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[TGS2022]ゲームで遊ぶことが,クリエイターの収益や貧困をなくすための行動になる。NFTゲームのプラットフォーム「PlayMining」のセッションをレポート
「JobTribes」公式サイト
Digital Entertainment Assetは,設立者兼CEOの吉田直人氏と設立者兼Co-CEOの山田耕三氏を中心に,多くの日本人がプロジェクトメンバーとして在籍するシンガポールの企業だ。吉田氏は1990年代にゲーム/アニメ制作会社のグラムス(詳しくは「こちら」のインタビュー記事を参照)を立ち上げた人物だ。また山田氏は,テレビ東京で15年間,音楽/バラエティ番組のプロデューサーを務めた経歴を持つ。
講演名にあるPlayMiningは,同社が展開するNFTゲームのプラットフォームの名称だ。Game(ゲーム)とFintech(フィンテック)が融合したGameFi(ゲームファイ)で新たなエンターテインメント体験の提供を目指している。フィンテックとは,Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で,金融サービスと情報サービスの結びつきによって生まれるさまざまな革新的な動きを指す。
そんなフィンテックとゲームはこれまで互いに必要としていなかったものだったが,ブロックチェーンやNFTの出現によってそれらが結びついた。ゲームファイによって「誰もが未体験のWeb3エンターテインメント」を生み,世界をリードしようというのがPlayMiningのサービスだという。
ゲームファイに対する注目度は高く,日本でも多くのゲームメーカーの参入が始まっているが,できたばかりであるため問題点も多い。遊べるゲームとしてのコンテンツが追いついていないので,ゲームファンではなく「フィンテック寄りのユーザー」に支えられているのが現状だ。
PlayMiningの特筆すべき点は,世界初のPlay to Earn(遊んで稼ぐ)トークンの経済圏を築いたことだという。
2020年5月(日本国内は2021年1月)に正式リリースしたフラッグシップタイトル「JobTribes」は,ゲームとして遊ぶとその対価としてお金に変えられるトークン(暗号資産)が手に入るというゲームだ。遊んだことで何かしらの資産を得たり,二次マーケットで販売できるアイテムがもらえたりというのはあったが,直接お金を得るものを配布した世界初のプロジェクトだそうだ。
現状,2.8兆円の売り上げの1/5がゲーム関連で,二次マーケットなどで動くものの半分はゲームアイテムのやり取りだというデータもあるそうで,それだけに,ゲームはNFTの中でも可能性の高い分野だという。
NFTの仕組みは,直接クリエイターに還元できる点が重要だ。例えば,これまで一度描けば終わりだったアート作品が,NFTの二次販売,三次販売によってクリエイターに新たな利益が発生する。この仕組みによってクリエイターの活力を上げ,充実した環境でさらに新しい作品が生まれ,ユーザーやファンにとって嬉しい状況にもなるのだ。
その1つがPlayMining Verse(プレイマイイングバース)で,クリエイターが自分の頭の中にある世界を自由に表現し,ファンがその世界に参加して,共にコンテンツを発展,進化させていくというプロジェクトだ。
第1弾が「ドラゴンクエスト列伝ロトの紋章」で知られる漫画家の藤原カムイ氏とのプロジェクト「Fujiwara Kamui Verse」で,今後も著名クリエイターやインフルエンサーが参加を予定しているとのこと。
PlayMiningには,持続可能な社会貢献を行えるという側面もある。SDGsやESGなど,いわゆるソーシャルインパクトは,これまでエンターテイメントとの相性は必ずしも良くはなく,例えばそれは企業自体の目標であり,コンテンツからは分離したものでもあった。
それを一体化し,「ゲームをプレイすることでどこかの誰かを具体的に救う」仕組みが,PlayMiningにはできているという。それがスカラーシップ制度で,ゲームNFTを購入してもプレイする時間がない人が,自身の資産であるゲームNFTをプレイしてくれる人(スカラー)に貸し出し,スカラーに利益を与える。
そこから生まれたのが,ゲーム内に雇用を生む「ゲームギルド」という事業体だ。現在,世界に2万あるというゲームギルドは,さまざまな理由で働けなくなった人や貧困層の人達がスカラーとして参加し,国境を超えて集まっている。そのギルドを介することで,資産を持つ人や企業が直接的,かつゲームと一体になった形でソーシャルインパクトを組成できるという。
Web3の本質に「パブリック」と「分散」があるが,「Web3化の水先案内人」としてマスアダプションを目指すPlayMiningは,その逆である「プライベート」と「中央集権」からスタートした。広い場所で開かれる金融とは異なり,ゲームやエンターテインメントは表に出すまでの時間がなければならない。エンターテインメント事業を現実的にWeb3化するためには,パブリック化への下準備と進展させるタイミングが重要だという。
PlayMiningの強みだと考えているのが,プラットフォームであることだ。単体のゲームやコンテンツだと飽きられやすいが,いろいろなゲームを追加ローンチすることで,継続してPlayMiningを続けられるからだ。2022年に5タイトル,2023年には10タイトル以上の展開を予定しており,著名なゲームメーカーとタイアップした大型タイトルの制作や,協業モデルの構築もあるという。
今後,どういった形でさらにゲーム性の高い作品が登場するのか。こうした事業に興味を持ったゲームファンは,注目していこう。
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