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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第24回。ハルサキRide→ON!,攻略!迷宮結ぶアリアドネの糸,SHUFFLE×Ringが誘う鐘の音,プリズンブレイカーズ,芳香*忍ばせたフレグランスを語る
Happy Elementsがサービス中のアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」のストーリーを紹介する記事の第24回は「スカウト!ハルサキRide→ON!」「攻略!迷宮結ぶアリアドネの糸」「SHUFFLE×Ringが誘う鐘の音」「スカウト!プリズンブレイカーズ」「芳香*忍ばせたフレグランス」を取りあげる。本記事では,“知っているとストーリーをより楽しめるポイント”の解説と,筆者の感想や考察をお届けする。記事では詳細なネタバレは控えているが,できるだけ各ストーリーの読了後に読むのがおすすめだ。
※取り上げるスカウトの順番が前後しますが,「スカウト!ジェムスフィア」は後日掲載予定の「メインストーリー第二部『SS』編/3rd Stageシークレットサービス」とあわせて紹介予定です。
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「あんさんぶるスターズ!!」公式サイト
ストーリーピックアップ
「スカウト!ハルサキRide→ON!」
開催期間:2021年5月14日〜2021年5月30日同時期開催イベント:攻略!迷宮結ぶアリアドネの糸
――あらすじ――
国内の有名自転車メーカーからPV出演の依頼を受けた朱桜 司たち。一同はロードバイクに乗って旅をするシーンの撮影を始めるが,休憩中に自転車が盗難にあってしまい……。<全8話/シナリオ:木野誠太郎(Happy Elements株式会社)>
◆ストーリーのここをチェック!
いつの出来事? 時期をチェック
「!!」になってアイドルたちの時間が進み,イベントやスカウトで描かれるストーリーの時系列が前後する場合が増えてきた。そこで,記事で取り上げる物語がどの時期に当たるのかを,ざっくりとではあるが記しておきたい。
※今後,時期の解説を入れないストーリーも出てくる可能性があります。
今作【ハルサキ!Ride→ON】の物語序盤は5月初旬なので,朱桜 司の状況的には【踏み出す行き先/ネクストドア】(夏ごろの話。フィレンツェに住む瀬名 泉が月永レオの面倒を見ることになった)や,【白昼夢*微睡みのユーサネイジア】(秋ごろ。Knightsの活動方針を決闘裁判「euthanasia」で決めることになった)よりも前の出来事である。
また【新参!目覚めの暗夜行路】が夏ごろのストーリーなので,新たに生まれたユニット「Double Face」がニューディ所属になり,事務所に支援金が入るのは【ハルサキ!Ride→ON】よりもあとになる。
返礼祭名シーンの一つ「贈る言霊」
【ハルサキ!Ride→ON】での神崎颯馬の言葉「ただ、【返礼祭】で語らったあれが嘘であるならば――我は羽風殿におおいに失望するというだけだ」。こちらは言わずもがな「!」の【衝突!思い還しの返礼祭】で繰り広げられたやりとりだ。このときの颯馬と羽風 薫の会話から紅月の3人が揃う場面は,個人的に「あんスタ!」のなかでも屈指の名シーンだと思う。
許さない!
