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「SIREN」の羽生蛇蕎麦をプロの技術で美味しくしたい。俺のコラボカフェ:Menu 055
4Gamerをご覧の皆様こんにちは。クッキングエンターテイナーの大西哲也です。様々なゲームに出てくる料理をプロの料理人が本気で作ったり,プロ目線で勝手に検証して発表したりする「俺のコラボカフェ」。今回もよろしくお願いします。
今年の夏は全国的に猛暑ですね。まだまだ暑い日々が続くなか,夏にぴったりなホラーゲームとして名高い「SIREN」と,それに出てくる不気味な料理「羽生蛇蕎麦」を紹介します。実態を知るとなんというか,別の恐怖が迫ってくる料理なのですが,探っていきたいと思います。
「SIREN」は,ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が開発し,PlayStation 2向けに発売されたホラーゲームです。キャッチコピーは「どうあがいても,絶望。」
1990年から2000年代頃は,「バイオハザード」や「クロックタワー」なお,ホラーゲームの名作が数多く生まれており,SIRENもその一つです。続編の発売だけでなく,映画や漫画なども展開され,多くのホラーゲームファンに愛され続ける作品となりました。
本作の舞台は,1976年の夏に土砂災害が発生した寒村・羽生蛇村(はにゅうだむら)。その村で大量虐殺が起きたという都市伝説に興味を持った高校生が,単身で村を訪れるところから物語は始まります。しかし,村では怪しげな儀式が行われている光景に遭遇し,突如として大音量のサイレンが鳴り響きます。主人公は混乱する村で盲目の少女・神代美耶子と出会い,村からの脱出を試みます。
物語は複数の登場人物の視点で進行し,様々なキャラクターが不気味な怪異に巻き込まれていきます。
ゲーム中は,プレイヤーキャラクターの体力が少なく走り続けると息があがって移動速度が遅くなったり,攻撃を受けるとすぐに死亡してしまったりと,戦闘に慣れていない一般人であることが伝わり,恐怖感が高まります。戦闘ではなく回避を選択せざるをえない状況も多く,難度はかなり高いです。
「視界ジャック」と呼ばれるシステムも特徴的で,プレイヤーはキャラクターの視点を切り替えることで,敵の視界や聴覚を一時的に盗み見ることができます。このシステムを駆使して,敵との戦闘を回避したり,攻略のヒントを得たりするわけです。
謎解き要素も豊富で,全アーカイブを収集し,関連書籍を読むことによってようやく物語の真実に近づけるという仕組みも,深みがあって,私は好きです。
さて,そんな不気味で緊張感に溢れたSIRENの世界において異質ともいえるのが「羽生蛇蕎麦」の存在でしょう。ゲーム中,視界ジャックを利用して警官が食べている姿を見ることができます。
ゲーム内に出てくる羽生蛇蕎麦の説明は,正直言ってあまり魅力的とは言えません。なにせ,輪ゴムのような弾力のある麺に,苺やイチゴジャムがトッピングされているというのですから。そして,かつて災害の際に炊き出しが行われたとき,三日三晩も虫が集まっていたという逸話もあります。美味しそうなイメージはまったく湧きませんね。
この不思議な蕎麦の作り方は,麺をゆで,冷水でよく洗う。そして,肉水,酢,酒,唐辛子,砂糖で作ったスープに麺を入れ,特製の苺ジャムをトッピングするそうです。お好みで季節の果物を加えることもできるそうですが,苺ジャムを蕎麦にのせるという組み合わせは珍しいですね。
美味しくなさそうな蕎麦ですが,ゲーム内のキャラクターたちはなぜか夢中になっています。不思議な料理に取り憑かれた彼らの行動が,「SIREN」の世界にさらなる不気味さを与えているような気がしますね。
さすがに今回は美味しく作ることは難しいかもしれませんが,それでもクッキングエンターテイナーの名にかけて,できるだけ頑張ってみようと思います。
■材料
冷麺 1人前
◆スープ
水 500ml
酒 50ml
輪切り唐辛子 小さじ1
しょうが 2片
青ネギ 1本分
◆特製ジャム
苺ジャム 50g
バルサミコ酢 30ml
赤ワイン 50ml
醤油 10ml
みりん 10ml
◆トッピング
ゆで卵 1/2個
きゅうり 適量
ねぎ 適量
苺 適量
◆スープ作り
◆特製いちごジャム
◆本調理
実食
それでは食べてみましょう。これはなんと……とても美味しいです!
レシピを見て気がついた人もいらっしゃると思いますが,苺ジャムを美味しく作ることがポイントです。
スウェーデンやデンマークでは果物を使ったソースも多いので,そのイメージで作ってみました。日本でも果物を使ったラーメンやパスタが人気のお店もあります。酸味と甘味のあるソースを,うまみと塩味があるスープと混ぜ合わせることで,五味のバランスを完成させる狙いでしたが,見事にハマりましたね。
「ゴムのような弾力」ということで冷麺の麺を固めに茹でたのも,スープのレシピも事前情報に対してわりと忠実に再現できたと思っています。おしゃれなラーメン屋やダイニングバーの〆メニューとして女性に人気が出るかもしれません。折をみて改良にも挑戦しようと思います。
今回のテーマはいかがでしたでしょうか? 面白いと思ったり,実際に試したりした人は,「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」といったハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれると嬉しいです。
それでは,またお会いしましょう! したっけ!
■■大西哲也(クッキングエンターテイナー)■■
あるときは,料理研究家,またあるときは,「COCOCOROチャンネル」のYouTuber,しかしてその実体は……,料理を通じて多くの人を喜ばせたいと日々奮闘する,クッキングエンターテイナーだ! シェフの中で特に印象に残っているホラーゲームは,「エネミー・ゼロ」なんだとか。見えない敵が近づいてくる不気味さと,複数の敵に囲まれたときに覚える絶望感が特徴的でしたね。
※次回の掲載は2023年9月23日を予定しています
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SIREN
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