インタビュー
「デビル メイ クライ 5」インタビュー。ライバルはハリウッド映画!生え抜きの厨二スタッフたちが繰り出す,渾身の厨二アクション
同作について,プロデューサーの岡部眞輝氏とマシュー・ウォーカー氏,そしてディレクターの伊津野英昭氏に話を聞いた。
ライバルはハリウッド映画。世界と戦う,フォトリアルの「デビル メイ クライ」
4Gamer:
DMC5における3人のポジションについて教えてください。
伊津野英昭氏(以下,伊津野氏):
伊津野です。開発のディレクターをやってます。
岡部眞輝氏(以下,岡部氏):
岡部です。開発全般のプロデュースをしています。
マシュー・ウォーカー氏(以下,ウォーカー氏):
プロデューサーのウォーカーです。シニアプロデューサーである岡部の下で,パブやマーケティングなどをまとめています。
4Gamer:
DMCのナンバリングとしては11年ぶりの新作となるDMC5ですが,かなり時間が空きました。
伊津野氏:
前作の「デビル メイ クライ 4」を作った後,即座にDMC5を作る予定だったのですが,別のプロジェクトを立ち上げることになったりして,なかなか進められなかったんです。その後,今から4年ほど前に,DMC5を作りたくなり,現在に至る訳です。
4Gamer:
「作りたくなった」ということは,カプコンからDMCの続編を作るように言われたわけではないと。
伊津野氏:
会社からの命令で始まった訳ではないですね。上司の竹内(竹内 潤氏。常務執行役員,CS第一開発統括)からは「世界でピュア・アクションゲームが少なくなっている今だからこそ,丁度いいんじゃないか」と言ってもらえました。
4Gamer:
内容についてのオファーなどはありましたか。
伊津野氏:
内容については特に何も注文はなかったです。ただ,「E3やgamescom,TGSといった会場でAAAタイトルが並ぶ中でも,お客さんに感嘆されるような画作りにはしなさい」と伝えられました。
4Gamer:
今回はフォトリアルなグラフィックスになっていますが,AAAタイトルとの勝負という意味合いもあったわけですね。
伊津野氏:
僕らは「アベンジャーズ」に代表されるようなハリウッドの大作映画がライバルだと思ってます。フォトリアルなグラフィックスでDMCのようなものを作ろうと思ったとき,目標になるのはやはり洋画しかない。この点に関しては,なかなかの手応えを感じていますね。
4Gamer:
フォトリアルになったことで苦労された部分はありましたか。
伊津野氏:
“自然に見えるアクションを展開しつつ,プレイヤーが入力したレスポンスの気持ち良さを損なわない”という点には苦労しました。フォトリアルでDMCのような思い通りかつ,素早く動く超人的アクションを作ると,色々と齟齬が生じてしまうんです。例えば,今までであればモーションをキャンセルして素早く次の動作に移っていたものが,フォトリアルなグラフィックスにするとかなり不自然に見えてしまう。リアルであるが故に認識に不整合が起こっているわけです。DMC5ではここをきちんと解決しているので,ぜひ注目していただきたいですね。
4Gamer:
フォトリアルな見た目とゲーム的な面白さを両立させているわけですね。
伊津野氏:
ルックスとしては“DMCを本気でハリウッド映画化したらこうなるだろうな”というイメージにしてます。服の色彩一つとっても気を使い,実際にロンドン(DMC5の舞台は「イギリスの都市」をモチーフにした架空の都市)に彼らが降りてきた際にも不自然にならない感じ,観客が引いてしまわない感じにしたんです。例えばダンテのトレードマークである赤いコートですが,現実世界では真っ赤なコートを着ている人なんてファッションショーの中にしかいませんから,DMC5では現実にこういうヒーローがいてもおかしくないというところまで詰めてます。“今回のカメラの解像度でDMCを写したときには,この表現が正しいのではないか”ということです。
4Gamer:
前作から11年が経ち,ゲーム機の世代も変わっていますが,開発における変化はありましたか。
伊津野氏:
前作と「デビル メイ クライ4 Special Edition」では自社製エンジンの「MTフレームワーク」を使っていましたが,DMC5では「バイオハザード7」で使ったこれも自社製の「RE ENGINE」に変えています。ただ,RE ENGINEはバイオハザード7を開発した時点では,バイオハザード7に特化していてフォトリアルなホラーゲームに向く機能しか実装されていなかったんです。当然,DMCのような派手なエフェクトを使いまくるようなことは想定されていない。ジャンルが違うと,ロードのタイミングや出てくる敵の数,エフェクトの数などすべてが違うんです。このあたりも手探りで開発を進めました。
