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印刷2021/06/09 18:00

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【PR】「荒野行動」がプロゲーマーを安定した職業にする。大会賞金と安定収入のプロライセンスで切り開く,2021年全国大会の試み

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 NetEase Gamesのバトルロイヤルゲーム「荒野行動-Knives Out-」iOS / Android / PC)の全国大会“2021 荒野CHAMPIONSHIP - 夢への道”が,2021年5月30日開催の大会最終日とともに幕を閉じた。

 本年は“賞金総額1億円”の看板のもとに,数多の大会参加者が夢をつかみ取ろうと集まり,泣いて笑っての3か月をすごした。

 今年で大会3年目。荒野行動が今回掲げた“夢”は,プレイヤーたちに心身的な充足感,ないし年間の生活に足るほどの収入を与えて,それぞれの夢をかなえられているのか? また本大会からの新たなプロライセンスの取り組みは,日本のeスポーツ界に一石を投じるのか?

 最初に結論を掲げるが,人は荒野でも生きやすくなっている。

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賞金総額1億円と安定収入のプロライセンス


 まずは施策概要の振り返りから。2021年3月から5月にかけて行われた本大会の目的は「頑張って夢を追い、努力し、運命を切り開こうとする人は尊敬に値する」をコンセプトに,娯楽を主目的とする大半のゲームプレイヤーに向けて,一時的もしくは継続的な収入を目指すプロゲーマーとしてのeスポーツキャリアの道を提示することにあった。

 荒野行動では年間をとおして,大小問わずの大会などが提供されているが,本作を主戦場にプロチームに所属して活動していく者や,広告およびスポンサー収入を目標とするゲーム実況者(ストリーマー)も数多く,人それぞれの関わり方で,なにかしらの形で「プレイヤーの社会的活動にゲームが直接的に寄与している構造」が形成されている。
 それだけに“そこ”を目指そうと,プレイヤーは夢を見られる。安直に金銭的に優位なゲームとしてみても,構造の強度は十分なものだ。

 本大会の参加条件は「15歳以上」「5〜6名で1チーム」これだけだ。
 大会規約の第一条 参加資格 第3項 参加者の義務(※)には選手として最低限,または最大限求められる資質が書かれているが,要約すると「いいプレイを見せられる人」であり,そのほかの条項にしても「昨今の常識・良識を持っている人」であれば,事実上誰でも参加できた。

「大会規約の第一条 参加資格 第3項 参加者の義務」

 参加者は、以上の参加基準に基づいてesports事務所から審査を受けて、参加資格の承認を受けなければならない。当該基準によって東・西日本決勝戦、又は荒野王者決定戦に選抜される選手は、高い技術を用いたゲームプレイーの実技若しくは実演またはそれに類する魅力のあるパフォーマンスを行い、多数の観客や視聴者に対してそれを見せることが仕事の内容として期待されており、大会などの競技性及び興行性の向上に資する者であることが類型的に保証されている。


 大会は「オンライン予選」,招待制の「荒野CHAMP 前哨戦」,ポイントランキングの「KSPシステム」という3ルートで進出チームが決まり,東西日本決勝戦,最終優勝チームを決める王者決定戦の流れとなる。

 オンライン予選では,東日本と西日本の参加者らが荒野行動で対戦し,そのうち東西150チームの計300チーム(1800人。以降も実数ではなく便宜上【1チーム=6人】で計算)が次に進出。300チームのうち勝ち上がった東西12チームの計24チームが,それぞれ東西決勝戦へと進んだ。

画像は王者決定戦レポートより
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 この間,2020年10月〜2021年2月の大会「荒野HIGH 本戦」で勝ち上がった計40チーム(240人)も東西20チームに分かれてぶつかり合う,完全招待制の「荒野CHAMP 前哨戦」も並行して行われた。
 こちらは最初から実力派チームがそろったプールで,上位2チームはそのまま王者決定戦へ,ほか8チームは東西決勝戦へと進出した。

 東西決勝戦で集まった予選突破12チーム,前哨戦8チームの計20チームから,さらに東西7チームの計14チームの勝ち残りが決まると,前哨戦の上位2チーム,ゲーム内ランキングの「KSPシステム」で選ばれた上位4チームを加えた,計20チームでの王者決定戦の図式が完成する。
 なお,KSPシステムのルートなら予選を素通りできるが,ゲーム内ランキングで上位を目指すことを考えると,どっちもどっち。一般プレイヤーの感覚で言うのならば,後者のほうが険しい道のりかもしれない。

