インタビュー
NetEaseが目指しているのは,「世界で最も大きいユーザー数」を持つことではない―――重要なのは,ユーザーの皆さんに満足してもらえること
1997年に設立され,フリーメールとポータルサイトのサービスにその端を発する中国の巨大ゲーム企業NetEaseは,創立者であるウィリアム・ディン氏の「これからはオンラインゲームだ」という鶴の一声でゲーム会社へとその舵を切り,いまでは押しも押されぬ中国を代表するゲーム会社となった(なおフリーメールもポータルも,巨額を生むビジネスとしていまでも健在だ)。
途中で思い切り舵を切ったウィリアム・ディン氏の慧眼もさることながら,この規模の会社はその脇を支える人達も大変に優秀でなければ身動きが取れなくなる。NetEaseのゲーム部門の「顔」といえば,副社長(Vice President)である王怡(Ethan Wang)氏であろう。GDCなどでもスピーチをしている氏は,事実上NetEaseのゲーム部門を率いているわけだが,今回たまたま別件で来日することを知り,スケジュールの合間を縫って無理矢理1時間だけ時間をもらうことができた。
通訳を介しての1時間なので,込みいった話まではできなかったが,NetEaseという中国でシェアナンバー2のゲーム会社が何を考えているのかのあらましは聞き出すことができた。以下にそれを掲載しよう。
余談だが,NetEaseを中国語で書くと「网易」で,これをカタカナ読みすると「ワン・イー」。そして,副社長の名前の「王怡」をカタカナ読みすると「ワン・イー」。単なる偶然だろうが,興味深い。
関連記事:挑戦を恐れる企業の未来は,困難になるだけ。「持続可能なIP」を持っていないからこそ,成長し続けなければいけない―――NetEase Gamesの若き本部長が語る,中国業界事情
NetEase Games公式サイト
4Gamer:
本日は,とてもお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。
NetEaseといえば,最近は日本でも「荒野行動-Knives Out-」や「Identity V」が調子良さそうで何よりです。
王怡(Ethan Wang)氏(以下,Wang氏):
ありがとうございます。メディアのみなさんのおかげです。
4Gamer:
まず……おそらくWangさんは日本のメディアに出たことがないと思いますので,いままでの経歴などをお聞かせいただけますか。
Wang氏:
学生時代は,南京大学でITについて勉強していて,博士課程までいってドクターを取りました。でもIT関係に進むことはなく(笑),大学を卒業してからはP&Gでマーケティング関連の仕事を6年間担当していて,その後NetEaseに入りました。
4Gamer:
お,P&G。重要な役職の人の間で「P&G出身」ってちょくちょく見かけるんですよね。優秀な人材を輩出するということはやはり優秀な企業なんでしょうねえ。
Wang氏:
そうなんですか? 大きな会社なのでやることの規模も大きくて,経験を積みやすいからかもしれませんね。
NetEaseに勤めて8年になりますが,最初はCEO 丁磊(ウィリアム・ディン)のマーケットアシスタントをやってました。今は,中国国内と海外のパブリッシング全般を担当しています。
4Gamer:
最初から,あの“レジェンド”(ディン氏)の下で働いていたんですね。大学を卒業して6年P&Gにいて,その後NetEaseに8年ということは……まだ結構お若い? いやゲーム業界の中では上のほうかな。
若い……とは言えない年だと思いますよ(笑)。おっしゃるとおりゲーム業界は,中国では大変若く,歴史もあまりない業界ですし。
単に私は,ゲームが好きだという気持ちと,大学で勉強していたIT分野の知識,そしてP&Gの6年間で得たビジネスの経験,この3つを生かしてNetEaseでやっています。「自分の好きなことに携わっているんだ」という気持ちですね。
4Gamer:
見た目のイメージからはちょっと意外でした。もともとゲームがお好きなんですね。「どうしてP&GからNetEaseへ移ったのでしょうか」とお聞きしようと思ったんですが,理由はそこですか?
