インタビュー
「CONTROL」のプレイレポートとThomas Puha氏インタビューをお届け。奇妙な世界と謎深き物語を描く本作の重要なファクターは“対比”
海外では8月27日に505 Gamesからリリースされた本作は,超能力や銃を駆使して敵と戦いながら異空間となったビルを調査しその謎を解くという“奇妙な世界観と謎めいた物語”が特徴となっている。
そんな本作のCommunications Directorを務めるThomas Puha氏が9月12日から15日まで行われた東京ゲームショウ2019に合わせて来日していたので,本作のコンセプトやゲームシステム,日本での展開,小島秀夫監督とのコラボについて聞いてみた。日本語字幕版の先行試遊版も体験してきたので,プレイレポートと合わせてお届けしよう。
※ゲーム内の日本語テキストはローカライズ対応中の仮のものです
「CONTROL」公式サイト
超能力と特殊拳銃を使った戦略性の高いバトル,
謎深き異世界と主人公自身が気になる物語が魅力
インタビューの際に15分ほど本作の日本語字幕版を試遊できたので,まずはその感想をお伝えしよう。
本作の舞台は,謎の政府組織Federal Bureau of Control(FBC)の本部ビル。通称「オールデスト・ハウス」と呼ばれるこのビルでは,重力すら変化させる異次元の力「ヒス」の研究が秘密裏に行われていた。しかしある日,研究者や職員がヒスに乗っ取られてしまう事件が発生し,ビル全体が異世界となってしまう。
プレイヤーはFBCの女性エージェントである主人公のジェシー・フェイデンを操作し,建物内部で起きた怪奇現象を調査することになるのだ。
今回の試遊ではマップのほぼすべてが開放されている状態で,最初に「舞台はビル」と聞いて想像したものをはるかに超える広さだった。いかにもオフィスな雰囲気のPCが並ぶ一室や多くのパイプが壁一面に走る工場棟,空間がねじ曲がったような異質な場所など,その風景が区画によってガラリと変わる。
日本語字幕のテキストは“ほどよい大きさ”で,会話やマップ,ミッションなどの表示はもちろん,建物にある看板に近づくと字幕が入り,見えにくくならないよう背景色を付けることもできるという嬉しい仕様だ。
gamescomのプレイレポートでも伝えているとおり(関連記事),特徴となるのがジェシーの超能力を使ったアクションだ。筆者は超能力モノに目がなく,そういった流れでRemedy作品のファンにもなったのだが,自身が宙に浮き,周りのオブジェクトを浮かせて飛ばし,壁や床の引きはがしてバリアを作っているときなどは,子供のころから好きだった漫画やアニメの主人公になったような気分になる。
ジャンプボタンを長押しで空中に浮くのを,筆者はつい2段ジャンプのときの要領で2度押ししては飛べずに落ちるを繰り返してしまったのだが,基本操作はシンプルなTPSといった感じですぐ覚えられるだろう。
超能力以外に重要となるのが銃の扱いだ。ちょっと大きめの特殊拳銃で,今回の試遊では拳銃としての機能のほか,マシンガン,ショットガン,強力な一撃を放つチャージ弾という4つのモードが確認できた。これらは戦闘中に切り替えることができる。
見た目は,TVアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場するドミネーターを知っている人ならそれをイメージすると分かりやすいだろう。フォームを切り替えるたびに銃身が変形するのだが,このモーションはたまらないものがあり,意味なくガシャガシャ変えたくなるほどだ。
主に超能力と銃を使って挑む敵とのバトルはなかなか戦略性が高い。バリアを張っている敵には銃が効かないため,まず周りのオブジェクトをぶつけてバリアを破る。宙を浮く敵は動きが速いので移動先を予測してオブジェクトを投げつけるといったように,相手の特徴や地形で戦い方が変わる。また,敵には回復役もいるので,複数の敵を相手にする際はまずそれを叩くといった戦い方も重要となるのだ。
倒した敵からは回復アイテムが出てくるので,それを回収しつつ次の敵を倒す。「オブジェクトをぶつけたいけど周りに見当たらない」というときも,とりあえず超能力を発動するボタンを押せば近くの何かを引っ張ってきてくれるので安心だ。けっこうなんでも飛ばせて何でも壊せるところが楽しい。
試遊はだいぶゲームが進んだ段階のもので,ある程度の超能力が開放されており,また武器の強化も進んでいた。それに合わせて敵も手強くなっていたとは思うが,全体的に敵は強めの設定となっている印象だった。
やみくもに接近戦に挑むとあっという間にやられてしまうので,距離を取りながら超能力でオブジェクトをぶつけ,敵が弱ったら距離を詰めて銃を撃ちこむといった戦い方が基本となりそうだ。
今回はアクションがメインだったので世界観については触れられなかったが,謎深き物語の中で,筆者が何よりに気なっているのが「そもそもなぜ彼女は超能力が使えるのか?」という点。異世界となった建物とヒスの謎とともに,このあたりも本作を進めるモチベーションとなりそうだ。
