紹介記事
「Readyyy!」新章“T.O.P Idol SHOW!!”公開第2回は,綾崎小麦のアイドルとしての覚悟と決断が迫られるTeam Shine編
アイドル18人との“今”を育むプロデュースプロジェクト「Readyyy!」の新章「T.O.P Idol SHOW!!」を,全4回に分けて掲載する企画第2回は,安らぎチーム“Team Shine”のストーリーをお届けする。「Readyyy!」ポータルサイト
新章「T.O.P Idol SHOW!!」は,2022年2月13日に開催予定の4周年Liveイベント「Readyyy! 4th Anniversary Live “Twinkle of Protostars”」に向けて展開される新ストーリーだ。4Gamerでは,「FANBOX『Room 19』」で先行公開されている「Readyyy!」の新章「T.O.P Idol SHOW!!」を,全4回に分けて公開していく。
本ストーリーのプロローグはこちらを,「Team Iris編」は前回の記事を確認してもらいたい。
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※以下,メーカー公開文の内容をそのまま掲載しています
「T.O.P Idol SHOW!!」Team Shine編
◆1話
番組アナウンサー
『――それでは、次のコーナーです』
『今日もディア・プロダクションの皆さんと
中継が繋がっていますよ〜。
皆さーん、こんばんはー!』
タクミ・淳之介・亜樹・彗・小麦・安吾
『こんばんは〜!』
プロデューサー
「あれ、もうそんな時間か」
――Team Irisの合宿が終わって数日後。
ひと息つく間もなく
Shirasu Houseでは、
『安らぎ』をテーマとする
Team Shineの合宿がスタートしていた。
木虎さんから
このチームに出された課題はふたつ。
ひとつは、合宿中
毎日夜のワイドショーに出演し
視聴者に『安らぎ』を届けるというものだ。
番組アナウンサー
『では早速今夜も皆さんには
視聴者の方から届いた、様々な質問や相談に
答えていただこうと思います』
『まずは、千葉県にお住まいの
20代会社員の方からで――』
今夜もこうして、Shirasu Houseの
レッスンルームから中継を行う6人が
テレビに映し出されていた。
プロデューサー
(企画の一環とはいえ
夜のワイドショーに出させてもらえるのは
正直すごくありがたい)
(まあ、Team Irisのことを考えると
木虎さんが何を考えているのかは
相変わらずよくわからないけど)
(でも、コーナーが始まってから
番組の視聴率も伸びてるって聞いたし
今後何かの仕事に繋がればいいな)
『……だから、えっと
ぼくは、どうしても無理だって思うなら
逃げたっていいと思うんです』
『そして、いーっぱいぼくたちの音楽を聴いて
元気になったら、その時にまた
再チャレンジするかどうか考えましょう!』
『そうそう。考えすぎても
どうしようもないこともありますからね』
『嫌なことがあったら
笑って忘れるのが一番!
笑う門には福来たるって言うし』
プロデューサー
(今のところは順調そうだ。
企画内容も、特に不安な要素はない)
(もうひとつの方も
荒れる心配はきっと……)
「OH、今日もわかめスープ。
スポンサーだからって
さすがに毎食これは……」
「あっちゃん、しーっ!
カメラ回ってるんだから聞こえるって」
「わかめは身体にいいんだよ?
……ですよね、香坂さん」
「ああ。食物繊維が豊富だから
腸内環境を整えるにもいいし
新陳代謝をよくする効果もある」
「何より味噌汁には欠かせない」
「さすが安吾くん。
僕も、わかめのお味噌汁、好き。
相方は豆腐がいいなぁ」
「ちょっとちょっと
おふたりさーん?」
「わかめスープから
わかめの味噌汁の話に変わってますけど
オレたちがPRすることになるのは
スープの方っスからね!?」
「でもさー、PRって言っても
よくわかんなくない?」
「この中で一番『安らぎ』を体現できた人を
商品のアンバサダーに
任命するって言ってたけど……」
「結局何やるんだろ?
選考基準も曖昧だしさ」
「商品のイメージキャラクターとして
CM出演とか……?