 それから,王者決定戦では優勝をかけて雌雄が決せられた。
 ここまでが大会進行の概要だ。続いては賞金の話に移ろう。

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 荒野CHAMPIONSHIPは,初年度は賞金総額2500万前後,次年度もほぼ同額,しかし今年度は約4倍となる総額1億円が提示された。
 これには運営側の働きのほかに,プレイヤー側への仕掛けもある。

 結論から言うと,本大会は「基本賞金プール:2000万円」としつつも,二つのゲーム内イベント(下記)を通じてプールを増大させた。

■大会公式サイト「大会賞金」参照

基本賞金プール:2000万円

○一億賞金助力第一段階:支援カップ助力【3/18〜5/13】
 マップ内で収集したアイテム【支援カップ】で賞金プールに助力可能。助力第一段階の上限は5000万円まで。

○一億賞金助力第二段階:限定物資助力【5/14〜5/28】
 限定発売の【CHAMP限定物資】を購入するによって賞金プールに助力可能。助力第二段階の上限は1億円まで。

 一つは,プレイヤー主体のゲーム内アイテムの収集イベントによる進捗結果に応じた,3000万円分の上乗せ。
 物資は1個につき1〜10円の助力資金にあたり,仮にすべて最高値10円で計算しても,最低300万個の収集が求められた。これについては運営によると「最終的にアイテムの総取得数は,3000万個以上をカウントいたしました」とのこと。プレイヤーの熱量が推して量れる。

 もう一つは,プレイヤー向けの大会限定アイテム「CHAMP限定物資」の販売実績に応じた,5000万円分の上乗せ。こちらは物資実装後,ボーダーの上限1億円を達するのに1週間かからなかったという。
 なお,荒野行動E-Sports事務所の公式Twitterアカウントによると「限定ガチャ収入の20%は荒野CHAMPの賞金プールへ支援」とのことで,一部は賞金原資に使用されているが,大会運営に関しては参加料無料を原則とし,JeSUのガイドラインに則って運営したとしている(JeSUが公開している参加料徴収型大会ガイドラインかと思われる)。

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 こうした段階的な賞金総額の引き上げにより,大会参加者たちには実施期間中でありながら「賞金が増えた」という期待を与えた。

 このプレイヤー助力型の賞金プールシステムに関しては,運営側も「皆さまの助力が欠かせませんでした」とのことで,ファンの結束が見事に応えた結果と言える。仮に,予定調和になり得る流れが事前にくまれていたとしても,そこにプレイヤー側が被る不利益はいっさいない。

 当の賞金は上記大会進行のうち,「荒野CHAMP 前哨戦」「東・西日本決勝戦」「王者決定戦」の3大会で発生した。
 前哨戦では,東西グループのそれぞれ1位に100万円,2位に45万円,6位から10位に10万円などで賞金総額500万円。続く東西決勝戦では,東西グループのそれぞれ1位にのみ200万円,計400万円が用意された。

 そして王者決定戦では,最大12試合の総勝利数に応じて,20位に60万円,10位に250万円,5位に500万円,3位に800万円,2位に1300万円,1位に3000万円が贈られた。また個人を対象に最多キル,ダメージ,サバイバル時間などのゲームプレイに対しての個人賞金も配られた。

本大会で優勝したチーム「DG-Core」。非常に高い実力を備える反面,過去の公式大会では優勝経験がなく“無冠の帝王”と呼ばれていたが,今年は絶対王者と名高い「Cra」を制し,優勝を果たした
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 さて,1チーム6人,優勝チームで分割すれば一人頭500万円。
 前年までが総額2500万前後,優勝チームに1000万円だったことを考えると,2位以下のチームもおこづかいの領域を超えた,まさに夢のある金額感に膨らんでいる。1位チームの想定で仮計算しても,一大会だけで年収500万。もはや大の大人が年間を暮らせるほどだ。

 同時に,賞金獲得人数の可能性を考えてみると,前哨戦では40チームのうち20チーム,計120人が大小問わず賞金を獲得できた。東西決勝戦では20チームのうち1チーム,計6人が。王者決定戦では計20チーム,120人が賞金を得られた。前哨戦や東西戦の勝ち残りチームには複数回の賞金獲得の可能性があるものの,最大246人分の賞金枠が存在したわけだ。
 チーム頭割りとして,肌感で夢がある金額となると,王者決定戦の10位前後,1人あたり数十万が手に入るラインからと言えそうだが,例年と比べるとたしかに。荒野が与える夢は大きくなっている。

※補足:eスポーツの大会賞金等も課税の対象となるため,プロチーム所属のプロゲーマーや個人事業主でない一般プレイヤーの場合,20万円をこえる金額(雑所得)に関しては,近隣の税務署に相談するといい

