インタビュー
「スターレネゲード」開発者にメールインタビュー。グランディアやクロノトリガーなどの影響も色濃い,ターン制RPG制作へのこだわりを聞いた
カナダの独立系開発会社であるMassive Damage Gamesが開発し,2020年9月にRaw FuryからPC英語版や海外向けコンシューマ版が,2021年4月28日にはEXNOAのゲームブランドであるDMM GAMESから日本語版がリリース。独特のアートスタイルや戦術的なターン性バトル,プレイするたびに変化するマップに繰り返し挑戦するゲーム性が好評を得ている。
日本語版リリースを迎えた本作について,Massive Damage GamesのCEO/Co-Founderであるケン・セト(Ken Seto)氏と,その弟でCo-Founder / Studio Directorのジェリー・セト(Gerry Seto)氏にメールインタビューを行った。スタジオ設立やゲーム開発の経緯,アートスタイルへのこだわり,大きな影響を受けたというSF映画や日本のゲームなどについての話を聞いたので,本稿にてそれをお届けしよう。
CEO/Co-Founderのケン・セト(Ken Seto)氏 | |
Co-Founder / Studio Directorのジェリー・セト(Gerry Seto)氏 |
「スターレネゲード」公式サイト
ターン制バトルRPG「スターレネゲード」の日本語版をプレイ。敵の動きを分析して最善の選択を思考する,行動タイムラインによるバトルが特徴
EXNOAが2021年4月28日に発売する「スターレネゲード」のPC日本語版を先行プレイ。銀河を舞台とした帝国軍と反乱軍の戦いという“古き良きSF”の雰囲気あるテーマ,ピクセルアートによる個性的なグラフィックス,敵の行動予定を確認しながら自身の一手を決めるバトルが特徴のターン制バトルRPGだ。
2Dと3Dの“ハイブリッド”なアートスタイルと,
JRPGの要素を感じさせるゲームシステムを選んだ理由
4Gamer:
自己紹介もかねて,スタジオを設立するまでのゲーム開発者としてのキャリアを教えてください。
ケン・セト氏:
Massive Damage Gamesの設立は2010年で,弟と一緒に立ち上げました。最初は位置情報を用いたゲームエンジンを開発するのが目的でした(これは「ポケモンGO」がリリースされる6年前の話です!)。
私たちが初めてリリースしたゲームは,「Please Stay Calm」という位置情報を使ったモバイル向けのMMORPGで,300万以上のダウンロード数を記録し,会社が成長する上で大きな力となりました。「Please Stay Calm」の成功から,私たちはモバイル向けからPC / コンシューマ向けのゲーム開発に路線を変更しました。私たちのチームはあまりモバイルゲームが好きではなかったので。
4Gamer:
なぜ兄弟で開発スタジオを立ち上げたのかも気になります。その前から一緒に仕事をしていたのですか。
ケン・セト氏:
実は弟のジェリーは,Massive Damage Games立ち上げ前から一緒に仕事をしているんです。もう20年以上になるでしょうか。Massive Damage Gamesの前,2008年にアプリケーション開発会社のEndloopを共に立ち上げたのですが,それ以前からも同じコンサルタントやIT企業で働いていました。
EndloopではiOS向けアプリである程度の成功を掴んだのですが,2人とも「やはりゲームが作りたいね」と思いました。そうしてMassive Damage Gamesを新たに設立し,モントリオールの「Year One Labs」というスタートアップ支援プログラムに参加して,投資家から資金を得ることで「Please Stay Calm」を開発したというのが,私たちのスタジオの始まりですね。
4Gamer:
