インタビュー
「BLADE ARCUS Rebellion from Shining」開発者インタビュー。スキルシステムやオンライン対戦を追加した狙いとは
2015年11月に家庭用として発売された「ブレードアークス from シャイニングEX」から実に3年以上という期間を経て,発売に至った経緯とは……。開発のキーマンである,「シャイニング」シリーズプロデューサーの鈴木 誠氏とスタジオ最前線の近藤敏信氏に話を聞いた。
「BLADE ARCUS Rebellion from Shining」公式サイト
開発のきっかけはeスポーツブーム
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。はじめにお二人のポジションを教えてください。
鈴木 誠氏(以下,鈴木氏):
セガゲームスの鈴木です。「シャイニング」シリーズのプロデュースを務めていまして,「ブレードアークス リベリオン」でもプロデューサーを担当しています。
近藤敏信氏(以下,近藤氏):
スタジオ最前線の近藤です。スタジオ最前線は一部のタイトルでパブリッシャをしていますが,基本的にはデベロッパとしてゲーム開発を行っています。「ブレードアークス from シャイニングEX」に続いて本作でも開発を担当しています。
4Gamer:
前作にあたる「ブレードアークス from シャイニングEX」から3年以上を経ての続編発売となります。プロジェクト開始の経緯を教えてください。
鈴木氏:
昨年に「シャイニング・レゾナンス リフレイン」を発売していることも大きいのですが,業界全体の大きな流れとして,近年eスポーツブームが起きていますよね。セガゲームスとしても格闘ゲームを盛り上げたいといった思いがありまして,「『ブレードアークス』をもう一度やってみよう!」という話になり,近藤さんに相談したのがきっかけとなります。
4Gamer:
本作には「シャイニング・レゾナンス リフレイン」から6キャラクターが新規参戦しています。追加キャラクターはどのように決定されたのでしょうか。
鈴木氏:
プレイヤーにとって分かりやすいところから追加するのがいいかなと思い,昨年に発売された「シャイニング・レゾナンス リフレイン」から6人の参戦となりました。
ユーマ |
キリカ |
ソニア |
リンナ |
エクセラ |
ゼスト |
4Gamer:
本作は,「ブレードアークス from シャイニングEX」の調整版ではなく,完全新作といった立ち位置になるのでしょうか。
鈴木氏:
開発側はそう認識しています。バトル面のバランス調整はもちろん,新キャラクターの追加,さらに遊び方がガラリと変わる新システムのスキルなどが追加されています。
近藤氏:
家庭用のゲームとして見たときに,遊び方が大きく変わっていると思います。前作はローカルでTony氏のイラストを収集する部分がメインだったのですが,本作ではオンライン対戦機能がついたことで,対戦格闘部分がメインとなりました。
4Gamer:
タイトルの「Rebellion」には,どういった意味が込められているのでしょうか。
鈴木氏:
前作にはオンライン対戦機能がなく,対戦格闘ゲームという部分にあまりフォーカスが当てられていなかったと思っています。本作の魅力ある部分が届けられなかったプレイヤーに対して,「あらためて魅力を届けたい」と考えて挑んだものなので,逆襲の意味を込めています。
ゲームコンセプトは変えず,新システムで大胆な味付けを
4Gamer:
「ブレードアークス」シリーズの「格闘ゲームとしてのコンセプト」をあらためて教えてください。
近藤氏:
ストリートファイターII,サムライスピリッツ,ワールドヒーローズなど,格闘ゲームでブームが起きていたあの時代に感じた面白さを再びプレイヤーに感じてほしいと思っています。骨太といいますか,本作ではビリビリした差し合いが楽しめますし,一撃のダメージも高くなっています。昔ながらの格闘ゲームの緊張感や面白さが,現代でまた見直されてほしいですね。
4Gamer:
新システムの「スキル」について聞かせてください。格闘ゲームとして考えると,かなり思い切ったシステムだと思いますが。
※スキル:対戦前にキャラクターに設定できる新システム。常時攻撃力アップやゲージの最大量増加,一度きりの体力回復など,さまざまな効果が用意されている
鈴木氏:
新作を作るうえで何かに挑戦をするべきだと思いまして,スキル追加をスタジオ最前線さんに相談させていただきました。
近藤氏:
格闘ゲームでは異例のシステムですので,最初はかなり戸惑いました。もちろん,プレイヤーからも賛否両論は出てくると思っています。
スキルシステムがあることで,試合内容がよりピーキーになると思っているのですが,一撃が重く,逆転要素が強い「ブレードアークス」であれば,そのピーキーさすら吸収してくれるのではと今では考えています。