乙狩アドニスや朱桜 司が警察署で一日署長をしたエピソードは,「!」の【スカウト!ポリスマン】で読める。あのときはプロデューサーが適任者を選ぶことになり,アドニスと司のほか,遊木 真,伏見弓弦,守沢千秋の名が挙げられていた。が,仕事が入ってしまった真以外の4人が一日署長となった様子。なお「許さない!」とは,ポリスマンアドニスのLINEスタンプのセリフである(筆者も愛用中)。
乙狩アドニスと神崎颯馬の競走
アドニスと颯馬が以前にジョギングで競走したエピソードは,「!」の【挑戦!願いの七夕祭】で読める。ちなみに当時の颯馬は,手と足を同時に出すという古武術の歩法を使っていた(現在もフォームが変わっていないかは不明)。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
一番年下ながら懸命にみんなを引っ張ろうとする司,マイペースではあるが協調性のあるアドニスと颯馬,ここ最近はすっかり「良き先輩」となった薫は,わちゃわちゃしつつもバランスの取れたメンバーである。このキャスティングディレクター,非常に分かっている(このネタ毎回言っている気がするが……)。
今作【ハルサキ!Ride→ON】で筆者がとくに注目したのは,PVのメインキャストである司の心の動きだ。彼は自分の家柄や肩書に誇りを持ちつつ,同時にそれをプレッシャーにも感じているように見える。だからこそ,その重責に負けまいとがむしゃらに努力しているのだろう。それが頑固に映る場合もあるが,彼は自分が「すごい」と思えるものに対しては素直に認められるし,さまざまな経験から学びを得て,血肉にすることができる。【ハルサキ!Ride→ON】では,しばしば司の思い通りにならない場面が出てきてしまい,「どうすればいいのだろう」と深く落ち込んでしまう。責任感の強い……というか強すぎるくらいな彼らしい姿だと思う。
今回,颯馬とアドニスは捕物帳的な大活躍をした。そして,仕事の進行に関してさすがの立ち回りを見せたのが薫である。夢ノ咲学院を卒業してからの薫はいい意味で変化していて,今や「良い先輩アイドル」以外の何者でもないほどだ。もっともこれは,本来の「いい子」の姿に戻っただけなのだろうが。
そんな薫のとった行動でとくにいいなと思ったのがこの場面だ。みんなの意見が割れたとき,薫は多数決で意見をまとめようとする。だが,後半で司が無理を押し通そうとしたときは多数決でなく,「俺は疲れたからここで座って休もうっと♪ 司くんは勝手にしたら?」と,司も休憩ができるように促したのである。そうした臨機応変さや,導き方のさりげなさに「うまいな……」と唸らされた。
ちょっと余談だが,司が「何を食べたらそんなにポジティブになれるのか?」と薫に尋ねたところ,薫が「シーフードかなぁ?」と答えるシーンがあった。これを見て,【一戦!矜持示す天下布武】で鬼龍紅郎に「何を食べたらそんなにいい子に育つのか」と聞かれた颯馬が,「ふむ、魚であろうか?」と返したのを思い出した。海洋生物部のつながりを感じさせる,何とも心温まるシーンである。
一見共通点はありそうでない4人だが,読み終えてみて,本当にいい意味での「いい子」が揃ったメンバーだと感じた。たった一日ではあるけれど,彼らはお互いの良いところを再確認しながら,とてもすてきな時間を過ごせたのだろう。画面をとおして,夕焼けの温かい光が伝わってくるようなストーリーだった。
ストーリーピックアップ
「攻略!迷宮結ぶアリアドネの糸」
開催期間:2021年5月15日〜2021年5月24日(Basic)2021年5月15日〜2021年5月23日(Music)
――あらすじ――
地方ロケと聞いてロケバスに乗ったCrazy:Bのメンバー。だが,到着したのは【ミノタウロスの迷宮】というバラエティ番組の撮影現場だった。4人は景品を獲得するため,七種 茨が用意したさまざまなミッションに挑戦する。<全16話/シナリオ:木野誠太郎(Happy Elements株式会社)協力:日日日>
◆ストーリーのここをチェック!