4Gamer:
エンジンの機能を拡充しながら開発を進められていたわけですね。
伊津野氏:
DMC5の開発を通してエンジン自体の熟成度も上がったので,処理もかなり速くなってます。バイオハザード7と同様,DMC5も60フレームで動いているのですが,これだけバリバリにエフェクトを表示しつつ60フレームというのもなかなかないんじゃないでしょうか。
ウォーカー氏:
物理演算も相当に進化しています。
伊津野氏:
例えばTGS 2018の体験版で戦えるボスの「ゴリアテ」は,建物を破壊しつつ襲ってきます。飛び散るたくさんの瓦礫に物理演算を使っているんですが,処理自体は軽量化されているんです。
4Gamer:
画面は派手なのに軽量化というのはどういうことでしょう。
伊津野氏:
実はリアルタイムで物理演算をしているものとそうでないものの2種類が混ざってます。一見、すべてがリアルタイムで物理演算されているような豪華な画面ですけど,処理が軽量化されているので,しっかりと60フレームを出せるというわけなんです。
4Gamer:
遊びやすくて派手な画面は開発側のこだわりがあってこそ生まれるというわけですね。
機械の義手,デビルブレイカーの発想は“なにくそ,次があるぜ!”という熱血マンガ感
4Gamer:
今回はネロが短髪になったり,ダンテが年を経た姿になったりとメインキャラクターたちの外見が変わっていますが,イメージチェンジした理由を教えてください。
伊津野氏:
ネロについては,今回は青年を描きたかったというところがあります。自分の中にある悪魔の血に悩んでいる少年から,すべてを受け入れて守るべきものがハッキリし,体力的にも充実している状態ですね。
4Gamer:
イメージチェンジの中でも,もっとも大きいのがネロの腕だと思います。悪魔の腕「デビルブリンガー」から,機械の義手「デビルブレイカー」になりました。悪魔の腕はネロというキャラクターのアイデンティティの1つだったと思うのですが。
伊津野氏:
これには2つの理由があります。まずは“DMC5を遊ぶ時に,どんな内容だったらワクワクするだろう”とユーザーさんの視点で考えた結果です。前作であれだけ強かったデビルブリンガーが開幕で奪われたらどうなってしまうんだ! ネロはどうなっちゃうんだ! というところからゲームに没入してもらえると考えています。
もう1つは“壊れる”という絵的なインパクトですね。“敵の攻撃を右手で防ぐと,デビルブレイカーがぶっ壊れてしまう。ネロは血をぬぐいながら,なにくそ,次があるぜ! と,新しいデビルブレイカーをはめる”……これはカッコイイぜ! というところです。まずは絵があり,そこからシステムにはめ込んでいったわけです。
4Gamer:
テストプレイもしたのですが,てっきりシステムから発想されたものだとばかり思っていました。デビルブレイカーの使用中に攻撃を受けると破壊されてしまうというフィーチャーで緊張感とリソース管理的な側面が生まれ,シューティングゲームのボムのように消費して緊急脱出もできる……面白い駆け引きができると感じられました。
伊津野氏:
システムの開発には,もうめちゃめちゃ苦労したんですよね(笑)。要はロールプレイングゲームを遊ぶときに「エリクサー」を99個残してクリアする人に,どうやって消耗品であるデビルブレイカーを使ってもらおうかということです。人間って,使ったら無くなる,壊れてしまう……というものに対しては使う事に凄くネガティブじゃないですか。
4Gamer:
確かに消耗品はデリケートな問題ですよね。自分もエリクサーを99個残すタイプなのでよく分かります。
伊津野氏:
実際,開発が進むと内部から「自由に交換させてくれ」「壊れないようにしてくれ」「壊れるなら使わないよ」といった声が挙がりましたから。当初は“予備のデビルブレイカーがマップ内に落ちている”というフィーチャーは考えていなかったのですが,“アイテムはマップの中にたくさん落ちていて,所持数の上限が低いので拾わないと損になる”という状況にすれば,アイテムが減るのが嫌な人も使ってくれるのではないかと考え,現在の形になりました。
4Gamer:
プレイヤーの心理を誘導しているわけですね。
伊津野氏:
実はデビルブレイカーには実現できなかったアイデアがあります。“デビルブレイカーを犠牲に攻撃をガードする”というもので,ストックが1つ減ってしまう替わりに攻撃を無効化できる効果を考えてました。