Massive Damage Gamesの1作目「Halcyon 6: Starbase Commander」もSFがテーマで,動きのあるドット絵のグラフィックスが特徴の作品ですが,2作目となる今回もなぜ同じようなスタイルの作品を作ろうと思ったのでしょうか。
ケン・セト氏:
まずテーマですが,もともとはスペースバイクを使ったヘックスベースの戦闘ゲームというアイデアだったのが,それが思い通りにいかず,白紙に戻して作り直したのが今のスターレネゲードで,SFになったのはそういう経緯からです。
(グラフィックスについては)私たちは最近のピクセルアートや,それを用いて次のレベルのゲーム表現を生み出しているデベロッパたちに深い感銘を受けたからですね。それで私たちも,よりユニークなピクセルアートスタイルを作り出したいと。そうして独自の2DXエンジンを開発し,2Dと3Dの“ハイブリッド”なピクセルアートスタイルのゲームを制作したんです。私たちと同じようにピクセルアートが好きなゲームファンや,ユニークなアートスタイルを求めている人たちに,興味を持っていただけるのではないかという期待もありましたね。
4Gamer:
お二人はそれぞれ,今回の作品の何を担当されているのですか。
ケン・セト氏:
私はCEOとして,プロジェクトのクリエイティブに関する全体的な方向性の監修や,マーケティング,コミュニティ構築の活動などを行うことが主な仕事ですね。ほかにもプロジェクトのため,各方面へゲームを売り込んだり,パブリッシャや投資家との資金調達契約を結んだりしました。
他のインディーズゲームスタジオの責任者たちと話すことも多かったです。この困難な時期を乗り越えるうえで,お互いの助けになるような知識を共有し合いました
ジェリー・セト氏:
私はリード・プロデューサーとして,ゲーム全体のディレクションや,チームの日々のタスクなどの管理を担当しました。
4Gamer:
制作期間と制作チームの規模を教えてください。
ジェリー・セト氏:
試作期間を除けば2年半くらいですね。フルタイムのメンバー8人でスタートし,途中からさらにスタッフを増やしたり,外部の制作者に声を掛けたりました。(海外での)パブリッシャのRaw Furyにも本当に多くの協力をいただけました!
4Gamer:
世界観やストーリーについて教えてください。どのようなコンセプトをもってゲームの世界を作り上げたのか,物語のテーマとなっているものなどを知りたいです。
ケン・セト氏:
複数の世界線を侵略している帝国「インペリウム」という巨大な敵に反乱軍として立ち向かう,宇宙を舞台とした壮大なSFアドベンチャーです。コンセプトとして,反乱軍が勝つ(または負ける)と帝国が新たな世界線を侵略するので,前とは異なる世界線であらためて帝国を止めなければならない,というのがあります。
こういった形でローグライク的な要素を活かして,プレイするたびにマップの形や敵の配置が変化し,繰り返し新たな冒険に挑めるというゲームサイクルを用意したんです。
4Gamer:
帝国軍と反乱軍の戦いというと,とあるSF超大作が思い浮かびますが,世界観を構築するうえで影響を受けた映画や小説,コミックなどがあれば教えてください。
ケン・セト氏:
ええ,もちろん「スターウォーズ」シリーズの影響は大きいです。ほかにも「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や「リック・アンド・モーティー」,「ファイヤーフライ 宇宙大戦争」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」「カウボーイビバップ」など,数多くの素晴らしいSF作品の影響を受けています。まだまだたくさんあって,名前を挙げきれません。
4Gamer:
ゲームシステムについて教えてください。探索,クエスト,バトルなど,各部分においてHalcyon 6以上に多くの要素がある印象ですが,どの段階でこのあたりのゲーム進行やシステムが決まったのでしょうか?