本大会の上位4チーム「DG-Core」「Cra」「αDAves」「Flora」には,荒野プロライセンスを獲得する権利が与えられる。今後の活動が注目の面々だ
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 さらに本大会の成績を鑑みて,法人資格を有するプロチームのうち4組に「荒野プロフェッショナルライセンス」の権利が授与される。

 これは3月に始動した公式制度で,1年契約のライセンスを与えられたチームには名誉のみならず,月間最大250万円,年間最大2500万円の運営資金が援助されるほか,チーム専用のアイテム,専用サイトの開設など,ゲームにひもづいたボーナスも与えられる。当然,援助資金は選手の給料,チームの運営・宣伝などの規約に従った用途が求められる。

 また,プロライセンス保有チームには安定した収入機会の提供のほかにも,その地位をより多くの人に願ってもらえるような土壌の育成のためとし,ゲーム内外での露出の機会(公式プロモーション起用などの意と思われる)についてもサポートしていくとしている。

 これは,eスポーツ界隈や一部プロスポーツ界隈の一般的な外部スポンサー協力による資金確保の取り組みではない,“競技運営者が(チームも飛び越え)競技者に真水をそそぐ仕組み”とすら言える。
 その証拠に,ライセンスに関する規約ページで公開されているいくつかの条項のなかに,下記のような文言が存在している。

■「2021荒野プロライセンス規約」より抜粋

(中略)

 3.ライセンスを受領後、やるべきことはなんでしょうか?

(中略)

 a.法人様に対して

(中略)

●【2021年荒野プロライセンス】を取得した法人は、対象チームの登録メンバー(最大6名)に対して、1人あたり年間300万円以上の基本給を支払う必要があります。

●【2021年荒野プロライセンス】を取得した法人は、原則として、事前の承認なしに対象となる登録メンバーを解雇・譲渡することはできません。

 スター選手には関係のない話かもしれないが,端的にライセンス保有チーム,かつ対象チームの登録メンバーであれば,契約が保たれる以上は「年間300万円以上の安定した給料」を見込めるようになる。
 これにより,特定期間の大会での賞金獲得を目指す一過性の生活から,安定収入を見込める生業,生活基盤のある生活に切り替わる。

 実情次第では現実に即さない強制力と化す想像もでき(※有無はさておき,審査後に運営資金を援助されるようになっても,途中からチーム運営が立ちゆかなくなっていったときの重しになるなど),上を見れば給料にキリがないのもプロシーンだが,安定とはほど遠いのもまたプロスポーツ。しかも生活のためとなると,課題も議論も消化しきれないほどに残るeスポーツ界隈での制度なことを加味すれば,その意義は大きい。

 もし,想像しうるなかでの最悪のケースを思い浮かべるとして。選手当人らが競技に打ち込みすぎるがばかりに社会性に不安が芽生えるようになってしまったとしても,最低限度以上の生活能力が保てる。
 そういうセーフティネットの役割も期待できる。

 また業界的にも,近しい公式制度を取り入れるなど追従の姿勢を見せる会社もあるかもしれない。といっても,荒野ライセンスと同等の制度をやれるのは,会社としてムキムキで頑強な体力あっての話であるからにして,「憧れるがまねはできない」くらいの立ち位置になるだろうか。

 なんにせよ,業界的立場を考えるよりはまず選手。まずは選手を向いている施策であることが大きい。本大会の優勝チームであるDG-Coreをはじめ,すでに発足しているプロチームには希望しかない話なのだ。
 例えば大会のライブ配信では,下記のようなコメントも見られた。

■eスポーツプロチーム「FENNE」Kouking選手:
 荒野行動のプロライセンスは今,僕たち選手が大会に参加するモチベーションになっています。そういった(職業的安定収入につながる)ライセンスを手に入れることで,自分たちもより「プロである」ことを自覚できるようになります。
 今後は荒野行動を率先して盛り上げられるような存在になりたいので,応援よろしくお願いします!

※コメントは,配信「荒野王者決定戦」1日目より抜粋

 最前線で戦っている当人らはすでに,プロチームでの選手活動で生計を立てようとするのはもとより,大会の賞金獲得の先にできた,新たなライセンス制度を次の目標とし,それぞれ動きはじめている。

 その反面,授与条件の「法人資格を有するプロチーム」というところは,プロではない一般プレイヤーからすると先の先の話になってしまい,ともすれば「プロになってから大会に出ないと権利を受け取れないかも」といったブレーキの作用が生まれてしまう懸念はある。