いつの出来事? 時期をチェック
現在のところCrazy:Bは夏ごろの出来事を描いたストーリーが多く,その時期に当たるものには【アイドルロワイヤル】や【MDM】に出場した様子が描かれたメインストーリー第一部,「蜂蜜メーカーとの仕事」を行った【スカウト!ハニービー】,「Beehive」で2winkと合同ライブを行った【召しませ/ナイトクラブ】,暑気払い企画としてライブイベントを行った【陽炎◆夏の名残とホットリミット】がある。今作【アリアドネの糸】の時期は秋のため,それらのストーリーよりもあとの話だ。なお,今作冒頭ではHiMERUの本名がぼかされているが,フルネームはメインストーリー第一部第五章で確認できる。
七種 茨=いばにゃん
七種 茨が「いばにゃん」と呼ばれ,天城燐音が大爆笑したというTV番組【ボギータイム】については,【バラエティとタッグ/ボギータイム】を参照。番組ではRa*bitsとEdenが共演し,ユニットをまたいだ二人一組のタッグを組んでさまざまなゲームをこなす様子が放送された。いばにゃんの命名者はタッグ相手の紫之 創で,茨は創を「じめにゃん」と呼んでいた。このストーリーはわちゃわちゃしたおふざけ系かと思わせておいて,うっかり感動させられた(?)名作である。解説は過去記事を参照されたし。
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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第14回。スカウト!世紀末ウォーズ,バラエティとタッグ/ボギータイム!,SHUFFLE×夜の帳とバトラーを語る
Happy Elementsのアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」。そのストーリーを紹介する連載第14回では,「スカウト!世紀末ウォーズ」「バラエティとタッグ/ボギータイム!」「SHUFFLE×夜の帳とバトラー」の3本を取りあげる。
アラスカに食料を探しに行った椎名ニキ
トラップで出現した蛇を見て「毒蛇じゃないから食べられる」と言い放ったニキを見て,燐音が「アラスカに食材探しに行ったやつは違う」と笑う。そのエピソードは【Beyond!共鳴するツインピークス】で触れられており,寮でニキと同室の天城一彩が,不在にしていた彼について「料理コンテストとかのための材料集めをしなきゃ、などと言ってアラスカに飛んだよ」と話していた。
天照大神拳……??
今作【アリアドネの糸】で大量の牛(!)を前にして燐音が披露した「天照大神拳」は,以前,弟の天城一彩が故郷でやっていたと話していたことがある(【交差する/モーターショウ】より)。なお,これは現実世界には存在しない格闘術であり,空手部で一彩と手合わせした南雲鉄虎には「聞けば聞くほど胡散臭いッス」と言われていた。したがって作中においても,天城兄弟の故郷だけに伝わる流派だと思われる。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
Crazy:Bの活躍を描くストーリーも増えてきたが,ここにきてついにHiMERUにスポットが当たってしまった。この人はESのなかで “最も”と言っても過言ではないくらい,謎多きアイドルだ。けれど今作【アリアドネの糸】を経てもなお,HiMERUが何を秘めているのか(すみません,ちょっと洒落ました)はっきりしなかった。とはいえ,ほんの少しだけ彼について理解が進んだような気はしている。
物語冒頭,本名も素性も何もかもがバレていた夢を見てうなされるHiMERU。この夢の内容が真実かどうかは定かではない。だが,ひょっとしたらHiMERUは普段から悪い夢を見ることがあるのかもしれないなと思うと,こんなプレッシャーを抱えながらアイドル活動をしている心労は,実はとてつもなくしんどいのでは……という印象を受ける。
そしてCrazy:Bは,七種 茨が用意した「迷宮」に閉じ込められてしまう。なお,これはもちろん茨がただ【ボギータイム】の憂さ晴らしをしたかったわけではなく,もう一つの理由である「お茶の間に喜劇をお届けすることで『Crazy:B』は新規のファン層を開拓できる」という趣旨が主軸なのだろう。茨は自己の感情よりビジネスとしての目的を優先する人だと思うので,あれだけ嫌がっていたバラエティ番組が生み出す可能性を,自分が出演することで完璧に理解したのかもしれない。
そんなこんなで4人は自分の得意分野を生かしつつミッションを進めていき,迷宮のラストではHiMERUが「過去の扉」と「未来の扉」の選択を迫られる。これは非常に分かりやすく「過去=かつての成功(ソロで活躍していたHiMERU)」と「未来=これからの可能性(当然ながら,Crazy:BとしてのHiMERU)」のどちらを取るかだと思うが,ここでHiMERUはどちらかを捨てるのではなく,両方を手に入れようとする。「HiMERUならばそうしたはずだ」と考えて。
