インタビュー
「ポケットモンスター ソード・シールド」インタビュー。「最強」をテーマに,子供たちが楽しめるものを目指して
今回4Gamerでは,発売直前のタイミングで,開発を担当するゲームフリークのプロデューサーである増田順一氏,そしてディレクターの大森 滋氏にインタビューを行った。本作は,どういったコンセプトで作られたタイトルなのだろうか。
「ポケモン ソード・シールド」に込められた,「最強の『ポケットモンスター』」を目指す思い
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
さっそくですが,今回のサブタイトルが「ポケットモンスター ソード・シールド」になった理由を教えてください。これまでのシリーズだと,色や宝石,天体の名前でした。どれも対であったり,似たようなものであったりして,「どちらか」を選びやすいものでしたが,今回は剣と盾という武具ですから,初めて聞いたときは異色に感じられました。
Nintendo Switchで新作を作るにあたって,「最強の『ポケットモンスター』」をテーマにしたいと考えたんです。グラフィックス表現や企画内容,登場するポケモンについて最強のものを目指すことを目標としていたので,力強さを感じられる剣と盾からタイトルを作りました。
それだけでなく,すごい力を手に入れたとき,倒す力(剣)と護る力(盾)のどちらを選ぶのかを決めて楽しんでほしいという思いもあります。
4Gamer:
最初から「ソード・シールド」だったんですね。今回のパッケージを飾る伝説のポケモン「ザシアン」「ザマゼンタ」の名前の由来はなんでしょう?
大森氏:
ザシアンとザマゼンタについては,神秘さを出したいと考えて名付けています。「赤いヤツに出会った」とか「青い騎士を見た」といった目撃証言が言い伝えとなり,そのまま名前になっていったような感じですね。
また,「ソード・シールド」が色ではなかったので,ポケモンのほうに色の要素を入れたかったというのもあります。
4Gamer:
ザシアンが「剣のようなもの」をくわえていたり,ザマゼンタが「盾のようなもの」で覆われていたりするのは,面白いデザインだと思います。物語的な設定はさておき,剣や盾という普通は手に持つものを,あえて四足歩行のポケモンに使わせていますよね。
大森氏:
「ポケットモンスター」シリーズは,RPGであっても武具を装備したりはしません。だからこそ,「ソード・シールド」というタイトルや,剣や盾を持ったポケモンが出てくるところを,意外だと思ってもらえるかなと。
本作の舞台となる「ガラル地方」はUKがモチーフなんですが,これも「最強の『ポケットモンスター』」というテーマから決まっています。発達した産業や,サッカーの強さなどから,UKのイメージが合っているのではないかと考えたんです。
4Gamer:
本作はNintendo Switchでの初の「ポケットモンスター」シリーズ完全新作となりますが,「最強の『ポケットモンスター』」として新たに挑戦した部分を教えてください。
大森氏:
フィールド上でポケモンの姿が見えるシンボルエンカウントの本格導入。ポケモンが巨大化する「ダイマックス」や,巨大化して姿も変わる「キョダイマックス」。そして広大なフィールドでカメラを自由に動かして冒険できる「ワイルドエリア」などですね。
4Gamer:
新要素のダイマックスやキョダイマックスは,どういった狙いで導入したものなのでしょう。
大森氏:
Nintendo Switchをテレビにつなげることを活かした表現がほしいというのと,「最強の『ポケットモンスター』」というテーマから大きなポケモンを出したいということからですね。そこから「巨大化を活かして,どんなポケモンでも活躍できる場を作りたい」と発想が広がり,「巨大なポケモンがいれば,これをみんなで倒すような遊びもできるんじゃない?」ということで,マックスレイドバトルが生まれました。
また,UKに巨人伝説が残っていることも後押しとなっています。
4Gamer:
ポケモンが巨大化するというのも,ありそうでなかったシステムですよね。
大森氏:
対応機種がNintendo Switchになったことで初めて可能になった表現だったりします。巨大なものを表現するためには,同時に小さなものを配置しないといけません。ニンテンドー3DSの場合,小さなものを表現するための画素数が足りず,荒い画像になってしまうんです。
大型テレビにつないで迫力のある映像を楽しめるのもポイントですね。マックスレイドバトルで戦う時に,大きなテレビのあるお宅に集まってもらうような遊び方もできます。どんな風に遊んでもらえるかという光景がイメージできるのも,Nintendo Switchの魅力だと思っています。
4Gamer:
据え置き機と携帯機,両方の側面を持つことがプラスに働いているわけですね。
大森氏:
みんなでプレイすることで,楽しい思い出が生まれやすいので,そうした環境を整えるのも大事だと思っています。
4Gamer:
Nintendo Switchのスペックでできるようになったということだと,ワイルドエリアも同様の新要素なのでは?