重要なファクターは“対比(コントラスト)”
Thomas Puha氏インタビュー
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「Alan Wake」は“光と闇”,「Quantum Break」は“時間”がそれぞれゲームシステムとしても物語としても作品の重要な要素となっていました。「Control」を制作するうえで重視したものやコンセプトとなったものはありますか。
Thomas Puha氏:
コントラスト――“対比”です。これについては,ゲームの舞台となるオールデスト・ハウスを例にお伝えすると分かりやすいでしょう。
オールデスト・ハウスはブルータリズム建築(※)の建物で,“確立したもの”という印象を与える場所となっています。一方でここに現れる敵のヒスはその形状もさまざまな“不確かなもの”。そういった不確かな存在によって浸食され,強固なものが崩壊する過程というのが描かれるのです。
また,主人公のジェシーは若い女性ですが,彼女が足を踏み入れるオールデスト・ハウスという建物は,古く保守的で男性優位な考えが存在する組織のものであることも1つの対比となっています。
※ブルータリズム,またはニュー・ブルータリズムと呼ばれる1950年代に定義された建築様式。主に打ちっぱなしのコンクリートで作られた建物で,装飾がなく機能的な外観の直線的なデザインが特徴
4Gamer:
アクションについて教えてください。「Alan Wake」「Quantum Break」に続き,本作も特殊能力を使って探索やバトルを行いますが,どのあたりが特徴となっているのでしょう。
Thomas Puha氏:
超能力と銃という2つを組み合わせて戦うところですね。超能力はスキルツリーで,銃は適時切り替えらえる5種類の各タイプを改造することで強化できます。カスタマイズ要素は深く遊びこめるようなゲームシステムになっていて,能力や武器をどのように強くしていくかはプレイヤーに委ねられています。
4Gamer:
操作方法や難度についてはいかがでしょうか。今回の試遊ではなかなか敵が強く,戦い方にも少し特殊な部分も感じました。
Thomas Puha氏:
今回プレイしていただいたのは後半で,それなりのテクニックが必要となる場面でもあったので難しかったかもしれませんね。
「Alan Wake」のときもですが,多くの人に最後まで物語を追いかけてほしいという部分と難度の部分でのバランスは考えています。今回は,メインストーリーは比較的遊びやすく,サイドストーリーに手応えのあるものを用意しています。
能力のアップグレードをしっかり行って挑むというのは重要になります。超能力で空を飛んで巨大なオブジェクトを投げたり,銃の機能を切り替えてさまざまな敵を狙撃したりして,ダイナミックなバトルを楽しんでほしいですね。
4Gamer:
ストーリーも気になります。例えば「Alan Wake」ですが,サイコスリラー要素が強い物語だったため,プレイする人を選ぶところがあったと思います。
本作も人間が異形の存在になるというショッキングな設定があり,また公開されている中にもセンセーショナルなシーンがありますが,どのような考えで物語を制作されたのでしょう。
Thomas Puha氏:
本作は制作を開始する段階から“奇妙な話にしたい”という考えがありました。こういった物語や展開が苦手な人がいるかもしれないというのはありますが,そういった意見があってもそれは構わない。私たち自身が目指すものを制作しようと決めていました。
4Gamer:
ゲーム本編の話とは変わってしまいますが,コジマプロダクションの小島秀夫監督がボイスアクターとして出演されていますね。
Thomas Puha氏:
(「その質問は聞き飽きたよ」という演技をしつつ)……ノー(笑)。
4Gamer:
日本のゲームメディアとして,これは聞かないわけにはいきません(笑)。いったいどのような経緯で決まったのでしょうか。
Thomas Puha氏:
簡単に経緯をお話すると,まず最初に,E3 2018で小島監督とコジマプロダクションのみなさんが本作のデモを観に来てくれたんです。私たちの作品を「ユニークな作品ですね」と好意的に捉えていただき,またその際にSam Lake(※)と意気投合したようでした。「作品をより奇妙なものにしよう」みたいに(笑)。
※自らを主人公のモデルにした「Max Payne」の脚本で知られる,Remedy Entertainmentのゲームデザイナー / ライター。本作では作品コンセプトや脚本を担当
4Gamer:
(笑)。
Thomas Puha氏:
それから半年くらい経った今年の1月に,コジマプロダクションの皆さんが私たちのオフィスに訪問することになり,この機会に何かお願いできればと声を掛けたんです。すると驚いたことに,多忙な中時間を作ってお引き受けいただけました。
REMEDYも、CONTROLも、最高!ありがとうございます!また来ます???????? pic.twitter.com/j3ThfF7XHz