だが,仮に“「俺」が「本物のHiMERU」の代わりにアイドルをやっている”として,過去と未来の両方を手に入れることを選んだのは,あくまでも「俺」自身だ。その「俺」の意思決定には,「HiMERUならどうするか」という理由だけでなく,いつの間にか仲間になっていた3人の言葉と存在が,強い後押しになったのではないかと思う。
そして最後,ステージで“新しいアリアドネ”を4人で歌う「俺」は,「HiMERU」に向けてこんなふうに思いを馳せる。
この人は今,「俺」はすでに迷宮を脱し,光り輝く場所にいると考えている。筆者が解釈した彼にとってのアリアドネの糸=道しるべとなったのは,Crazy:Bの存在そのものだ。では,その彼が思う「HiMERU」はどのように迷宮を抜け,待ち続ける「俺」の元にたどり着くのだろうか。そしてそのとき,「俺」という自我の行方はどうなっていくのだろう。……それが,この先の彼の未来に用意された物語なのかもしれない。すべてが解き明かされるのはまだ先かもしれないが,今作を読んでますます彼の行く先に期待が膨らんでしまった。
ストーリーピックアップ
「SHUFFLE×Ringが誘う鐘の音」
開催期間:2021年6月15日〜2021年6月24日(Basic)2021年6月15日〜2021年6月23日(Music)
――あらすじ――
書店でプロデューサーが結婚情報誌を買う姿を見かけ,結婚してしまうのではないかと落ち込む高峯 翠たち。実は,プロデューサーはプロポーズをテーマとしたシャッフルユニットを計画していたのだった。<全15話/シナリオ:西岡麻衣子(Happy Elements株式会社)協力:日日日>
◆ストーリーのここをチェック!
いつの出来事? 時期をチェック
今作【SHUFFLE×Ringが誘う鐘の音】は秋のストーリー。結婚と言えばジューンブライドの印象が強い6月ごろが想像されるものだが,プロデューサー曰く「挙式の一番人気は秋」とのことで,この時期の実施になったようだ。
ウエディングドレスを着るアイドル……?
「180近い男の女装なんて絶対かわいくない」とぼやく高峯 翠。ちなみに彼の身長は179cmで,シャッフルユニットでは天祥院英智と同じ高さである。ほかのメンバーは蓮巳敬人が178cm,衣更真緒と月永レオがどちらも169cmとなっている。
また,作中でレオが「ワタルだったら完璧にかわいい女性になる」と言っているが,日々樹 渉(※180cm)はこれまでの舞台で何度も女性役を演じており,夢ノ咲学院入学前の真白友也が,渉を完全に女性だと思い込んでしまうエピソードもあった(「!」【追憶*マリオネットの糸の先】より)。さらに余談だが,今回のシャッフルユニットメンバーのなかでは,敬人が女装の経験済みである(「!」【なりきれ!灰かぶりの大舞台】)。
月永レオの妹・ルカたん
レオが溺愛する妹の“ルカ”。彼女は作中に登場したことこそないが,レオの話にはこれまでに何度も出てきている(初出は「!」の月永レオアイドルストーリー第一話)。ちなみに「!」の【スカウト!ブルーフィラメント】では,「妹が近ごろ色気づいている」と言い,まさか好きなやつでもできたのか? と,妹の学校に押しかけんばかりに取り乱したことがある。
特別講師・鳴上 嵐
シャッフルユニットメンバーとなったアイドルたちに,プロポーズの何たるかを特訓する講師として現れたのが鳴上 嵐だ。嵐は作中における前回のバレンタイン時期に“チョコづくりの講師”として,Ra*bitsやTrickstarの指導にあたったことがある(「!」の【感謝!ほろ苦ショコラフェス】【マーブル♥心を込めたショコラフェス】)。「がんばる男の子は世界の宝」という嵐の,口先だけではない面倒見の良さが素晴らしい。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
このコーナーは「筆者が心に残ったセリフを取り上げつつストーリーの感想を述べる」ことが趣旨だが,今作は心に残った言葉……というよりプロポーズのやばみがやばすぎて,スクショを撮る手が止まらなかった。みなさんは正気でいられただろうか。
と,それは一旦置いておくとして,今作は終始平和で,男子高校生らしい初々しさとアイドルならではの破壊力のマリアージュ(今,自分でもうまいこと言ったなと思った)が大変良かった。ということで,印象深かったシーンを順を追って振り返っていこう。
まず面白かったのが,“こんな上司あるある”な天祥院英智と衣更真緒の対比だ。上に立つ者としての責任を重んじ,ときには厳しいことも言う英智。だが,こういうタイプの上司の元で働いていると確実にスキルが上がるし,会社の経営にも良い結果をもたらすことが多い。一方,上司ではありつつも一人の人間として寄り添ってくれる真緒。会社務めは気苦労も多いので,こういう人がいてくれないと部下の心が折れる。この人のために頑張りたいと思わせてくれるところが素晴らしく,どちらも違って,どちらも良い。
それから,特別講師・嵐の「モデル業」と「結婚」への持論。正論すぎてびっくりした。いや本当に高校生ですか……?
