プレイレポート
[TGS 2018]「N1RV Ann-A」デモ版プレイレポート&開発者インタビュー。大幅に自由度が上がったカクテルで,漫画家の女性を満足させよう
Sukeban Games「VA-11 Hall-A」公式サイト
本作は,2016年にリリースされて高い評価を得た「VA-11 Hall-A」(ヴァルハラ)の続編となるタイトルだ。プレイヤーは,バーテンダーとしてさまざまな人々の話を聞き,街に暮らす人々のいろいろな思いを知ることになる。
2018年9月19日に,パブリッシングを担当するアクティブゲーミングメディアから突如として発表され,いきなり東京ゲームショウ2018への出展が決定した本作。どのあたりがどう変化したのか,気になっている前作のファンも多いはず。
というわけで,本作のプレイレポートをお届すると同時に,記事の最後にSukeban Gamesの開発者,フェルナンド・ダーマス氏へのインタビューも掲載した。
本作の舞台になるのは,巨大企業に支配された人工島「セイント・アリシア島」で,主人公は,高級バー「N1RV Ann-A」のバーテンダーを務めるサマンサ,通称サムだ。
サムは高級バーのバーテンダーだけあって常に余裕があり,言葉の端々に優しさが感じられる女性だ。既婚者で,8歳の子供を持つ母親の顔も持っている。
今回の試遊では,バーを初めて訪れるという漫画家の女性パルカ(ペンネームらしい)とのやり取りが楽しめた。彼女は現在,母と子を題材としたいわゆるエロに分類される漫画を描いているそうだ……。
ネタバレを避けるために詳細は書けないが,本作独特の会話のテンポ感や,ちょっとした合間に挟まるジョークなど,独自の空気感は健在だ。
舞台が高級バーに移っても,エグい下ネタに対する,ある意味真摯な姿勢は前作を引き継いでおり,会話の内容はかなり大人向けだ。このへんはプレイヤーを選ぶかもしれないが,ゲームの世界に現実感を生み出す重要な要素となる。
ゲームシステムも前作と同じく,客の好みに合ったカクテルを作り,話を聞くこと。ただし,サムの店は高級なので,ケミカルな調味料を合成して代替的な飲料を提供していた前作とは異なり,今回はまともなカクテルを作れる。
フレーバーの量は前作に比べて大幅に拡張されただけでなく,各種アイコンもさらに描き込まれて見た目にも美しくなった。また,シェイカーを振るときにはマウスを上下して,サムに振らせる必要がある。面倒にも思えるが,こうした演出を挟むことで,サムへの親近感を覚えるはずだ。
飲み物を提供するとき,左にレシピが表示されるが,これはあくまで参考で,レシピを無視しても,客に合った飲み物であれば満足してもらえる。何度かプレイしたところ,カクテルが変わるたびに新しい反応が見られた。
パルカが店をあとにすると,デモは終了だ。今回の試遊の目的はパルカに「今日は良い一日だった」と言ってもらうことで,そのためにいろいろな調合を試す必要がある。軽くヒントを書くと,バーだからといって,客にアルコールを出さなければいけないキマリはない,というところか。
本作の主人公は普通の人間で,特殊な能力は何も持っていない。そのため,主人公が積極的に行動して問題を解決するわけではなく,お客の問題は,店に入る前も出た後も存在し続ける。主人公が与えられるのは,客それぞれに合ったカクテルだけだ。
こうした個人の視点で,街の片隅から世界を描くというスタイルは前作を踏襲しており,「VA-11 Hall-A」を楽しめた人は,本作も楽しめるだろう。今のところ変更点としては,上記のようにシステムとグラフィックスがブラッシュアップされ,主人公の優しさとおっぱいが増量されたぐらいだ。ただ,あくまでも開発途中なので,今後,どのような変更が加えられるかは分からない。
どのような物語が描かれるかについても,試遊では不明だ。前作は,登場するキャラクター同士の相関を理解して初めて,内なる物語が紐解けてくるという作品だった。
発表によれば,サムにはレオンという夫がいるが,試遊では名前も登場しない。製品版ではどんな個性あふれるキャラクター達が登場してくるのか,ぜひ期待して待っていたい。
