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重厚かつ繊細,美しさで観る人すべてを圧倒する「劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家」ゲネプロ公演観劇レポート
Happy Elementsが贈る「あんさんぶるスターズ!!」(以下,「あんスタ!!」)の新作舞台「劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家」が,都内の品川プリンスホテル ステラボールにて2024年8月23日より上演中だ。本稿では,関係者/マスコミ向けのゲネプロ公演の模様とともに,筆者の所感をお伝えする。ストーリーのネタバレは避けているが,一切の情報を入れたくない人は注意してほしい。「劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家」公式サイト
「ヘンゼルとグレーテル」をモチーフとした
重厚感あふれるファンタジー世界
INTRODUCTION
継母に捨てられたヘンゼルとグレーテルが迷い込んだのは、
人食い魔女がいると恐れられている森。
途方に暮れるきょうだいの前にあらわれたのは、
魔女たちが人間のこどもを誘い込むための罠「お菓子の家」…
だが、その家は魔女・ディシーが究極を追い求めるあまりに、
いまだ完成していない建設中の「お菓子の家」だった。
思いがけないこどもの来訪に一同は慌てふためくが、
きょうだいは「お菓子の家」づくりを手伝いたいと言い出して――。
劇団『ドラマティカ』ACT4はグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』を題材に、
魔女とこどもたちの数奇な出会いが巻き起こす新たな物語!
彼らのつくる「奇跡」をどうぞ、ご賞味あれ。
人食い魔女がいると恐れられている森。
途方に暮れるきょうだいの前にあらわれたのは、
魔女たちが人間のこどもを誘い込むための罠「お菓子の家」…
だが、その家は魔女・ディシーが究極を追い求めるあまりに、
いまだ完成していない建設中の「お菓子の家」だった。
思いがけないこどもの来訪に一同は慌てふためくが、
きょうだいは「お菓子の家」づくりを手伝いたいと言い出して――。
劇団『ドラマティカ』ACT4はグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』を題材に、
魔女とこどもたちの数奇な出会いが巻き起こす新たな物語!
彼らのつくる「奇跡」をどうぞ、ご賞味あれ。
「劇団『ドラマティカ』」の根幹にある「役者が役を演じる」という難しさや面白さは,これまでに何度も語り尽くされてきた。もちろん本作でもその部分を大いに楽しめたのだが,個人的にはそこからさらに進んだ感動があった。というのは,観ている間にそうした二重構造という大前提や役者の存在を忘れ,より一層「劇団『ドラマティカ』」が作る世界に深く没入してしまったからだ。
そこで本作に敬意を表し,ここからは筆者も“「劇団『ドラマティカ』」が存在する世界のライター”としてレポートを書いていきたい。
アンサンブルスクエア所属アイドルたちが贈る「劇団『ドラマティカ』」最新作!
「劇団『ドラマティカ』」とは,高い人気と実力を誇るアイドルユニット「fine」の日々樹 渉が主宰する演劇サークルだ。メンバーはアンサンブルスクエアに所属するアイドルたちで,アイドル活動の傍ら精力的に作品を上演し続けている。
作品ごとに新たなジャンルとテーマに挑戦するのも本劇団の特徴で,今回は「ヘンゼルとグレーテル」をモチーフとしている。過去作よりも歌が増え,ミュージカルに寄った構成というのも新たな要素だ。
先に全体を通した感想を述べると,主演の斎宮 宗がリーダーを務めるアイドルユニット「Valkyrie」のステージにも似た「実に丁寧に作られたと伝わる繊細なディテールと,圧倒的な美しさですべてを飲み込む完璧な世界観」という印象が強く残った。そこに,時折クスッと笑えるような「劇団『ドラマティカ』」らしい親しみやすさがエッセンスとして加わり,この舞台ならではの大きな感動を生んでいる。この成功はやはり,役を演じながら自ら制作まで行ったアイドルたちによるものと言えるだろう。
ヘンゼルを演じた「Valkyrie」の影片みかは,宗が演じたディシーとの関係性を思うと,演技に挑戦という高いハードルを乗り越えてでも舞台に立ちたかったのではないだろうか。個人的に“憑依型アイドル”の印象がある彼だが,舞台という異質な場所でも見事に花を咲かせてみせた。堂々と歌う姿はもちろん,素の関西弁を封印して喋る姿とのギャップが見られるのも本作ならでは。さらに,「Valkyrie」のファンなら卒倒もののエモすぎるシーンも多数なので,これから観る人はぜひ楽しみにしてほしい。