4Gamer:
初心者救済としても面白いですし,リソース管理が引き立つアイデアだとも思いますが,なぜ没になったのでしょう。
伊津野氏:
強すぎますし,防御のためにデビルブレイカーを温存し,最後まで使わなくなってしまうからです。DMC5には強敵がたくさん出てきますが,安全に攻略するためにデビルブレイカーを温存されてしまうと,僕たちが本来表現したかったカッコ良さとは違うプレイスタイルになってしまう。
ウォーカー氏:
キャラクターを差別化するという側面もありますね。攻撃と防御でデビルブレイカーのモードを切り替えたり,デビルブレイカーを取り替えつつ戦うとなると,スタイルを切り替えるダンテと同じになってしまう。
伊津野氏:
スタイルを任意で切り替えるダンテ,デビルブレイカーをどこで使うかの駆け引きに特化したネロという形で差別化してます。
4Gamer:
ネロは戦いながらゲージを溜めて強化する「イクシード」も爽快感がありました。
伊津野氏:
イクシードはDMC4での大発明だったんですが,トリガーの受付時間がものすごく短くて,ユーザーさんがチャレンジしてくれなかったんです。一番難しいものは受付猶予が1〜2フレーム程度だったので……。DMC5ではタイミングが多少ずれていてもゲージが少し増えるようになってます。もちろんジャストタイミングはDMC4と同じ程度にシビアですので,ぜひ挑戦してほしいですね。
4Gamer:
DMC5でのダンテの見どころはどこでしょうか。
伊津野氏:
“少年が憧れるものを武器にしていこう”をコンセプトに,男のロマンを満載した,相当にビックリする武器も用意していますので楽しみにしていてください。
4Gamer:
今回2人を遊ばせてもらいましたが,ネロとダンテでまったくシステムが違っていて,ゲーム2本分の主人公が入っているようにも感じられました。
伊津野氏:
開発の手間としては,ゲームを2本作るのに近いところがあります。もう1人のプレイアブルキャラクターも“ガラリと変わる”どころではない違い”が用意されていますので,ぜひご期待ください。
4Gamer:
そこまでシステムが変わるのであればDLCという手もあると思いますが。
岡部氏:
最近はそういった選択肢もあると思います。ただ,僕らは“通常版を買うだけですべてがたたき込まれているDMC5”をみなさんにお届けしたいのです。10年以上もお待たせしてしまっているので,きっちりとお返しをしなければいけないですよね。
伊津野氏:
「もうお腹いっぱい!10年分以上食べたよ!」と思っていただかないといけないですから(笑)。
生え抜きの厨二スタッフが,自分の中の厨二感を信じて作品を生み出す
4Gamer:
これまでgamescomとPAX Westにプレイアブル出展していますが,プレイヤーの反応はいかがでしたか。
ウォーカー氏:
ヨーロッパとアメリカでプレイアブル出展したわけですが,「これこそがDMCだ!」と,びっくりするぐらいポジティブな反応が返ってきました。また,前作が11年前になりますが,DMCをリアルタイムで遊んでいない10代のユーザーが遊んでくれて,「とても楽しかった! 発売日を楽しみにしています!」という言葉をかけてくれました。本当に感謝しています。
伊津野氏:
前作をプレイしていない10代に受け入れられたというのはかなり大きなことだと思います。
岡部氏:
世代がつながっていく感じがありましたね。
4Gamer:
10代に受け入れられた理由はどこにあると考えていますか。
伊津野氏:
アクションゲームの面白さは,世代に関わらず不変だと思ってます。動かしたいと思った通りにキャラクターが素直に動き,フィードバックするハードウェアもないのに手応えが伝わってくる。例えば8bit時代の野球ゲームなんかでも,ボールを上手くミートできたら「あっ,これホームランだ!」と分かる手応えがあるじゃないですか。当時のコントローラーには振動とかフォースフィードバックのシステムは存在しないのに。
4Gamer:
「モンスターハンター」における大剣の溜め斬りや「ストリートファイターIII」のブロッキングなど,手応えを感じることは間違いなくありますね。
伊津野氏:
こうした部分がアクションゲームの本質だと考えているので,そこを大切にしながらゲームを作ってきました。
ウォーカー氏:
あとは“厨二感”でしょうか。バイクを二刀流のように使って攻撃する「キャバリエーレ」とか,やっぱりかっこいいじゃないですか!