あと、スチール撮影」
「選考はおそらく、スポンサーの一存だろうな。
こういうのは、何よりもイメージが大事だ」
「ほえ〜、なるほど。
俺が担当者だったら
ここは安吾さん一択だな〜」
♪〜♪〜♪〜〜
ボイストレーナー
「はい、じゃあいったん休憩で」
「はぁ〜、つっかれたー。
課題曲、むちゃくちゃ難しくない?」
「これ、ワイドショーの最終日に
番組内で披露するんしょ?
あと3日後とか、エグいって」
「ねー。
こういうバラード系の曲って
俺たち今までやってなかったし」
「聞かせるタイプの曲は
粗が目立ちやすいから、緊張するよね」
「まあでも、なんだかんだ言って
Team Irisみたいな課題じゃなくて、正直
ちょっとホッとしちゃってるとこあるかも」
「センター決め、大変そうだったもんね〜。
もっとタツマンに
胃薬プレゼントしとけばよかったなー」
「とはいえ俺たちだって
そうのんきなことは
言っていられなくなると思うが」
「日中のハードなレッスンを
こなした後の番組生出演……」
「まだ3日目だからいいが
毎日となると、だんだんキツくなる」
「うん。安らぎを届けることが
テーマだから、僕たちもいつも以上に
疲れた顔、見せられないもんね」
「でもぼく、毎日テレビに出られるの
すっごく嬉しいので
何があってもがんばりますよ!」
「ファンの人たちにも
いっぱい喜んでもらえるし……」
「それに、お母さんもおばあちゃんも
ぼくがテレビに出ると喜んでくれるので」
「『安らぎ』をテーマに選んで……
Team Shineに来て、よかったなーって」
「こむぎ、即決だったもんね」
「はいっ!」
「Just 4Uは『あなただけのために』って
意味だから、一番『安らぎ』っていう
テーマとも合うと思ったんです」
「ひとり一人にきちんと寄り添って
特別な時間を届けてあげたいですし……」
「それにぼく、よくファンの人から
『見てると癒やされます』って
言ってもらえるから……!」
「小麦くんは、日なたに咲いてる
タンポポって感じだもんね〜」
「見てると、だんだん眠く……」
「胡桃沢さんのそれは
綾崎関係ないヤツでは」
番組アナウンサー
『それではディアプロの皆さん。
今日もありがとうございました〜!』
スタッフ
「――はい、カット!
お疲れさまでーす」
一同
「ありがとうございました!」
「……さあ、明日の朝も早い。
キッチンの片付けは俺がしておくから
お前たちは先に風呂に入れ」
「安吾さんが
ただただオカン」
「僕手伝うね」
モニターからの声
『続いては、天気予報のコーナーです』
『大型の冬型気圧配置の影響で
北海道地方では、明日夜から
明け方にかけて大雪が予想されています』
『周辺にお住まいの皆さまは――』
「……」
「小麦くん。みんなお風呂行っちゃうよ?」
「あ、今行きますっ!」
◆2話
――合宿5日目。
スタッフA
「香坂さん。最終日に新曲を披露する旨
トークの中で少し挟んでもらえませんか?」
「楽しみだという反響が届いているので
ぜひ期待値をあげておきたくて」
「わかりました」
スタッフB
「あ、真田くん、ちょっといい?」
「はい!」
スタッフB
「視聴者さんからの相談なんだけどさ。
回答時、ちょっと意識して
ほしいことがあって――」
プロデューサー
(もうそろそろ20時かあ。
みんな準備してる頃かな)
(私も少しひと休みして……)
バタバタバタっ
事務所スタッフ
「プロデューサーさん! 大変です!」
プロデューサー
「どうしたんですか?」
事務所スタッフ
「たった今、電話が入って――……」
スタッフA
「皆さん、中継繋ぐ前に共有事項です」
「今、寮ではテレビが
見られない状況かと思うので
ご存じないかもしれませんが……」
「昨晩、北海道で記録的な大雪が降りました」
「今は雪もやんでいますが
各地で被害も発生しているようで」
「……!」
スタッフA
「コーナー冒頭、皆さんの方からも
近隣にお住まいの方々に向けて
声掛けや注意喚起お願いできますか?」
一同
「わかりました」
「あの……被害って……」
スタッフA
「鉄道の運行停止や峠道の通行止め。
除雪車の稼働が追いつかず
立ち往生も発生したりしているようです」
「そういえば綾崎って
北海道出身だったもんね。心配だね」
「……うん」
スタッフB
「じゃあ皆さん、次のニュースが
終わったらコーナー始まるので
スタンバイお願いします」
一同
「はい!」
モニターからの声
『続いてのニュースです』
『北海道地方を襲った昨晩の大雪。
この大雪の影響により
各地で被害が発生しています』
『つい先ほど入ったニュースによりますと
女性が屋根からの落雪に巻き込まれ
病院に搬送されたということです』
現場リポーター
『こちらの現場付近では――』
「…………え」
「? こむぎ、どうかした?」
「小麦くん、彗さん。
はじまりますよ」
「……あ、はい!
