イベント
eスポーツが脊髄性筋萎縮症(SMA)の当事者に果たす役割とは。疾患啓発を目的とした「SMA eスポーツチャレンジカップ」のセッションをレポート
このイベントは「脊髄性筋萎縮症」(SMA)とともに生きる人達のスポーツ体験,およびSMAの疾患啓発を目的として開催されたもので,競技には「ぷよぷよeスポーツ」(PS4/Switch/PC)が採用された。
本稿では,SMAの解説や,SMA当事者がeスポーツに取り組むにあたって必要となるサポートなどの紹介がなされたイベントの第1部をレポートする。
SMAの解説は,国立病院機構北海道医療センター 神経筋/成育センター 診療部長 石川悠加氏が行った。SMAとは,運動のために使用する筋肉をコントロールする神経に影響を及ぼす疾患だ。徐々に筋力が低下し運動機能が失われていくため,早期の診断が重要となるが,筋ジストロフィーなど似たような症状の疾患と誤診されることもあるのだという。
SMAには生後直後から6か月までの間に症状が現れるI型から,成人期に表れるIV型まであり,それぞれ臨床の程度が異なる。また,筋力が低下するSMAだが,指先など末梢の筋力は保たれやすく,さまざまな活動をできる可能性があることも紹介された。
続いて,今回のイベントの発起人であるAGLGAMERS 代表でSMA当事者の吉成健太朗氏と,国立病院機構北海道医療センター 作業療法士 田中栄一氏,そして石川氏の3名によるSMAとeスポーツをテーマにしたトークセッションが行われた。
まず「eスポーツは障害のある人達や医療の現場において,どのような役割を果たすのか」という質問が投げかけられた。田中氏は「ゲームをプレイしたいが,手が不自由でキーボードやマウス,コントローラによる操作が難しいという人達がいる。そういうときにどこに相談したらいいのか分からない」という現状があるのだという。
しかし,各自に合ったデバイスなどを活用すればeスポーツのオンライン対戦も可能となる。病室や自宅でもゲームを楽しめるので,出会いが増えたという人も少なくないのだそうだ。先ほど,石川氏が語ったようにSMAはタイプによって障害の程度が異なるが,指先など末梢の筋力は保たれやすいため,ゲームやeスポーツであれば誰でも一緒に楽しめるという。
一般的なeスポーツ大会は,使用するコントローラには,不正防止のためレギュレーションが定められている。しかし,今回のSMA eスポーツチャレンジカップでは,“参加者支援プログラム”を用意することで,デバイスフリーかつオンラインで全国どこからでも参加可能な大会を実現した。
具体的には参加者に対して,デバイスの個別支援や貸し出し,NTT東日本のeスポーツチーム「TERAHONES」によるコーチングといったサポートを行ったそうだ。田中氏は,個別支援を担当し,SNSを活用した参加者との情報交換や,操作可能なスイッチの選択・確認などをしたという。
「SMA当事者として,eスポーツ大会に参加してみた感想」を問われた吉成氏は,「SMAによって外出が難しいため,以前は外部の人達と接触する機会が少なかったけれども,eスポーツに関わってからは多くの人達と同じ空間を共有できるようになった」と答える。吉成氏は,複数のeスポーツ大会に参加した実績を持ち,大会を通じて知り合った人達は,吉成氏がSMA当事者であることを明かしても,それまでと同様に遠慮なく勝負してくれるそうで,お互いにフラットな関係を築けているそうだ。
「SMA当事者がeスポーツに参加することの意義」を問われた石川氏は,SMA当事者には高い知能の持ち主が多いことを指摘し,加えて高いコミュニケーション能力を持っている人も多いように感じるとコメント。SMAは珍しい疾患ということもあり,これまでは世間の正しい理解を得るのが難しかったが,今回のようなeスポーツイベントをきっかけに理解が進んでいくのではないか,ひいてはほかの疾患に対する理解も深まっていくのではないかと期待を語った。
最後は,「バイオジェンのSMA啓発活動について感じること」という質問が投げかけられた。石川氏は8月に開催された「SMA Month オンライン講演会」に言及し,多くの人達が視聴したことから,これまでにない大きな力を感じたと語る。
吉成氏は,情報やサポートがあればSMA当事者にも実現可能なことがたくさん存在するので,世間一般にSMAが理解されるよう情報を提供する機会を設けてもらえるのはありがたいことだと捉えているという。
2人の発言を受けた田中氏は,新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により人々が在宅で仕事や学習をする機会が増えていることを指摘。情報や事例を公開・共有して各自の活動に活かしていく状況も増えており,それがひいてはSMA当事者への追い風になっているとして,トークセッションをまとめていた。
バイオジェン・ジャパン公式サイト
- 関連タイトル:
ぷよぷよeスポーツ
- 関連タイトル:
ぷよぷよeスポーツ
- 関連タイトル:
ぷよぷよeスポーツ アーケード
- 関連タイトル:
Puyo Puyo Champions / ぷよぷよeスポーツ
- この記事のURL:
キーワード
(C)SEGA
(C)SEGA
(C)SEGA
(C)SEGA