Wang氏:
そうですね。正直に言って,ゲーム会社に入れてとても嬉しいです(笑)。また,大学時代に勉強してきたITの知識は開発現場の人と交流するときにすごく役に立っています。先ほども申し上げましたが,ゲーム業界というのは歴史がまだ浅いので,P&Gで学んだ伝統的な業界の経験をNetEaseでも生かせていますね。
4Gamer:
いいとこ取りですね(笑)。
Wang氏:
はい,そんな感じです(笑)。
4Gamer:
NetEaseの素晴らしいところは,B.A.T.(編注:中国3大巨頭である,Baidu,Alibaba,Tencentの3巨頭の頭文字を取った呼び名)に吸収されていないというところだと思います。巨大な資本に属さない私たち4Gamerから見ても,勝手にシンパシーを感じています(笑)。
でもこれはあくまでも外から見たときのインプレッションに過ぎません。NetEaseの中の人から見たときには,自社の素晴らしいところはどこだと思っていますか?
Wang氏:
そうですね……NetEaseは,自社のゲームコンテンツに注力している非常にインディペンデントな会社です。いま触れたB.A.T.については,中国においてNetEaseと違ったプロダクションの方向性を持っているものだと考えています。
4Gamer:
確かに住み分けはできそうですが,とはいえその3巨頭は,Tencentを例にするまでもなく,あらゆるジャンルに手を伸ばしてますよね。
Wang氏:
確かにそうです。でも基本はやはりあって,ご存じのようにB.A.T.はそれぞれが検索エンジン(Baidu),EC(Alibaba),ソーシャル(Tencent)という3つの分野で展開しています。対するNetEaseのコンテンツはエンタメに注力していて,グローバル展開においてはB.A.T.より得意であると思います。
4Gamer:
最近のNetEaseのEC(編注:ここでは越境ECを指す)での躍進ぶりは半端ないですが,とはいえ確かにエンタメが基本ですね。
Wang氏:
そうです。やはり基本は「ゲーム会社」ですからね。
4Gamer:
でもそれならそれで,Tencentのユーザー基盤は中国国内では圧倒的な数だと思います。中国はまず国内が外せないマーケットですし,そこに対しての勝負はなかなか厳しいのでは?
Wang氏:
おっしゃりたいことは分かりますよ。でもTencentは中国国内ではスーパーマーケットのようなもので,さまざまな分野に事業展開しています。しかし,弊社はコンテンツを高品質なものに絞りユーザーに提供していくという戦略をとっています。
4Gamer:
はい。
Wang氏:
中国では,WeChatやWeiboなどがはやっていますし,翻って世界を見れば,国際的にはTwitterやFacebookがあります。現在の社会は,こういったSNSによって,人々がコミュニケーションを取りやすい世の中になりました。なので昨今は,品質の高いコンテンツを作ったときに,SNSを通じてユーザーの皆さんに情熱を届けることができるわけです。
4Gamer:
まして検索やEC,ソーシャルメディアと違って,ゲームって実はグローバル展開をしやすいジャンルですしね。
Wang氏:
そのとおりです。確かにTencentのユーザー規模は大きいですが,SNSなどインターネットの力を使ってグローバルに打って出れば,弊社にも勝ち目はあると思っていますよ。
4Gamer:
少なくとも日本のゲーム業界を例に取るならば,NetEaseは2歩も3歩も先を行ってますしね。
Wang氏:
そう思っていただけているなら本当に嬉しいです。
目指しているのは,「世界で最も大きいユーザー数」を持つことではない
4Gamer:
とはいえTencentは,ゲームに限らず「取り込んでいく能力」がとても高い会社だと思います。資本投下然り,M&A然り。Wangさんに向かって言うことでもないですが,中国で爆発的に普及し始めているサービスは,そのほとんどにTencent(とAlibaba)の資本が入っています。
NetEaseがそういった方向に舵を切る会社ではないのは承知のうえですが,今後ワールドワイドに展開していくにあたって,どういう方向を軸として進もうと考えているんでしょうか。
Wang氏:
繰り返しになってしまいますが,それらの会社と弊社が違うのは,やはり弊社は「コンテンツカンパニー」であるということです。先ほど述べたように,ゲームをメインとしてワールドワイドに展開していきたいと思っています。さらに現在では,中国国内でECや音楽,教育などゲーム以外のコンテンツも展開しており,それらもユーザーからとても好評です。そちらにも芽があるかもしれません。
4Gamer:
あぁ……音楽のサービスは評判いいらしいですねえ。知り合いの,音楽関係の仕事をしている中国人も「あれはいい」って言ってました。
ありがとうございます。弊社が提供するNetEase Cloud Music(*)という音楽アプリは,Tencentのアプリに比べると規模は大きくないのですが,「プレミアム」という視点から音楽を提供しているため,ユーザーから人気を集めています。
*SMEなどのレーベルと提携し,アーティストのライブを行うサービスなども行っているちょっと変わったクラウドサービス
4Gamer:
なんというか,NetEaseのやり方は確かに,規模の大小こそあれ「コンテンツ屋さん」の発想なんですよね。
Wang氏:
そうなんです。
NetEaseのプロダクトが目指しているのは,「世界で最も大きいユーザー数」を持つことではなく,ユーザーの皆さんに本当に満足してもらえるコンテンツを提供することなのです。最初の質問に対する答えにはなってないですけどね(笑)。
4Gamer:
いえ,十分に分かりますし,コンテンツ業界の隅にいる者として,その思想は嬉しく思います。
Wang氏:
ありがとうございます。
4Gamer:
ゲームは――とくに昨今のスマホゲームは――お金を生むので,日本だけでなく海外などでもゲーム業界以外の人がたくさん参入してきていますし,恐らく中国にもそういう側面は少なからずあると思います。そんな中でもNetEaseは,決算報告書を見てもゲームが相当な売り上げを占める「ゲーム企業」なので,ぜひゲームをメインとする姿勢を貫いてほしいなぁ,と。
ええ。弊社がグローバルマーケットに進出するためには,やはり高品質のゲームを提供するのが一番いい方法だと思うんです。
4Gamer:
でも確かに,日本に限らず,グローバル展開における目利きの部分がほかの中国企業に比べて圧倒的に強いですよね。最近では,日本でも立て続けにヒットを飛ばしていますし。ほかの中国企業にはマネできていない点だと思うんですが,何か特別なチームが組まれていたり,特別なノウハウがあったりするんでしょうか。
Wang氏:
実は……特別なノウハウがあるわけではないんです。恐らく,弊社が作り続けてきた品質の高いゲームの中で,たまたまリリースのタイミングが合ったいくつかの作品がヒットしたんだと思います。またもやご期待に添えない返事ですみません(笑)。
4Gamer:
なんという正直な見解……。
でもNetEaseは,PCゲームから始まってずいぶん長いことゲームの開発をしてきましたし,社内には目に見えない形かもしれませんけど,ノウハウが溜まっているのではと思いました。
Wang氏:
おっしゃるように弊社は,18年前にはPCゲームの開発にすでに取り組み始めていて,2012年からはモバイルゲームの開発を始めました。そういったPCゲームの開発経験と,6年間のモバイルゲームの経験,その両方のノウハウを,ゲームの運営などに生かすことができていると思います。
しかも品質の高いものにこだわり続けたので,開発の技術力もトップレベルになって,世界でも認めてもらえるほどになりました。こういった背景もあって,いくつかのタイトルで結果を出せたのだと思います。
4Gamer:
なるほど。そういうゲーム開発会社としての顔もそうですが,最初の事業であるメールサービスやポータル,そして近年ではクロスボーダーEC(越境EC)として「考拉(Kaola)」や「網易厳選(Yanxuan)」がぶっちぎりの成果を出しています。
そうやってWebサービスを中心に巨大なサービスをいくつも抱えている会社ですし,HTML5との相性はとてもいいのではないかと思っているんですが,そういった方面での展開は考えていますか?
Wang氏:
HTML5のゲームについては,まだ今の業界では,ゲームコンテンツそのものではなくて背後に隠れている「ソーシャル的なもの」を重視しているように思えます。例えば,「WeChatの友達同士のつながりを利用してゲームを広げて成功させる」といった感じですね。
4Gamer:
ゲームとしてのクオリティが求められる段階ではない?