 しかし,このあたりも運営側はフォローできるよう考えているらしく,「ライセンスの行使には法人格が必要ですが,一般プレイヤーが優勝したときのことも考慮し,優勝後にプロチームを発足するなどの手続き次第で,ライセンスを与えられるようにします」とのこと。
 つまり,大会参加あるいは優勝時点でプロチームに所属していなくても,身の振り方次第でライセンスを受け取れる。そうでなくてはプロ以外の人には夢に差分のある大会になるのだから,これはいいことだ。

 かなりの楽観的な見通しになるが,本大会をステップアップとし,来年以降もすでに実施が決定しているらしい荒野CHAMPIONSHIPが,賞金額を含む大会規模の拡充をさらに推し進め,それに伴いプロチーム発足などがより活性化していけば,プロ人口の裾野も拡大して「今よりもプロチームに所属しやすくなる環境」になっていく――可能性はある。
 このあたりは界隈をけん引する荒野行動の力強さと,ついていくことに不安を持たせない心配り次第でもあるので,あとは期待するのみか。

「2021荒野プロライセンス規約」




eスポーツでプロとして生活する


 1億円という賞金総額は,全世界におけるeスポーツタイトルと照らし合わせると,上に数倍,数十倍の規模のタイトルが控えているが,“年間総額100万ドル(2021年6月前半の為替レートで1億1000万相当)”を一つの基準として見た場合,本作はこれ一大会で世界水準に達する。
 またプロライセンス対象チームには最大2500万円の援助,それが4チーム満額なら,荒野行動は2021年の両施策だけで最大2億円を選手に還元する。即物的に言って,人が「稼げる」と思うに値する水準だ。

 高額収入の存在というのは悲しいかな,ゲームプレイヤーでも観客でもバックヤードの関係各位でも,魅了されてしかるべき魔力の奔流である。その魔力が高まるほどに,我々はチャーム状態にかかる。
 そうして集めた注目は,内実が「盛り上がってる」だろうが「お金目当て」だろうが,ゲームを含む取り組み全体の熱量に変換される。そうしてより優秀な選手が集まるようになり,戦場が活性化する。

 一般プレイヤーも大会での声出しから,本大会のような助力型の賞金プールシステムをとおし,参加型の体験で選手や大会を応援できる。
 単純に「自分も関われて楽しい」という雰囲気作りに加担できる。

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 あと申し訳ないが,どこの誰もが,あなたのご両親もが口酸っぱく言っているだろう聞き飽きた説教もすまないがセットで送る。

 本大会で一躍大金を手にしても,生活環境次第で切り詰めて数年間持てばいい,という程度のものだ。とくに若年層が多いゲームだけに,一時の大金で無敵の気分になってしまう子もいるだろう。
 そんなことないぞアホがボケ,ステレオタイプの昭和世代がナメんな,とケチをつけてくれるのなら,そのほうが安心できるくらいである。高額賞金というのは年齢関わらず,それだけ魔力があるものだから。

 本大会の賞金は間違いなく夢に足るものだ。けれど,それだけで生きるのは難しい。「毎年確実に何位に入賞する確約(自信ではない確約だ)」を果たせる資質でもなければまず,絶対に,安定した生活は送れない。その資質があったところで,その時々のモチベーションなどの要因で勝敗は揺れるし,万全であっても万全でなくとも勝敗は動く。それこそ,先人のプロゲーマーなら口を開けば言いたくなることだろう。
 憧れのプロの偉業,腕前,人格,なにに注目するのも構わないが,最初に参考にすべきは勝敗と成績。これだけで現実のプロシーンの水準と,己の人生のすりあわせは計れる。負けない覚悟を抱え,跳ね返って斜めに生ききる人も個人的に大好きで仕方ないが,悲しいかな人間というのは止まった瞬間に実感に追いつかれる時間差生物であるから,時が経って踏みとどまったころに「これだから最近の若いもんは」という言葉を口ずさむ。どの年代,どの世代でも途切れず受け継がれてしまっている呪いなことを考えると,人類のDNAと同じくらいたいした強度の言葉だ。

 従って,現在の荒野行動は近々の夢にはなり得るが,その先の延長線上でも夢を見続けるのなら,大会賞金と同列視できる自分なりの活動を求めていくべきだ。それはプロチームであったり,プロライセンスの獲得であったり,ストリーマーとしての活動であったり。大会賞金だけで生きるのではなく,いくつかを組み合わせられるような自分を目指す。
 幸い,本作はそうしてもらうための準備を進めてきて,サポート範囲を広げてきたわけで。「荒野にオアシスが生えてきた」などと言ったらジョークのオチを見つけたくなるが,水が増えて,肩休めできる人も,居住できる人も少しずつ増え,生きやすくはなった。これは事実だ。