ジェリー・セト氏:
まず,私たちは繰り返しプレイできるゲームをデザインすることが多いです。開発時にゲームデザインの中核としてあったのが,戦術的なターンベースの戦闘システムで,徐々にそれにローグライクの要素を融合していったイメージです。
以降も制作を進めながら,ゲームにさらなる深みと個性を出せるよう,要素を追加してきました。一方で何を省くかも考えてきました。これらはある特定の時期に決めたものではなく,制作中は常に考えていたことですね。
4Gamer:
ターン制バトル,育成要素や仲間との連携,キャラクター性の強い人物描写や演出,冒険・探索,ピクセルアート,アニメーション……いろんな部分で日本のゲームファンにとってなじみの深い要素も多いですね。日本のゲームの影響は大きいのかと思うのですが,実際はどうなのでしょうか。
ケン・セト氏:
たしかに,スターレネゲードのスタイルはアニメやJRPGの影響を強く受けています。
コンセプトに“JRPGのエッセンスを入れたい”というものがあり,「グランディア」「クロノトリガー」といった作品から影響を受けた“日本のRPGの本質”にあるものと,「Slay The Spire」や「Into The Breach」といった近年のローグライク作品を組み合わせたいと考えていました。
これは好きな作品のほんの一部ですが……ゲームではそのほかに「ペルソナ」や「ファイアーエムブレム」が,アニメだと「AKIRA」や「攻殻機動隊」,「超時空要塞マクロス」「進撃の巨人」に,先ほど名前を挙げた「カウボーイビバップ」などが大好きで,大きな刺激を与えてくれています。
ジェリー・セト氏:
「グランディア2」の戦闘システムには,初期のころから大きなインスピレーションを受けていました。そんなグランディア2のゲームシステムのような,ゲームファンの間で語りつがれるくらい感動的なシステムを,私たち自身で作り上げたいという思いがありましたね。
4Gamer:
遊びの要素がたっぷりある分,ゲームバランスの調整などは大変だったのではないかと思います。制作していて苦労したところがあれば教えてください。
ジェリー・セト氏:
ゲームデザインの最大の課題は,“ストーリー,キャラクター育成,探索”というJRPG要素と,“失敗,進行の喪失,繰り返し”というローグライクのシステム要素のバランス取りですね。多くの場合,これらの要素は相容れないものだからです。最終的にはほかのゲームでは見たことのない,絶妙なバランスを取れたと思います。
4Gamer:
想定よりもうまくいったと感じたところや,予想を上回る仕上がりとなったシステムなどはありますか。
ジェリー・セト氏:
ユニークで綺麗なアートスタイルがほしいと思って挑んだ,2Dと3Dのハイブリッドとなる2DXアートスタイルです。あと,キャラクターが何をしているか(防御,攻撃のチャージ,回復など)ステータスアイコンを見なくても分かるよう意識して作り込んだ,キャラクターが滑らかで完璧なアニメーションで動く点もですね。
それらは最初の想定以上にうまくいった部分で,こうして作り上げたビジュアル面はとても誇りに思っています。
4Gamer:
リリース後の反響,フィードバックなどについて聞かせてください。
ケン・セト氏:
プレイヤーからもレビュワーからも高い評価をいただき,とても満足しています。Steamや各メディアのレビューでの高評価のほか,Canadian Video Game AwardsのBest Indie Game部門やCanadian Screen AwardsのBest Video Game部門などにノミネートしていただき,非常にうれしく思っています。
現在はコミュニティのため,多くの新コンテンツを作ることと,より遊びやすくなるようバグ修正を行うことに注力しています。それらは,掲示板やSNSで届くメッセージやフィードバックをチェックし,皆さんが必要としている修正やアップデートの優先順位を付けて取り組んでいます。
4Gamer:
いよいよ日本語版が発売となりましたが,最後に日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
ケン・セト氏:
パートナーのDMMとRaw Furyの協力で,日本のゲーマーの皆さんについにこのゲームをお届けできることを非常に嬉しく思います。本当にこの日を迎えるのが待ち遠しかったです。
日本のアニメやゲームに影響を受けた私たちが制作したゲームを,日本のプレイヤーの皆さんがどのように受け止めてくれるのか楽しみです。自分たちの制作したゲームを愛している私たちと同じくらい,日本の皆さんがスターレネゲードを愛してくれるとうれしいです!
ジェリー・セト氏:
私たちは日本でゲームをリリースできる日をずっと待ち望んでいました。そして,リリースされたスターレネゲードについて,日本の皆さんがどのような反応を見せてくれるかも待ちきれないです!
「スターレネゲード」公式サイト
キーワード
Published in Japan by EXNOA LLC 2020 (C)Copyright 2020 Massive Damage Inc.. Developed by Massive Damage Inc.. Published by Raw Fury AB. All Rights Reserved.
Published in Japan by EXNOA LLC 2020 (C)Copyright 2020 Massive Damage Inc.. Developed by Massive Damage Inc.. Published by Raw Fury AB. All Rights Reserved.
Published in Japan by EXNOA LLC 2020 (C)Copyright 2020 Massive Damage Inc.. Developed by Massive Damage Inc.. Published by Raw Fury AB. All Rights Reserved.