Wang氏:
ええ。品質を求めているというよりは,背後のソーシャル性を重視しているように見えます。もちろん弊社としてもHTML5のゲームを展開しようと思っていますが,でもその出し先はWeChatではなく,Facebookなどのワールドワイドな大手と提携しようかと思ってます。
4Gamer:
なるほど。日本でのHTML5ゲームは「高品質なゲームをWeb上でインストールなしで」というキャッチコピーが重視されている感もあるんですが,結構考え方が違うんですね。
Wang氏:
HTML5のゲームでは,まだ弊社の技術力を深く見せることが出来ないと思っているんです。展開する予定はありますが,今はまだそこまで力を入れる部分ではないですね。
大切なのは,それぞれの国のユーザーの遊び方であって,まずそこの理解が重要
4Gamer:
「荒野行動」然り「Identity V」然り,NetEaseは日本のゲームマーケットで立て続けにヒットを飛ばしてますよね。世界中から「進出が難しい」と言われる日本で,すごく興味深い事例です。先ほどは「何も秘策はない」と言ってましたが,何か日本ローンチのために取っているちょっとほかとは違う特別なアクションってありますか?
Wang氏:
それはよく聞かれるんですが,まずコンテンツ自体は日本とグローバルでまったく変わりません。
4Gamer:
コンテンツ自体「は」……ということは?
Wang氏:
実はUIに手を入れています。例えば,日本のユーザーはアニメや漫画風のイラストが好きなので,「荒野行動」のUIをアニメ風に調整していたりしますし,翻訳も,日本のユーザーに向けて読みやすく,興味を持っていただけるように手を入れています。
4Gamer:
UIとは意外なところが。……でもUIに手が入っているということは,バイナリファイルが2つあるんですか?
Wang氏:
そうなりますね。
4Gamer:
バージョン管理の手間が大変なのでは。
Wang氏:
はい,すごく大変です(笑)。自動的にサーバーと通信してバージョン番号などをチェックするだけなんですが,2つのUIを作って維持するのは結構大変なんです。
4Gamer:
そこまでの手間とコストをかける価値が,日本のマーケットにはある,と。
Wang氏:
もちろんです。これは誰に聞いてもあまり答えは変わらないと思いますが,中国,アメリカ,日本がゲームの三大市場だと思っていますから。
手間とコストという話で言うなら,「荒野行動」はUIの調整以外にも日本ユーザー向けのイベントを行っています。例えば,今年の8月には「進撃の巨人」とのコラボをやらせていただき,それは大好評でした。
4Gamer:
はい。意外な組み合わせだなと思って見てました。
Wang氏:
あとは……これはちょっと表現が難しいのですが,「荒野行動」と「Identity V」は競技性を強調したプロモーションにしているつもりです。「勝利のために一生懸命ゲームをしてほしい」というイメージが,日本のみなさんの感覚とうまく合っていて,それがちゃんと伝わっているのかもしれません。もちろん,勝利という結果が一番大事なのではなくて,ゲームをプレイしていく中でのプロセスを楽しんでほしいのですが。
4Gamer:
そうなってくると,中国と日本のユーザーの遊び方や好みの違いが重要になってきますよね。
Wang氏:
そうですね。中国はユーザー規模が日本より大きいので,プロセスを楽しむユーザーもいれば,競技性を重視しているユーザーなどさまざまな人がいます。一般的に見て,日本と比べると中国はやはり「勝負」を重視している人が多く,我々も日本ほどプロセスを重視する方針を採っていません。
4Gamer:
ということは,中国の「荒野行動」は,私たちが想像する以上に日本の「荒野行動」とは違うんですね。
Wang氏:
やはり中国のユーザーも競技性を求めているので,そこはちゃんと強調しています。他社のゲームの話ですが,AIを使ってでもユーザーに勝利を体験してもらうというシステムまでありますし,ユーザーもそれを受け入れています。
4Gamer:
それほどまでに「勝ち」にこだわっていると。
Wang氏:
はい。それに対して日本のユーザーのみなさんは「勝ちにつながるための策を練るプロセス」を楽しんでいるように思います。
4Gamer:
日本人としては,なんとなくそれ分かります。
その話で言うと,中国のゲームってすごい勢いでサーバーが増えていきますよね。ずっと不思議に思っていたんですが,以前「サーバーを増やせば1位を取れる人が増えるからゲームが盛り上がる」と中国のデベロッパの人に言われたことがあって,「なるほど」と感心したことがありました。それぐらい「競うこと」が好きなんですね。
