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[TGS 2018]「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -」インタビュー。作品のテーマや込められた思いについてSWERY氏に話を聞いた
10月11日の発売前からその独特の世界観や強烈なゴア表現で話題となっている「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -」(PC/PS4/Xbox One/Nintendo Switch。以下,「The MISSING」)について,開発の経緯や本作のテーマ,コンセプトなどを聞いたので,本稿でそれをお伝えしたい。
「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -」公式サイト
伝えたいメッセージがあったからこそこの作品が生まれた
4Gamer:
「The MISSING」を開発するに至った経緯を教えてください。
SWERY氏:
アークシステムワークス(以下,アーク)の木戸岡社長(木戸岡 稔氏)とは,以前から交流があって,「いつか協力してゲームを作ろう」と約束していました。それで今回,White Owlsを立ち上げたタイミングで相談させていただいたのが始まりになります。
「The MISSING」は最も気合を入れて持ち込んだ企画だったんですけど,木戸岡さんに見てもらったところ,最初はドン引きされてしまいましたね(笑)。
4Gamer:
私もTGS 2018出展バージョンをプレイしましたが(関連記事),そのリアクションは想像できます(笑)。
SWERY氏:
次のミーティングでは森さん(森 利道氏)にも参加したもらったわけですが,そこでまたドン引かれてしまって(笑)。
でも,クリエイティブ面を否定されることは一切なかったんです。開発中も販売するうえでの着地点といった相談はありましたが,ゲーム内容を変更してほしいという話はされなくて。最終的には「好きにやらせるのが一番」となっていただけたようです。
4Gamer:
実際に制作を進めてみて,自身が思い描いていた作品となりましたか。
SWERY氏:
正直,自分が考えていたよりもいい作品が出来上がったと思っています。
これはステージイベントでも話したのですが(関連記事),アクション寄りにするかパズル寄りにするか,敵を倒すのか倒さないのかといったゲーム性で悩んでいた時は考えがかなりブレていました。
4Gamer:
最初はいろいろと織り交ぜようと考えていたと。
SWERY氏:
最終的に謎を解いていくパズルという形で固まったわけですが,そこからはこれまで出なかったようなアイデアもたくさん出てきて,いいゲームに仕上がったなと感じています。
私が作るゲームというと,世界観やストーリー性が強いというイメージを持つ人が多いと思うのですが,今回はゲームデザインに注目してほしいです。これまではストーリーからゲームを作っていましたが,今作ではゲームデザインありきでゲームを作りました。
本作で“White OwlsのSWERYはストーリーだけじゃない”ってところを見てもらえるとうれしいです。
4Gamer:
TGS 2018出展バージョンでも強烈なゲーム性がうかがえます。
SWERY氏:
TGS 2018出展バージョンではとくにゲーム性が高いところを切り出しました。主人公のJ.Jは不死身で,自分の身体を使ってギミックを解いていくわけですが,この「不死身ギア」が一度噛み合ったら,その世界の中でドンドンと発想が湧いてくる部分を遊べるようになっています。
4Gamer:
火だるまになったり,四肢がバラバラになるのはゲームでは珍しくはないですが,それをゲーム攻略につなげるのは斬新だと感じました。その発想はどこから湧いてきたのでしょうか。
SWERY氏:
これは2つの軸がありまして,1つは「新しい横スクロールアクションを作る」ということです。横スクロールアクションはステージ(レベルデザイン)とオブジェクト,敵で作られているわけですが,ここにもう1つ,「自分の身体を活用してゲームを攻略する」という要素を付け加えて,ゲーム性を深くしたいという考えがありました。
もう1つは「不死身のキャラクターを出す」ということ。ゲームって,ある種の作法としてゲームオーバーが用意されていますよね。そういう意味では,ゲームって不死身のキャラクターは存在しないとも考えることもできます。
4Gamer:
物語やキャラクター設定のうえで,というのはありますが,ゲームデザイン上での不死身の主人公というとあまり思いつきませんね。