行きましょう、柳川さん」
「……」
◇◇◇◇◇
スタッフB
「それでは、中継開始まで
3、2――……」
「皆さん、こんばんは。
ディア・プロダクション所属
RayGlanZの香坂 安吾です」
「SP!CAの胡桃沢 タクミです」
「それから
摩天ロケットの高千穂 亜樹と〜……」
「真田 淳之介です!
でもってこっちが――」
「……」
「――Just 4Uの柳川 彗だよ」
「そしてボクの隣にいるのが
綾崎 小麦です」
「!」
「それじゃ自己紹介じゃなくて
他己紹介じゃん」
「はーい、目立ちたいからって
小麦の台詞取るのはんたーい」
「いや、綾崎があまりにもリラックスしすぎて
今にも寝落ちしそうだったから」
「自分だけフライングで
安らいでどうするんスかー、綾崎サン」
「あ、えへへっ……ごめんなさい。
だんだん番組にも慣れてきたら
なんだか居心地がよくなってきちゃって」
番組アナウンサー
『あはは、嬉しいこと言ってくれますね〜』
「……とはいえ、そうも言ってられない
ニュースも入ってきてますからね」
「そうだね」
「北海道では大雪の被害も
相次いでいるということなので
皆さん、気をつけて行動してくださいね」
「除雪の際は落雪に注意し
立ち往生や車両事故の危険もありますので
不要不急の外出は
できるだけ避けるようにしてください」
「今は、ほら! 外に出なくたって
楽しいことはいっぱいありますからね〜」
「毎晩夜9時に、ボクたちTeam Shineの
顔が見れちゃうなんて、まさにそれ!」
「世界を代表するなごみ系アイドルの
このマイナスイオンたっぷりの顔を見て
少しでも穏やかな時間を過ごしてください」
「明日は、ボクたちの新曲
初披露なんかもありますからね!」
「ね、綾崎!」
「え、あ。はい……!」
「そういや綾崎は北海道出身だけど
大雪を乗り越えるアドバイスとか
なんかあります?」
「……そう、ですね。えっと……」
木虎
「……」
「カメラマンさん。
綾崎クン、徐々にフレームアウトできる?」
カメラマン
「えっ?」
木虎
「いいから、早く」
カメラマン
「わ、わかりました」
木虎
「……」
スタッフ
「はい、カットー」
「――あのっ、ごめんなさい!
ぼく……」
「小麦くん、大丈夫?
具合悪い?」
「違うんです……」
「……もしかして
中継前にやってたニュース?」
「!」
淳之介・亜樹
「?」
「……っ、じ、実は
あの景色、すっごく見覚えがあって……」
「多分、ぼくの実家の近くだと思うんです」
タクミ・淳之介・亜樹・彗・安吾
「!?」
「……農家だから、まわりは畑ばっかりなので
建物なんて、うちくらいしかなくて……」
「落雪に巻き込まれたのは
もしかして、って思ったら……」
「だ、大丈夫だよ……! きっと!」
「ほら、何かあったら
すぐにプロデューサーさんから
連絡来るだろうし――」
木虎
「綾崎クン」
小麦・淳之介
「!」
木虎
「そのことで少し、お話があります」
ガチャッ
プロデューサー
「小麦さん……!」
「……プロデューサーさん?」
木虎
「緊急事態なので、来ていただきました」
プロデューサー
「落ち着いて聞いてください。
実は先ほど、小麦さんのお母さまから
事務所に連絡がありました」
「おばあさまが
落雪に巻き込まれて病院に運ばれたと」
「…………え、おばあちゃん……」
「っ、大丈夫なんですか!?