大森氏:
そうですね。
ワイルドエリアは,冒険に自由度を取り入れたいと思って導入した要素です。どんどん奥まで歩いて行くことができ,強いポケモンと出会ってやられてしまうこともあります。
4Gamer:
それは冒険っぽいですね。適正なレベルを越えた危険な場所に踏み込めるし,そこに出てくるポケモンに負かされても,その経験自体が思い出になると。
大森氏:
RPGの良さは,こうした文字通りの“冒険”にもあると思うんです。すべての部分を親切に作ることもできますが,それではただ物語を追いかけていくだけになってしまいますから。
4Gamer:
とはいえ,フィールドのすべてをワイルドエリアの形式にするわけではないんですね?
大森氏:
あまりにも急激に変化させてしまうと,ついてこられない方がいるかもしれないので,従来型のマップの間にワイルドエリアを挟み込む形としました。「ポケモン ソード・シールド」は,据置ゲーム機として初めての「ポケットモンスター」シリーズ完全新作でもありますから。
そして,冒険のフィールドであると同時に,みんなで遊ぶために集合する場所という位置づけをしました。みんなでマックスレイドバトルをしたり,ほかの人を「ポケモンキャンプ」に招待したりといった遊びができるよう,通信要素を取り入れたんです。
4Gamer:
ほかのプレイヤーと触れあう場所でもあるわけですね。
増田氏:
バックグラウンドではずっと通信をしているので,フィールド上には同時に遊んでいるほかのプレイヤーも出てきます。アクションゲームのように厳密な同期をしているわけではないんですが,追いかけっこくらいはできます。こうした要素は発売直後が一番盛り上がりますから,みんなで集まってプレイしてもらいたいですね(笑)。
大森氏:
皆さんがどういう遊び方をしてくれるのか,今からとても楽しみです。ワイルドエリアに毎日行ってほしいと思っています。こうしたモチベーションを起こすには「自分の知っている場所が変化する」ことが必要なので,天気の変化も取り入れています。雨の日にはみずタイプのポケモンが,砂嵐が吹くとじめんタイプが多いといった影響があるんです。
4Gamer:
ワイルドエリアを作る際,ほかのオープンワールドゲームを参考にされることはありましたか?
大森氏:
もちろん,僕たちも色々なオープンワールドゲームをプレイして参考にしています。その上で,「ポケットモンスター」シリーズで広いフィールドを作るにはどうすればいいかを考え,“通信機能を使い,みんなと出会えるぐらいの,「ポケットモンスター」らしい広さにする”という答えを得ました。
4Gamer:
ワイルドエリアでは「ポケモンキャンプ」を楽しめますが,これも冒険感の演出で取り入れたものでしょうか。
大森氏:
ポケモンキャンプは,Nintendo Switchだと画面上に複数のポケモンを出せるので,ポケモン同士の関わり合いを見せる遊びを作ろうという発想で生まれたものです。実際にキャンプ場で犬を遊ばせるように,ポケモンの世界でポケモンたちが遊んでくれるような形にしたかったんですよ。
4Gamer:
確かに,これまでの「ポケパルレ」や「ポケリフレ」は,トレーナーとポケモンという関係での触れ合いでしたから,ポケモン同士は新しいですね。
大森氏:
ほかの人のポケモンキャンプに参加できるのもポイントです。さっきまで通信対戦していたポケモンたちが一緒に遊んでいたりするようなことも起こりますし,そうなるとポケモン同士がどんな話をしているのか,想像が広がりますよね。
4Gamer:
しかし,ポケモン同士の触れ合いとなると,開発の作業量も大変なものになるのでは?
大森氏:
はい,凄まじい作業量でした。ポケモンごとに動きは違いますし,ポケモンキャンプでしか見せないようなモーションも存在しています。また,キャンプした場所や状況に応じて反応も変わりますから,これらの組み合わせを管理するだけでも大変でしたね。
4Gamer:
ポケモンキャンプでは「カレーライス」を作れるそうですが,これをピックアップしたのは,やはりUKだからですか?
