プレイレポート
実写版で島根の魅力がさらに伝わる「√Letter ルートレター Last Answer」のプレイレポート
オリジナルのルートレターは,イラストレーターの箕星太朗氏がキャラクターデザインを務めたことや,島根県にある実在のスポットをフィーチャーした物語が話題となったタイトルで,先日ハリウッド映画化も発表された。
「√Letter ルートレター」のハリウッド映画化が決定。ティザービジュアルが公開
角川ゲームスとAkatsuki Entertainment USAは,本日開催した「角川ゲームス ファン大感謝祭 2018」で,ミステリーアドベンチャー「√Letter ルートレター」のハリウッド映画化を発表した。同時にティザービジュアルが公開となっている。
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- 編集部:松本隆一
Last Answerには,箕星氏のキャラクターが登場する「オリジナルモード」も収録されており,好きなほうでプレイできる。要するに,実写とイラストの切り替え機能と,山寺さんの声,そして解明編という3つの新要素が入っているというわけだ。
本稿ではそんなLast Answerのプレイレポートをお届けしよう。なお,試遊したのはPS4版で,記事中のスクリーンショットもPS4版のものとなっている。
行動力にあふれる主人公・マックスが過去を暴き出す
本作の物語は,主人公である33歳の建築技師・マックス(愛称。本名は自由に設定できて,デフォルトでは「貴之」)が,15年前のペンフレンド・文野亜弥を探すというものだ。ある日マックスは亜弥から送られた手紙の束を見つけるが,そこには見た覚えのない“最後の手紙”が混ざっていた。最後の手紙には消印がなかったうえ,「私は人を殺してしまいました。罪を償わなくてはなりません。これでお別れです」という不吉な言葉が綴られていたのだ。
マックスは島根に飛んで,亜弥が通っていた高校の近くで聞き込みをするが,奇怪な事実が浮上する。“15年前,文野亜弥という生徒はいなかった”というのだ。
マックスと文通していたのは誰なのか。そして,消印のない“最後の手紙”がマックスのもとに届いたのはなぜなのか。
マックスは,亜弥の手紙に書かれていた7人の級友「メガネ」「サル」「デブ」「ビッチ」「ガリ」「チビ」「親友」を問い詰め,真実を解き明かそうとする。マックスは彼らの顔を知らないので,まずはそれぞれのニックネームが誰を指すものなのかを特定しなくてはならないのだ。
亜弥と級友たちの仲がよかったのは間違いないようで,亜弥の手紙にも楽しい思い出が綴られているのだが,一方でニックネームにはキツいものが多いし,たまに辛辣な一文があったりして,亜弥のキャラクターはなかなかミステリアスだ。
ゲームとしてはコマンド選択型アドベンチャーで,島根に実在する観光地や名所を巡りつつ物語を進めていくが,行くべき場所のヒントなどがふんだんにあるので,迷ったり行き詰まったりするようなことは基本的にないだろう。
7人の級友たちは過去を隠したがっており,真実を知るには「追及パート」で相手から証言を引き出したり,証拠品を突きつけて揺さぶったりして問い詰める必要がある。しかし,コマンド入力回数に制限があるため,漫然と総当たりしたのではすぐに失敗してしまう。幸い,ヒントをもらえる「考える」コマンドは無制限で使えるし,ゲームオーバーになってもその場ですぐにコンティニューできるので安心だ。
追及パートの要所では,「マックスモード」が発動する。時間と共に増減するゲージをタイミング良く止めて,マックスの発言の強さを決定するというものだ。ゲージが多いほどオーバーな物言いとなるので,基本的にはこれで相手を圧倒するのだが,状況によってはあえて低めにするテクニックも必要となる。
ゲームはいくつかの章に分かれており,それぞれの冒頭では,15年前の手紙を振り返る「手紙パート」がある。ここで亜弥にどんな返事を出したのかを回想(選択)することで,シナリオは「すれ違い編」「姫が森の姫編」「呪われた手紙編」「政府の陰謀編」「縁結び編」の5ルートに分岐し,さまざまに変化するのだ。
本作の印象は,マックスの行動をどこまで許容できるかで変わってくるだろう。というのも,マックスは割と自己中心的で,行動力があり余っているという,クセのある人物だからだ。
7人の級友から真実を聞き出すアプローチも,なかなかに非常識である。面と向かって罵倒するくらいはかわいいもので,血が苦手な人に流血を思わせるイチゴジャムを見せてパニックに追い込んだり,恥ずかしい思い出の品で揺さぶったりと,やりたい放題に暴れ回る。
マックスにすれば“亜弥の存在をひた隠す級友たちをただしてやる”という感じだろうが,級友たちからすれば“見ず知らずの男がいきなりやってきて,辛い過去をえぐり出そうとする”という図式だから,素直に応じないのもある意味当然だ。