また,今回のメンバーは初恋の相手が三者三様だったところも良かった。真緒も翠もレオも敬人も実に“らしい”というか,「でしょうね!!」と言いたくなる感じだ。これはぜひESアイドル全員にアンケートを取っていただきたい。ちなみに英智は「初恋はまだ」と答えていたが,本当にそうかはさておき,恋心を自覚したときの彼の心の中はちょっと覗いてみたい。恋に落ちてしまった自分自身を興味深く観察するのか,それとも,自分への好奇心など吹っ飛ぶくらい相手のことばかり考えるのかが気になるところである。
そしてお待ちかね,全員のプロポーズシーンである。新たなスチルとセリフが出てくるたびに口角が上がっていく自分がちょっと気持ち悪いなと思いつつ,面白いと思ったのが,プロポーズの言葉に彼らの所属ユニットのカラーがなんとなく出ているように感じられたところだ。
高貴さと多幸感に満ちた,fineの音楽のような英智のプロポーズ。
苦難もあるけれど,それさえも共に乗り越えていく紅月を思い出させる敬人の言葉。
レオのプロポーズからは,異なる音が重なり合って深みを増すKnightsのハーモニーが聴こえてくるようだ。
横に並んで手をつないで一緒に歩いていく真緒のプロポーズは,Trickstarの彼らしい。
翠の言葉は,互いの「好き」を認めあい,終わらないドラマを紡いでいく流星隊を思い出す。
……という感じだ。いやそれにしても,あらためて見ても破壊力がすごい。最高のシャッフルユニットでした。
ストーリーピックアップ
「スカウト!プリズンブレイカーズ」
開催期間:2021年7月14日〜2021年7月30日同時期開催イベント:芳香*忍ばせたフレグランス
――あらすじ――
とある個人的な目的のため,お金を貯めたい姫宮桃李と大神晃牙は,大掛かりな鬼ごっこをするTV番組「プリズンブレイカーズ」に出演することに。遊木 真と礼瀬マヨイとそれぞれタッグを組むのだが……。<全8話/シナリオ:西岡麻衣子(Happy Elements株式会社)>
◆ストーリーのここをチェック!