ヘンゼルときょうだいのグレーテルを演じた仁兎なずなは,アイドルユニット「Ra*bits」のメンバーだ。彼は,武器である“可愛らしさ”を最大限に活かした存在感で観客を魅了した。健気でまっすぐで,小さな幸せを慈しむ様子がいじらしいグレーテル。グレーテルはヘンゼルより歳下の設定だが,役を演じるアイドルたちの関係は逆。そのこともあってか,ヘンゼルを支えるなずなの頼もしさのようなものも感じた。
ラオを演じた青葉つむぎ。アイドルユニット「Switch」のメンバーである彼は,普段は柔和な雰囲気のアイドルだが,掴みどころがなく謎めいたラオを見事に好演する。その場を支配するような場面も多く,例え短い登場シーンでも大きなインパクトを残してみせた。いつも彼がアイドルとしてステージで見せる姿には底知れぬ能力の高さを感じることも多く,非常にポテンシャルが高いアイドルであることをあらためて再認識した。
次に,「劇団『ドラマティカ』」主宰にして,パティを演じた日々樹 渉。本作はややサスペンスフルな話の展開もあるのだが,彼が舞台に現れるだけでパッとその場が明るく照らされるような存在感はさすがのひと言だ。何をやらせても余裕でこなす才能あふれる彼だが,ミュージカルに近い本作では,その見事な歌声がひときわ輝いていた。エプロン姿で舞台を駆け回るキュートさも見どころだ。
アークを演じた氷鷹北斗はアイドルユニット「Trickstar」のリーダーで,本舞台シリーズは皆勤賞である。毎回まったくイメージの違う役で観客を楽しませてくれる彼だが,今回は飄々としつつしっかり者の役だ。話の流れ的に,単独やアンサンブルたち(素晴らしかった!)とのシーンも多かったが,安定と安心感がすごい。パティ演じる渉とのコンビ感も息ぴったりで,演劇部で師弟関係だったというエピソードを思い出してしまった。
そして,ディシーを演じた斎宮 宗である。すでに観た人なら分かってもらえると思うが,とにかくその存在感は筆舌に尽くしがたいものだった。これは筆者の勝手な予測だが,本作は宗が主演と決まり,当て書きで作られた脚本だったのではないだろうか。美しくプライドが高く,けれど本当は深い愛に溢れた人物。おそらく多くのファンが持つ宗のイメージそのものと言えるだろう。歌声には心が震えたし,苦悩や葛藤には涙がこみ上げた。これから観劇する彼のファンは,大いに覚悟すべきだと忠告しておきたい。
本作に込められたメッセージは極めてストレートで,だからこそ胸に響くものがある。そのメッセージと,普段アイドルとして活躍している彼らが大切にしているものはきっと同じだ。そんな彼らの熱演と演出が相まって,本作には実に深く心を動かされた。アイドルに詳しい人なら,彼らがこれまで築いてきた関係性を想って胸を熱くしたり,舞台を降りた姿を想像したりする楽しさがあるだろう。それもまた「劇団『ドラマティカ』」の醍醐味だ。
……ということで,元の現実世界に戻ってもう少しだけ。
本作は新たな制作体制で作られた「劇団『ドラマティカ』」であり,演出を山本一慶さんが務めることも話題となった。「どんな作品になるんだろう」と考えているファンに向けて言いたいのは,「ここに書いた言葉だけでは,すべての感動を伝えきれない」ということだ。
これから観る人は,ぜひ楽しみに。観る予定のなかった人もぜひ機会を作って観劇してほしい。そう多くの人に伝えたくなる,心から拍手を送りたい素晴らしい作品だった。8月23日18:30初日公演と9月8日18:00千秋楽公演は,「DMM TV」での独占ライブ配信+ディレイ配信付きが発売されているので,こちらもおすすめだ(販売ページはこちら)。
なお,本公演を収録したBlu-rayパッケージが2025年5月28日に発売予定だ。公式通販限定盤(1万1990円)には座談会やメイキング特別版などを収録したスペシャルDVDとランダムブロマイド2枚が特典で付属するほか,通常盤(1万890円)にも各法人特典が付いてくる。現在,公式通販や全国アニメショップほかで予約受付が始まっているので,こちらもあわせてチェックしよう。
「劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家」公演概要
■期間
【東京】2024年8月23日(金)〜9月8日(日)
■劇場
品川プリンスホテル ステラボール
■キャスト(敬称略)
ディシー役:斎宮 宗 山崎大輝
ヘンゼル役:影片みか 猪野広樹
グレーテル役:仁兎なずな 大崎捺希
ラオ役:青葉つむぎ 工藤大夢
パティ役:日々樹 渉 安井一真
アーク役:氷鷹北斗 山本一慶
石川蓮恩 岡村拓真 沖矢 悠 亀井照三 黒条奏斗 笹尾ヒロト
■スタッフ(敬称略)
原作
『あんさんぶるスターズ!!』(Happy Elements株式会社)
脚本・作詞
浅井さやか(One on One)
演出
山本一慶
音楽
はるきねる
振付
後藤健流
作詞
こだまさおり
■主催
劇団『ドラマティカ』製作委員会
「劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家」公式サイト
(C)ENSEMBLE SQUARE/劇団『ドラマティカ』製作委員会