インタビュー
[E3 2019]「DAEMON X MACHINA」プロデューサーの佃 健一郎氏にインタビュー。世界中のプレイヤーからの意見が届いた先行体験版について聞いた
「DAEMON X MACHINA」は,「アーマード・コア」シリーズなどで知られる佃 健一郎氏がプロデューサーを,日本を代表するメカニックデザイナーである河森正治氏がメカニカルコンセプトデザインをそれぞれ担当することで注目を集めるメカアクションゲームだ。発売日の発表に合わせて,世界観とストーリーを紹介する動画と,先行体験版「プロトタイプオーダーズ」の意見を反映した改善点フィードバック動画が,公式サイトで公開されている。
待ちに待った発売日の発表に合わせ,4Gamerではプロデューサーの佃 健一郎氏にインタビューを行い,2月14日から3月11日までの期間限定で配信された「プロトタイプオーダーズ」の反響やゲームの改善点を中心に話を聞いてみた。
「DAEMON X MACHINA」体験版のインプレッションをお届け。ロボットやメカ好きの心に刺さる「カスタマイズ」と「人体改造」
マーベラスが制作中のNintendo Switch用メカアクション「DAEMON X MACHINA」の体験版となる「プロトタイプオーダーズ」が配信中だ。制作陣に佃 健一郎氏や河森正治氏などの名前があることで,メカやロボット,SF好きの注目を集める本作の体験版をプレイしたので,インプレッションをお届けしよう。
「DAEMON X MACHINA」公式サイト
世界中のプレイヤーが
好意的な視点で意見を届けてくれた
4Gamer:
初披露となった昨年のE3から1年で,発売日が発表となりました。
佃 健一郎氏(以下,佃氏):
4Gamer:
現在の完成度はどれくらいなのでしょう。
佃氏:
限定体験版を配信した時点で大枠はほぼできていました。逆にまだお見せできない要素を,体験版から外すことがが大変だったくらいです。
4Gamer:
発売日の発表に合わせて,世界観やストーリーを紹介するPVも公開されました。登場人物も多く,かなりストーリー性も高いように感じられます。
佃氏:
登場人物は35人以上いますし,ストーリーもボリュームのあるものとなっています。
ただ,アクションを楽しんでほしい気持ちがあり,ストーリーがゲームの進行を阻害しないように気を付けました。どう表現すればいいのか難しいのですが,ストーリーや世界観はしっかり作っているけど,プレイヤーの皆さんが「自分で前に進みたい。戦いたい」と思ってくれるような形になっているかと思います。
4Gamer:
では,ミッションとミッションの間にイベントシーンが入るというよりは,ミッション中に会話や出来事が発生するようなものでしょうか。
佃氏:
両方ありますが,1つ1つはなるべく長くならないようにした……つもりなんですけど,実際はどうなんでしょう(笑)。プレイヤーの皆さんがどう感じるかが大事ですから。
4Gamer:
体験版のフィードバックを反映した改善点のフィードバック動画も公開されました。2月14日から3月11日の約1か月という期間限定で配信された「プロトタイプオーダーズ」ですが,どれくらいのプレイヤーがこの体験版をプレイされたのでしょうか。
佃氏:
全世界で100万ダウンロードを超えたそうです。世界中からアンケートの回答が届き,4万件以上のご意見をいただきました。
4Gamer:
まず翻訳が必要になるので大変そうです。
佃氏:
はい。英語だけではなく,さまざまな国の言語がありますから。そこは翻訳ツールをフルに活用して(笑)。ゲームをより良いものに仕上げたかったので,いただいたご意見はスタッフと協力してほぼ全てに目をとおしました。
4Gamer:
そもそもなのですが,なぜ期間限定の体験版で意見を集めようと考えたのでしょう。
佃氏:
どんなゲームなのか知ってもらいたいというのが,まずありました。
完全新規のタイトルなので,いくら公式サイトやプレスリリースで動画や文字情報を出しても,どんなゲームかイメージしにくいはずなんです。
ゲームなのだから,ゲーム自体で語りたい。プレイヤーの皆さんと語り合える状態を作るためには,ゲームをプレイしてもらうことが大切だと考えました。
4Gamer:
たしかに体験版配信の時点では,マルチプレイや人体改造が“ある”という部分的な情報があったくらいで,ゲームシステムなどの詳細はあまり出ていませんでした。
佃氏:
アンケートを行ったのも,インターネットの普及によってゲームをとおしたコミュニケーションの取り方が変わったというところがあります。迷いのあるところに対しては,ゲームがある程度仕上がった時点でプレイヤーからストレートな意見をいただこうと。
4Gamer:
具体的な例はありますか。
佃氏:
分かりやすいところですと,初期装備の移動速度を上げてほしいというのがありました。
ここは,より多くの人が楽しめるゲームにしたいと考えたとき,「最初から動きが速すぎるとこういったゲームに不慣れな人はうまく操作できないはず。徐々に慣れてもらえるようなものにしたい」と思って設定したものでした。
4Gamer:
確かにちょっと遅いなと感じたところはありましたが,そういった要望が多かったのですか。
佃氏:
はい。装備を変えたり整えたりしながらアーセナル(機体)を強化することで楽しむゲームなので,いただいた意見に耳を傾けながらそういった部分を壊さないよう慎重に調整しました。
このように,プレイヤーの皆さんに共通の話題として見てもらおうと。もちろん作り手として,まずは楽しんでもらえるクオリティのゲームに仕上がっているという大前提があったからこそ行えたことですが。
4Gamer:
なるほど。フィードバックが多かったところはどの部分だったのでしょう。
佃氏:
多かったのは視認性です。とくに「敵が見えにくい」という意見は多かったので,細かい部分まで調整しています。大きいところだとマーカーがついたことと,敵から攻撃を受けた際に攻撃された方向を画面上で表示するようにしたことでしょうか。
4Gamer:
視認性に近いところだと,ロックオンでの視点の固定はどうでしょう。4Gamerの体験版プレイレポートでも,気になった点として視点の固定(カメラ操作)を挙げていました。
佃氏:
ロックオンでの視点固定が可能になる装備を追加実装することで対応しました。ただそれは“ソフトロック”と言いますか,ある程度ロックオンしたい対象を視界に入れないとロックされず,敵が視界から外れたり距離を取られたりすると解除されるようなものですね。
4Gamer:
たしかに本作は敵のスピードが速く360度どこからも攻撃してくるので,視点が固定されてしまうと振り回されて操作どころではなくなりそうです。
佃氏:
そうですね。例えば敵が急に後ろに回り込んできたら,自分がどこを向いているか分からなくなるし,3D酔いにもつながってしまうと思うんです。
先ほどお伝えしたとおり,マーカーやレーダー表示によって敵を捉えやすくなっているので,遊び方に慣れてきたらロックオンなしで十分に楽しめると考えています。
4Gamer:
ほかにどのような声がありましたか。
佃氏:
文字サイズが小さかった点ですね。もともと見やすいサイズだったのですが,実は体験版での設定ミスがありまして……製品版ではしっかり戻しています。
あと個人的に意外なところだと,ジャイロ操作に対応してほしいという意見が多かったですね。制作チームでは「みんな使うのかな?」「なくていいんじゃないか?」くらいの温度感だったのですが,アンケートを見て驚きました。
4Gamer:
やはりNintendo Switchとなると,「スプラトゥーン2」の操作方法が基本になっている人も多いかもしれません。
佃氏:
はい。最初はさほど重要じゃないだろうと思ってしまったのです。自分はオールドタイプですから(笑)。Nintendo Switchのプレイヤーには当たり前なんだということがあらためて分かったので,アンケートを行って良かった。いろいろ学べたなと思いました。オプションメニューでON/OFFが可能なので,ジャイロ操作を使わないという人も安心してください。
4Gamer:
LABのいわゆる人体改造についてはどうでしょう。
佃氏:
どちらかというとSFやメカ好きの濃い層の人たちからのリアクションが多かったのですが,予想以上に楽しいって声をいただけました。
「せっかくキャラメイクしたのに,人体改造で見た目が変わってしまうのは嫌だ」という意見もありましたが,世界観の設定に沿ったものなので,ここはそのままにしています。