Wang氏:
ご存じかと思いますが,弊社は多くのサーバーを開きません。確かにサーバーを増やすことで1位を取る人が増えるのも事実ですし,それによってゲームが一瞬盛り上がることも事実なんですが,その背後には,1位を取るために課金する人を増やして短期的な利益を上げたいという狙いもあります。
4Gamer:
……ということを普通に言っちゃうあたり,やはりNetEaseは「ゲーム会社」ですね。
Wang氏:
お褒めに預かり光栄ですが,正直なところ……いい面もありますし,「悪い面」もありますよ(笑)。
4Gamer:
ええ。利益の最大化という部分においてはなかなか難しいところがありますよね。企業は営利組織ですから。
まぁでもそこはほかの事業でなんとかしていただくとして……。
Wang氏:
そうですね。ミュージックもそうですが,教育やECについても実績を上げていきたいと思っています。
4Gamer:
ゲームは特に,作品できちんと利益を上げてもらって長く運営してもらわないと,結局悲しい思いをするのはプレイヤーなので,そこはうまいことお願いします。
Wang氏:
短期的な利益を追い求めているわけではないですが,弊社のタイトルは他社のタイトルよりライフサイクルがとても安定しています。長期間が経ったあとでもあまり収益が落ちません。提携先に対して自社を紹介するときには,他社と比較したチャートを見せるようにしています。
4Gamer:
結局はそっちのほうがいろいろなメリットがあると思うんですよね。
ゲームを成功させるには,そのコンテンツが市場に向いているかどうかを判断するべき
4Gamer:
ところで,日本でこれからもいろいろなタイトルをローンチする予定ですか?
Wang氏:
はい。弊社内には開発スタジオが50個以上あり,それぞれがプロダクトを作っています。これから日本市場にリリースできるように頑張っています。
4Gamer:
50個もあるんですか……。
それにしても,ゲームを違う国で展開するときの判断の基準はどこなんでしょうか。例えば「日本市場にはこのタイトルが向いているだろう」とタイトルごとに決めているのか,あるいは「アクションゲームならまずアメリカで展開しよう」とか「RPGは日本にしよう」とか,ジャンルごとになんとなく決まっていたりするのか。
Wang氏:
いい質問ですね。でも答えは全然違っていて,判断の基準となるのは「コンテンツの遊び方」です。
4Gamer:
さっきの話の延長……かな?
直近タイトルでの話なんかを例に,もうちょっと聞かせてください。
Wang氏:
例えば「Identity V」では,協力プレイの要素や「勝利に向かってのプロセスを楽しむ」要素がとても日本向けだと思いましたし,なにより画風もダークで,絶対に日本向けだなと思いました。
4Gamer:
画風,向いてます……かね?
Wang氏:
ええ。「SINoALICE(シノアリス)」なんかも似たような雰囲気ですよね?
4Gamer:
あー……言われてみればそうかもしれません。ナイトメアー・ビフォア・クリスマス的な。
Wang氏:
これからも弊社は,やりこみがいのあるコンテンツを作りながら,それでいてあまりユーザーが疲れないゲームを作っていきたいですね。今後はシミュレーションゲームやTCGのジャンルにも取り組んでいきますし,もう少しカジュアルなゲームも展開していきたいです。カジュアルなゲームなら,それこそ本当の意味でのグローバルで受け入れられやすいと思いますので。
4Gamer:
しっかり中身を見て判断しているのはさすがです。「アニメっぽいから日本!」「RPGだから日本!」みたいな感じで参入して失敗したりする人がけっこういますから。
しかしそんな,ちゃんとした選択眼を持ったNetEaseから見て,一般的な中国のデベロッパのゲームが日本に進出する上で足りないところはどこだと思いますか。
Wang氏:
答えづらい質問ですね(笑)。
具体的に何が欠けていると言い切ることはできないと思います。ゲームを成功させるには,まずそのコンテンツが市場に向いているかどうかを理解して判断しなければなりません。しかし,そのマーケットへの理解も,人それぞれに考え方も違いますし,一概に何が正しいとも言えないですから。
弊社は今までに日本市場で,3つのタイトルで成功することができていますが,まだ完全に日本のマーケットを把握しているわけではないので,これからも勉強していく必要があります。引き続きユーザーの皆さんからフィードバックやご意見をいただければ,弊社としてもとても助かります。