大神晃牙のスパルタは愛情の証
大神晃牙と遊木 真のコンビと言えば,最も印象深いのはやはり「紐なしバンジー事件」だろう(「!」メインストーリー第一部より)。学院に革命を起こそうとしていたTrickstarから相談を受けた朔間 零が,アイドルとして成長する特訓のために晃牙と真を組ませたのが始まりだ。
また,今作【プリズンブレイカーズ】で晃牙が姫宮桃李に「サーカスの特訓のときみたいに、もう一度ビシバシ鍛えてやろうか?」と言うが,こちらは作中で昨年度の春に行われた,fineのライブに向けての特訓を指している(「!」【幕開け!夢ノ咲サーカス】より)。このときの晃牙はプロデューサーの頼みで桃李の練習に付き合っており,何だかんだで面倒見がいいな……と思わされる。ほっこり。
巻き込まれ型アイドル? 礼瀬マヨイ
お頭(仙石 忍)のために……と思っていただけなのに,いつの間にか何かの集いに参加を余儀なくされる礼瀬マヨイ。【スカウト!デッドエンドランド】ではカフェのオープン記念イベントを手伝うことになり,あまりの人の多さに途中で調子が悪くなってしまったことがあった。しかし,その後の話と思われる礼瀬マヨイアイドルストーリー「それは、やがて大輪に」では,忍に誘われてあそび部のメンバーと興じたクッブで頑張ったりもした。そして今作【プリズンブレイカーズ】では,ついに自分からTV番組への参加を申し出て活躍するなど,成長の一途を辿っているように見える。
思い出す,あの名セリフ
番組「プリズンブレイカーズ」がスタートし,看守側となった姫宮桃李が放つセリフを聞いて,「!」のメインストーリー第一部の名セリフ「はしゃぎすぎだよ家畜ども」を思い出した人も多いのではないだろうか。こんなにかわいいアイドルから放たれるセリフの第一声がアレというのは,当時ものすごいインパクトがあったものである。
「!」
追ってくるマヨイの目から逃れるため,真と晃牙が段ボールの中に隠れる。このときに真が「こんな状態で潜入するス*ークはすごいよ」と言うが,これはゲーム作品「メタルギア」シリーズに登場するソリッド・スネークのことである。「メタルギア」シリーズのゲーム内容はざっくり言うと,スネークを操作してできるだけ敵から発見されないように任務を遂行するというもので(戦闘が可能な場合もある),隠れる手段の一つとして段ボールがあるのだ。なお,敵に見つかると「!」マークとともにSEが鳴るのだが,これがめちゃくちゃ心臓に悪いのである……。
姫宮桃李がもらったフィギュア
桃李が言うこのフィギュアのエピソードは,「!」の【スカウト!ミリタリー】を参照。これはサバイバルゲーム制作の参考動画が必要になった天祥院英智が,コラボキャラクターの非売品フィギュアをゲームの景品としたものだった。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
それにしても,ES所属となったアイドルたちは次々と活躍の場を増やしていると感じる。今回もめちゃくちゃ面白そうなテレビ番組が登場したが,これまでにアイドルたちが出演した番組や企画については,どこかでまたまとめてみたいと思う(以前の記事で途中までまとめたものもあり)。しかしこれらを見ていると,アイドルって歌って踊るだけじゃないんだなあ,大変だなあ……と痛感する。現実でもそうだけれど。
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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第15回。SHUFFLE×白雪たちのMerryXmas,スカウト!丑参り(前編),変身!星々を繋ぐコメットショウを語る
Happy Elementsのアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」。そのストーリーを紹介する連載第15回では,「SHUFFLE×白雪たちのMerryXmas」「スカウト!丑参り(前編)」「変身!星々を繋ぐコメットショウ」の3本を取りあげる。
今作【プリズンブレイカーズ】では,「あんスタ!!」ファンにはおなじみの名コンビ,真と晃牙VS.桃李とマヨイという,なかなか珍しい組み合わせのフレッシュなコンビの対決となった。どちらが勝ってもおかしくないハラハラする展開で,番組視聴率もかなり高かったのではないだろうか。
そして今回筆者が最も語りたいのは,なんといっても終盤の晃牙の話である。セリフそのものというより,彼の“決心”に胸を打たれた。ユニットの活動ではなく,個人として稼いだお金を貯めたかった晃牙は,その使い道を聞かれてこう話し始める。
これを聞いて,まるでかつての晃牙そのものでは? と感じた人は多いだろう。「!」の【追憶*それぞれのクロスロード】などで語られていたが,夢ノ咲学院1年生時の晃牙は,崇拝といっていいレベルで朔間 零に憧れていた。指導してくれ,と零を追いかけ回していた晃牙は,今晃牙のあとを追いかけている後輩の姿と重なる。本人が気づいているかは定かではないが,晃牙がかつて憧れてやまなかった存在に,口調や振る舞いだけでなく存在そのものが近づいた……と言えるのではないだろうか。
さらに胸熱なのが,晃牙はそんな若者たちのためにライブを開きたいと言うのだ。「ヒヨッコでも手っ取り早く経験値が積める」「ど素人でも飛び入りで参加できるような気軽なライブを」だなんて,どこまで後輩思いなのだろうか。さらにはそのライブのチケットを配る手伝いをすると,桃李と真とマヨイも揃って声をかけるのである。泣かせてくる……。
このライブがいつか実現したとき,いや,晃牙やほかのアイドルたちがこんなふうに考えてくれていると知っただけでも,後輩たちはめちゃくちゃうれしいはずだ。君たちは実にいい先輩に恵まれている(誰目線?)。
ストーリーピックアップ
「芳香*忍ばせたフレグランス」
開催期間:2021年7月15日〜2021年7月24日(Basic)2021年7月15日〜2021年7月23日(Music)
――あらすじ――
鳴上 嵐が愛用するブランド「カクテルピアノ」の香水プロモーションの依頼を受けたKnights。嵐はかつて香水を勧めてくれた椚 章臣に相談をしにいくのだが……。<全15話/シナリオ:木野誠太郎(Happy Elements株式会社)協力:日日日>
◆ストーリーのここをチェック!
