているものはありますか。
原口氏:
個人的には「モゲラ」(出展「地球防衛軍」。ゴジラvsスペースゴジラ版ではない)ですね。モゲラは目からプラズマ光線を発射するんですが,監修側がポロっと「昔の映画みたいに,フィルム合成っぽい感じもよさそうだよね」と言っていたら,翌週には反映されていたんです。
最新のゲームなのに,演出がすごくレトロな感じになっているので,その味をぜひとも見ていただきたいです(笑)。
ファン氏:
普段の監修シートって,修正点ばかりが書かれているのですが,このときはお褒めの言葉をいただけました(笑)。
4Gamer:
開発者冥利に尽きますね。私も実際にゲームを遊ばせていただきましたが,怪獣や兵器のカードに使われている当時の写真も印象的でした。作中のものや撮影中のものがあったり,東宝大プールも見えたりして。
原口氏:
写真に関しても,ファンさんからマニアックな指定が届きましたね。
ファン氏:
カードの表示領域に適した怪獣のアングルを探すのが大変だったので,資料を何度も請求してしまいました。昔のモノクロ写真にしても,本作のレアカードは背景がキラ仕様(プリズム)なんですが,そこにモノクロ写真を載せると雰囲気が合わなかったりして。
写真にはゲーム内のグラフィックスを流用する手も考えていましたが,当時の写真をなんとなく当てはめてみたら,結構いい雰囲気だったので,いっそのこと東宝さんにがっつりサポートしてもらおうと思い(笑)。
原口氏:
監修チームが一生懸命,資料を漁りました(笑)。
ファン氏:
それでも,写真が残っていないなどの問題で,ゲームに出したくても出せなかったものは結構あるんです。映画以外のスピンオフに関しても,できれば出したかったんですが。
4Gamer:
そういった部分のアップデートを予定されていたりは。
ファン氏:
まだ話せないことは諸々予定しておりますが,個人的には登場人物ですかね。ゴジラシリーズのキャラクターです。
4Gamer:
小美人やエリアスですね。
ファン氏:
ええ,そこのところでは,本来は人類の味方であるモスラを,プレイヤー側でも呼び出せるようにしたいですね。
4Gamer:
ああ,本作では「X星人に操られたモスラ」が都市を破壊するんですものね。怪獣の正義であるモスラを打倒できるのは,私のようなよこしまなタイプにはこれまた一興ですが。
ファン氏:
そうですか(笑)。あとは,映画作品になぞらえたイベントステージの構想もあります。「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」であれば,南のレッチ島を舞台に彼らが集まってくるといった感じです。
4Gamer:
映画さながらのバトルが体験できるわけですね。楽しみです。
ゴジラで育った30代,ゴジラを知ってる10代
4Gamer:
原口さんがいらっしゃるということは,本作は海外でも展開されるわけですよね。
原口氏:
はい。アジアや欧米などでも展開していきます。
4Gamer:
欧米となると,ゲームに登場していないハリウッド版(エメリッヒ監督版,ギャレス監督版,新作のマイケル監督版)が大きなファクターになるのかと思いますが,そこのところはいかがでしょうか。
原口氏:
本作にハリウッド版が登場しないのは確かですが,アメリカではゴジラ映画というと,東宝版もなじみ深いんです。向こうでは当時,ゴジラ映画が毎週放映されていたことがあり,これを見て育った方々が,現代の映画業界で活躍されていたりするんですよ。
ファン氏:
知名度にしても,「シンプソンズ」や「サウスパーク」といった作品でパロディをされるほどのなじみがありますよね。
4Gamer:
へえ,そうなんですね。ミレニアムシリーズ(「ゴジラ2000 ミレニアム」以降の作品群の意)の海外人気は聞き及んでいましたが,どちらかというと,ギャレゴジ(ギャレス・エドワーズ監督作のハリウッド版「GODZILLA」。近年では監督の変更を加味して,レジェンダリー・ピクチャーズの製作からとったレジェゴジとも)が人気の中心かと思っていました。
