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  • エンハンス
  • 発売日:2018/11/09
  • 価格:パッケージ版:4167円(+税)
    ダウンロード版:4500円(税込)
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「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー
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印刷2018/10/30 09:19

プレイレポート

「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー

 エンハンスが2018年11月9日に発売予定の「テトリス エフェクト」。“禅テトリス”をコンセプトに生まれた本作は,パズルゲームの定番であるテトリスをPS VRや4K解像度に対応させ,圧倒的な没入体験を可能にした作品だ。
 だが,それは本作の一面に過ぎず,ほかにも斬新な要素が詰め込まれている。本稿では,最新バージョンの試遊レポートと,プロデューサーの水口哲也氏,ディレクターの石原孝士氏へのインタビューを通して,本作の魅力を明らかにしたい。

画像集 No.014のサムネイル画像 / 「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー

 なお4Gamerでは,本作が発表された2018年6月に,E3出展バージョンの試遊と,水口氏へのインタビューを行っている。音楽や映像による“ゾーン”体験の拡張,シンプルなパズルゲームであるテトリスでPS VRを使う意義などが語られているので,そちらも読んでいただければ幸いだ。

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 E3 2018の直前に発表され,“PS VR&4K解像度対応テトリス”ということで話題を呼んだ「TETRIS EFFECT」。本作の開発を手がけるエンハンスの水口哲也氏にお話をうかがいながら試遊する機会を得たので,その模様をレポートしよう。

[2018/06/26 12:00]

 今回試遊できたのは,“ゾーン”の心地よさや没入感を主眼に置いたJourney Modeと,パズルゲームとしての面白さを追求したEffect Modesだ。

 Journey Modeはその性質上,PS VRでのプレイが向いており,今回の試遊もヘッドマウントディスプレイを装着して行った。

 最初に表示されるのは,全27のステージを示すアイコンが並ぶ,マップのような画面だ。ここはいくつかの「エリア」に区切られており,1つのエリアだけ遊ぶことも,全ステージを通してプレイすることもできる。

画像集 No.016のサムネイル画像 / 「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー

 今回は4ステージで構成されるエリアをプレイした。
 基本のゲームシステムは,おなじみのテトリスだが,前回のプレイレポートで紹介した通り,「ゾーン」システムによってテトリミノの自然落下を一定時間止め,次々とラインを消していくことができる。
 また,テトリミノを回したり落としたりすると,無機質な効果音ではなく,フレーズが奏でられるので,自分のプレイとBGMの連動が心地よい。いつの間にかBGMに合わせてテトリミノを操作している自分に気づいた。

ラインを消すと幻想的なエフェクトが広がり,没入感はさらに増していく
画像集 No.003のサムネイル画像 / 「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー

 今回のプレイで印象的だったのが,「テトリスの面白さを再確認できたこと」と「背景と効果音が体験にもたらす力を感じられたこと」だ。

 PS VRへの対応や,音楽の演出,テトリミノを消したときのエフェクトといった要素から,「VR体験がメインで,テトリスとしてのプレイアビリティは二の次なのではないか」と考える人がいたら,その心配は無用だ。
 エフェクトや音楽のせいでフィールドが見づらくなったり,集中力が妨げられたりといったことはなかったし,むしろ「プレイするうちに我を忘れ,半ば本能的にテトリミノを積み上げ,消していく」というテトリス独特のプレイ感が強くなっているように感じた。うまくプレイするほど気持ちよくなる“エモーショナルなテトリス”といったところだ。



 背景と効果音が体験にもたらす力を感じられたのが,背景に風車(のような飛行船?)が浮かび,テトリミノを構成するブロックが小さな歯車で描かれるステージだ。ここでは,テトリミノを回したり落としたりすると,木製機械が動くような,心暖まるきしみ音が鳴る。
 ほかのステージでは抽象存在としてのテトリミノを“操作”しているという感じがあったが,ここでは何やら“手仕事”をしているような気分になった。ラインを消すと風の音が鳴り,風車の回転が速くなるエフェクトが見られるのだが,PS VRでプレイしていた筆者には,送風デバイスがあるわけでもないのに,本当に風が吹いているような,ある種の爽やかさが感じられた。