いつの出来事? 時期をチェック
今作【芳香*忍ばせたフレグランス】の時期は秋。したがってKnights的には,夏ごろの【踏み出す行き先/ネクストドア】や,【白昼夢*微睡みのユーサネイジア】(こちらは秋ごろだが,作中の描写から【フレグランス】よりも前だと思われる)よりもあとのストーリーだ。なお【フレグランス】のラストで,椚 章臣が鳴上 嵐に“SSの後,年明けに仕事を頼みたい”という趣旨の言葉をかけるが,これは【SHUFFLE×月光ミラーボール】でのシャッフルユニットのことだと思われる。
※【月光ミラーボール】は後日の記事で解説予定です。
プルースト現象とは
ある“香り”がそれに関連する過去の記憶を呼び起こすことを「プルースト現象」と言う。これはフランスの作家マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の作中の,“紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間,その香りに幼少期の記憶が蘇った”という描写からきているらしい。何ともロマンチックである。
Knightsの「円卓会議」
今作【フレグランス】にも登場する「円卓会議」は,初出が「!」の【レクイエム*誓いの剣と返礼祭】だ。このときは嵐いわく,「いつからか、こうして炬燵に入ってだらだら喋るのを『円卓会議』だなんて高尚な呼びかたするようになった」とのことだった。しかし,【白昼夢*微睡みのユーサネイジア】では今後の方針を決める打ち合わせが「円卓会議(仮称)」とされていたことがあるため,雑談の側面もあるものの,きちんと議題がある話し合いがなされることも多いと思われる。
時差に苦しむ瀬名 泉
フィレンツェと日本との行き来で時差に苦しむ瀬名 泉。彼は体質的に繊細なのか,時差や寒暖差(というより暑さ)にも弱いようだ。そのダブルパンチに見舞われたのが,昨年度の夏の出来事である「!」の【リメンバー 真夏の夜の夢】だ。このときの泉はかなり調子が悪そうだったのだが,終盤のライブではきっちりとパフォーマンスをしてみせたのがさすがである。
「アイドル数珠つなぎ」
メンバーが香水を監修するシーンで,朱桜 司が「凛月先輩は、『Idol数珠つなぎ』でも撮影を楽しんでいましたよね」と言う。この「アイドル数珠つなぎ」の話は,【スカウト!スイートハント】に登場していた。これはアイドルがスマホで友達のアイドルを紹介して,紹介された人が次のアイドルを指名するという企画で,【スイートハント】によると,氷鷹北斗→衣更真緒→朔間凛月→(影片みか→鳴上 嵐)という流れがあったと推測される(カッコ内は確定ではない)。で,この番組はどこで観られるんでしょうか……!?
