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人気ストリーマー「Ninja」とコラボした,大胆なデザインのPCケース「H700i Ninja」をNZXTが国内発表。実機は完成度がかなり高い
4Gamerではそれに合わせ,その実機を入手することができたので,細かなスペックは後述するとしつつ,極めてインパクトの大きい見た目をしたその筐体を写真メインで紹介してみたいと思う。
NinjaのYouTubeチャンネル(英語)
とにもかくにも強烈な外観
製品ボックスから取り出したH700i Ninjaは,Ninjaというストリーマーを知らない場合はいろいろ理解に苦しむ事態になりそうなほどに,コラボモデル感が極まっている。鮮やかな青色で塗装された本体正面向かって左側面のほぼ全体を占める強化ガラスには「NINJA」のロゴが,右側面にはアイコンのカスタムペイントが入り,さらに前面には縦書きで「忍者」だ。
本体左側面。強化ガラスにNINJAのロゴが刻んである。ガラスの厚みは実測約4mmだった |
本体右側面はアイコンのカスタムペイント入り。公称本体サイズは230(W) |
オープンベイのない平らな前面パネルはゲーマー向けPCケースにおける最近の流行だが,忍者と書いてあるPCケースはなかなかない。なお,NZXTロゴも目立たないながら一応入っていた |
ちなみに上面のデザインは前面とほぼ同じ感じのフラットで,最前面のところに正面向かって右からATX電源ボタンとUSB 2.0 Type-A
底面は電源ユニットを搭載して底面給気する仕様になっているため,本体正面向かって後方よりにスライド式の防塵フィルターを搭載するのが目を惹くところだ。
底面吸気の効率を上げるため,四隅に置いてある脚の高さが実測約25mmと大きめなのにも注目しておきたい。
本体底面。写真では右が前面側で,右に見える大きめの隙間は前面カバーを外すときに使うものだ。防塵フィルターとは別に長めのスリットも開いているのも確認できる |
電源ユニットによる吸気時の埃(ほこり)対策となる防塵フィルターは本体後方に向かって引き出せる仕様だ。斜めから見ると脚がけっこう大きいのと,貼ってあるゴムシートが相応に厚いのも分かる |
ちなみに搭載するファンの回転数は1000rpm±200rpmで,公称風量68.95CFM,公称騒音レベル29dBA。接続端子は3ピンだった。
「見た目勝負ではない」とばかりによく錬られた内部構造
H700i Ninjaは,強化ガラス部の手回しビス4個を取り外すと,正面向かって左側面から内部へアクセスできる。
内部構造で何よりもまず目に留まるのは,明るい橙色をした折り曲げ加工済みの金属プレートだと思うが,これはNZXTのPCケースシリーズであるHx00iシリーズに共通する意匠としての「Cable Management Bar」(ケーブルマネジメントバー)だ。単なる装飾品ではなく,強化ガラス越しに見たときに筐体内のケーブル配線を隠すための板として機能するようになっている。
ケーブル配線の話が出たので続けると,H700i Ninjaでは,いわゆるマザーボード裏配線への配慮がなかなか豪勢である。
最近のミドルタワーPCケースではマザーボード取り付け板と本体右側面カバーとの間に十分なスペースを設け,電源ユニットやストレージ,ファンからのケーブルを這わせやすくしてあるのが主流で,一部製品では標準でケーブルを束ねるストラップが付いていたりするのだが,H700i Ninjaではそれに加え,ケーブルを這わせやすくするためのガイドがそこかしこに用意してあるのだ。
NZXTはこのケーブルマネジメント機構に「Cable Routing Kit」(ケーブルルーティングキット)という名を与えているのだが,わざわざマーケティングネームを用意するほど,この機構の使い勝手には自信があるのだろう。
マザーボード取り付け用金属板には,CPUクーラーを取り付けるための大きな空間が設けられているが,その周囲にはプラスチック製のケーブルガイドがある |
本体前面寄りのところには長い複線型ケーブルガイドが2系統ある。いずれも本体点面部のインタフェースやファンのケーブルで“片側車線”は塞がっているが,もう1レーンは自由に利用可能だ |
2系統の複線型ケーブルガイドを伝わるケーブルの端子はおおむね本体下部寄りにまとまっている。このまま使ってもいいが,マザーボードの電源端子に合わせて配線し直すのも,もちろんアリ |
PCケース内で持てあまし気味になることの多いファンケーブル用だと思われるが,NZXT製のヘッドセット&ヘッドフォンケーブルマネジメント機能付きハンガー「PUCK」風なガイドもあった |
ケーブル配線と言えば,その先にあるストレージトレイにも触れないわけにいかないが,ここまで掲載してきた写真から推測できるように,H700i Ninjaのそれは各所に散っている。
まず,2.5インチHDD互換トレイは,マザーボード取り付け用金属板の裏に2基あり,さらに電源ユニットを囲む籠のところに3基ある。前者は手回しビスによる固定式なのに対し,後者はツメで籠に固定する仕様になっていて,トレイ側面を押し込むと外せるというのが異なる。
付け加えると,籠の天面部はパンチ穴が開いており,この穴を使うとストレージトレイを好きな場所で固定できる。
マザーボード取り付け用金属板の背面にある2.5インチHDD互換トレイCable Routing Kitと一体化している印象だ。ここにも複線型ケーブルガイドがあり,Serial ATAおよび電源ケーブルを通せる |
トレイは手回し式ビス1本で固定されている。ビスを外したらトレイを上へ引き出すようにすると4か所のツメが外れて出てくる仕掛けだ |
上面&前面カバーの扱いにくさは残念ながら,簡易液冷クーラーとの相性は抜群