最後に,Sukeban GamesのCEO,フェルナンド・ダーマス氏に短時間ながら話を聞く機会を得たので,以下に掲載して本稿の締めとしたい。
フェルナンド・ダーマス氏インタビュー
前作のキャラクターが何らかの形で登場するかもしれない
4Gamer:
お忙しい中,ありがとうございます。まず,最初のデモを東京ゲームショウに出展した理由を教えてください。
フェルナンド・ダーマス氏(以下,フェルナンド氏):
ビルドを作ったタイミング的に,東京ゲームショウが良い機会だったことが大きな理由です。日本に出すのであれば,やはり日本語を搭載せねばならないということで,今回のような形になりました。
4Gamer:
開発はいつ頃から開始されたのですか。
フェルナンド氏:
開発に取り掛かったのは9か月ほど前ですが,それ以前にも「Unity」での開発に慣れるため,しばらくあれこれと練習していた期間があります。
4Gamer:
ストーリーやシステムは,どういったコンセプトで制作しているのですか。
フェルナンド氏:
システム面では,「VA-11 Hall-A」のさまざまな要素を拡張したいと考えています。カクテルの種類もそうですし,対応によって変化する客の反応についても同じです。以前にも増して,幅のあるゲームプレイが楽しめることを目指しています。
ストーリーについては,なんといいますか……。実は,僕が日本に移住したときのカルチャーショックを元にして作っています。
4Gamer:
と,いいますと。
フェルナンド氏:
移住したばかりの僕にとって,日本はパラダイスでした。でも,長く住めば日本ならではの問題も見えてきます。分かりますよね。舞台になる人工島「セイント・アリシア島」は見たところパラダイスですが,その裏には……ということです。
4Gamer:
試遊では,日本人オタクとして耳が痛い部分がありました。
では,キャラクターについてはいかがでしょうか。前作キャラクターの登場を期待しているファンも多いと思いますが,そういった意味で,なんらかのつながりは用意されていますか。
フェルナンド氏:
たぶん,そういった要素も入ると思います。前作が大きな反響を得ているので,ここで「誰も出てきません」と言うのもかわいそうですから。
4Gamer:
前作では,インディーゲームの「2064: Read Only Memories」とのコラボレーションとして,互いのキャラクターが互いの作品に登場するシーンがありました。本作ではどうですか。
フェルナンド氏:
現状ではまだ分かりません。ただ,僕自身はコラボをやってみたいと思っています。
4Gamer:
リリースの時期を教えてください。
フェルナンド氏:
現状では2020年,としか言えません。
4Gamer:
では最後に,日本のファンに向けたメッセージをもらえますか。
フェルナンド氏:
まず,会場に来てこのビルドを遊ぶときは,飲み物をレシピどおりに作る必要はまったくありません。プレイの様子を見ていたのですが,みんなレシピ通りに飲み物を作っています。もっと自由にドリンクを作ってください。クレイジーな実験をしてみても問題ありません。
4Gamer:
レシピから外れたとき「サムズ・チャンポン」(失敗作)になってしまったので,ついつい正解を探していました……。
フェルナンド氏:
ああ,すみません。まだ開発途中なので,バリエーションを受け入れる余地が狭く設定されているのですが,いずれ改善される予定です。
レシピに縛られないでください。普通のカクテルになっていなくても,お客さんの要望に沿っていれば問題ないんです。
4Gamer:
開発でどんどん拡張されていくというわけですね。
フェルナンド氏:
もちろん。 まだシステムは完成に至っていないので,これから構築を進めていきます。期待していてください。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
4Gamer「東京ゲームショウ2018」特設サイト
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