SWERY氏:
はい。そういったところも考えながら「自分の身体を活用してゲームを攻略する」という要素と「不死身のキャラクター」の2つを組み合わせるという,今回のゲームデザインを作り上げました。
4Gamer:
初見のイメージとして「ギミックを攻略する」「命の価値が低い」といった要素が,Playdeadの「LIMBO」や「INSIDE」に近い雰囲気を感じました。ゲームを作るうえで影響を受けた部分はありましたか。
SWERY氏:
「プリンス・オブ・ペルシャ」「アウターワールド」「ミッキーのマジカルアドベンチャー」など,子どものころは横スクロールアクションのゲームがたくさんあって,かなり影響を受けました。
4Gamer:
子どものころからさまざまな横スクロールアクションに触れてきたんですね。
SWERY氏:
はい。自分がクリエイターになった時代は,もうほとんど作られていなかったのですが,そこから時代が変わって「LIMBO」や「INSIDE」あと「Ori and the Blind Forest」(オリとくらやみの森)みたいな作品のヒットが続き「再び横スクロールアクションが作れる時代がやってきた。自分もぜひ挑戦したい」と思ったわけです。
4Gamer:
ほかに何か挑戦したことはありますか。
SWERY氏:
映画が大好きなので,映画のワンカットみたいな表現をゲームに取り込みました。
横スクロールアクションであれば,すべてのアクションをシームレスで行うことでそれができるなと。ほかにもさまざまな取り組みがありましたが,自分が表現したかったものの答えは提示できたと思っています。
4Gamer:
本作からはとてつもない悲壮さを感じます。テーマやコンセプトなどを教えてください。
SWERY氏:
プレイヤーが自身の身の周りのことをJ.Jの立場に置き換えられるような物語を描いたのですが,それが本作のテーマになっていると思っています。
おっしゃるとおり悲壮さというのはあるのですが,最終的に感動するものを作れたと思っています。傷つき,そして再生するという行為を繰り返しながらエンディングに辿り着き,物語の答えを見てほしいですね。
4Gamer:
TGS 2018出展バージョンではどのようなストーリーか分からないのですが,主人公J.J.と,行方不明になる親友のエミリーはどのような2人なのでしょう。
SWERY氏:
しっかりもののJ.Jと甘えん坊のエミリーですが,お互いに依存関係にあります。
そして,「いなくなったエミリーのためにも前に進まないといけない」というJ.Jの強い意思は,苦痛などといった障害を跳ねのけるほどの力になります。この“苦痛を乗り越える”というところも作品のテーマの1つになっていて,プレイヤーにもJ.Jの強い意志を感じてほしいですね。
4Gamer:
火だるまになって体当たりしたり,四肢を重しにして攻略するなど,かなりエグさを感じるギミックがありました。
SWERY氏:
ストーリーを進めるほどに「こんなことやらせるの……」って思うかもしれません。昨日もプロデューサーの金子さん(金子宝巨氏)に会ったときに「新しいバージョンを見るたびに,どんどんヤバい演出が入ってきて本当に……ねぇ……」って言葉を濁していました(笑)。
4Gamer:
(笑)。ステージに配置されているドーナツを集める意味は何かありますか。
SWERY氏:
ドーナツはコレクタブルなアイテムで,本作の世界に271個隠されています。それを集めていくことでギャラリーやミュージック,過去ログのメッセージなどがオープンされていきますので,集めるほど本作の世界やバックボーンを知ることができます。
さらにチートという機能もあって,そこでは衣装を変更したり,2周目では移動速度のアップやその場で腕切断といった,その名のとおりチートが行えるようになります。
4Gamer:
1周目でもすべて集めることは可能でしょうか。
SWERY氏:
もちろん集められるとは思いますが,かなり難しいとは思います。攻略の裏を突くというか,パズルを解くために注目すると見逃すようなドーナツもあったりしますので。
4Gamer:
全部集めてクリアするとエンディングが変化みたいな,ストーリーに影響を及ぼす要素はありますか。
SWERY氏:
そういったものはないので,全部集めないとストーリーを楽しめないといったことはありません。余談になりますが,集めることを気にせずプレイしたところ,120個前後で終わりましたね。
4Gamer:
ゲームの舞台となる追憶島には工事中の建物といった人工物があり,人がいる雰囲気はあるのですが,ほかの人に出会うことがありませんでした。これは何か意味があるのでしょうか。
