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[SPIEL\'18]多人数ソロプレイといった風味が強い鉄道ゲーム「Railroad Ink」。手描きマップで自分が思う最強最適な交通網を作れ
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印刷2018/11/02 17:32

プレイレポート

[SPIEL'18]多人数ソロプレイといった風味が強い鉄道ゲーム「Railroad Ink」。手描きマップで自分が思う最強最適な交通網を作れ

 ボードゲームの歴史において「鉄道」は鉄板のテーマであり,これまで幾多の名作が生まれてきた。これはPCゲームにおいても同様であり,中にはPC鉄道ゲームの名作「Railroad Tycoon」が優れたボードゲームになった,という例すらある。

 これは逆に言えば,鉄道ゲームというのは競争の激しいジャンルということでもある。ことアナログゲームは古典的名作が今なお遊び継がれるということも多く,事実鉄道ゲームのジャンルにおいては「18XX」シリーズや「チケット・トゥ・ライド」など,今なお拡張セットや改訂版や新マップが出続ける人気作も多い。

画像集 No.002のサムネイル画像 / [SPIEL'18]多人数ソロプレイといった風味が強い鉄道ゲーム「Railroad Ink」。手描きマップで自分が思う最強最適な交通網を作れ
Railroad InkのDeep Blue Edition
 そんな熾烈な競争が続くジャンルに新たに参入した挑戦者が「Railroad Ink」(Hjalmar Hach, Lorenzo Silva)だ。現状,「Deep Blue Edition」「Blazing Red Edition」の2種類が存在するこの作品は,「Internationale Spieltage SPIEL'18」(以下,SPIEL'18)でも大規模な試遊卓が立ち,来場者からの注目度も高い作品となった。以下,ざっくりとその内容を紹介しよう。


バッティング要素ゼロの鉄道ゲーム


 Railroad Inkにおいてプレイヤーは,それぞれ「個別のマップ」(詳細は後述)上に線路(鉄道)と道路を敷く。盤外に存在する複数の「出口」を連結させていくことが第一の目標となり,原則的に言えばなるべく多くの出口を1つの交通ネットワーク(線路と道路を混合可能)でつなげると,より高い点が得られる。
 マップに対して線路や道路を敷く方法は,「直接マップに描き込む」方法が採用されている(鉄道ゲームにおいては比較的一般的なやり方だ)。マップは表面に特殊な加工が施されており,ホワイトボードマーカーで描き込みと消去ができるようになっている。

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ホワイトボードマーカーでマップに描き込むタイプのゲーム

 また,最初に「個別のマップ」と書いたとおり,本作ではほかのプレイヤーと競合する要素がない。プレイヤーは自分の望んだ通りに,自分の交通網を発展させていくことができる。
 このため本作は,「鉄道ゲームはヒリヒリするようなつばぜり合いが楽しいんだよね」という人には向かないが,「自分の思った通りのデザインをしたい」という方向性にはフィットする。
 このあたりのゲームの方向性の違いは,とくに鉄道ゲームにおいては(デザインとしても,プレイヤーの嗜好としても)露骨なくらいに顕著なので,購入ないしプレイの前に確認しておきたいところだ。

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プレイヤーがそれぞれの手元にかなり集中する(そして無言になる)ので,「和気あいあい」というのとは少し違うが,かなり気楽に楽しめる

 ちなみに本作には,前述のとおりDeep Blue EditionとBlazing Red Editionの2種類が存在するが,特殊ルール(およびそのために使うダイス)が違うのと,マップの彩色が違う(タイトルどおりに青と赤)だけで,基本ルールだけで遊ぶぶんにはどちらを購入しても同じだ。
 またプレイ人数は1〜6人でプレイ時間は20〜30分となっているが,プレイは完全に同時に行われ,またプレイヤーが相互に影響を与え合うこともないため,理屈の上では6人単位で最大プレイ人数を拡張できる(要するに2箱買って同時にプレイすれば最大12人で遊べる)。そしてプレイ時間もほぼ変動しない。
 ただし,後述するが,本作は「そのターンに振ったダイスの出目をプレイヤー全員が共有する」というシステムとなっている。そのため,ダイスの目を大型ディスプレイに投影するといった工夫なしで大人数でのプレイに臨めば,若干の支障を来す可能性が高い。


徹底して「他人と競う」要素を減らした作品


 本作のプレイシークエンスはいたって簡単だ。

  • ターンの開始時に,サイコロを4つ振る。これがこのターンに描き込める「線路」や「道路」となる(プレイヤー全員が同じサイコロの出目を共有する)
  • すべてのプレイヤーは,そのターンの出目に従って,自分の地図に「線路」や「道路」を描き込む
  • 7ターンが終わったところでゲーム終了,得点計算を行う

 実際にサイコロの出目がどうなるかは,下の写真を見てもらおう。

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太い白線が道路,細い黒線は線路。黒い四角は「駅」で,これによって鉄道と道路を連結できる(駅を介さずに線路と道路をつなぐことはできない)