お母さんはなんて……!?」
プロデューサー
「足の骨折と……
それから、命に別状はないそうですが
まだ意識は戻っていないと」
「……そんな」
「プロデューサーさん……
ぼく、どうしたら……」
木虎
「……」
プロデューサー
「……」
「――お母さまは
心配いらない、だから帰ってくるな、と
仰っていたそうです」
「え……」
プロデューサー
「ニュースで報道されたこと
お母さまもご存知だったようで」
「このままじゃきっと
小麦さんが不安だろうからと
連絡をくれたそうですが……」
「……ただ」
「すべきことを置いて
帰ってくる必要はないと」
「……」
プロデューサー
「……とはいえ、気がかりだと思います」
「小麦さんが帰りたいというのなら
もちろん止めません。
あとは、小麦さん自身が――」
「……もし。
もしここで帰ったら、どうなるんですか?」
「合宿は? 番組は? ライブは!?」
プロデューサー
「それは……」
木虎
「帰るのであれば
もちろん合宿はここでリタイア」
「ワイドショーの最終日までに
帰って来るのも難しいでしょうから
新曲披露の舞台にも立てません」
「2月のライブも、出演はなしです」
「Team Shineは5人でやってもらいます」
「……」
プロデューサー
「……あの、でも
2月のライブくらいは……」
木虎
「ルールはルールですよ」
「それに――」
「アイドル業と、自分の大切なもの。
何かと何かを天秤にかける選択を
しなきゃいけないのは
今回に限った話じゃない」
小麦・プロデューサー
「……!」
木虎
「ライブ中、個人的な緊急事態が起きたとして
目の前のファンを放り出して
ステージを降りるアイドルはいますか?」
「安らぎを届けたいと言っていたはずの
アイドルが、誰よりも暗い顔して
ファンの前に立つことは許されますか?」
「これからもアイドルを続けていくのなら
この先もっと究極の選択を
迫られる時だってあるはずです」
プロデューサー
「…………」
「わかりました」
「でも、ごめんなさい。
……少し、考えさせてください」
◆3話
「……」
「あ、綾崎」
「真田くん」
「実家、帰るの?」
「……まだ、悩んでる」
「そっか。
……オレは、帰っていいと思うけどな」
「……」
「だって、やっぱ心配じゃん」
「綾崎、よくおばあちゃんの話してるし……
仲良いんでしょ?」
「綾崎がおばちゃんのこと好きなの
オレにも伝わってくるくらいだしさ」
「でもそれだと、ライブに出られなくて
ファンの人を悲しませちゃう」
「番組も、途中で降りることになって……」
「……前、明石さんが体調を崩して
番組をお休みした時
ファンの人、すごく心配してくれたんだ」
「責めるようなファンの人はいないって
わかってる」
「でも、ぼくたちがステージに穴をあけると
心配する人がいっぱいいる。
大丈夫かなって、不安にさせちゃう」
「それもヤダよ」
「……それは、わかるけど」
「でも、綾崎がそんな不安な顔したまま
テレビに出たら、かえってファンに
心配かけちゃうんじゃないかって気も……」
「……っ、わかってる」
「!」
「ぼくだってわかってる……!」
「でも、簡単には決められないよ」
「どっちかを選んだら、選ばなかった
もう片方を諦めなきゃいけない。
そんなの、ぼくには……」
「真田くんは自分のことじゃないから
そんな風に簡単に――」
「こーむーぎー」
「むぐっ……!?」
「はーい、捕獲完了〜。
ちょっとお口チャックだよ」
「柳川さん? あっちゃんも」
「びっくりしたよー。
いきなり大声聞こえてきてさ」
「……ぷはっ」
「落ち着いて、こむぎ。
あんごにお茶でも淹れてもらう?」
「……っ、大丈夫です」
「ごめんなさい」
パタタっ
淳之介・亜樹・彗
「……」
「ごめんねー、こむぎが」
「あ、いや……大丈夫っス」
「……でも、ちょっと効いたかも」
「『自分のことじゃないから