SWERY氏:
この質問は答えられないのですが,「すごく鋭い質問だな」とだけ言っておきます。
4Gamer:
ちなみに生き物はいるのでしょうか。
SWERY氏:
動物はいますね。リスなどの小動物は普通に生息していますよ。
4Gamer:
そういえば,映像にクジラのシルエットが出ていたのを思い出しました。あれはあれで意味不明だったわけですが。
SWERY氏:
今回の体験版では,ストーリー部分を完全に無くしたものになっていますが,製品版では最初にJ.Jとエミリーがキャンプに行くところから始まります。それ以降はロードなしでシームレスに最後まで遊べるので,ストーリーを体験しやすいゲームになっていると思います。
4Gamer:
追憶島にはJ.J.を苦しめる罠のようなものが配置されています。敵といいますか,悪意をもった存在がいるということでしょうか。
SWERY氏:
迷いこんだ人達を攻撃しているんでしょうねぇ……と,ここは曖昧な言い方をさせてもらいます。
4Gamer:
たびたびぬいぐるみのF.K.がチャットを飛ばしてきますが,それも追憶島の影響なのでしょうか。
SWERY氏:
これも「製品版ですべて謎は解けます」とだけ……。
ストーリーはキャッチーだと思っているし,「自分の口から魅力を伝えたい!」みたいなのは山ほどあって。でも製品版でそれを体験してほしいから,今は話したくても話せないという,なんとも言えない歯がゆさは感じています(笑)。
4Gamer:
アクションでは悲惨な目にあっていても,チャットではどこか明るさというかコミカルさを感じます。
SWERY氏:
テキストベースで顔が見えない会話というものを,今回初めて描きました。J.Jはネガティブなことがあっても極力相手に伝えないと思っているので,チャットはその性格を反映したものになっていますね。
また,チャットに使用するスタンプも全部うちのデザイナーが作ってくれたのですが,シナリオでスタンプの会話を書くのがなんとも新鮮で楽しかったですね。
4Gamer:
現状では謎が多いゲームですが,クリアした段階ではどこまで謎は解かれるのでしょうか。あえて謎を残しておいて,プレイヤーに考察する余地を与えるといったゲームもあるかと思いますが。
SWERY氏:
自分としては答えは100%提示していると思っています。ただ,それがすべての人にとっての100%の答えかというと曖昧で,部分的に気になるところは残るかもしれません。
4Gamer:
物語の核となる謎はすべて解けるわけですね。
SWERY氏:
はい,なぜ欠損しても再生するかとか,F.Kは生きているのかとか,そういった謎は必ず答えが出ます。
4Gamer:
ストーリーにまったく触れられない体験版だけプレイした感想ですと,万人にオススメできるゲームではないと感じているのですが,どういった人にプレイしてもらいたいですか。
SWERY氏:
オススメしにくい部分というのはゲームメカニクスだと思うのですが,ストーリー,キャラクター,テーマについてはプレイヤー全員が「考えなければならない」「考えさせられる」「共感できる」などといった思いを抱くゲームになっていると思います。
ただ単にゴア表現のゲームを作りたかったわけじゃなくて,本当に伝えたいメッセージがありますので,いろんな人に楽しんでほしいと思っています。ただし,ゴア表現が苦手な人にとって要注意なのは間違いないですね(笑)。
4Gamer:
答えられないかもしれませんが,エンディングはハッピーエンドなのでしょうか。
SWERY氏:
それも製品でぜひ確認してみてください。自分の認識ではハッピーエンドになっていると思います。
4Gamer:
間もなく発売となりますが,期待しているファンや読者にメッセージをお願いします。
SWERY氏:
パッと見は衝撃的で説明もしにくい作品ですが,一度始めたらやめられなくなる面白さを持っているゲームだと自信を持って言えます。ぜひ怖がらずに最後までプレイしていただいて,ゲームの面白さだけでなく,そこに込められたメッセージも受け取ってほしいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
「The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -」公式サイト
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(C) White Owls Inc. / ARC SYSTEM WORKS
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