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「ペルソナ4」に出てきた物体X,通称「ムドオンカレー」を美味しくしたい。俺のコラボカフェ:Menu 051
4Gamerをご覧の皆様こんにちは。クッキングエンターテイナーの大西哲也です。様々なゲームに出てくる料理をプロの料理人が本気で作ったり,プロ目線で勝手に検証して発表したりする「俺のコラボカフェ」。今回もよろしくお願いします。
前回は,「料理が壊滅的に下手なキャラクター」を取り上げましたが,今回もその路線でいき,私が大好きなRPG「ペルソナ4」の里中千枝と天城雪子を紹介します。
二人の代表的なエピソードは,林間学校の調理実習で作った,カレーという名の化学兵器です。
千枝はもともと料理が下手で,雪子はお嬢様育ちが災いして料理ができない。そんな二人が材料を勘で買って,作ったものが「物体X」です。ファンに「ムドオンカレー」と名付けられ,親しまれて(?)います。
二人も自分たちの作った料理が危険だと分かっていて,味見をしなかったほどの代物です。結果,花村陽介は卒倒して胃袋をやられ,主人公も白目を剥いて倒れました。
今までの食べ物にない新食感で,じゃりじゃりしたりブヨブヨしたりするそうです。普段温厚な陽介が「カレーは,辛いとか甘いとかだろ! コレ,くせーんだよ!」と怒っていたほどです。普通,ここまでの感想は出てこないですよね。
材料は,にんじん,じゃがいも,玉ねぎ,ピーマン,舞茸,ふきのとう,片栗粉,強力粉,唐辛子,キムチ,コショウ(白と黒),チョコレート,コーヒー牛乳,ヨーグルト,魚介類,大根,かぶ,愛情……と,驚くほどバラエティ豊か。カレールーもカレー粉も入っていないのが驚きですが,これは料理下手な人の「あるある」かもしれません。ですが,こんな組み合わせを思いつくのは料理に精通しているからではないか,とも思います(そんなわけないですが)。
この材料で美味しいカレーを作るのはかなり難度が高そうです。しかし,私もプロ。逆境であればあるほど燃えるというものです。なんとかしてみましょう。
■材料
これからカレーを作れるはずがない材料たち。魚介類はアニメ版ではナマコだったそうですが,手に入らなかったためイカの塩辛にしてハードルを上げました
実食
なんと,想像を遥かに越えて見た目は完全にカレーになってしまいました。これを見て,あの材料から作られていると信じる人はいないのではないでしょうか。そして臭くないです。
恐る恐る食べてみると……なんとおいしいです。普通の配合とはかなり違いますが,焙煎した七味唐辛子とブラックペッパーは立派なカレー粉と言えるでしょう。小麦粉と片栗粉のとろみもちょうどよいです。うまみ成分はキムチ,塩辛,舞茸からでています。それぞれ炒めることでうま味が凝縮しており,野菜が豊富なので栄養価も非常に高いです。
やはり塩辛の風味が独特なので,普通のカレーとはまったく違う,新感覚のスパイシー煮込み料理です。ムドオンどころか,タルカジャ,スクカジャ,マカカジャがかかった状態になるほど元気になりました。
ちなみに今回は,作りながら味を調整したため,各種材料の分量がかなりアバウトです。ルーに関しては,七味唐辛子 小さじ2,ブラックペッパー 小さじ2,小麦粉 大さじ1,片栗粉 大さじ1,サラダ油 大さじ2といった感じでそれなりに整うと思います。再現にチャレンジするときの参考にしてください。
4Gamerでもいくつかカレーを作ってきましたが(カレーレシピ1,カレーレシピ2,カレーレシピ3),このたび私がプロデュースしたカレールーが完成しました。4月29日にクラウドファンディングで注文の受付を開始しますので,ぜひご覧ください。
今回のテーマはいかがでしたでしょうか? 面白いと感じたり,実際に試したりした人は(さすがに今回はいなそうですが)「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」といったハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれると嬉しいです。それでは,またお会いしましょう! したっけ!
■■大西哲也(クッキングエンターテイナー)■■
あるときは,東京都,西調布にある「料理うまいBAR COCOCORO」のシェフ,またあるときは,「COCOCOROチャンネル」のYouTuber,しかしてその実体は……,料理を通じて多くの人を喜ばせたいと日々奮闘する,クッキングエンターテイナーだ! シェフ自身もまさか本当にカレーになるとは思っていなかったようで,カレー作りの新境地に到達した気分になったとのこと。オリジナルカレールーでもゲームのカレーを作ってくださいね。
※次回の掲載は2023年5月27日を予定しています
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ペルソナ4
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