原口氏:
新作映画の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の監督であるマイケル・ドハティさんも,当時の流れでゴジラ映画を見て,影響を受けたと語っておられます。このゲームをきっかけに,海外でもゴジラについてもっと知ってもらえたらありがたいと考えています。
4Gamer:
やはり,国ごとにゴジラ作品の人気は異なるのでしょうか。
原口氏:
海外の方々のゴジラのイメージは,地域や年代でも異なりますが,平成のゴジラのシルエットに近いというような印象はあります。
砂子氏:
一番怖いゴジラの話と同じですが,これも世代によって好みの作品は分かれるかもしれません。例えば,僕の世代は平成ゴジラシリーズですが,今の30代前後はミレニアムシリーズが印象的かもしれませんし。
4Gamer:
確かに。ただ,ゲームのメインビジュアルのゴジラって,背びれの造形を見る感じ,ギラゴジ(出展「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」)ですよね? だからてっきり,ミレニアムシリーズが優勢だったのかなと。
ファン氏:
メインビジュアルは揉めましたねえ。本当は各世代の代表ゴジラを出すことも検討していたんですが,ゴジラだけを4体5体と並ばせるのが絵面的に難しいと思って,今の感じにしました。
4Gamer:
なるほど。日替わりゴジラに期待します。
ファン氏:
それと海外展開に関しては,海外のゴジラファンにカジュアルゲームとして好きになっていただけるかが不安です。「映画人気に便乗したキャラゲー」などと言われないよう,簡単ルールのゲーム的な面白さは追求しましたが,それでも怖さがあります。
4Gamer:
そこはゴジラというより,モバイルゲーム市場の難しさが存分に絡んできそうですね。
ファン氏:
海外ではすでにソフトローンチ(正式配信前の小規模なサービス形態)を済ませていて,ゴジラ関連のWikiでは「ゲーム内の名称と公式名称が違ってる!」といった指摘を受けていたりもします。こういうゴジラファンのコアさは,各国共通なんですよね。
4Gamer:
ソフトローンチでの評価はどうでしたか。
ファン氏:
嬉しいことに「タイアップものだと思ってたら,ゴジラの動きや怪獣の図鑑にもしっかりこだわってる!」と支持されています。これは海外で“ゴジラのヒストリーを捉えたゲーム”がなかったことも追い風になっていると思います。ハリウッド版が中心にある世代にも,ゴジラの原点に触れてもらう,そのお手伝いができているのなら幸いです。
4Gamer:
ちなみにゴジラ自体のファン層の拡大となると,東宝としてはどのように考えているのか,あらためてお聞かせいただけますでしょうか。
砂子氏:
分かりました。私が所属するゴジラ戦略会議(The Godzilla Strategic Conference)こと通称「ゴジコン」は,まさにそのゴジラの認知度やファン層を拡大するために設立された会社内横断組織です。
ゴジラは映画のキャラクターですから,弊社としても“映画を公開すること”を一番に考えています。ただし,昨今の映画というのは1年に何本も公開できるものではありません。そのため,映画をきっかけにゴジラに触れていただくチャンスは,多くて1年に1回となります。
4Gamer:
ですよね。
砂子氏:
しかし,本作のようなスマホゲームによるアプローチであれば,毎日ゴジラに触れてもらい,ゴジラをより身近に感じてもらえます。普段ゲームをやらない人でも遊べる内容,かつ楽しみやすいという作りは,ファンさんたちの手腕によるところも大きいですが,今回いただいた企画はそういう意味で,我々のゴジコンの課題とぴったり合っているんです。
それに今年はゴジラ65周年として新作映画はもちろん,「ゴジラ検定」などのイベントを実施し,さらには「ちびゴジラ」なども引き続き進めていきます。
4Gamer:
