レビュー
「ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜」レビュー。シリーズのキャラ達が織りなすドラマだけでなく,遊びやすく奥深いシステム面も注目
本作は,コーエーテクモゲームスのガストブランドが展開する「アトリエ」シリーズの最新作だ。本シリーズは舞台と主人公を変えながら22年ほど続いており,舞台となる世界ごとに2〜3部作に分かれている。タイトル名は「(主人公名)のアトリエ 〜(世界名)の錬金術士〜」となるのが通例だ。
ルルアのアトリエは,2009年の「ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜」から始まる「アーランド」シリーズの最新作となる。もともと3部作だったアーランドシリーズだが,本作は22年の歴史の中で初めての4作目であり,前作「メルルのアトリエ 〜アーランドの錬金術士3〜」から時間を経た世界を描くことが,テーマの1つとなっている。詳しくはインタビューをチェックしてほしい。
そうした背景があるだけに,キャラクター達が織りなすドラマをより楽しむには,これまでの3作をプレイしておくことをオススメしたい。もちろん,本作単体で独立した1本のRPGとして遊べるので,本作から入って過去作を遊ぶというのもアリだろう。
キャラクターデザインを担当する岸田メル氏のタッチを,そのまま再現したかのようなグラフィックスは,本作でも健在。水彩画のような淡い色合いで描かれたルルア達が活躍する様は,まるでイラストが動いているかのようだ。
ネタバレにならないよう,物語の詳細を語ることは避けるが,錬金術士である主人公のルルアが,ある日手に入れた謎の古文書「アルケミリドル」を解読しながら,母であるロロナのような立派な錬金術士を目指して旅をし,そこでさまざまな人々と出会って成長していくというのが物語の大筋だ。ルルアの幼馴染みで彼女を見守るエーファ,最強の剣士を目指してまい進するオーレル,飄々とした手品師のフィクスといった個性豊かな面々が,笑いあり涙ありの道中を繰り広げる。肩肘張らずに楽しめるストーリーとなっている。
主人公のルルアは成長途中の錬金術士。考えるより先に身体が動くタイプだ |
エーファはルルアの幼馴染み。一見おしとやかだが,戦闘では巨大な大砲を軽々と振り回す |
シリーズ4作目ということで,旧作でロロナやトトリ,メルルに関わった場所や人々が多数登場し,進化・成長した姿を見せてくれる。例えば,ルルアの師匠であるピアニャは,前々作「トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜」において,生贄にされそうになっていたところを,トトリに救われた少女である。同作ではロロナから錬金術を教わる様子が描かれていたが,今では立派に成長してルルアという弟子を取るに至ったというわけだ。
また,メルルが発展させたアールズで,親友のケイナが役人として働いていたり,アーランドでは,内気だったリオネラが踊り子として大成し,喋る人形だったホロホロとアラーニャがその姿を静かに見守っていたりと,旧作を知っている人にはグっとくる展開もある。
皆がそれぞれの道を歩んでいる姿が描かれており,アーランドシリーズの“その後”を知りたいファンには嬉しい内容だ。
トトリに救われたピアニャは,成長してルルアの師匠になるほどの腕前に |
メルルの親友でお世話係だったケイナは,今では立派な役人に。アールズを切り回している |
謎の本「アルケミリドル」で遊びやすく
「アトリエ」シリーズにはシミュレーション寄りとRPG寄りの作品があるが,ルルアのアトリエは後者だ。作品によってはゲームの進行に時間制限が設定されているが,本作にはそれもなく,自分のペースでノンビリとプレイできる。
さらに本作は,新システム「アルケミリドル」によってこれまで以上に遊びやすくなっている。
アルケミリドルとは,ルルアが困ると,タイミング良くアドバイスや錬金術の知識を授けてくれる,怪しげな書物だ。ただし,アドバイスは所々がボカされているため,ヒントをもとに「キーワード」を探していかなければならない。キーワードとなる行動は「アイテムの入手」「魔物の討伐」「特定の行動を繰り返す」「特定の場所へ行く」などさまざま。そのページ内のすべてのキーワードが揃うとアルケミドルを「解読」でき,錬金術のレシピが手に入ったり,新たな場所へ行けるようになったりする。
つまり「アルケミリドルが提示するお題をこなしていけばゲームが進む」わけで,非常に分かりやすい。要所がボカされている辺りは,昔のゲーム雑誌や攻略本を片手に遊んでいるような感覚もあり,懐かしい日々を思い出してしまった。
錬金術でアイテムを調合
アイテム図鑑を埋め,望む特性を持つ品を作り出す
本作でも重要なのが「錬金術」。フィールドなどで入手できる材料を「調合」で組み合わせることにより,新たなアイテムを作り出すものだ。調合で作り出したアイテムは,戦闘から採取まであらゆる局面で活躍してくれる。
錬金術では,素敵な装飾品から摩訶不思議な魔法の品,そして回復効果を持つご飯やスイーツまで,さまざまなものを作り出せる。一度調合した品はアイテム図鑑に登録され,会話(漫才?)形式の解説も付いているため,新しいアイテムを作っていくだけでも楽しい。この辺りは「アトリエ」シリーズならではの魅力であり,歴代作のファンも満足できるだろう。
レシピは参考書を読んだり,アルケミリドルを解読したりすることで増えていく。いろいろと試してレシピを増やし,どんどん調合して,アイテム図鑑を充実させていきたいというモチベーションが湧いてくる。
調合を行うには材料が必要だ。フィールドのあちこちにキラキラと輝くポイントがあるので,ここから材料を採取していく。「つりざお」を作れば水辺で魚が釣れ,「つるはし」や「発破用フラム」を作れば岩などから鉱石類が採れるなど,できることが広がっていく。また,こうして入手した新しい材料があれば,新たなアイテムも作れるようになるのだ。