簡単に言える』ってやつ」
「?」
「……実はオレ、この間
ワイドショーのスタッフさんに
注意されたことがあって」
「相談を明るく受け止めるのもいいけど
人によっては、それをマイナスに
捉える人もいるから気をつけろって」
「そんなつもりはなくても
無責任に聞こえる場合もあるって」
亜樹・彗
「……」
「オレ、綾崎に
無責任なこと言っちゃったんスかね」
「……誰かを励ましたい
笑顔にしたいって思うのも
無責任な想いだったりするのかな」
「そんなことないと思うけど」
「……あっちゃん」
「……俺が、母さんのことで色々あった時さ」
「いつもみたいにバカやって
笑わそうとしてくる淳之介見てたら
めっちゃ安心したんだよね」
「人は人で、自分は自分だから
まったく同じ気持ちを共有するなんて
まず無理じゃん?」
「だったら、自分にできるやり方で
精いっぱい寄り添う努力をすればいいと思う」
「そうすればきっと、相手もちゃんと
受け取ってくれるんじゃない?」
「……」
「でもオレ、この状況で
綾崎のために何がしてあげられるんだろ」
「いいねいいね。ふたりの
かた〜い糸でがっちり結ばれてる感じ」
「こむぎもさ
そういうのを大事にしたい子なんだよね」
淳之介・亜樹
「……?」
「こむぎは、人一倍ファンの人を
大切にしたいって思ってる」
「この間も
『ひとり一人に寄り添いたい』
って言ってたでしょ?」
「そういう想いが強いからこそ
悲しませることに
余計抵抗があるんだろうね」
「……たしかに。
それに、むちゃくちゃ
家族想いでもありますしね」
「うん。どっちもこむぎのいいところ」
「でもだからこそ
そのふたつからひとつを選ぶのは
難しいんだよね」
「……どっちも大切だと、特に」
淳之介・亜樹
「……」
「……どっちかだけでも
心配を減らすことができれば
綾崎の背中、押してあげられるかな」
「ねえ、あっちゃん! ちょっと明日の朝
付き合って欲しいんだけど――」
――翌朝。合宿6日目。
「うんっしょ……」
ドサッ
「お迎えが来てくれまで
もうちょっと時間あるかな」
「一応、課題曲の音源も持って――」
???
「空と大地の隙間を埋める雨が♪」
「……! 今のって、歌?
ぼくのパート、だよね……」
「どこから聞こえて……」
???
「全てに 理由はいらない たゆたう光と影♪」
「……こっちから?」
「この声って……」
淳之介・亜樹
「全てに 理由はいらない たゆたう光と影♪」
「淳之介、多分だけど今のとこ
タイミング違うかも」
「マジか〜、むっず!」
「てか、俺たちも自分のパートあるんだし
小麦のパート全部ふたりで代わるのって
さすがに無理じゃない?」
「繋ぎとかもあるしさ、歌割り入れ替えて
振り分け直してもらったほうがいいかも」
「んー……」
ガラガラガラッ
淳之介・亜樹
「!」
「……やっぱり。
真田くん、高千穂くん」
「あっちゃー。
やっぱ間に合わなかったか」
「え?」
「あ、いや……実は、綾崎が出発するまでに
綾崎のパート、オレたちで完璧にフォロー
できるようにしておきたいなーって
思って、練習してたんだ」
「それ見てもらえば
綾崎も、少しは心配も減って
帰りやすくなるかな、なーんて」
「……真田くん」
「ね、綾崎」
「オレたちじゃ、綾崎のファンを
喜ばせるのは難しいかもだけど」
「それでも、綾崎に会うのを楽しみにしてる
人たちをがっかりさせないように
できる限り代役頑張るから!」
「だから、信じて託してよ」
「……」
「実は昨日、小麦が帰るって決めたあと
彗さんたち他の3人と一緒に、木虎さんに
小麦のライブ出演をなしにしないで
ほしいって、掛け合ってみたんだ」
「けど、やっぱりOKはもらえなかった」
「だから、これが俺たちにできる精いっぱい」
「その精一杯を頑張るから
小麦は小麦にしかできないこと
しておいでよ」
「てか、こんなとこいて大丈夫!?
