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AMD,1パッケージで64コア128スレッドを実現したCPU「Ryzen Threadripper 3990X」を2月8日発売。価格は約50万円
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印刷2020/02/07 23:00

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AMD,1パッケージで64コア128スレッドを実現したCPU「Ryzen Threadripper 3990X」を2月8日発売。価格は約50万円

画像集#002のサムネイル/AMD,1パッケージで64コア128スレッドを実現したCPU「Ryzen Threadripper 3990X」を2月8日発売。価格は約50万円
 2020年2月7日,AMDは,Zen 2アーキテクチャをベースとしたハイエンドデスクトップ(HEDT)向けCPUの最上位モデルとなる「Ryzen Threadripper 3990X」(以下,Threadripper 3990X)を2月8日11:00に国内発売すると発表した。HEDT向けCPUとしては初めて,64基ものCPUコアを搭載したプロセッサだ。国内向けのメーカー想定売価は44万9800円(税込49万4780円)となっている。
 2020年1月に,AMDがCES 2020で行った発表時に概要が明らかとなっていたので,発売時点でそれほど新情報があるわけではないのだが,今回AMDは,Threadripper 3990Xのより具体的な性能情報を明らかにしたので,ざっくりとまとめてみたい。

Threadripper 3990Xの概要を示したスライド
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フルに性能を発揮させるのは大変そうなThreadripper 3990X


 Zen 2アーキテクチャにもとづくThreadripperは,2019年11月に発売になった32コア64スレッド対応の「Ryzen Threadripper 3970X」(以下,Threadripper 3970X)と,24コア48スレッド対応の「Ryzen Threadripper 3960X」(以下,Threadripper 3960X)に続くもので,Threadripper 3990Xで3製品めとなる。そのアーキテクチャは,既存の2製品と基本的には変わらないが,改めて説明しておこう。

 Threadripper 3990Xは,Zen 2における「チップレットアーキテクチャ」を使用して,64コア128スレッドを実現したものだ。
 Zen 2では,7nmプロセスの採用により8基のCPUを実装した「CPU Complex Die」(CCD)と,12nmプロセスを用いてメモリコントローラやI/Oを実装した「I/O Die」という2種類のシリコンダイを,1つのパッケージに実装するのが特徴である。Threadripper 3990Xは,8基のCCDを1基のI/O Dieと接続した構成であり,それ自体に意外性はない。

8基のCCDをI/O Dieに接続したThreadripper 3990Xの構成図。CCDとI/O Dieトータルで,トランジスタ数は約332億9000万個に達するというからすさまじい
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 64基ものCPUで構成するとなると,フルに性能を出すのもそれなりに大変のようだ。たとえば,AMDが公開したThreadripper 3990Xの推奨設定を見ると,いくつか興味深いことが書かれている。
 たとえば,ソフトウェアは65スレッド以上をサポートしていることが推奨であるという。物理コア数と同じ64スレッドや,それ以下だと,CPUコアの利用効率が下がるのだろう。
 加えて,ストレージI/Oのボトルネックを避けるために,アンチウイルスソフトウェアやWindowsによる「システムの復元」機能を切ることも勧めている。レンダリングやエンコードなどが極めて高速な一方で,これらのソフトウェアによるI/Oアクセスすら問題になってくるわけだ。もちろん,ストレージはPCI Express Gen 3接続のSSDが望ましい。

AMDが推奨するThreadripper 3990Xのシステム構成。論理CPU 1基あたり1GB以上のメモリ,つまりシステム全体でメインメモリ容量は128GB以上を推奨している。そのほかに,OSやソフトウェア側の条件も列挙してあり,Threadripper 3990Xの性能を評価するときは注意が必要だろう
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「クリエイター向けプロセッサとして最強」と謳うAMD


 さて,AMDは,既存のThreadripper 3970XとThreadripper 3960Xを,「一般用途のHEDT向けプロセッサ」とする一方で,今回のThreadripper 3990Xは,「プロのクリエイター向けに特化したプロセッサ」であるとアピールしている。