画像集 No.015のサムネイル画像 / 「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー

 もう1つのEffect Modesは,テレビ画面でプレイした。このモードは「マラソン」や「スプリント」といったおなじみのものに加えて,さまざまなルールのテトリスが楽しめる。

  中でも印象的だったのは,プレイ中にさまざまな“ハプニング”が発生する「ミステリー」。フィールドが横にズレたり,ブロックを消す時限爆弾が出現したり,画面の上下左右が逆になったり,通常のテトリミノから1ブロックが抜かれた特殊テトリミノが降ってきたりと,厄介なものばかりだ。
 隙間なくテトリミノを積み上げていたところに爆弾が炸裂して歯抜けになったり,下から上がっていくテトリミノを操作することになったりすると,混乱すること間違いなし。テトリスの上級者は先の先を読んでテトリミノを積み上げていくが,ミステリーでのプレイには,即座の対応力が求められるという印象だ。

画面の上下が逆になって混乱中
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 「浄化」では,フィールドに“闇に冒されたテトリミノ”が配されており,時間が経つごとに増殖していく。プレイヤーがこの闇テトリミノを含めてラインを揃えると“浄化”されて通常のテトリミノになる(消すにはさらにもう一度ラインを揃える必要がある)という仕組みで,増殖完了が先か,浄化が先かというスリリングなプレイを楽しめるのだ。

 「カウントダウン」では,自分が操作するテトリミノに加えて,いわゆる“テトリス棒”が定期的に落ちてくる。落下場所は事前に分かるようになっているので,それに合わせてテトリミノを積んでいくことは可能なのだが,落下までの時間は限られているし,複数同時に出現することもあるのが悩ましい。つまりは気まぐれなテトリス棒様のご機嫌に合わせて上手くテトリミノを積み上げていかなければならないというわけだ。

 Journey Modeが感覚に訴えるテトリスなら,Effect Modesはパズル好きに刺さるテトリスといえるだろう。



 ゲームのカスタマイズ項目も豊富で,例えばJourney Modeのエフェクトを切ってクラシカルなテトリスとして遊んだり,複数のコントローラを振動させてよりプレイとの一体感を高める「トランスバイブレーション」を体験したりといったことが可能。ステージで使用されている背景をバックに音楽を流すビジュアライザー機能も用意されている。本作はテトリスという,もはや“古典”とも言うべきゲームを,見事に新生させたタイトルだと言えるだろう。

EFFECTモードのメニュー画面には地球が表示されており,どの地域でどのモードが遊ばれているかが分かるようになっている。世界中のプレイヤーで同じモードをプレイし,設定された目標にチャレンジするといったイベントも開催予定とのことだ
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水口哲也氏,石原孝士氏インタビュー


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。発売が迫ってきましたが,現時点での手応えはいかがですか。

「テトリス エフェクト」プロデューサー 水口哲也氏。「スペースチャンネル5」「Rez」「ルミネス」など,音楽とゲーム性を融合させた名作を手がけ,近年は「Rez Infinite」など,VRタイトルでの活動も目立っている
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー
水口氏:
 全世界的に良い反響をいただいています。E3での発表以降,ゲームそのものに加えて音楽への反応も大きかったので,7曲を収録した「サウンドトラックサンプラー」を急遽ご用意しました。

石原氏:
 最近テトリスを遊んでいない方にも興味を持っていただけているようで,嬉しいです。

水口氏:
 それは僕らが一番望んでいたことかもしれません。テトリスは34年の歴史がありますから,劇的な変化を起こすのが難しいですよね。僕らが新たな提案をすることで,昔遊んでいた方を呼び起こし,新しい体験をしてもらえれば嬉しいです。

4Gamer:
 ザ・テトリス・カンパニー会長のヘンク・ロジャース氏から「『ルミネス』や『Rez』のような“マジックのフレーバー”をテトリスに使って,新しい体験が生み出せないだろうか?」という提案を受けたのが開発のきっかけだと前回のインタビューでうかがいました。その時点で,ある程度現在の形が見えていたのでしょうか。

