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Intel,デスクトップPC向け第10世代Coreプロセッサを発表。Core i9は10C20T対応で最大クロック5.3GHzを実現
Comet Lakeとは何かについては,ノートPC向けCPUで説明しているが,アーキテクチャ面では,2017年登場の「Kaby Lake」こと第7世代Coreプロセッサ(関連記事)の改良版と言って差し支えない。14nm++と呼ばれる改良されたプロセス技術を採用することで,より高クロック動作を可能にしたCPUであるとIntelは説明している。
そんなComet Lake-Sでは,最上位モデルのCore i9でIntelのデスクトップPC向けCPUとしては初めて,10コア20スレッドに対応する製品をラインナップしたことが大きなトピックとなる。
製品ラインナップを見ていきたいが,今回も最上位のCore i9シリーズから最下位のCeleronブランドまで,計32製品という大量のCPUが登場した。まずは上位モデルから順に見ていくことにしたい。
Core i9,i7
最上位のCore i9ファミリが4製品,Core i7も4製品が発表となった。先述したとおり,10コア20スレッド対応CPUはCore i9で,8コア16スレッド対応CPUはCore i7と非常に分かりやすいモデル名になっている。
Core i9は,自動クロックアップ機能としてCoreプロセッサの標準的機能である「Turbo
TBM 3.0は,最もクロックアップ耐性の高い1〜2基のCPUコアに限定して,自動的にTB 2.0の最大クロックよりも高い動作クロックまで引き上げる機能だ。実行中のワークロードのうち,最もCPUパワーを必要とするプロセスやスレッドの性能を向上させることができるという。TBM 3.0でクロックを上昇させるCPUコアの選択は,チップセットドライバに付属する常駐ソフトウェアを使って行われる。
一方のTVBは,第9世代Coreプロセッサの「Core i9-9900KS」なども搭載していた機能で,熱や消費電力に余裕があるときに限り,ブースト最大クロックを1段階引き上げる機能だ。TVBを実装しているCPUは,CPUの冷却性能を引き上げることで処理性能が向上するという。
以上のように,Core i9は3種類の自動クロックアップ機能を備えており,それぞれで最大動作クロックが異なる。そのため,スペック表には3つの機能それぞれの最大クロックを記した。最上位モデルの「Core i9-10900K」の場合,TVB時で最大5.3GHzに達する。
ノートPC向け第10世代Coreプロセッサの「Comet Lake-H」でも,最大5.3GHzを達成しているのであまりインパクトはないが,デスクトップPC向けCPUで5.3GHzに達したのは,Core i9-10900Kが初だ。これをもって,IntelはCore i9-10900Kを「World's Fastest Gaming Processor」(世界最速のゲーマー向けCPU)であると主張している。
そのほかにもCore i9には,クロック倍率固定の「Core i9-10900」や,統合型グラフィックス機能を無効化した「Core i9-10900KF」「Core i9-10900F」がラインナップされている(表1)。統合型グラフィックス機能のない「F」型番が当初からラインナップに揃っているのも第10世代の特徴だ。
Core i9のアンロック版は,TDP(Thermal Design Power,
一方,8コア16スレッドのCore i7は,TVBを実装していないのがCore i9との大きな違いの1つだ。ラインナップは,アンロック版の「Core i7-10700K」と,クロック倍率固定の「Core i7-10700」,それぞれから統合型グラフィックス機能を無効にしたF型番の計4製品となる。
アンロック版のTDPが125W,クロック倍率固定版は65Wである点は,Core i9と同じだ
Core i5,i3
第10世代Coreプロセッサでは,ミドルクラス市場向けのCore i5がすべて6コア12スレッド対応,エントリー市場向けのCore i3は同じくすべてが4コア8スレッド対応になっている。Core i3がすべて4コア8スレッド対応になったのは,今回が初のことだ。