Threadripper 3000シリーズの位置づけ。32コアと24コアのThreadripperは一般用途向け。一方,Threadripper 3960Xは,プロのクリエイターに向けに特化したCPUであると,AMDは主張する
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 AMDが,Threadripper 3990Xをクリエイター向けに位置づける理由は単純で,クリエイター向けソフトウェアにおける性能が極めて高いためだ。たとえば,CPU性能のベンチマークでおなじみの3Dレンダリングベンチマークアプリである「CINEBENCH R20」のスコアは,25000に達するという。これは32コアのThreadripper 3970Xと比べても約1.5倍にもなる。
 CINEBENCH R20は,映像やプロダクトデザインなどに利用されているMAXON Computer製3Dグラフィックスソフトウェア「CINEMA 4D」のレンダラーを用いたベンチマークなので,CINEBENCH R20のスコアが高いということは,CINEMA 4Dにおける処理性能も高いと言える。

Threadripper 3990XにおけるCINEBENCH R20のスコアは,最大で25000に達するそうだ。このスコアはThreadripper 3970Xの1.5倍に近い
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 もちろん,それ以外のクリエイター向けソフトウェアにおける性能も,極めて高いとAMDはアピールしている。レンダリングのように時間を要する処理が短時間で終わるため,コンテンツ制作の効率が高めることができることから,「クリエイターにとってThreadripper 3990Xは,価格以上の価値を持つ」というのがAMDの主張だ。
 実際,Intelのワークステーション向けXeonシリーズに比べても,Threadripper 3990Xは高い性能を持つようなので,相対的に見れば安価という見方もできる。

3Dグラフィックス制作の性能を,「Xeon W-3275」(28C56T,ベースクロック2.5GHz,最大クロック4.4GHz)の性能を「1」として,Threadripper 3990XおよびThreadripper 3970Xの性能を比較したクラフ。Threadripper 3990Xの性能は,平均でIXeon W-3275の1.98倍に達するという
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ビデオ編集ソフト「DaVinci Resolve」や「Premiere CC2020」の処理性能を比べたグラフ。Threadripper 3990Xの性能は,平均するとXeon W-3275の1.7倍だが,Threadripper 3970Xとの差は意外と小さい印象だ
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ソフトウェア開発におけるコンパイル速度を比べたグラフ。Threadripper 3990Xの性能は,Xeon W-3275比で平均1.81倍だそうだ
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 なお,AMDは,これだけの性能をシングルノード,つまりシングルCPUで実現できていることもThreadripper 3990Xの利点だとアピールしている。デュアルCPUシステムに比べて,システムの価格を抑えられるほか,4CPU以上の構成になるとCPUコアとメモリコントローラのペアである「NUMAノード」が複数になるため,性能が出にくくなるといった第2世代Threadripperまでの問題が,Threadripper 3990Xにはないというわけだ。

映画「Terminator: Dark Fate」(邦題ターミネーター:ニュー・フェイト)における1フレームを,映画制作用で使われるレンダラー「V-RAY」でレンダリングする時間の比較。「Xeon Platinum 8280」(28C56T,ベースクロック2.7GHz,最大クロック4GHz)を2基搭載するシステムでは1時間30分かかるのに対して,Threadripper 3990Xは1時間3分で終わるという。システムコストの低いシングルCPU構成でも,競合のデュアルCPUシステムより速いというわけだ
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 PCマニアにとっては取り組みがいがありそうなCPUだが,ゲーマーが積極的に買うようなものではないのは言うまでもない。ただ,ゲーム開発の現場であれば,Threadripper 3990Xによって開発の効率が上がるといった効果は期待できる。
 つまり,業種によっては,Threadripper 3990Xの価格対性能比は非常に高いものとなるのは確かだろう。ただ,こうした業界では,システムベンダーからワークステーションをサポート付きで導入するのが一般的だ。そのため,AMDの思惑通り,クリエイターにThreadripper 3990Xが広まるかどうかは,ワークステーションベンダーへの採用が広まるかどうかにかかっているのではなかろうか。

AMDのThreadripper 3990X製品情報ページ

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    Ryzen(Zen 2)

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