水口氏:
 新たなテトリスをどうすべきかについては,開発に入る前に1年半ほど考え続けました。僕と石原がヘンクさんのご自宅に伺ってミーティングをし,ヘンクさんのビジョンと僕らのやりたいことを掛け合わせたりもしました。

「テトリス エフェクト」ディレクター 石原孝士氏。過去には「Child of Eden」と「Rez Infinite」の「Area X」でアートディレクター,「ルミネス」でディレクターを務めた
画像集 No.001のサムネイル画像 / 「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー
石原氏:
 「Rez Infinite」の「Area X」と同時進行の開発でしたので,そこで得られたVRに関する知見を盛り込みました。開発メンバーもほとんど同じなので,かなり影響を受けていると思います。

水口氏:
 ヘンクさんが考えていたのは,禅的な“ゾーン”を音楽や映像で際立たせ,拡張することでした。具体的にどう拡張するかについてはいろいろと議論して,最終的に現在の「ゾーンシステム」にたどり着いたんです。

石原氏:
 ルミネスでやっていたような「音とビジュアルをパズルのゲームデザインと融合させる」という取り組みをテトリスで行ううちに,ゾーンシステムのアイデアが自然と生まれてきました。
 これがなくても“ゾーン”的な体験は可能ですが,システムとして入れることで,分かりやすく気分を変えてもらえるというわけです。
 音とビジュアルとの融合,操作に合わせて音楽を演奏している気分になれるだけでは物足りない部分があったので,もっとチャレンジしたいと考えた結果ですね。

水口氏:
 ここまでたどり着くのは簡単ではなかったです。“禅テトリス”という大きいテーマが決まっているなか,いろいろ考えての試行錯誤がありました。

石原氏:
 クラシックなスタイルを崩すと,テトリスではなくなってしまうんです。テトリスであることを守りながら,新しい体験を作ろうと。

水口氏:
 僕らだけでなく,テトリスカンパニーの人たちにもそういった気持ちがありましたから,そうした意味では楽しい仕事でしたね。ゾーン中に4列以上を揃えるようなアイデアも,すんなり受け入れてもらえましたし。

画像集 No.029のサムネイル画像 / 「テトリス エフェクト」の魅力はVRだけではない。最新バージョンのプレイレポート&水口哲也氏,石原孝士氏へのインタビュー

4Gamer:
 テトリスであることを守るために,崩さなかった部分とはどこでしょうか。

石原氏:
 テトリスの根っこにある「考えてテトリミノを積み上げていく楽しさ」です。例えば,テトリミノの種類がもう1つ増えるだけで,別のゲームになってしまうと思います。

4Gamer:
 なるほど。EFFECTモードでのハプニングに,違う形のテトリミノが落ちてくるものがありましたが,あれも元々あるテトリミノから1個ブロックを取ったもので,まったく新しいものを加えたわけではないですしね。ゾーンシステムも,それを踏まえて現在のものになったと。

石原氏:
 一発でラインが揃ったり,連鎖させたり……といったアイデアもたくさん出ました。しかし,シンプルでありながらインパクトのある現在の形に落ち着きましたね。

4Gamer:
 テトリスに変化を加えることに関しては,懐疑的な意見もあったのではないかと思いますが。

水口氏:
 本作をテストプレイしていただいた,あるプロプレイヤーがまさにそんな感じでした。「プレイに集中したいから,画面効果なんて必要ないよ」と。でも実際にPS VRでプレイすると,どんどん没入していって「これは,新しいね!」って(笑)。プレイヤーさんがどんな反応をするか怖かったんですが,それで安心できましたね。

4Gamer:
 ゲームのタイトルにもなっているテトリス エフェクト(テトリス効果)は,プレイ後に物の隙間を埋めることを考えるようになったり,記憶障害のある方が,プレイしたことは覚えていなくても,テトリミノが落ちてくる様子が頭に浮かぶと訴えたり……といった,テトリスのプレイにまつわる不思議な現象のことですが,なぜこうした現象が起こると考えていますか。

水口氏:
 ゲーム体験がオーディオやビジュアルと結びついて,記憶の深いところに入るからじゃないでしょうか。体験が感覚と混ざって刻まれる現象を「共感覚」といいます。これはゲームに限ったことではありません。
 例えば,プルーストの「失われた時を求めて」という小説は,紅茶にマーマレードを混ぜることで,その味と臭いから子供時代を思い出すというところから始まりますし。

