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クリスマスを“呪い”たいゲーム特集――地獄を歩んで,浄化へと至る,ひとり孤独な魂が現世を受け入れるまでの五道を
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印刷2023/12/22 00:00

企画記事

クリスマスを“呪い”たいゲーム特集――地獄を歩んで,浄化へと至る,ひとり孤独な魂が現世を受け入れるまでの五道を

 
――冷たく,凍える,メリー地獄リスマスのはじまりだ。


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 12月24日と25日。クリスマス。それはイエス・キリストの降誕を祝す日の名だ。街は色とりどりのきらびやかなイルミネーションでめかし込み,祝福の大木の前にはうっとりした顔色のつがいが集まる。
 大切な相手とターキーやスイーツで祝う者もいれば,密やかな深夜に,赤っ鼻の隣人から贈呈物を授けられる者だっている。

 だが,そうした幸せとは,また違う幸せに浸る者もいる。

 本日は,この時期がスマホゲームでクリスマス限定コーデが実装されるだけの日と思っている我より,業火に潜り,地獄を歩んで,浄化へと至る五道「クリスマスを“呪い”たいゲーム特集」を与えん。

 さあ,ともにこの地獄を生き残り,現世に戻ろう――。



★以下,価格とサイト遷移は「Steam版」を参照



【地獄】「Hades」


配信:Supergiant Games
発売:2018年12月7日
機種:PC / PS5 / Xbox Series X|S /Switch / PS4
価格:2800円(税込・Steam版)


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 クリスマスという名の己だけの地獄。そこは冥界の神が司る地。奈落の底に落ちた肉体をはい上がらせるには,実際に経験するのが一番だろう。さあ,苦しみを乗り越えるための一歩目を差し出せ。

 「Hades」は,冥界の神ハデスの息子「ザグレウス」が地上を目指して暗き迷宮に踏み入る,ローグライク・ダンジョンアドベンチャーだ。物語のテーマは,地獄からの壮大な家出と言い換えてもいい。

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 我らは迷宮の前で,近接武器「剣」「槍」「盾」「拳」,遠隔武器「弓」「電磁砲」のなかから1種を選び,バトルスタイルを決める。
 操作は移動と回避(ローリング),攻撃手段は通常攻撃,特殊攻撃,回収型の遠距離攻撃「魔弾」の3種類だけ。至ってシンプルだ。

 ランダム生成される迷宮では,そのゲームプレイ時のみ効果がある強化要素が数多く存在する。育成方針を定めるのが攻略の鉄則だ。
 ただ,もし死んでしまっても,迷宮で得た素材で“自身の能力を永続強化”することもできる。何度も挑めば,いずれ地上が見えてくる。

 本作は回復手段が少なく,ちょっとした油断やミスが命取りにつながるなど,ゲームとしての難度はかなり高い。
 戦闘時では複数の敵の動きをしっかりと見て避ける,ボス部屋では広範囲の弾幕攻撃などに気を配るなど,視野の広さが大切だ。
 周回ごとのランダム要素も潤沢。武器ごとのスタイルもまるで違う。中毒的なリプレイ性の高さにはすぐに気付けることだろう。

 やられても武器を変え,次こそは。地獄の底にも光は差している。

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【暴風】「Risk of Rain Returns」


配信:Gearbox Publishing
発売:2023年11月9日
機種:PC / Switch
価格:1700円(税込・Steam版)


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 地下鉄の出口に自宅がある人は多くないように,地獄の出口の先もまた地獄。止まない暴風雨が広がっていた。ただでさえ困難な道のりだが,自ら最難関に飛び込むことで,見えてくる道しるべもある。

 「Risk of Rain Returns」は,名作「Risk of Rain」のリメイク版となるローグライク2Dアクションだ。オリジナル版と比較して,ゲームプレイの改善,新キャラクターやゲームモードの追加などが適用されており,かなり遊びやすくなった。しかし難しさは健在だ。

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 我らは最初に,使用キャラクターと難度を選ぶ。すると,いきなり謎の惑星に放り出され,星からの脱出を目指すことになる。