4Gamer:
力を手に入れた代価というか,業を背負っている感もあるので,個人的にはこのままの方が嬉しいです。
佃氏:
もちろん人体改造をしなくても,自身のプレイヤースキルやアーセナルの強化で十分に戦えますから。ゲームって,プレイヤーごとに違う楽しみ方ができないと面白くないですし,選択肢はたくさん用意したいと考えています。
4Gamer:
全体的な話だと,どのあたりの作業が大変でしたか。
佃氏:
いただいた意見は1つずつ対応していくと最初に決めていたので,大変だったというのはあまりありません。強いて挙げるとしたら,世界中から集まったアンケートを精査していくところでしょうか。1日何件も届くアンケートをまとめて,意見が多かった部分はどんどん開発に上げて改善作業を進めました。
いただいた意見は国内外ともにだいたい同じような部分への指摘だったのですが,国によって微妙にニュアンスが違ったりして大変参考になりました。
4Gamer:
好意的なものが多かったですか。それとも手厳しい雰囲気でしたか。
佃氏:
アンケートの結果を集計したところ,面白かったという感想が90%を超えていました。前向きにゲームをプレイし,意見を送っていただけたようです。もちろん厳しい意見もいただいていて,それに関してはスタッフ一同真摯に受け止め,改善に努めました。
4Gamer:
満足度90%というのはすごい数字ですね。その結果を見てどう思いましたか。
佃氏:
とても嬉しいかったですし,純粋にスタッフ一同の励みになっています。
完全新規タイトルということで,今までにない新しいものを作っていきたい。メカ好きの方だけではなく,アクションゲーム好きや多くの人がプレイしてくれるゲームを作りたいと考えているチームにとって,まず楽しんでもらえるかどうかは重要でした。そういう意味では目指しているものが達成できてよかったなと。
4Gamer:
体験版をプレイした者としてはどれくらい変わったか気になるのですが,発売前に確かめる機会はないのでしょうか。
佃氏:
いまのところまだ未定ですが,またこういった体験版などの形で,皆さんにプレイしていただく機会が設けられるといいですね。
4Gamer:
期待しています。それでは最後にメッセージをお願いします。
佃氏:
メカという前に,アクションゲームとしてまず楽しいゲームになっています。操縦しているというより“自身が身体を動かしている感覚”で遊びやすく,難しすぎずにカッコいいアクションができるので,メカやロボット,SFが好きな人はもちろん,そうではない方にもぜひ楽しんでほしいです。
4Gamer:
9月の発売を楽しみにしています。ありがとうございました。
「DAEMON X MACHINA」体験版のインプレッションをお届け。ロボットやメカ好きの心に刺さる「カスタマイズ」と「人体改造」
マーベラスが制作中のNintendo Switch用メカアクション「DAEMON X MACHINA」の体験版となる「プロトタイプオーダーズ」が配信中だ。制作陣に佃 健一郎氏や河森正治氏などの名前があることで,メカやロボット,SF好きの注目を集める本作の体験版をプレイしたので,インプレッションをお届けしよう。
「DAEMON X MACHINA」のキーマン佃 健一郎氏と河森正治氏にインタビュー。そのメカニカルデザインに迫り,謎多きメカアクションを紐解く
「E3 2018」で発表された「DAEMON X MACHINA」は,プロデューサーを佃 健一郎氏が,メカニカルコンセプトデザインを河森正治氏が務めるNintendo Switch向けメカアクションだ。このお2人に,本作の謎多き世界観や設定,“ゲームにおけるメカニカルデザイン”といった貴重な話を聞いたので,その模様をお届けしよう。
「DAEMON X MACHINA」公式サイト
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- DAEMON X MACHINA(デモンエクスマキナ)-Switch (【先着購入特典】「プロトタイプアーセナル」「プロトタイプスーツ」ダウンロード番号 同梱)
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