大森氏:
それもあります。カレーライスはキャンプの定番ですし,いろいろなものを入れたり,トッピングしたりするのも楽しい遊びになりそうですし,現実に存在する食べ物が出てくれば,ゲームの世界にもっと親しみを持ってもらえるかなという狙いもあって決まりました。ただ,ターナー(※アートディレクターのジェイムス・ターナー氏)によると,あちらではキャンプでカレーを食べないそうなんですよね……(笑)。
4Gamer:
そこはガラル地方独自の文化なんですね(笑)。
「最強」「究極」「対極」……テーマを決め,老若男女あらゆる人の気持ちになって進める開発作業
4Gamer:
シリーズのゲーム開発についてもうかがえればと思います。シリーズの舞台はいろいろな地域がモチーフになっていることで知られていますが,どういう基準で選ばれるのでしょうか?
大森氏:
モチーフとする地域は,新作のテーマから決めていきます。
例えば「ポケモン X・Y」のテーマは「美しい」でした。これは,「美しいものをニンテンドー3DSで描きたい」という想いからです。候補の地域はいくつか挙がりましたが,ゲームをフランス語に翻訳してくれるスタッフたちが“言葉の美しさ”にものすごくこだわっていたことが印象に残っていたので,カロス地方のモチーフをフランスに決めています。
4Gamer:
まずは作品のテーマありきということなんですね。テーマを決めて開発を進めるようになったのはいつからのことでしょう?
増田氏:
「ポケモン ダイヤモンド・パール」の頃です。「ポケットモンスター」の新作を作るに当たっては,ゲームフリーク社内のスタッフはもちろん,ゲームの翻訳など,社外でもいろいろな方が関わります。なので,テーマを決めておかないと,しっかりしたものにならないんです。例えばカレーを作るにしても「激辛のインド風カレーを作るんだ」とテーマを決めておけば,分かりやすいじゃないですか(笑)。
大森氏:
テーマを決めておくと,スタッフのイメージや目標も統一できるんです。「ポケットモンスター ソード・シールド」の開発でも「最強のグラフィックスを作ってください!」といった感じで追及していきました。
4Gamer:
ほかのタイトルのテーマはどういったものだったのでしょう。
増田氏:
「ポケモン ダイヤモンド・パール」を制作したときには,「この世の中で人々が幸せになるには」を考えていって,その中から「究極」というテーマが出てきました。時間と空間の概念を超えた,最後に行きつくところ。別次元のもの。そうしたものを目指したくて,神話性を絡めたものにしたんです。
4Gamer:
だから伝説のポケモンとして時間を操る「ディアルガ」と空間を司る「パルキア」が登場したんですね。
増田氏:
「ポケモン ブラック・ホワイト」は「対極」がテーマで,タイトルの黒と白というイメージカラーもそこから決まっています。
4Gamer:
テーマやモチーフとなった場所から,新しいポケモンのデザインを決めていくことは多いんですか?
大森氏:
最近の作品では,モチーフとなった地域の生き物や草花について徹底的に調べ,そこからヒントをもらっていますね。
例えば,「ネギガナイト」が誕生したのも,UKのネギ(リーキ)がすごく太いことを知ったのがきっかけです。その太さに驚いて,ネギを題材にするなら「カモネギ」だろうと(笑)。
4Gamer:
そんな理由だったんですか!? おなじみのポケモンに変化をつけようとか,何か深い意図があるのかと思っていました(笑)。
地域性を反映したポケモンが登場すると,その地域からの反応などはあるんでしょうか。
大森氏:
基本的に好意的な反応をいただけます。今回は「マタドガス(ガラルのすがた)」が好評でしたね。これもUKでの取材の成果で,実際に蒸気機関を見て「最強のポケットモンスター」に通じる力強さを感じて生まれました。
4Gamer:
ガラル地方ではポケモンジムにスタジアムがあることが明かされていますが,これもUKモチーフからの発想でしょうか?
