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Intel,8C16T対応で最大5.3GHz駆動の「Comet Lake-H」ことノートPC向け第10世代Coreプロセッサを発表
Comet Lakeベースの製品としては,2019年8月に薄型ノート向けの「Comet Lake-U」と,タブレット&2-in-1ノート向けの「Comet Lake-Y」が発表済みだ(関連記事)。今回発表となったComet Lake-Hの登場により,Comet LakeベースのノートPC向けCPU製品が出揃ったことになる。
製品ラインアップは表1のとおり。最上位モデルの「Core i9-10980HK」は,8コア16スレッド対応で,Turbo Boost時の最大動作クロックが5.3GHzというデスクトップCPU並の最大クロックを実現しているところが見どころと言えよう。Intelは,Comet Lake-Hで「ノートPC向けとして,初めて5GHzの壁を突破した」とアピールしている。
Comet Lakeに関しては,Comet Lake-UとComet Lake-Yの記事で概要を説明済みだが,改めて触れておくと,基本的には「Kaby Lake」こと第7世代Coreプロセッサ(関連記事)の改良版である。Kaby Lakeをベースに各部を最適化しつつ,Intelが「14nm++」と呼ぶ製造プロセスを採用することで,高クロック動作と低消費電力動作を可能にしたCPUだ。
次のスライドは,Comet Lake-Hの主な特徴を示したものである。
Comet Lake-Hにおける注目すべき点に,設定クロック以上にクロック倍率を引き上げる自動クロックアップ機能「Turbo Boost Max Technology 3.0」への対応がある。また,スライドには記されていないが,上位モデル4製品で「Thermal Velocity Boost Technology」(以下,Thermal Velocity Boost)にも対応している。
Thermal Velocity Boostは,デスクトップ向けCPUである「Core i9-9900KS」などでも使われている技術で,CPUのパッケージ温度が60℃を下回っており,かつ電力的な余裕があるときにはブースト最大クロックを超えるクロックで動作するというものだ。
Intelによると,ノートPCの冷却性能次第ではあるが,Thermal Velocity Boostを有効にすることで,最大10%の性能向上が得られるとのこと。また,Intelは,PCのメーカーがThermal Velocity Boostを活用可能できるように筐体の排熱設計に協力していると述べていた。
これに加えてComet Lake-Hでは,新たに「Intel Speed Optimizer」というオーバークロックツールを新たに用意するそうだ。詳細な説明はなかったのだが,Intel Speed Optimizerは,ワンリックで手軽にCPUのオーバークロック設定ができるツールとのことだ。
そのほかに,メモリコントローラはDDR4-2933に対応するほか,無線LANコントローラとして,最大2.4Gbpsの転送速度を備えた「Wi-Fi6 AX201 Module」に対応するといったあたりが新しい点といったところか。
なお,統合グラフィックスの詳しい情報は,明らかになっていないのだが,Intelは,Comet Lake-Hを最新の単体GPU向けに最適化していると説明している。それもあり,Comet Lake-Hを搭載するノートPCでは,AMDやNVIDIA製GPUを搭載するものが主流になると考えているようだ。
高クロック動作で高性能なゲーマー向けノートPCを実現するComet Lake-H
4Gamerの読者はご存知と思うが,型番に「H」が付くCPUは,ゲーマー向けノートPCをはじめとする高性能ノートPCで数多く採用されているものだ。そのためIntelは,Comet Lake-Hによるゲーマー向けPCの高性能化を強く打ち出している。
ゲーマーにとっては常識ではあるが,Intelによるとゲーマー向けPCに求められる高いフレームレートやレイテンシの低さといった性能は,CPUの動作クロックと相関があるという。Comet Lake-Hの上位モデルでは5GHzを超える動作クロックを実現しているので,それによって極めて高いゲーム性能を実現できるというのがIntelの主張だ。
以下に示す2枚のスライドは,主要ゲームタイトルにおけるComet Lake-Hの性能を,3年前に登場したKaby Lake世代の同クラスCPUと比較したものである。Core i9-10980HKは「Core i7-7820HK」(4コア8スレッド,定格クロック2.9GHz,最大クロック3.9GHz)と比べて最大54%,「Core i7-10750H」は,「Core i7-7700HQ」(4コア8スレッド,定格クロック2.8GHz,最大クロック3.8GHz)に対して最大44%もフレームレートが高いそうだ。
Intelによると,Comet Lake-Hは,厚さ20mm以下の薄型ゲーマー向けノートPC計30機種以上を含む100機種以上の搭載ノートPCで,すでに採用が決まっているという。さらに2-in-1タイプのノートPCや,15インチクラスの本体に17インチサイズの狭額縁ディスプレイを搭載する製品などもあるとのことで,Comet Lake-Hによって,新たなゲーマー向けノートPCのフォームファクタが実現すると,Intelはアピールしていた。
以上のようにComet Lake-Hは,ゲーマー向けノートPCに最適というのがIntelの主張であるわけだが,同時に,ゲーマーと同じように高性能PCを求めるソフトウェア開発者やコンテンツ制作者(以下,クリエイター)にも適するともアピールしている。Intelによると,ゲーマー向けノートPCの約半数をクリエイターが購入しているそうだ。全世界にクリエイターは約6000万人いるとのことで,クリエイター向けノートPCには非常に大きなビジネスチャンスがあるという。
たとえばComet Lake-Hは,3年前のCPUと比べて,4Kビデオ編集において2倍を超える性能を実現しており,クリエイターにとっても非常に魅力的なCPUであるIntelは強調していた。
これまでの例から考えて,Comet Lake-Hを搭載したゲーマー向けノートPCが,発表から間を置かずに発売となることは間違いないだろう。ゲーマー向けノートPCの購入を検討していたゲーマーは,これからPCメーカー各社が発表するであろう新製品を楽しみにしておこう。
Intelの公式Webサイト
- 関連タイトル:
第10世代Core(Ice Lake,Comet Lake)
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