「逆水寒(Justice Online)」など,スマホ以外のタイトルを展開する予定はないのでしょうか。
Wang氏:
やりたいんですが,ものすごくコストがかかるんですよね……。あと武侠系のゲームなので,カルチャー的に合うのかという心配もありますし,なにしろローカライズがとても大変です。あと,インストールするバイナリが90GBもあるんですよ。
4Gamer:
あれ90GBもあるんですか。
Wang氏:
そうなんです。なので,やるとしてもちょっと時間がかかると思います。
4Gamer:
もういっそハードディスクごと売ってしまえばいいのでは。
Wang氏:
確かに楽ですね(笑)。
4Gamer:
最近中国でじわじわ盛り上がりつつある,コンソールゲームについてはいかがですか。
Wang氏:
研究はしていますが,弊社の得意分野ではありません。弊社は現在,中国で展開するにときはユーザーの執着心のようなものを重要視していますが,コンソールゲームにおいてはシナリオなどが重視されるので,開発するためにはまずその基礎を作らなければなりません。また,執着心についてもPCやスマホのゲームより低いと思うので,メインで展開することはないと思います。なんらかの既存のIPを使った作品だったり(※),コンソールゲームが得意な会社と提携して共同開発だったり……という形ですかね。
※インタビュー後に,荒野行動のPS4版という形で発表された(関連記事)
4Gamer:
提携というとBungieとかですか?
Wang氏:
はい,Bungieにはすでに投資していますし,これからも別の分野で提携していく予定です。
4Gamer:
では,「EVE Online」もそうですが,Bungieの作品なんかもモバイルで出てくる可能性も……?
Wang氏:
それについてはまだお話しできません。すみません。
聞かれる前に最初に言っておきますが,「Pokémon GO」を開発しているNianticにも投資していますが,何もお話できませんよ(笑)。
4Gamer:
残念です(笑)。でもいろいろな方向に,ゲーム会社として打つべき手は打ってある感じですね。
Wang氏:
はい。グローバル展開を視野に入れて,これからもいろいろな会社と提携して世界でトップレベルの会社になれればと思います。
世界中のユーザーたちの好みの差は,この先どんどんなくなってくる
4Gamer:
少し話が戻っちゃうんですが,日本の有名タイトルが中国でローンチしても,うまくいかないことが大半です。あれは一体,何が足りないんでしょうか。
うまくいっていないタイトルもあれば,「Fate/Grand Order」のように実績を上げているタイトルもありますよね。つまり「日本の有名タイトル」がうまくいかないのではなく,例えば「パズドラ」と「モンスト」に関しては――たぶんそれらを念頭においた話ですよね――コンテンツの遊び方自体が中国のユーザーに向いていなかったんだと思います。
4Gamer:
なるほど,遊び方。ゲームカルチャーに関わる話ですね。
Wang氏:
日本のユーザーが既に遊び方に慣れているものでも,中国で未体験のものであれば,ユーザーが遊び方に慣れるまで時間がかかります。ユーザーに学んでもらえなければ,おそらくは成功できないと思います。
4Gamer:
コンソールゲームの文化が長く続いてきた日本との違いなんでしょうか。
Wang氏:
そういう側面もあるかもしれません。でも現在のゲーム業界はグローバル化が進んでますし,これからは中国のユーザー,日本のユーザー,アメリカのユーザーなど,世界中のユーザーたちの好みの差はどんどんなくなってくるのではないかと思っています。
4Gamer:
確かに日本でも,昔よりも他国のゲームがヒットする回数が増えた気がします。
……ではお時間が迫ってまいりましたので,最後に――ちょっと趣向を変えて――NetEaseの副社長から,日本のスマホ業界に向けて何かメッセージはありますか?
Wang氏:
うーん……(しばし考えて)これからNetEaseは,いままで以上にグローバルに展開していく予定ですので,日本のゲーム会社の皆さまとも,より深い提携関係を築ければと考えております。
そして,日本のユーザーの皆さまに対しましては,「高品質なものを提供する」という弊社のモットーを知っていただいたうえで,足りないところがあればぜひともフィードバックをいただければ,そのご意見を参考にして調整させていただきます。なにとぞよろしくお願いいたします。
4Gamer:
ありがとうございました。
――2018年8月28日収録
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