大森氏:
そうです。サッカーのスタジアムがモデルです。
4Gamer:
現チャンピオンのダンデがまとっているマントのデザインも面白いですよね。背中にたくさんの企業ロゴが入っていて,王者感とスポーティさが同居しています。
大森氏:
エンターテイメントとしてのスポーツはどのように楽しまれているかを研究したうえで,ポケモンバトルのチャンピオンがいるなら,彼に出資する企業もあるんじゃないだろうかと考えたんです。こうした企業の中には「ポケジョブ」でポケモンのお手伝いを募集しているところもあります。ガラルという地方が生きている感じを表現したかったんですよ。
4Gamer:
これは個人的な感想なんですが,これまでのジムリーダーは,トレーナーの技量を試験・認定してジムバッジを発行する,公務職のような立場をイメージしていました。一方,ガラル地方だとスタジアムで活躍する人気スポーツ選手的な雰囲気で,明確に立場や職種が違うように思えます。「ポケットモンスター」全体の世界観や社会の構造について,公開されていない裏設定のようなものはあるんでしょうか?
大森氏:
そこまでかっちり決めているわけではありませんが,最近の作品でそうした部分も少しずつ描くようになってきたのは事実です。それに合わせて,考えるべき設定も増えています。例えばビルが建っていたとしたら,そこにはどんな会社が入っているのかなどをちゃんと考えておかないと,嘘っぽく見えてしまいますから。
4Gamer:
Nintendo Switchでグラフィックスが進化しているぶん,なおさらそのあたりの表現は必要になりますよね。
増田氏:
どこまで細かく設定するかも難しいところですけどね。やり過ぎるとファンタジーではなくなってしまいますから。ゲームを遊んでるのに,明日の会社のことを意識したくないですし(笑)。自分たちが作っているのは,エンターテイメントですから。
4Gamer:
「ポケットモンスター」シリーズは,簡潔で印象深いテキストと,好感を持てるキャラクターたちもポイントだと思います。「ポケモン ソード・シールド」のメディア先行体験会でダンデと出会うシーンを見ましたが,観察眼に優れていて,初対面の主人公にも分け隔てなく接してくれる好青年ぶりが,短い台詞で表現されています。最初のひとことふたことでキャラが立っていて,人となりが分かると言いますか。
大森氏:
そう言ってもらえると,とても嬉しいですね。「ポケモン ソード・シールド」の物語におけるテーマは「憧れ」で,ダンデはその象徴です。彼を見た子供たちが「自分もこういう大人になりたい」と思ってくれるような人物を目指しました。
4Gamer:
キャラクターを作るうえで,どういったことを意識しているのでしょうか。
大森氏:
この人は何をやりたいのかという“欲求”と,この人は現在どういった状況に置かれているかの“現状”をしっかりと決めることですね。この2つが決まっていれば,キャラクターの人間味が出ます。
増田氏:
それと,「ポケットモンスター」シリーズはポケモンを捕まえたり,バトルに時間をかけて楽しむゲームですから,会話のシーンがあまり長くならないようにしてます。具体的には「台詞をいかにしてウインドウ3つ分に収めるか」を心がけているんです。
4Gamer:
かなり短いですね。
増田氏:
あまり長い台詞は読んでもらえませんから,シンプルに伝えられるようどんどん短くするんです。広告宣伝におけるキャッチコピーを作るのに近いところかも知れませんね。
テキストの担当は,キャッチコピーを連続で作るような形で台詞を作っています。一発目の台詞で,そのキャラクターが決まっていきますから。
ダンデと主人公が初めて対面するシーンは,実は何度もテキストを書き直しています。ダンデは主人公のことをそれほど深く知っているわけではありません。その距離感を表現したうえで,大人としての礼儀を持って接してくれる姿を描きたかったんです。最初はもっと長くて説明っぽい台詞だったんですが,「もう1行減らせないか?」を繰り返していきました。
増田氏:
シリーズを通して,プレイを始めて最初の10〜20分に当たる部分は,イベントから何から相当に作り直しをします。「できた!」と思っても,実際にプレイしてみると感情が乗らなかったりすることがありますから。
大森氏:
とくに「ポケットモンスター」シリーズを知らない人からどう見えるのかは強く意識しますね。毎回「ポケモンというのは不思議な生き物なんですよ」「ボールの中から出てくるんですよ」という基本の部分を説明するのは,それが理由です。
4Gamer:
知らない人の気持ちはどうやって調べているのでしょう。テストプレイヤーを集めたりするんですか?