以上,冷却が最重要で,長期的に使ううえではストレージの拡張性も重要になるゲーム用途に向けて内部構造は非常にスマートと言えるH700i Ninjaだが,それと比べると古さが否めなかったのが上面と前面カバーの扱いにくさである。いずれもプラスチック製のプッシュピンで筐体に固定してあり,開けるときはプッシュピンを少しずつ緩めたうえで最後は力任せに引くという「おいおいここだけ20世紀か」という仕様なのだ。
ただ,フォローするわけではないが,拡張性と応用性は文句なしだ。とくに,上面部で,140mm角
よく知られているように,最近はCPUのコア数競争がとくに「HEDT」と呼ばれるデスクトップPC向けのハイエンド環境で起こっており,空冷クーラーでは限界が見えつつある。そこで液冷が選択肢となるわけだが,筆者を含む多くのゲーマーにとって,ポンプにリザーブタンク,ラジエータといったパーツを単体で揃え,チューブでつなぐという本格液冷は難度的にもコスト的にもハードルが高いだろう。結果として簡易液冷クーラーを選ぶことになるが,簡易液冷クーラーは簡易であるがゆえに,ラジエータの取り回しに限界がある。
この仕様はH700i Ninjaが初めてというわけではなく,市場に先行する製品がある点は注意が必要ながら,簡易液冷クーラーでCPUをしっかり冷却したい人が採り得る選択肢のほぼすべてに対応できるPCケースの1台であると言い切ってしまっても差し支えない。
機械学習式のファンコントローラとLEDストラップも搭載
H700i Ninjaにはベースモデルとしての「H700i」があり,Ninjaコラボ周りを除くと,H700i Ninjaの仕様は通常版H700iと共通だ。そして,通常版H700iの実勢価格は税込2万8000〜3万円程度(※2018年8月20日現在)である。「確かによくできたPCケースかもしれないけど,高すぎない?」という疑問を持つ読者もいるだろう。
その理由は,Cable Management Barの奥に隠れている。ここにあるファンコントローラ兼LED制御デバイス,その名も「Smart Device」(スマートデバイス)は,ファンを接続するための4ピン端子が3つと,LED制御用の端子,電源供給用のSerial ATA電源端子,そしてマザーボードと接続するためのUSB端子を持っており,マザーボードと接続すると,NZXTが独自に開発したPCおよびモバイルデバイス用アプリケーション「CAM」から制御できるようになっているのだ。
今回入手したH700i Ninjaは4Gamer 2018年夏の特大プレゼントで賞品となっているため,システムを組んだときに筐体内を傷つけてしまわないよう,静態のみでのチェックとなる。なのでCAMの挙動を確認することはできないのだが,最新版のCAMでは世界各地のユーザーがクラウドへアップロードした膨大な計測データを使ってサーバーサイドでの機械学習を行い,H700iシリーズに最適なファン回転数設定を日々求め続けているとのことだ。そのため,「自動設定」を行ったとき,冷却効率と静音性のベストなバランスを追求できるという。
要するに,Smart DeviceとCAM,およびクラウドサービスの利用料がH700i Ninja(とH700i)にはあらかじめ乗っているというわけなのである。
なお,Smart DeviceにはファンのほかにLEDストラップも標準で取り付けられており,通電時は強化ガラス越しに青く光る様子を見ることができるようになっている。
全体として完成度は高いと言えるH700i Ninja。コスト的に折り合うなら選択肢になる
最後に,後述するとしておいたスペックをまとめておきたい。
- 公称サイズ:230(W)
×494(D) ×516(H)mm - 公称重量:12.27kg
- 本体素材:電気亜鉛めっき鋼板(SECC),強化ガラス
- 対応フォームファクタ:ExtendedATX(※横幅272mmまで),ATX,MicroATX,Mini-ITX
- 外部インタフェース:USB 3.1 Gen.1 Type-A
×2,USB 2.0 Type-A ×2,3.5mmミニピン×2(※ヘッドフォン出力,マイク入力各1) - ドライブベイ:2.5インチ
×5,3.5インチ ×2(※3.5インチ ×2には2.5インチHDD互換ドライブも搭載可能,本体底面に3.5インチHDD ×1を搭載可能) - 防塵フィルター:2(電源ユニット用,本体前面用)
- 前面ファン取り付けスペース:140mm角
×2もしくは120mm角 ×3(※120mm角ファン ×3標準搭載) - 上面ファン取り付けスペース:140mm角
×2もしくは120mm角 ×3 - 背面ファン取り付けスペース:140mm角
×1もしくは120mm角 ×1(※120mm角ファン ×1標準搭載) - ファンコントローラ:4ピン×3(※分岐ケーブルにより4ピン×3+3ピン×6に標準で分岐済み)
- LEDコントローラ:NZXT製LEDストリップ用4ピン×1(※LEDストリップ取り付け済み)
- メーカー想定売価:3万4800円(税込3万7584円)
- 発売予定日:2018年8月24日
日本にもNinjaの「Fortnite」配信を好んで観ている人はけっこういると思うが,コラボモデルのPCケースが欲しいというほどまでに熱心なファンがどこまでいるかというと,正直疑問も残る。
ただ,上面と前面のパネル着脱周りを除けば,非常によくできたゲーマー向けPCケースなのは確かだ。価格に「Ninjaコラボ代」「Smart Device+CAM+クラウドサービス代」が乗っていることに納得できるなら,検討に値するPCケースだと思うが,どうだろうか。あるいは2018年8月20日現在の実勢価格が2万6000〜3万円程度となっている通常モデルのH700iという選択もアリだろう。
NZXTのH700i Ninja製品情報ページ
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