 惑星内には凶悪なモンスターがウジャウジャといる。見つかると襲いかかってくるため,そいつらを倒して金を稼ぎ,宝箱の中身で装備を整え,大物を討っては星の奥地へと進もう。
 最大の問題は“時間経過で敵が強くなっていく”ことで,現在地でじっくりと強化するか,早めに次に進むかの判断を迫られる。

 なかでも最高難度“暴風雨”は,理不尽の一言。「最強装備そろったし無敵だ」と思っていても,次の地に進んだ瞬間,ヤバすぎるモンスターの大量湧きで即死させられる。それが醍醐味とうたわれるほどだ。
 それでいて,己が経験を積むほどに奥へ奥へと進めるようになる。その達成感が,とてつもない中毒感を生む。マルチプレイもあるため,沼地の友達,あるいは友達を沼地に引きずり込むのも友情である。

 立ちはだかる難しさはきっと,クリスマスの難度に比肩する。

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【茨道】「ラブラブスクールデイズ」


配信:OTL Game,わくわくゲームズ
発売:2023年2月6日
機種:PC / Switch
価格:620円(税込・Steam版)


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 地獄の暴風雨を走り抜けたころ,疲労した体が安易な安らぎを求め始める。あまつさえ「カノジョとラブラブなクリスマスしたい……」なんて甘えたことをぬかす者が出てくるかもしれないほどに。

 であれば,ようこそ茨の道へ。「ラブラブスクールデイズ」はその名のとおり,ラブラブな学園生活の体験シミュレータだ。ほんのちょっと,サバイバルでホラーで病んでいるのがご愛敬なだけで。

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 ゲーム世界に入れる脳波シンクロデバイス「ブレインリンク」により,我らは恋愛シミュレーション“ラブラブスクールデイズ”を己が身で体験していた。そして,そこで出会ったサブヒロイン「桜咲マキナ」に惚れ込み,彼女と永遠の愛を誓った――のだが。

 それからニューゲームでメインヒロインも攻略しようとすると,マキナによってゲームが改造され,クリア後の世界へと連れ込まれる。

 元の世界とは打って変わった暗い校舎で,我らはわずかな明かりを頼りに,現実世界への帰還を目指す。校舎内を徘徊するマキナに捕まると体力(データ)が減るため,彼女に出会わないよう,物資を集めて組み合わせて,指定か所で使うといった謎解きをこなす。
 なお,マキナは「食パンを投げられると,つい食べてしまう」「カメラを向けられると,ついポーズを取ってしまう」など,かわいらしい(?)一面もある。これらを利用する狡猾さがなければ生還の望みは薄い。

 不気味な少女と暗い校舎。苦手な人はビビり散らかすこと請け合いなのだが,気付けばなぜか「マキナちゃん,普通にめちゃくちゃかわいい……捕まりたい……」と脳がチューニングされていく。

 そうやって破壊された脳こそが,現実を忘れるマスターキーだ。

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【虚無】「Aim Climb」


配信:Yul
発売:2022年3月19日
機種:PC
価格:780円(税込・Steam版)


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 ほうほうの体で愛憎の茨道から逃げおおせると,眼前に地上へとつながる虚無の山が広がっていた。崖に手をかけたとき,無の痛みを感じるか,無ゆえの喜びを感じるかは,地底を歩んできた者にしか分からない。

 「Aim Climb」は,エイム力が試される“登山ゲー”だ。同ジャンルは無の境地の開拓者“壺おじ”を代表に,ワンミスで絶望の底に叩き戻される精神的恐怖がどこまで行っても拭えない作品群である。

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 ゲーム内容は「ネコ少女を洞窟から地上へと脱出させる」というもの。アクション操作には移動キーが存在せず,“宙に浮かぶ光るターゲット”をマウスクリックした方向に,ネコ少女が飛んでいく。
 ネコ少女はそのままだと自然落下するため,ターゲットをクリックしたら次のターゲット,またすぐ次の……と連続操作が求められる。これとは別に小ジャンプスキルもあるが,あくまで補助的なものだ。

 操作の根幹を支えるのは“エイム力”。PCゲーマーにとって大事な能力も,瞬時の判断能力とハンドスキルが物を言うエイム力。FPSでもMOBAでもMMOでもエイム力。クリスマスまでに修行したいこともエイム力。現実でも地獄でも,人の手指はエイム力を渇望する。
 なお,序盤以降は「移動型ターゲット」「ホールド/フリックエイム型ターゲット」,しまいには「移動しつつホールドエイムを要求してくるターゲット」も出てくる。エイム力だけで登れると思うなよ。