増田氏:
作っている自分がなりきるしかないですね。ほかにも「シリーズのことをまったく知らない小学生」から,「シリーズをずっと遊んでいる大人」まで,いろいろな人の気持ちになります。僕はそういうの得意です(笑)。
例えば,“草むらに入る”という行為は「ポケットモンスター」のゲーム的には当たり前です。でも,大人の気持ちになると「草むらになんか入りたくない」と思えてくるんです。
4Gamer:
確かに,ゲーム部分のお約束をまったく知らない状態で,草むらに入りたいかというと,入りたくないですよね。服や靴は汚れますし,虫もいますし。
増田氏:
そこから「プレイヤーが抵抗なく入れる草むらを表現するにはどうすればいいのか」を考えていきます。
シリーズを初めて遊ぶ子供になりきって,部屋の中にある階段やドアといった,細かな部分をチェックすることもありますね。子供って,そうしたゲームの本筋と関係ないところに行きたがるんですよ。
大森氏:
もちろん,なりきるばかりではなく,普段はゲームを触らない人に遊んでもらい,その様子を後ろで観察もします。例えば,普段ゲームをまったく遊ばないゲームフリークの総務の人にテストプレイをお願いしたことがあるんですが,そうすると,ゲームに慣れた人では考えられないような遊び方をするんです。
4Gamer:
どんな遊び方でしょう?
大森氏:
ポケモンセンターからポケモンを引き出す時に,預けたときと同じポケモンセンターへ戻るんです。ゲーム的には,預けた場所に関係なく,どのポケモンセンターでも引き出せるんですが。
4Gamer:
その人は「私はここのポケモンセンターに預けたんだから,迎えに行ってあげないと」と思ったわけですよね。幼稚園や保育所に子供を預けるような。
そう言われると,子供の頃「ポケモン 赤・緑」時代に初めて「ポケットモンスター」シリーズ作品をプレイしたとき,パソコンの仕組みを知るまでは,同じようなことを思った記憶があります。「この街で預けると後で取りに来るの大変だな」とか。
増田氏:
いまやパソコンやスマートフォンもクラウド化していて,家のパソコンで作った文書を出先のスマートフォンで呼び出せたりするじゃないですか。僕らのような業界だと当たり前のことですけど,誰もがこうした機能を使っているわけではないですからね。日本のように通信インフラが充実した国ばかりでもありません。
4Gamer:
性別や年齢,地域を問わないタイトルであるだけに,細かな部分の調整はいくらでもありそうですね……。
とはいえ,ゲーム的には落としどころを見出さないといけないですよね。最終的な仕様を決めるときに,どういったことを念頭に置くのでしょう。
大森氏:
いつも“子供の頃の体験をベースとしたもの作り”を重要視しています。これはどの国でも共通ですから。そのうえで,難しい設定などを入れることなく“遊び”にフォーカスします。こうすると,子供が遊べるものになりますし,大人は子供に戻って懐かしい気持ちで遊べるんです。
増田氏:
大人になっても,缶蹴りやドッジボールをやったら楽しいと思うんです。それと同じですね。
4Gamer:
大人が童心に返れるのが「ポケットモンスター」シリーズというわけですね。
ポケモンの名前を9言語に翻訳するクリエイティブな作業
4Gamer:
近年の「ポケットモンスター」シリーズは対応言語が非常に多くなりました。「ポケモン ソード・シールド」は9つの言語で同時発売されますが,翻訳はかなり大変なのでは?
増田氏:
大変ですね。ポケモンの名前1つ取っても,元々のニュアンスを再現して翻訳するのはもちろん,“あえて翻訳しない”ということもありますから。翻訳した名前が倫理的に引っかからないかのチェックも文化圏ごとにしていかなければなりません。
4Gamer:
すべてのポケモンの名前を世界で統一しないのはなぜでしょう?
増田氏:
ポケモンたちの日本語名が持つ意味とニュアンスを,それぞれの言語で感じ取ってほしいからです。例えばフシギダネは英語で「Bulbasaur」と言います。球根のbulbに,恐竜のdinosaurを組み合わせた,“球根の恐竜”的な意味ですね。これはフシギダネという日本語の音をそのままFushigidaneとしたのでは得られないフィーリングです。手間は掛かりますけど,1匹1匹にこういったクリエイティビティ(創造性)を発揮して名前を作っていった方が,フシギダネというポケモンの存在を分かってもらえると思うんです。
4Gamer:
単に音を並べるだけでなく,基になった言葉の意味を取り入れた名前にすると。
増田氏:
翻訳スタッフさんは日本語を話せる方ばかりで,日本語の意味を踏まえた非常にクリエイティブな作業をしてくれてます。僕たちは皆さんをクリエイターだと思っていて,新しい言葉を作り出してほしいと考えてるんです。
翻訳スタッフさんが集まったときなんかは,さまざまな国の人たちが日本語で会話するのでなかなか壮観ですよ(笑)。
4Gamer:
日本語が話せても,文化的な部分はなかなか伝わらないということもあるのでは?