そろそろお迎えが来る頃なんじゃ――」
「……じゃ、なかった」
淳之介・亜樹
「え?」
「他人事じゃなかったね」
「真田くんにとっても
高千穂くんにとっても」
「ぼく……ごめんなさい」
「自分のことじゃないから
そんな簡単に言えるなんて……
あんなこと言って」
「……綾崎」
「ぼくが抜けるってことは
その分他のみんなが
ぼくの分まで頑張るってことなんだよね」
「パフォーマンスだけじゃなくて
ファンからの想いも、ファンへの想いも。
ぼくの分まで、ぼくの代わりに……」
「……ぼくだって、知ってたはずなのに」
「本当にごめんなさい」
「いいっていいって。
誰だってひとりじゃステージには
立てないんだから、お互いさまだって」
「そう、だよね。
……ひとりじゃ、ステージに立てない」
ガラガラガラッ
秋霜
「お〜、いたいた。玄関におらんから
どこ行ったかと思ったわ。
そろそろ出るで、小麦」
「長谷井さん」
秋霜
「……っちゅーか
なんでこんなとこにおるん?」
「あ〜、いや……
レッスンルームの鍵
まだ空いてなかったんで」
「ちょうどいいのがここしかなくて」
秋霜
「どういうこっちゃ」
「あー、せや。これ……」
「ほい、ついでに持ってきてやったで。
本社に届いてた、ファンレター。
他の3人にも、あとで渡しといて」
「こういうんがあった方が
合宿のやる気にもなるやろ。
ちょうど、ワイドショーへの
感想も来てたしな」
「お、マジっスか。あざす!」
「ファンレター……
こんなに、たくさん」
秋霜
「せやで〜。
でも、手紙とか感想メッセージくれる人なんかは
ほんの一握りや」
「この手紙の何倍もの人らが
お前らのこと、見てんねんで〜」
「……」
ガサガサッ
『小麦くんへ
先日はテレビで、相談に答えてくれて
ありがとうございました!
すごく元気がでました』
『小麦くんと会える日を楽しみに
お仕事頑張ります!
小麦くんも無理しないで頑張ってね!』
『小麦くんの笑顔がわたしの癒やしです。
いつもありがとう!!
ライブが待ち遠しいです』
「ぼくを、見ててくれる人……」
秋霜
「さ、ほら!
ほんまに、そろそろ行かんと。
飛行機乗り遅れんで」
「…………待ってください」
「綾崎?」
秋霜
「どないしたん?」
「……長谷井さん! ごめんなさい!」
「やっぱりぼく、帰りません。
ステージに立ちます!」
「ステージに……
ファンの人たちの前に
立ちたいです……!」
◆4話
プロデューサー
「……いいんですか?
本当に帰らなくて」
「――はい」
「ごめんなさい。
せっかく飛行機もとってもらったのに」
プロデューサー
「いえ、それは……」
「心配しないでください!