4Gamer:
 昔を思い出す味とか音楽とか,確かにあります。共感覚は水口さんが追い求めてきたものでもありますが,テトリス効果は共感覚の1種だと。

「Rez Infinite」のために作られたシナスタジア(共感覚)スーツ。ゲームに合わせた振動を全身で感じながらプレイできる
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水口氏:
 共感覚を強く呼び起こすのがゲームの特徴であると思います。みなさんも「スーパーマリオブラザーズ」のBGMのイントロを聞けば,1-1のフィールドを走っていく感覚を思い出せるでしょう。これは体験と音楽がセットになっているからです。
 僕らが作ったテトリス エフェクトはこれから皆さんとのお付き合いが始まるわけですが,音楽やビジュアルが共感覚的に刻まれていったとしたら嬉しいですね。

4Gamer:
 そういった,感覚的なものをチームで作っていくのは,かなり難しい作業ではないかと思うのですが。

石原氏:
 僕の場合は,水口さんが手がけたRezを学生時代に遊び,何が気持ちいいのか,どうすればそうした感情を呼び起こせるのか,というところを学べたのが大きいです。
 その後Child of EdenやArea Xの開発経験も積んで,今は自然とアイデアが出せるようになった感じですね。すぐにできることではないです。

水口氏:
 僕らの中には確実にそういうものがあって,アイデアが“じんわり”出てくるんです。だから,何も思いつかなかったらどうしようか……というプレッシャーはありません。
 この感覚を共にして何作もゲームを作り続けてきたメンバーたちがいるから,必ず何かが出てくる。だから,皆で話し合っていくうちに方向性が決まっていく。そうした意味では面白い現場ですね。
 アイデアを頭の中だけで扱うのではなく,一回やってみようということはよく言います。実際の体験を大事にして,心に響かないものは残念ながらお蔵入りにする。

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4Gamer:
 そうやってビジョンを共有しているわけですね。アイデアというところでもう少し詳しくお聞きしたいのですが,Journey Modeのステージで描かれるモチーフは,どうやって生まれたのでしょうか。もともとストーリーのないテトリスだけに,気になります。

石原氏:
 Journey,つまり旅をテーマとして,微生物の世界から宇宙へというように,小さなものから大きなものへトランジション(遷移)を描いています。また,海のステージから砂漠へといったようにメリハリを付け,飽きさせない組み合わせにもしているんです。

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4Gamer:
 なるほど,一方向の大きな流れを表現するために,個々のモチーフが生まれたんですね。
 本作では,VRや4K解像度といった技術が新しいテトリス体験を生む要素の1つになったわけですが,現在水口さんが注目している技術は何でしょうか。

水口氏:
 VR,AR,MRだけでなく,xR(xReality,VRなどの技術を総合して新たな体験を作ること)も使って楽しくてワクワクするような世界を作りたいですね。
 巷ではゲーム機不要論が唱えられていたりもしますが,我々からするとそれどころではなく,ゲーム機にもっとパワーがあればいいと思っています。

4Gamer:
 VRや4K解像度基準で考えれば,もっとパワーが欲しくなるのもうなずけます。
 そろそろお時間のようですので,最後に4Gamer読者へのメッセージをいただけないでしょうか。

石原氏:
 テトリス エフェクトでは,ビジュアルとサウンドが融合した新しいテトリスを楽しんでいただけます。実際に体験されないと分からないところもあると思いますし,今後は体験版も配信されますので,興味のある方はぜひプレイしてみてください。

水口氏:
 体験版では通常とVRどちらのモードも楽しめますし,どちらもお勧めです。遊んでもらえれば魅力は伝わりますので,気に入ってもらえたらお買い上げください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

 PS VRによる感覚的な体験を生み出すだけでなく,さまざまなモードによってパズルとしてのテトリスも進化させている本作は,新しいもの好きだけでなく,テトリスファンやパズルゲーム好きも長く楽しめそうなゲームであると感じられた。2018年11月9日の発売日を楽しみに待ちたい。

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