まさにゴジライヤーですね。一方で65周年ともなると,認知度の高さは類を見ないと言えど,ファン層を新たに広げるのには難しさがあったりするのではないでしょうか。
砂子氏:
ええ,私も「ゴジラに対する固定観念」は大きな壁だと感じています。現代におけるゴジラは年数を重ねたことで,良く言えば質や格のある本物感,悪く言えばそれゆえに入りにくいところがあります。端的に言って,「10代女子がゴジラで歓声をあげてる姿」には出くわせません。
だから,10年後にそんな姿を目にできるようにと,我々ゴジコンが社内を横からつなげる活動をし,ゴジラの展開を活性化しているんです。
4Gamer:
なるほど。では現代の10代にとって,ゴジラはどのように捉えられているのでしょう。
砂子氏:
10代後半の男の子なら,ゴジラの認知度は“90%”ほどになります。また,20代以降になると男女ともに90%を超えています。当然,中には「映画は見たことない」「細かい内容は知らない」という人もいますが,“ゴジラ”という言葉は多くの人が認知してくれています。日本では近年,映画「シン・ゴジラ」の影響が非常に大きかったですしね。
4Gamer:
それは素晴らしいですね。これは言うまでもないことですが,ゴジラシリーズにはこれまで何度か断絶がありました。昭和ゴジラシリーズから平成ゴジラシリーズまでの9年間,それからミレニアムシリーズまで4年間,そして「シン・ゴジラ」まで12年間です。
砂子氏:
そのとおりです。
4Gamer:
とくにミレニアムシリーズから「シン・ゴジラ」の間の世代などは,私や砂子さんのように「毎年のようにゴジラ映画があった体験」をしておらず,映画としてのゴジラに触れる機会が多かったとは言えません。
しかし,それでも文字やアイコンとして機能し,たとえゴジラ映画を見たことがなくても,「ゴジラを知ってる10代や20代」がそれほどまでにいる。そういう時代になっているのなら,おじさん世代の憂いも払拭できそうな気がしてきます。
砂子氏:
そういう意味でも「シン・ゴジラ」は本当に大きかったです。これをきっかけに過去作を見てくれた人は多いですし,なにより“ゴジラというキャラクター”があらためて世に広く伝わりました。これはおそらく,ゴジラだからこそ生まれた,ゴジラならではの存在感だと考えています。
4Gamer:
お答えいただきありがとうございました。それでは最後に,読者に向けてのメッセージをお願いできますか。
原口氏:
本作は,誰でも楽しめるようなゲームになっています。それに結構コアな怪獣や兵器も出てきていますので,ゴジラファンの方々であれば,そうしたところにも注目してみてください。
砂子氏:
いろいろな作品から怪獣が出ていますからね。ゲームで興味を持ったら,原作映画も見ていただけると嬉しいです。ゴジラもどれも同じに見えても,熱線の色彩や形状,吐き方まで事細かに違っています。そして,そういう細々としてディテールにこそこだわっているのがこのゲームですので,ぜひとも遊んでみてください。
ファン氏:
このゲームは新作映画が公開されるタイミングとあって,仮に内容が伴っていなくても,今出すことである程度は売れるゲームだと思います。ですが,開発チームとしては絶対に「ゴジラを使っているだけのゲーム」にしないと固く誓ってきました。怪獣の鳴き声も原作どおりで,モスラ幼虫が吐き出す糸の角度すら,東宝さんに監修していただいております。
ゴジラをよく知らない方々には「大きな怪獣を倒して楽しめる放置型ゲーム」として楽しんでもらえればそれだけで嬉しいですが,怪獣や兵器のカードには当時の写真,それらの設定も記載しているので,ゴジラ入門にはもってこいです。ぜひ遊んでみてください。個人的にはゲームと新作映画を通じて,韓国でももっとゴジラの魅力が広まってほしいです!
4Gamer:
ありがとうございました。まずはゲームと新作映画で,ここからはじまる令和ゴジラシリーズを体感させていただきます。
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