また,Core i5/i3には自動クロックアップ機能のTBM 3.0に対応しないことと,メモリコントローラがDDR4-2666対応までなのが,Core i9/i7との差別化ポイントである。ちなみにIntelによると,メモリコントローラがDDR4-2666対応までなののは,Core i9/i7とは動作検証が異なるためのとのことだ。
そんなCore i5は,アンロック版の「Core i5-10600K」,統合型グラフィックス機能を無効化した「Core i5-10600KF」,そしてクロック倍率固定版の「Core i5-10600」など計6製品を用意する(表3)。F型番が統合型グラフィックス機能無効版であるのは,Core i9/i7と同様だ。
4コア8スレッド対応のCore i3は,3製品のみとシンプルなラインナップである(表4)。
Pentium,Celeron
今回はCoreプロセッサだけでなく,Comet Lake-SベースのPentiumおよびCeleronも発表となった。Pentium Goldブランドが2コア4スレッド対応で,Celeronブランドが2コア2スレッドと,こちらも分かりやすい。なおCeleronは,Comet Lake-Sのラインナップ中,唯一,Hyper Threadingに対応しない製品だ。
なお,表5に示すとおり,Pentium,CeleronではTurbo Boost動作にも対応しない。
省電力版もCore i9からCeleronまで用意
第10世代CoreプロセッサとPentiumおよびCeleronブランドの省電力版CPU計10製品も発表になった。モデルナンバー末尾が「T」となる省電力版は,TDPがすべて35Wで,扱いやすそうだ。中でも10コア20スレッド対応の「Core i9-10900T」や,8コア16スレッド対応の「Core i7-10700T」は,最大クロックも5GHz弱とかなり高く,省電力ながら性能が高いPCを構築できそうで人気を集めるのではなかろうか。
第10世代CoreプロセッサのソケットはLGA1200
第9世代まで使われてきたLGA1151とはピン数が異なるため,当然ながら互換性はない。そのため,第10世代CoreプロセッサにPCをアップグレードするなら,マザーボードごとの交換が必要になる。
第10世代Coreプロセッサの対応チップセットは,「Intel 400」シリーズチップセット」とされている。現在,最上位の「Intel Z490」のほかに,「Intel H470」「Intel B460」「Intel H410」の製品名が明らかとなっている。
第10世代CoreプロセッサがプラットフォームとしてサポートするPCI Express(以下,PCIe) 3.0は,最大40レーンとなっているが,これがすべてCPUから出ているわけではなく,CPUから出るPCIe 3.0は,相変わらず16レーンのままだ。それに加えて,チップセットとの接続に使用するPCIe 3.0 x4レーン相当の「DMI 3.0」を有するという構成なので,CPUのI/Oインタフェース周りは,第9世代Coreプロセッサまでと変わりがない。
LGA1200で何が変わるかというと,その1つは,最大125WのTDPに対応する点である。おそらくLGA1151から増えたピンの多くが電源とそれに関わるピンではないかと推測できる。
また,Z490チップセットでは,新たに2.5Gbps Ethernet(以下,2.5GBASE-T)の物理層となる有線LANコントローラ「Intel i225-V」(開発コードネーム Foxville)をサポートしているのもポイントだ。Intel i225-Vは,2.5GBASE-Tをサポートするコントローラとしては非常に安価とされているので,同規格の普及を加速させるかもしれない。
そのほかに,Z490チップセットではWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応する無線LANモジュール「Intel AX201 Module」にも対応している。最大2.4Gbpsの接続が可能な高速無線LANモジュールなので,デスクトップPCでも無線LAN接続を利用する例が増えていくかもしれない。
卓越したシングルコア性能でゲームの性能を引き上げる
以上が第10世代Coreプロセッサの概要になるが,Intelが今回とくにアピールしているのが,動作クロックの高さと,それによるシングルCPUコア性能の高さだ。
Intelによると,ゲームのフレームレートはほとんどの場合,CPUの動作クロックに依存しており,さらに「60%のゲームは,シングルコアに最適化している」のだという。ただし,これは,「ゲームはシングルコアのCPUで十分という」意味ではない。現在のゲームは,グラフィックスレンダリングやゲームロジックだけでも複数のスレッド(=CPUコア)を使っている。なので,シングルコアのCPUではさすがに十分な性能が得られないものだ。