ミステリーの主人公の多くが,優れた頭脳や誠実な振る舞いで読者の憧れや共感を呼んでいることを考えると,マックスは異端の人物である。ぶっちゃけていえば,1980〜1990年代のアドベンチャーゲームによくいた「人を食った振る舞いで周囲を翻弄する謎の探偵」のノリだ。
こうした行動が箕星氏の繊細な絵柄のキャラクターと組み合わされると,マックスに虐げられる級友たちの哀れさが強調されてしまうのである。
だが,Last Answerのドラマモードでは,実写になったことに加え,マックスの声を山寺さんが演じることにより,コメディ的な側面が強められた感がある。
問い詰められる級友たち(俳優さん)の表情は一様にコミカルで,収録の際にコメディ寄りの演技指導が行われたことは想像に難くない。
イケメンのパティシエを追及するときがいい例だ。ここでマックスは相手の好物であるチョコポテトを渡して誘惑するのだが,ドラマモードでは,オリジナルモードになかった「パティシエが口の周りをチョコまみれにする」という演出が加えられている。
このように,同じシーンでもオリジナルモードとドラマモードで印象が変わるので,見比べてみるのも面白いだろう。
山寺さんの声の力も大きい。山寺さんは,「新世紀エヴァンゲリオン」の加持リョウジをはじめとする影のあるイケメンから,「かいけつゾロリ」のゾロリのような破天荒な快男児までをこなす技巧派声優だが,その演技力で“自己中心的で迷惑だが行動力に溢れる憎めない男”というキャラ付けを納得させてくれる。
基本的にはイケボだが,どこかに抜けた雰囲気も漂わせる山寺さんの演技は,本作のコメディ色を強めるのに一役買っている感がある。
もちろん,物語の展開自体は同じで,マックスが級友の過去をほじくり返す人物であることは変わらないため,こういったノリが非常に苦手な人にはお勧めできないのだが,キツさは大分弱まり,オリジナルのルートレターよりも受け入れやすくなったのではないかと思う。
追加要素である解明編は,5つのエンディングの後日談。いわゆるノベルゲームの形式となっており,物語を楽しむことに重点が置かれている。今回は政府の陰謀編と縁結び編の解明編をプレイした。
政府の陰謀編は,ルートレターの時点では後味の悪いバッドエンドだが,解明編でその後が描かれることで印象が変わる。山寺さんのボイスと相まって,ブッ飛んだ展開を楽しめるだろう。追及パートはないものの,要所の決めシーンでマックスモードと山寺さんのボイスが効果的に使われているのが面白い。
縁結び編の解明編は,ルートレターのグランドフィナーレといった印象だ。縁結び編自体は,ゲームを2周しないと見られないハッピーエンドだが,ここにさらなるハッピーが加わる。級友たちとマックスの間にもわだかまりはないようで,追及パートでやらかしたことも“いい思い出”っぽく感じられるから不思議だ。
ルートレターと同様に,本作をプレイすると島根へ遊びに行きたくなるのだが,ドラマモードで遊ぶと,その思いはより強くなることだろう。
ルートレターでは島根の風景をイラストっぽく加工した形で使われていたが,Last Answerのドラマモードでは実写になっており,雰囲気をより鮮明に伝えてくれる。
まるでアニメ「千と千尋の神隠し」にでも出てきそうな雰囲気のある旅館。半紙にお金を乗せて池に浮かべると,おみくじのような一文が浮かび上がるという,八重垣神社の風情ある占い。美しい宍道湖に浮かぶ観光遊覧船「はくちょう号」。そして,宍道湖名物「すもうあしこし」(スズキ,モロゲエビ,ウナギ,アマサギ,シラウオ,コイ,シジミ)を使った料理たち。
特に料理については,実写の画像が出るうえ,いかに美味しいかを山寺さんがイケボで読み上げるものだから,プレイしていてお腹が空いてきてしまった。
解明編で物語の結末が追加されたことにより,島根のことがますます好きになれるタイトルとなった本作。ルートレターの購入者にDLCなどでのフォローがないのは残念なところだが,PS4版とNintendo Switch版の販売価格が10%オフの4480円(税込)となるキャンペーンが12月19日まで実施されている(関連記事)。前作をプレイした人も,実写で島根の魅力を再確認してはどうだろうか。
「√Letter ルートレター Last Answer」公式サイト
PS4版「√Letter ルートレター Last Answer」ダウンロードページ
Nintendo Switch版「√Letter ルートレター Last Answer」ダウンロードページ
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(C)2018 KADOKAWA GAMES
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