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) January 17, 2019
※小島秀夫監督の公式Twitter(@Kojima_Hideo)の2019年1月18日のツイートより
4Gamer:
それは嬉しい話ですね。超能力といえば小島監督の「メタルギア」シリーズでも重要な要素として出てきます。
今回試遊をした際,空中にフワッと浮く感覚や物を飛ばす感じがまるで「METAL GEAR SOLID」のサイコマンティスや「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」の第三の子供になったかのような操作感があったのですが,ゲームプレイの部分で影響を受けた点はあるのでしょうか。
Thomas Puha氏:
サイコマンティスですか,いいですね(笑)。私たちの作品はさまざまなゲームやポップカルチャーの影響を受けています。もちろん,そのままを入れこむわけではないですが,例えばディレクターのMikael Kasurinenは「ダークソウル」シリーズが好きで,今回のチェックポイントの仕組みからはその影響がうかがえると思います。
4Gamer:
直接的ではなく,ということですね。
Thomas Puha氏:
はい。そういった意味だと,私たちの中にも小島監督の作品が大好きだという人が多いですから,何かしらの影響は感じられると思います。
あらためてですが,今回のコラボレーションは非常に光栄なことで,こういったつながり方ができるゲーム業界の素晴らしさを感じました。
4Gamer:
本作の日本での展開について聞かせてください。これまでコンシューマではXboxでの展開だったため,日本での認知は欧米に比べて劣るところがあります。そういった意味で今回のPS4での展開は大きいと思いますが,そのあたりの考えを聞かせてください。
Thomas Puha氏:
独立系デベロッパとしてここまで10年ほど,マイクロソフトにサポートしていただきながらゲームを制作してきた中で,同時にプレイヤー層をより広げる戦略や方針としてマルチプラットフォーム展開も考えてきました。そういった流れで今回はSIEからも多くの支援をいただけたというのがあります。
スタッフはおよそ25か国の異なる国の人たちで形成されているので,フィンランドのいちデベロッパというわけではなく,グローバルに対する意識はもともと高いと思います。
4Gamer:
日本のパブリッシャであるマーベラスとの関係はいかがでしょう。
Thomas Puha氏:
(マーベラスの広報に手を差し伸べて)それは彼らに聞いてください(笑)。というのは冗談で,とても良好な関係を築けていて,この来日でベストフレンドになりました。実はスタッフに日本人が2人いるのですが,開発の事情もあって,今日同席できなかったのが残念です。
4Gamer:
時間が残りわずかとなりました。最後に日本のゲームファンにメッセージをお願いします。
Thomas Puha氏:
我慢強く待ち続けていただきありがとうございます。そして日本語字幕対応版はもう少しのご辛抱を。12月までお待ちいただければ,日本の皆さんが遊びやすくなった,さらに良いものがお届けできます。
皆さんに満足してもらえると確信していますし,プレイした際はぜひ私たちにその感想を届けてください。
4Gamer:
私はいちファンでもあるので,本作でより日本でRemedy作品が知られるようになることを期待しています。本日はありがとうございました。
「CONTROL」公式サイト
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Developed by Remedy Entertainment, Plc. Published by 505 Games. Licensed to and published in Japan by Marvelous Inc. The Remedy logo and Northlight are trademarks of Remedy Entertainment Oyj, registered in the U.S. and other countries. Control is a trademark of Remedy Entertainment Oyj. 505 Games and the 505 Games logo are trademarks of 505 Games SpA, and may be registered in the United States and other countries. All other marks and trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.
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