鈴木氏:
スタジオ最前線さんならうまく落とし込んでくれると思っていましたし,なにより本作にはオンライン対戦がありますので,いかにオンライン対戦を長く遊んでもらえるかという部分を重視しました。強いスキルに対抗できるスキルを探すといった,終わらない研究が格闘ゲームでできたら楽しいと思っていて,近藤さんにはそんなイメージを伝えました。
4Gamer:
正直なところ,強力過ぎて今までのプレイヤーからすると少し戸惑うこともあるのではないかと感じられました。
近藤氏:
それくらいのほうがスキルを探す楽しさがあるのかなと思っています。今入っているスキルはどれもかなり強力ですので,それぞれの尖った部分を相手にどうぶつけるか,といった部分を楽しんでほしいですね。
4Gamer:
発売の2日後に行われる公式大会でもスキル使用は可能となっています。今後もスキル使用可能な大会が開催されていくといった認識でいいのでしょうか。
鈴木氏:
いろいろなレギュレーションがあってもいいと思っていますが,最初は新要素を楽しんでもらいたいので,まずはスキルを使った勝ち方を探してほしいですね。単純に前作からやり続けた強い人が優勝するのではなく,購入してからの2日間で何をしたか? というところでも差が出てくると思います。
4Gamer:
相手の使用しているスキルは確認できるのでしょうか。
鈴木氏:
オンライン対戦では,試合中には分からない仕様になっていますが,最終的にリザルト画面で見えるようになっています。対戦相手が見たことのないコンボや連係をやってきたら,リザルトで答え合わせができるわけです。相手のスキルセットを参考にして,遊び方を広げてほしいですね。
4Gamer:
オフラインではどうでしょうか。
鈴木氏:
オフライン対戦では,そもそもスキルを隠す必要がないので見えています。オフライン大会ですと,スキル選択の被せ合いが発生する可能性があるので,そこはルールを決める必要があると思いますが。
前作キャラクターはバランスを整えつつ,アッパー調整を実施
4Gamer:
続いて,キャラクターのバランス調整について聞かせてください。スキルシステムはかなり尖っているとのことですが,その基準に合わせた調整を行ったのでしょうか。
近藤氏:
キャラクター調整はデリケートな部分なので,慎重に行いました。前作の最後のアップデートからはかなり時間が経っていて,強いキャラクター,戦術というのはおおよそ確立されているんですよ。ですので,前作における問題点をしっかりと解決して,そこから強いキャラクターに合わせる形で,全体的にアッパー調整をしてバランスを整えています。
4Gamer:
キャラクター全体の調整内容を公開する予定はありますか。
鈴木氏:
検討中ですが,難しいところですね(笑)。
近藤氏:
フレームなどの細かい調整だけでなく,ダッシュや投げの挙動といった根本的なシステム部分にも調整が入っているので,パッと見は同じでもまったく違うといった部分が多くあります。旧作から遊んでいるプレイヤーも初めからの気持ちで調べ直していただけると新たな発見があると思いますよ。
4Gamer:
新キャラクターについて聞かせてください。どのキャラクターも面白い調整に仕上がっていると思いますが,バトルコンセプトなどはどのように決定されたのでしょうか。
鈴木氏:
「シャイニング・レゾナンス リフレイン」にもいろいろなキャラクターがいて,それぞれ扱う武器も違います,セガからは格闘ゲームにするならどのキャラクターが適任でしょうか? とパスを出しただけで,動きやキャラコンセプトはスタジオ最前線さんにお任せしています。
近藤氏:
武器ごとのアクションはもともとがRPGなのでイメージしやすかったですね。難しかったのはキリカのように,元からいるアルティナと弓で武器被りしているキャラクターです。少し苦労しましたが,最終的に同じ弓キャラでもまったく違う動きに仕上げられました。
4Gamer:
エクセラはかなり衝撃的な動きをするキャラクターになっていましたが,あれは原作イメージを落とし込んだものでしょうか。
鈴木氏:
エクセラは重力を操れるキャラクターで,自身が空を飛んだことはありませんが,重力を扱えるなら空も飛べるだろうと(笑)。格闘ゲームに落とし込むにあたって,原作イメージとよほど乖離していなければ問題ないといったスタンスです。
近藤氏:
原作のイメージを大切にしつつ,これまでにないキャラクターにしたいということで,鈴木さんと相談をしながら調整しました。リンナも最初は魔法を使うだけのキャラクターだったのですが,途中からレベルを設けるなど,面白くなる要素を徐々に追加しています。
鈴木氏:
新キャラクターの調整は少し怖いところもありますよね。既存のキャラクターは何年も遊んでもらって,調整を入れることで今の形になっているので……。
旧バージョンのアルティナは回転王さんが使うまで,あそこまで雨あられのように弓を打てるキャラだとは思いませんでしたし,今の裏雪姫もgameraさんが使うことですさまじい強さを見せていますよね。きっと新キャラクターでも,開発の想像を超えた動きをするプレイヤーが出てくるんでしょう(笑)。
オンライン対戦の実装で長く遊べるタイトルに
4Gamer:
本作では待望のネット対戦機能が実装されます。やはりプレイヤーからの要望の声は多かったのでしょうか。
鈴木氏:
そうですね。前作の家庭用では「なんでオンライン対戦がないんですか?」という声が非常に多く寄せられました。オンライン対戦が実装されていないからキャラクターゲーム寄りのファンアイテムなのかな? と思われていた人もいたと思うのですが,ゲーム内容は格闘ゲームファンに納得してもらえるものになっていますし,そういった部分をなんとかしたい気持ちが強くありました。
本作ではオンライン対戦で格闘ゲームファンにも長く遊んでほしいですね。
4Gamer:
オンライン対戦のラグについてはいかがでしょうか。
近藤氏:
Steamで配信されている北米版の「ブレードアークスfrom シャイニング Battle Arena」にはオンライン対戦が実装されていまして,リリース直後は北米の西海岸と東海岸で対戦するとラグが起こると言われました。アメリカのネット環境が大変だという話もあるのですが,ラグについてはそこで調査を進めて,北米での問題も解決済みです。国内ではネット環境も整備されていますし,今回も安心していただいていいと思っています。
4Gamer:
ランクマッチでは,スキルはデフォルトで有りの設定なのでしょうか。
鈴木氏:
もちろんそうです。スキル無しのルールはありません。また,アイテムも使えますので,もう少しでランクが上がりそうで「どうしても勝ちたい!」という場合はスキルとアイテムを掛け併せて勝ちにいく,というのもアリです。
4Gamer:
対戦をあまりやらない「シャイニング」シリーズファンも本作の購入を検討していると思います。そういった人でも楽しめるコンテンツは用意されていますか。
鈴木氏:
新キャラクターのストーリーは新規で用意していますし,ギャラリーモードなども充実しています。ほかには前作を遊んだ方のアンケートや感想でストーリーをもっと楽しみたいという声が多かったので,限定版にはドラマCDの特典を付けました。ドラマCDとゲーム内ストーリーでつながっている部分もありますので,楽しんでほしいですね。
また,格闘ゲームを遊んだことがない初心者のために,コマンド入力がワンボタンで行えるようになる「シンプルモード」のスキルを用意してあります。シンプルモードがスキルになっているのは,いずれ初心者の方もシンプルモードを外して,強力なスキルを付けて遊んでほしいという願いを込めているんです。
近藤氏:
ちなみにこのシンプルモードはワンコマンドで必殺技が出せるようになるんですが,溜め技にも対応していますし,もともとのコマンド入力でも必殺技は出るので,通常のコマンド入力では不可能なすごい動きを見せる上級者が現れるかもしれませんね(笑)。
4Gamer:
発売2日後の3月16日に公式大会の開催が告知されています。今後も大型大会などを開催していく予定はあるのでしょうか。
鈴木氏:
まずは3月16日の大会ですね。セガは「ぷよぷよ」をはじめ,eスポーツに力を入れているので,継続して何かできればいいなとは考えています。セガだけでなく,格闘ゲーム業界全体が盛り上がればいいなと思っていますので,まずは皆さん3月16日の大会に遊びにきて盛り上げてもらえるとうれしいです。
4Gamer:
間もなく発売となりますが,本作を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
近藤氏:
「ブレードアークス」の続編が出ることに自分でも驚いているくらいですが,これも作品を長らく支えてくれたファンのおかげです。同じように,ぜひ新規のプレイヤーにも長く本作を楽しんでもらえればと思います。
鈴木氏:
「シャイニング」シリーズファンには「シャイニング」としてのストーリーも楽しめる作りになってますし,「ブレードアークス」を愛している方には,新要素もあります。ついにオンライン対戦を実装しましたので,まずは遊んでもらえればうれしいです。最近は格闘ゲームの新作もいろいろ出ていますし,格ゲーブーム全体を皆さんで楽しんでいきましょう。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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