岡部氏:
撃ちだしたパンチに乗ったりとかね(笑)。
伊津野氏:
僕らも厨二の気持ちで作ってますから。10代の子どもたちが憧れるものは年を取ったって本質的に変わっていないと信じています。
岡部氏:
理由は分からないけど“おおっ!”と思える部分が詰まっている。
4Gamer:
バイクを武器にする発想はどこから出てきたのでしょうか。
伊津野氏:
構想としては「デビル メイ クライ 2」からありましたね。この時はバイクが変形して,パワードスーツのように装着できる“バイク魔人”というものでしたが,時間が足りず,実現できませんでした。「デビル メイ クライ 3」では空中でバイクをヌンチャクのように振り回す“バイチャク”というアイデアが出て,「これならバイクが地面にこすれないのでいける!」となりましたが,カットシーンのみの登場になって。DMC5はスタッフから上がってきたスケッチがベースになってます。ほぼ現在と変わらない形でしたね。バイクをバカン! と敵に当てる,ロマンの塊ですよ。
ウォーカー氏:
ダンテのバトルスタイルとしては新しいですよね。最初はどうやって戦うんだろう? と思っていました。
伊津野氏:
要するに,理由は全部“かっこいいから”なんですよ。チームのみんなが持っている憧れを現実化していく。自分の厨二感を信じるんです。
4Gamer:
開発に当たってチームの厨二感を高めるような取り組みはされましたか。
伊津野氏:
特にはしてないですね。厨二感が好きな人が「DMCを作りたい!」という理由で集まってきてくれました。今回,アニメーションのメインは初代DMCでもダンテのアニメーションを担当した人です。他社さんの対戦格闘では名だたる人気キャラたちを作り、カプコンでは「戦国BASARA」の伊達政宗を生み出しています。
4Gamer:
ゲーム系厨二キャラクターの歴史を作っているような人ですね。炎で戦ったり,指の間に3本ずつ日本刀を挟む“六爪流”で敵を斬ったりと,厨二感がすごい。生え抜きの厨二たちがスタッフに集まっている。
伊津野氏:
そうですね。アラフォー,アラフィフの厨二たちが作っているわけです(笑)。
4Gamer:
そして,海外でも10代に受け入れられた。これは同年代のクリエイターにとって,すごく勇気づけられる話だと思います。
伊津野氏:
この年代のクリエイターは,俺はまだいける! まだいける! と戦いながら仕事をしているでしょうから。
4Gamer:
では,開発陣が考えるDMCらしさというのはいったいどういうものでしょうか。
伊津野氏:
チームに入ってきた全員に伝えていますが,アクション面でのDMCらしさとは“俺,カッコイイ!”なんですよ。ネロやダンテのアクションはカッコイイ。彼らにカッコイイ動きをさせている俺がカッコイイ。それがDMCなんです。
今作に出てくるキャラクターも,“誰が触っても同じ動きになってしまうキャラクター”は1人もいません。彼らと戦うボスにしても「攻略方法は絶対1種類にしないでくれ!」とスタッフに頼んで作っていますし。だからパターンゲームにはなりません。カットシーンもあくまで“お手本”です。“このキャラクターはこんな風に戦えるぞ! さあ,次は君のカッコイイを探してくれ!”ということですね。
4Gamer:
それでは最後に,現在開催中のTGS 2018に来られる人に向けてメッセージをお願いします。
岡部氏:
TGS 2018バージョンは,今までのものより進化しています。デビルブレイカーも,パンチをロケットで撃ち出しその上に乗って飛び回る「パンチライン」と,巨大ボスもつかんでブン回せる「バスターアーム」が追加されています。ぜひボスのゴリアテを投げ飛ばしてSランクを目指してください。
ウォーカー氏:
体験版と本編にも「オートアシスト」機能が実装されています。自動で最適の技を選んで繰り出してくれるというもので,技の使い方が学べます。右スティックの押し込みでいつでもON・OFFができるので活用してみてください。
伊津野氏:
現時点の体験版では,Sランクを取れるのは1日に1〜2人くらいだろうという調整です。これまでのプレイアブル出展でSランクを取った人も最短で3回かかっているので,皆さんもスタイリッシュに戦ってSランクを取れるようにがんばってください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「デビル メイ クライ 5」公式サイト
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