ぼくが自分で考えて
自分で決めたことなので」
プロデューサー
「小麦さん……」
「……最初に報せを聞いた時は
やっぱり頭も真っ白になって、心配で心配で
今すぐ帰りたいって思いました」
「もちろん今も
心配なのは変わらないですけど」
「それに、お母さんが
仕事を優先しろって言ったって聞いて
ちょっとショックだったんです」
「お母さんもお父さんも
家族を大事にする人なので」
「きっとぼくがアイドルじゃなかったら
すぐ帰って来いって言うんです」
プロデューサー
「……っ」
「――でも、ぼくはアイドルです」
「たくさんのファンの人に応援してもらって
たくさんのスタッフさんに導いてもらって
一緒にステージに立つ仲間がいて……」
「そんな人たちの支えと努力があって
ぼくはステージに立ってるんです」
「……ひとりで、何もないとこに
立ってるわけじゃないんです」
プロデューサー
「小麦さん……」
「ぼくがアイドルを
目指したいって言った時」
「お父さんもお母さんも、お兄ちゃんも
おばあちゃんもおじいちゃんも
親戚もみんなみんな
頑張れって応援してくれました」
「あの時はわからなかったけど
今になって、気づいたんです」
「きっとみんな、覚悟を決めて
応援してくれたんだろうなって」
「だからぼくも……」
「アイドルになる道を選んだからには
どんな時でもアイドルであることを
選びたいんです」
「それがきっと
応援してくれるすべての人たちへの
恩返しになるから」
プロデューサー
「……」
「それにぼくのおばあちゃん
普段は優しいんですけど
怒るとすっごくおっかないんです」
「今ここで投げ出したら
きっと怒られちゃう」
プロデューサー
「わかりました」
「……合宿が終わったら
一番に電話してあげてください」
「はいっ」
そして、合宿最終日前夜。
番組アナウンサー
『――それでは、コーナー最終日を記念して
ディア・プロダクション
シャッフルユニットTeam Shineの皆さんに
地上波初披露の曲を披露してもらいます』
『中継先の皆さーん』
一同
「はーい!」
「今日は屋外に特設ステージを
組んでもらったから
そこでボクたちの新曲を披露しまーす」
番組アナウンサー
『寒くないですか?』
「いやあ……寒いっスね!」
「……でもどっちかっていうとこの震えは
初披露の緊張とワクワクだと思ってるんで」
番組アナウンサー
『頼もしい……!
では、曲紹介お願いします!』
「はーい」
「喜びから悲しみまで。この曲を聴いてくれる
すべての人の感情に寄り添いたいという
僕たちの願いが込められた曲になってます」
「何かに迷った時も
つまずきそうになった時も
皆さんはひとりじゃありません」
「まわりには寄り添ってくれる人がいて
支えてくれる人が必ずいます」
「そして、僕たちもいます」
「ぼくたちも皆さんと同じように
日々迷い、悩みながら生きています」
「そんなぼくたちが歌うからこそ
きっと深く届くと信じて――」
「聴いてください」
「――シグナル」
澄んだ冬の夜空に歌声が響く中
Team Shineの合宿は
静かに幕を閉じた――
プロデューサー
「淳之介さん、小麦さん。
これ……アンバサダー就任のお祝いに
スポンサーさんからいただきました」
「わかめスープ、1年分です」
ドサッ
「まさかの巨大ダンボール箱……!!」
「わあっ、ありがとうございます!」
「それにしても、ふたり選ばれるとは
思ってなかったね。おめでとー」
「ね、びっくりですよねー。
最初はひとりって言ってたのに」
プロデューサー
「担当の方が、小麦さんの想いや
淳之介さんの立ち回りに
感銘を受けたらしくて」
「オレは別に
大してなんもしてないっスよ」
「そんなことなーいよ♪」
「ほらおいで〜、じゅんのすけ。
いっぱい頑張ってくれたお礼に
いいこいいこしてあげる〜♪」
「いやあ、いいっス! そういうの!
オレ、照れちゃうんで!」
「照れちゃうの、わろ」
「それより淳之介くん、どうするの?
この大量のわかめスープ」
「んー、さすがに同じ味で食べ続けるのは
飽きちゃうんで
なんかアレンジしたいんスけど……」
「安吾くんの味噌もらうとか?」
「……わかめスープに
味噌をとこうとするな」
「小麦くんは……
って、あ……ふふっ」
「――あ、もしもし。
おばあちゃん? 小麦だよ」
「うんっ、元気!
おばあちゃんは大丈夫?」
「……そっか、よかった。ほんとに。
無理だけはしないでね」
「あっ、そうだ。あのね!
ぼく、わかめスープのアンバサダーに
就任することになったんだ」
「うんっ! CMにも出るし広告も……!