ゲームにおける処理で中核の処理を担う「メインスレッド」を処理するCPU性能が上がらないと,ゲーム全体の動作は快適にならない。そのようなゲームが,市場の60%を占めているというのがIntelの言い分で,それ自体は正しい。
第10世代Coreプロセッサは,動作クロックが極めて高いほか,最上位のCore i9では,CPUコア1〜2基の動作クロックを引き上げるTBM 3.0をサポートしている。それによって,ゲームの性能を大きく引き上げることができると主張しているわけだ。
また,Intelはゲームデベロッパに協力して第10世代Coreプロセッサへのゲームの最適化を勧めているそうだ。たとえば,Creative Assemblyが開発したストラテジーゲーム「Total War: THREE KINGDOMS」はその1例で,本作を第10世代Coreプロセッサでプレイすると,ほかのプラットフォームに比べて最大で6倍ものキャラクターを描画できるそうである。
また,Unreal Engineベースのアクションシューティング「Remnant: From the Ashes」では,Intelの協力によって視界外の3Dモデルを描画対象から取り除く「オクルージョンカリング」にCPUを使用しており,第10世代Coreプロセッサでプレイするとフレームレートが大きく向上したうえで,グラフィックス品質も向上するという。
このように,Intelは第10世代Coreプロセッサにおいて,ゲーム性能を大々的にアピールしているわけだが,もちろんビジネスアプリケーションやコンテンツ制作の分野にも高い性能をもたらすとも述べている。とはいえ,とくにコンテンツ制作ではマルチコア性能が重要となることが多く,その点ではライバルのAMDが一歩先んじているのが現状だ。それもあり,シングルコア性能の高さが重要なゲーム性能の高さを推していきたいというのが,Intelの思惑なのだろう。
オーバークロック向けにも新機能を搭載
Intelが第10世代Coreプロセッサでアピールしているもうひとつのポイントが,オーバークロック機能だ。
Intelは以前から,「Intel Extreme Tuning Utility」というオーバークロックツールを提供してきたが,第10世代Coreプロセサ向けにリニューアルを行い,3つの新機能が利用できるようになる。
- CPUコアごとにHyper Threadingをオン・オフできる機能
- 単体GPU向けPCIeとDMIのオーバークロック
- コア電圧/動作クロックのカーブ設定
CPUコアごとにHyper Threadingをオン・オフできるというのは,かなり目新しい機能だ。Intelによると,この機能をうまく使うことで最大クロックをより高い状態で維持できるようになるという。また,CPUコアの動作クロックとコア電圧を,グラフ形式でのカスタマイズで制御できるようになるそうだ。これもオーバークロッカーにとって嬉しい機能だろう。
一方,PCIeとDMIのオーバークロックに関しては,マザーボード側でできるものが多かったので,さほど目新しさが感じられないところだろうか。
なお,第10世代Coreプロセッサのソフトウェア面ではほかにも,Intel純正の性能最適化ツール「Intel Performance Maximizer」も刷新されるそうである。
CPUパッケージ側にも改良があり,オーバークロックで重要なヒートスプレッダとシリコンダイの隙間を埋める材料(Thermal Interface Material,TIM)にはハンダ(Solder)を用いているほか,シリコンダイを薄くすることで,極めて高い放熱効率を実現しているそうだ。極限までCPUを冷やしてオーバークロックしたいマニアには重要なポイントかもしれない。
第10世代Coreプロセッサに関してIntelがアピールしている点をまとめてみた。執筆時点ではまだ詳細な発売日や,国内価格が明らかにされていないが,近々にそのあたりの情報も明らかになってくるだろう。ゲーム性能をアピールしたCPUだけに,その実力に期待したい。
Intelの第10世代Coreプロセッサ製品情報ページ
- 関連タイトル:
第10世代Core(Ice Lake,Comet Lake)
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