「ポケモン 赤・緑」の頃はとくにありました。翻訳スタッフさんに日本に来てもらっていたんですが,「プリン」の名前を翻訳してもらう時,ドイツのスタッフさんに「お菓子のプリンみたいに身体がぽよぽよしてるから“プリン”なんだよ」と説明したんです。でも,ドイツには日本のようなプリンがないんですよ!
4Gamer:
それはカルチャーショックです(笑)。
増田氏:
あわててコンビニに,プリンを買いに行った覚えがあります(笑)。
現在の世相に合わせた育成の変化と,ポケモンへの思い入れ
4Gamer:
これは個人的な印象ですが,作品が新しくなるほどポケモンの育成が楽になっていますよね。以前は対戦を意識して,膨大な数のタマゴを温めるために,自転車に乗り続けたものですが。
大森氏:
時代性を反映して育成しやすくしています。昔はゲームといってもそうそうたくさん買うわけにはいかず,1本をずっと集中して遊んでいました。しかし,現在はスマートフォンの基本無料ゲームなど,いろいろな娯楽があります。そうした中で「ポケットモンスター」を遊んでもらうのであれば,使った時間がすぐに価値あるものにならなければいけないんじゃないかと思っています。
4Gamer:
「ポケモン ソード・シールド」でも,さらに緩和されているのでしょうか。
大森氏:
今作では,最初に選ぶ3匹も通信対戦で活躍できるくらいには育成できます。ポケモンを強くできる「きんのおうかん」「ぎんのおうかん」も前作同様に存在していますし,新たにポケモン自身のせいかくを変えることなく能力の成長しやすさを変える「ミント」というどうぐも追加します。しばらくシリーズに触れていない人だと,驚くぐらい便利に感じるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
楽しみです。増田さんは発売日にソフトを買いに行くんですか?
増田氏:
行きますよ。開発者であっても個人的にソフトを買います。
4Gamer:
さすがに増田さんが買っていたら,ほかのお客さんに気付かれるのでは?(笑)
増田氏:
ポケモンセンターだと案外大丈夫なんです。皆さんグッズ類に集中していますから。逆に,普通の量販店に買いに行くと,気づかれることが多いですね。
4Gamer:
ポケモンセンターでは気づかれないというのも面白いですね。
増田氏:
ソフトがインターネットに対応していなかった時代は,「ふしぎなおくりもの」を皆さんにプレゼントするために,ゲームフリークのメンバーも八重洲口にあったポケモンセンターに行ったりもしていました。
4Gamer:
あれはポケモンセンターのスタッフだけではなく,開発スタッフも直接配布していたんですか。今はなかなかそういうことも難しいかもしれませんが,直接プレイヤーに送っていたというのも,ほのぼのする話ですね。
増田氏:
世界中のプレイヤーと出会うと,「『ポケットモンスター』シリーズをプレイして人生が豊かになった」「ポケモンに助けられた」「音楽に感動した」「キャラクターが大好きなんだ」というお話をいただきます。開発者としては,皆さんに豊かな時間をもたらせるもの作りをしていきたいと思いますね。ゲームはそうした変化を与えられるものですし,「ポケットモンスター」シリーズの輪を広げることで,より多くの人に幸せになってほしいと願っています。
4Gamer:
「ポケモン ソード・シールド」で,さらに輪が広がるといいですね。最後に,これから本作をプレイする皆さんにメッセージをお願いします。
大森氏:
今回はワイルドエリアやマックスレイドバトルなど,みんなでいろいろな楽しみ方ができます。ぜひ友達と一緒に遊んでください。
増田氏:
ダイマックスでは自分のポケモンを巨大化できます。こんな不思議なことはないと思いますし,わざも変わってくるので,ぜひ楽しんでください。マックスレイドバトルは4人で協力できますから,初めて「ポケットモンスター」シリーズを遊ぶ人も一緒に楽しんでもらえればと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
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ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
Nintendo Switchのロゴ・Nintendo Switchは任天堂の商標です。
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