 本作の難度は「ビギナー」「ゲーマー」「プロ」の3種類。それぞれ重力のかかり方が大きく異なる。ターゲットクリック時のSEも,なんだか落ち着くBGMも,連続ジャンプ中の快感も,ミスって高速落下中の絶望もクセになる。上昇と下降を繰り返して1時間ほど停滞したときは,虚無を超越し,逆に爽やかな満足感が体を駆けめぐるほどだ。

 虚無感と達成感は紙一重。クリスマスこそ,難所で登山すべし。

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【浄化】「パワーウォッシュ シミュレーター」


配信:スクウェア・エニックス
発売:2021年5月19日
機種:PC / PS5 / Xbox Series X|S /Switch / PS4 / Xbox One
価格:2970円(税込・Steam版)


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 地底から脱出した肉体は,ついに地上へと至った。しかし,その身にこびりついた穢れを洗い落とし,純白の自信を取り戻すには浄化が必要だ。それこそ,地獄に落ちる前からこびりついていた邪気もまとめて。

 最後の清めの聖水「パワーウォッシュ シミュレーター」は,高圧洗浄機を使って庭や車を掃除する高圧洗浄シムだ。汚れきった泥まみれの物体の素肌を暴いていく過程は,清涼な悦楽と言うほかない。

画像集 No.018のサムネイル画像 / クリスマスを“呪い”たいゲーム特集――地獄を歩んで,浄化へと至る,ひとり孤独な魂が現世を受け入れるまでの五道を 画像集 No.019のサムネイル画像 / クリスマスを“呪い”たいゲーム特集――地獄を歩んで,浄化へと至る,ひとり孤独な魂が現世を受け入れるまでの五道を

 我らは高圧洗浄のプロ(高圧力で水を放出し,汚れを落とす方法)となり,さまざまな依頼を受け,多種多様な物体を洗浄する。
 操作は一人称視点での移動やジャンプのほか,高圧洗浄機の照準/発射だけ。動かぬ汚れ物が敵の3Dシューターと考えてもよい。

 プレイ中は,汚れきったバイクや遊具が元通りの姿になっていくのが心地よく,水音や環境音もリアリティを感じさせてくれる。
 高圧洗浄機も依頼料をもとに新たなツールを購入したり,性能をアップグレードしたり,洗剤を導入するなどで作業の効率化を図れる。とことん効率的に洗えたときは,えも言われぬ感情が芽生えるだろう。逆に,水の音に癒やされながらのお天気日和なのんびり洗浄もまた一興だ。

 「ただただ洗浄するだけって……冗談だろ」と思っていた人ほど,高圧洗浄の沼に落ちていった本作。クリスマスの先に待ち構える,年末の大掃除に向けてモチベーションを高めたい者にもうってつけだ。
 ここまでの苦難の道のりと,心身にたまった邪気を洗い流し,スッキリした自分に立ち返ってみよう。まぁ,ハマりすぎると大掃除をすっぽかして,ゲーム内だけをピッカピカにしてしまうだろうが。

 1年をリフレッシュして終える浄化の儀は,ここにあった。

画像集 No.020のサムネイル画像 / クリスマスを“呪い”たいゲーム特集――地獄を歩んで,浄化へと至る,ひとり孤独な魂が現世を受け入れるまでの五道を


 地獄を出て,暴風を抜け,茨道を踏み,虚無を登り,浄化に至る。

 これが,なめ回した孤独のナイフで明るい夜から胸の内側を突いてこようする世間に抗する,たったひとつの冴えたやりかた。心を悩ます他意はすべて,五つの道で焼き払ってしまえばいい。
 さすれば今が何日で,どんな日であったかも忘却の彼方。心は,まばゆい日の出が待つ,来年2024年へと傾き始めるだろう。

 余談だが,我のクリスマスは1人コタツでローグライク沼に浸かるはずだが,もしもだ。己を乗り越え,現世で戦おうとする者がいたなら,下記の祝福を授けよう。なあに,我らはこれを裏切りとは呼ばない。暗い深淵への帰り道はいつだって背中に張りついているものだ――。

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