もしかしたら、近所のスーパーにも
ぼくのポスター貼られるかもしれないよ」
「それでね、わかめスープ
たっくさんもらったから
おばあちゃんのとこにも送るから」
「カルシウムもたっぷりだから
骨もきっとすぐ治るよっ」
「ねえ、Pちゃん。
こむぎのおばあちゃん
大事にならなくてよかったね」
プロデューサー
「彗さん。……はい」
「にしても、ほんと
人生は選択の連続だ〜。
ね、あんご」
「そうですね」
「一歩進んで二歩下がるっていうけどさ
その言葉を創った人は
天才だと思うんだよねー」
「何かを選ぶと
前進と後悔を同時に受け入れなくては
ならない時がありますからね」
「へぇ〜、あんごでもそんなこと思うんだ。
メンバープロファイルに
ちゃーんとメモしておかなくっちゃ」
「一般論を言ったまでですよ。
……というか
メンバープロファイルってなんですか」
「頭の中のメモ帳♪」
「……」
「まあでも、選択したのが本人なら
周りが重く捉えることはないのでは?」
プロデューサー
「あ……」
(気にしていたのを察せられるようじゃ
まだまだだ……)
「……必要のない選択を迫ることへの
賛否両論は置いておいて、ですが」
プロデューサー
「……」
(やっぱり、少なからずこの企画には
こんな風に不安や疑問を抱く人もいるよな)
(……しっかりフォローしないと)
「さー、スマホも戻って来たことだし
推しイベ走るぞー!」
「僕はお昼寝か
あずくんとおやつタイムしたいな〜」
「ホントぶれないっスね。ふたりして」
「――うん。じゃあ、また電話するね。
おばあちゃん」
「ぼく、少しでも多くの人に
笑顔と癒やしを届けられるように
これからもがんばるから」
「応援しててね……!」
プロデューサー
(この18人がこれからも
真っ直ぐに輝き続けられるように――)
END
「T.O.P Idol SHOW!!」Team Shine編
主要人物紹介
摩天ロケット
高千穂亜樹(CV:梅田修一朗)
筋金入りのオタクだがコミュニケーション能力が抜群に高く、リアルでもネットでも友だちが多い。過去の体験から、甘え上手で要領がよく、おねだりが得意。余暇と小遣いの多くが、漫画、アニメ、フィギュアに消えてしまう。実況動画などを動画サイトにアップしている。
Just 4U
綾崎小麦(CV:安田 駿)
自然に囲まれて育った、好奇心旺盛な天然男子。シェアハウスの庭に菜園を作り、土いじりを楽しむ。容姿に反して、男気にあふれ骨太な性格の持ち主。かなり打たれ強いうえに、自らの信念は絶対に曲げない。都会に憧れを抱いており、洗練された凛久のことを尊敬している。
SP!CA
胡桃沢タクミ(CV:観世智顕)
マイペースで、いつも眠そうにしている。喜怒哀楽があまり表に出ないため、一見やる気が無いようにとられてしまうが、本人はいたって真面目な熟考型。SP!CAには梓に誘われて参加。学校カバンにはいつもふわふわのクッションが入っており、最適な昼寝スポットを探してさまよう姿が頻繁に目撃される。
Just 4U
柳川 彗(CV:古田一晟)
独自の価値観と美学を持ち、常にそれに基づいて感情のままに行動する。他人との距離感がやたら近く、凛久には天敵認定されている。人の感情や反応を観察するのが好きで、本人曰く、石や樹木などの自然物に対しても感情を読み取ることができるとのこと。他者のものさしでは測れないフリーダムさがある。
摩天ロケット
真田淳之介(CV:服部想之介)
「笑いは正義」をモットーとする、芸人気質なまとめ役。チャラチャラとして見えるが面倒見がよく、学校ではいつもクラスの中心にいる。教室では定期的に「淳之介トークショー」を開催。マルチなタレントを目指しており、生まれ育った環境から、実は英語が堪能。
RayGlanZ
香坂安吾(CV:三浦勝之)
口数は多くないものの、静かに野心を燃やす戦術家で、野望を叶えるための行動力も持っている。十夜と千紘の関係性を把握し、ユニットのバランサーとしての役割も。ある事情から家事全般をマスターしており、シェアハウスで料理の腕前を披露している。出汁やミソに一家言がある。
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