こう書くとアイテム収集がややこしそうだが,レシピで求められるのは特定の材料だけでなく,「(木材)」「(食材・野菜)」といった,ざっくりとしたカテゴリの場合もある。レシピに記されたカテゴリが(食材・野菜)なら,にんじんのような「カロッテ」,カボチャのような「カタイモ」,果ては野菜を原料とした「おいしそうな練り餌」など,野菜であれば何でもOKといったことも。序盤のうちは,フィールドのアイテムを片っ端から採取していけば材料には困らないだろう。
材料が持つ「特性」を意識すると,調合がさらに楽しくなる。特性とは,アイテムに秘められた力のことで,「特性を持つ材料を使って武器やアイテムを作れば,その特性を完成品に引き継げる」というメリットがある。ハックアンドスラッシュ系RPGにおける,装備品のオプションのようなものだ。
コウモリ系の魔物に苦労するなら,コウモリ系の魔物に必ずクリティカルヒットする特性「コウモリ特攻」を持つ材料を調合して,それをもとに武器を作ってもらえばいい。また,本来ならMPを回復する「知恵熱シロップ」に,HPとMPが徐々に回復する「森の癒やし」の特性を付けたり,お小遣い稼ぎのために店で高く売れる「高値」の特性を付けたりといった具合に,いろいろと応用できる。
こうなると,考えつくだけの特性を持ったアイテムを作りたいが,そうは問屋が卸さない。アイテムを作るのに使う材料は主にフィールドで採取するが,その材料に特性が付いているかどうかはランダムなのだ。望みの材料を手に入れるには,とにかく採取を繰り返さなければならない。さらに,高度な品を作るためには,2度3度と調合を繰り返す必要もあるため,計画的に特性を付与していくことが重要だ。
例えば,「命札フリューエル」という武器に,うさぎ系の魔物にクリティカルヒットする「うさぎ特攻」の特性を持たせたいとしよう。この札の材料は「ツィンク」「ゼッテル」「(武器素材)」「(薬の材料)」で,いずれかの品にうさぎ特攻の特性が付いていればいいことになる。この特性を持つ鉱石を掘り出し,これを使って中間材料のツィンクを調合し,(武器素材)と(薬の材料)を組み合わせれば,望みの品ができるというわけだ。
「装備へ特性を付与できる」「自分でアイテムを作り出せる」というアイデア自体は,ほかのRPGにも存在する。本作ではさらに,「鉱石や草木など,材料そのものが特性を持っている」「材料を自分で集め,ツィンクなどを中間材料にし,ここから最終的な品を作る」要素を追加しているのが特徴的だ。もの作りの楽しさを存分に味わえる,「アトリエ」シリーズらしい味付けと言える。
「アシストスキル」「インタラプト」で派手なバトルを堪能
戦闘システムにも触れていこう。本作の戦闘はコマンド選択式で,素早さの順に敵味方が行動していく。
パーティは前列3人+後列2人の計5人で編成され,プレイヤーは前列3人のみを操作する。ルルアは杖でブン殴り,エーファは大砲をぶっ放し,オーレルが剣で切り裂く……といった具合で,コマンドを選ぶ度にカッコイイ演出を楽しめる。
「アシストスキル」と,新システム「プライマルアーツ」「インタラプト」を使いこなせば,戦闘はさらに派手かつ戦略的な展開となる。
前衛が特定の条件を満たすと,後衛のキャラクターが連携してくれるのがアシストスキルだ。発動条件や効果はキャラクター毎に異なっていて,ルルアは「隣接する前衛が敵にスキルで物理ダメージを与えると,跳び蹴り(キュートスター)で攻撃する」,オーレルは「隣接する前衛の仲間が状態異常を受けると,これを解除してくれる(浄化の印)」といった具合。複数人の条件を同時に満たせば,前列1人の攻撃+後列2人のアシストという連携も可能だ。演出が派手なうえ,戦闘も有利になるのが嬉しい。
プライマルアーツは,前衛のキャラクターを特定のメンバーで編成すると特殊効果が発動するというものだ。スキルを使う際の消費MPが減ったり,バフが長く持続したりといいこと尽くめなので,しっかりと利用していこう。
本作の戦闘は素早さの順に敵味方が行動するが,錬金術士はインタラプトによって,自分のターンに関係なく割り込んでアイテムを使える。「ネルケと伝説の錬金術士たち 〜新たな大地のアトリエ〜」でのサポーターの錬金術士による,必殺技発動に近いシステムだ。
インタラプトを使うには,ターン経過に応じて溜まるゲージが必要となるが,効果は絶大。攻撃→アシスト→1人目インタラプト→2人目インタラプト……とたたみかけ,危険な敵が行動する前にブレイク状態(行動不能状態)に追い込むようなことも可能だ。
また,インタラプトで使ったアイテムは無くならないため,普段と違った活用ができる。例えば「使用回数は少なくなるが一撃の威力を増す」といった特性を持つアイテムは,普段は使うとすぐになくなってしまうが,インタラプトなら効果的に使えるのだ。
本作は,4作目ということでシリーズを知っている人向けに思われるかもしれないが,初めてでもとっつきやすい作りになっている。イラストのようなキャラクターがそのまま動く画面や,個性的な面々が織りなすドラマは見ているだけで楽しい。システム面も,アルケミリドルがプレイの目標を提示してくれるので,非常に分かりやすい。戦闘も,画面の派手さとテンポの良さを両立した気持ちの良いものだ。
「アーランド」シリーズの続編として期待しているファンも,本作から「アトリエシ」リーズに触れる人も,ぜひ楽しんでほしい。
「ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜」公式サイト
- 関連タイトル:
ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜
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ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜
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