 しかるにこの出目を使って,実際にボードに路線を描き込んでみた。

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描き込むにあたっては多少の制限はあるが,それほど面倒なルールではない。また,ボード上段の中央ラインは「このターンに出た出目をメモしておくライン」となっている。実際にプレイしてみると,このメモ欄はものすごく便利だ……というか,これなしでプレイするのはかなり厳しい。

 ボードに線路や道路を描き込むにあたって大事なのは,以下の4点だ。

  • 出目に表示されている線路や道路は,90度単位で自由に回転でき,また180度反転させても構わない
  • 既存の路線に接続しているか,盤外に描かれた赤矢印マスとつながっていなくてはならない
  • 4つの出目はすべて使わねばならない
  • 駅を介さずに道路と線路をつないではならない

 下3つは「〜でなくてはならない」系のルールで,それほど運用が大変なものではない。ただ最初のルールのうち「180度反転させても構わない」というのはゲームを始める前に強調しておいたほうがいいだろう。実際にプレイすると無意識のうちに反転させて路線を描くプレイヤーが大半になると思われるが,律儀なプレイヤーは反転を禁じ手にしたまま孤独に苦戦する可能性がある。

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交通網をどんどん拡大していく。盤外に見える赤矢印を相互に連結していくのが基本的な戦略となる

 また,上記に加えて本作には「特別ルート」が存在する。
 特別ルートは,ゲームボードの上端に6種類が描かれている。この特別ルートは通常のダイスによる4つのルートに追加してボードに描き込める。

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使った特別ルートには×をつけておく
 ただし,特別ルートは1ターンにつき1つしか使えず,1つの特別ルートは1ゲーム中に1回しか使えず,また1ゲーム内で合計3つしか特別ルートは使えない(このため一般論として言えば,「5・6・7ターンに1本ずつ使う」ことが多くなるだろう)。
 特別ルートは非常に便利なので,くれぐれも使い残しのないように注意したいところだ。なお使用した特別ルートは,ボードにチェックすることで管理する。

 勝利得点にはいろいろあるが,「全プレイヤーの中で連続した線路が最長ならボーナス点」的な要素は存在しない。「Longest Railway」「Longest Highway」と命名されているボーナスは,あくまで「自分が作った交通網のなかで,最も長い線路(ないし道路)」を参照する。
 ちなみに「どこにも通じていない線路や道路の終端1つごとに,1点のペナルティがある」というルールは忘れやすいので注意したい。筆者達も初見では見事に適用を忘れているし,似たようなミスはあちこちで起こっていた。

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このボードの左下に見える道路は,「どこにも通じていない終端」を複数有している。これらが1か所ごとに,1点の減点となる


柔軟な遊び方ができる「多人数ソロプレイ」ゲームの佳作


 Deep Blue Editionでは,この基本ルールに加えて,川と湖を追加する上級ルール(およびそれ専用のダイス)がある。

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川と湖専用ダイス
 川は,線路と道路に続く3番目のルートとして提供される。
 川は線路や道路に接続することができず,また盤外の赤矢印にも接続できないという,いささか不自由なルートである。
 ただし川を完成させる(赤矢印がない盤外マスどうしを接続する)とボーナスポイントが得られるので,「小さな川」を狙っていくのは面白そうだ。
 湖ダイスにはとくに何もない湖畔が描かれた面以外にも,「湖に面した駅(+線路ないし道路)」が描かれた面があり,後者に接続された交通網は,その湖に面するほかの駅とも接続することになる。またゲーム終了時には「最も小さい面積の湖」に等しいボーナスポイントが得られる。つまり理屈の上では「大きな1つの湖を作りつつ,なるべく多くの交通網をその湖へとつなげる」と,高得点になりやすい。

 本作は,あくまで「予定通りに行くかどうかはダイス目次第」なところがある。これは基本ルールの範囲内ですら言えることで,特定の出目が出てくれることを祈りながらも最後まで出ない,ということはよくある(とはいえ「どんな出目が出る可能性があるか」は手元のボードに全部描かれているので,初見でプレイしても見通しは立てやすい)。
 また拡張ルールを使う場合,6ターンで終了となるほか,「川(ないし湖)ダイスは使わなくても構わない」というルールがある。原則として,拡張ルールを使うなら追加されたダイスの出目も活用したほうが得点は高くなり得るが,絶対に使わねばならないというわけではない,というのはある意味で気楽だ。

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赤いバージョンは溶岩と隕石が導入できる

 本作は基本的に「多人数で同時にソロプレイ」なゲームであり,それゆえに遊んでいて空気がギスギスするようなことはまず起こらない。一方で,ほかのプレイヤーと積極的に競ったりする感触も皆無なので,人によっては展開が淡白だと感じることもあるだろう。
 このあたりは完全に好みの問題であり,どちらが良いというものではない。ただ,人数の受け入れが柔軟で,展開が早く,かつ人数によって終了時間が変化することもない本作は,少なからぬゲーム会において「持ってきておいて損はないゲーム」になり得る。パッケージが小さく軽いことも含めて,「合間にちょっと楽しむ」には最適な作品の一つと言えるだろう。

「Railroad Ink」公式サイト


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