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
「あんスタ!!」に登場するアイドルたちの人間模様は複雑だ。誰と誰の仲がいいとか,因縁があるだとか。そのなかでも個人的にひときわ特殊(悪い意味ではない)と感じるのが,鳴上 嵐と椚 章臣の関係性だ。嵐は章臣への感情を“恋”だと表現することも多く,特定の登場人物に向けて明確に「恋愛感情である」としている間柄は,おそらくほかにはないはずだと思う。
この2人の共通点は,モデル経験のあるアイドルということだ。かつての嵐は章臣に憧れ,その姿を真似していたという。今作【フレグランス】の嵐の言葉によれば,その行為は「他人のアイデンティティを盗むみたいで、今じゃ感心しないやりかただとは思うわ。でも、あの頃はそれがアタシの拠り所だったの」とのことだ。
嵐と仲のいい影片みかによれば「最初に会ったときはもっと男らしかった」らしく,嵐はそのころのことを“黒歴史”と言う。だがそもそも嵐はモデルということもあって,自分をきちんと客観視できるタイプだと思うので,どうすれば自分がアイドルとして最も輝けるのかということに,章臣を通じて気づくことができたのかもしれない。
一方の章臣は,とくに昨年度は比較的厳し目の物言いが多く,誤解されがちな面もあったように思う。けれどあるときプロデューサーに,「彼ら(アイドルたち)を盛り立て、世間の悪意から守り、最大限に輝かせる。そのために、彼らに憎まれることを恐れてはなりません」と言っていたことがある(「!」【リメンバー 真夏の夜の夢】より)。
それまでにも薄々感じていたことではあったが,あの言葉を聞いて,やっぱりこの人の厳しさは一つの愛情の形であったのだなと理解できた。嵐はそういう章臣の“厳しい教師という仮面の下にある顔”を見抜いていたような気がする。恋愛関係ではないにしても,あの物語の終盤に下の名前で呼び合うシーンは,お互いへの信頼という意味で,彼らに特別なつながりがあると言ってもいいだろう。
今作【フレグランス】は,そこからおよそ1年と少しあとの物語だ。すてきなセリフはたくさんあったけれど,筆者が一番心を動かされたのは,エピローグの嵐の言葉だ。嵐は章臣との出会いに感謝しながら,今が一番幸せだと思う。そして,こう続けるのだ。
筆者が好きな嵐のいいところは,自分自身を心から愛していることだ。自分を認めて愛するのは難しいことだけれど,この人はそれを果たしているだけでなく,今が一番幸せだと認め,「だからこの先が怖い」ではなく「だからこれからも幸せ」だと言い切っている。憧れの人の真似をすることから卒業し,唯一無二の自分を愛し,その先の未来を恐れぬ心を手に入れた。この言葉を口にできるだけで,この人はなんて強くて美しいのだろうと感心させられてしまう。
物語のラスト,嵐は章臣に(直接ではないが)新しい香水を贈る。それは嵐が選んだ,どことなく昔の香りを引き継ぎつつ,いろいろな香りが複雑に混ざりあったものだ。個人的な解釈だが,章臣もまた「あんスタ!!」という物語のなかで成長を続ける存在の一人であると思う。彼らがこれから纏うのは,人としての根幹は変わらずとも,さまざまな経験を経て深みを増していく……そんな香りなのかもしれない。
少し長くなったが,最後にもう少しだけ。ここ最近のいわゆる「新曲イベント」は,実際のMVとストーリーがリンクしていて,読んでいてとてもうれしくなってしまう(今回で言う長回しの話など)。また,「Mystic Fragrance」のMVを観て感じたのは,Knightsは誰をセンターにするかでかなり表情が変わることだった。
筆者は,嵐をセンターとしたこの曲に,匂い立つ美しい花という印象を受けた。それは儚く散る短い命の花ではなく,いつまでも力強く咲き誇り,画面の外にまで芳しい香りを漂わせてくるようだと。
第25回記事もお楽しみに!
■たまお(ライター)■
エンタメ系フリーライター。音楽・ゲーム業界などでの社会人生活を経て,作品やキャラの素晴らしさを文章で伝えるためにライターへ転向。現在4Gamerにて「あんさんぶるスターズ!!」のストーリー解説記事を連載中。このほか追いかけ中のタイトルは「アルゴナビス」「スタマイ」「ツイステ」「ヒプマイ」「パラライ」「刀剣乱舞」「A3!」「まほやく」「ブラスタ」など。
◆Twitter(@tamao_writer)
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