 それだけに,家族の理解を分かりやすく得られる人たちもいる。

■チーム「Duke」瑞稀選手:
 荒野行動をはじめたばかりのころは,家族の理解もぜんぜん得られなかったのですが,荒野CHAMPIONSHIPの東日本決勝を勝ち抜いてから,段々と家族からも理解してもらえるようになりました。もし今回優勝できれば,賞金は学費や家計にあてて,応援してもらえた恩返しをしたいです。

※コメントは,配信「荒野王者決定戦」1日目より抜粋

■チーム「OdiNx」あーる選手の父:
 息子がこのようなすばらしい大会に出場できて,とてもうれしく思います。息子は家では普段,物静かなタイプですが,友人と荒野行動を遊んでいるときは甲高い声をあげるので,それを聞くたびに夫婦で笑ってしまいます。大会でもいつもの甲高い声をならして,がんばってください。あなたの今後の活躍に,いつも心からエールを送っています。

■あーる選手:
 普段も家族で一緒に荒野行動で遊んでいますが,父が応援してくれるのは本当にうれしいです。それに今日は母の日なので(西日本決勝戦当日は2021年5月9日だった),優勝したら,母を焼き肉にでも連れていきたいですね。がんばります! (お父さんお母さん)大好きです!

※両名コメントは,配信「荒野CHAMPIONSHIP 西日本決勝戦」より抜粋

 荒野行動の開発・運営チームがここまでする理由は,当然ながら(抽象的に濁すが)ゲーム全体の盛り上がりをはじめ,大会全体のハイレベル化,観客や関係会社へのアピールにつなげることだろう。
 いくら巨額な資金を供給しても,シーンの“熱さ”は言い値で買えるわけではない。その点,荒野行動にはすでに手応えはあるだろうが。

 プロモーションらしく理念的な意味合いも伝えるのなら,本大会の発表プレスリリースにも,実は意気込みが書かれていたりする。
 ここでもいくつかの文言を抜粋してみよう。

■2021年3月18日のプレスリリース本文より

・『荒野行動』は、実力と夢を持つチームにプロ化の道を提供することが、公式の目標だけでなく、『荒野行動』を愛するすべてのプレイヤーの共通目標でもあると信じています。

・プロeスポーツには、ゲームに愛と情熱を捧げてきたすべての夢追人の力が必要です。実力ある全ての荒野プレイヤーが夢のために全力を懸けて戦うにその姿を、多くのプレイヤーに届け、夢を実現するその瞬間を我々に見せてください。

・プロゲーマーのアイデンティティを強化し、この職業に対応する社会地位や収入などの保証をし、eスポーツの夢の実現を目指す人々に、より多様な可能性を提供していきたいと考えています。

 本大会で,あるいは過去の大会でも,今回のコンセプト「頑張って夢を追い、努力し、運命を切り開こうとする人は尊敬に値する」と同様に,荒野行動が表で発信してきた言葉はいつも愚直なまでに実直だ。

 高額賞金はあくまで,選手への報酬とプレイヤーたちの注目を引くもの。その先,eスポーツを趣味から職業へと発展・安定化させるための第一歩に取り組みはじめた。同時に「(プロゲーマーとしての)生活苦による人材流失を起こさない」という目標もあるようだ。
 また,本大会では手越祐也さんとのコラボレーションにより,大会テーマ曲の制作,特別解説ゲストに招くなどの施策も行われた。これは「さらに多くの人とリソースを呼び込み,eスポーツ全体の発展のため,より多くの可能性を提供する」を念頭に推し進めているかららしい。

 そのうえ,大会優勝チームのDG-Coreは近日,手越さんと一緒にテーマソング「ARE U READY」に関するなんらかの撮影を行うという。
 端的に言うと,プロライセンスの副次的景品であるPR起用でさっそく「著名人とのコラボでチームを応援!」してあげるわけだろう。内容にしても今後のための意思表明としても,分かりやすくていい。

 彼らの背筋をまっすぐにして見せてみせる姿勢が信頼に足るかどうかは個々人の判断に任せるとしても,連続して数字と実行を伴っている大会3年目の実績を踏まえると,少なくとも裏切られはしそうにない。

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 まとめよう。本大会をもってeスポーツ界隈でのさらなる一歩を進めた荒野行動。外から荒野のオアシスを眺める者には,選手にとって,観客にとって,運営にとって,eスポーツ界にとって意義があったかどうかは,下世話な真理の話,お金の総量でしか語りづらくはある。
 だから根拠のない感想しか言ってあげられないが,長年の荒野プレイヤーは今がまじで狙い目だ。がんばって練習すればゲームと生活がひもづく人生も近くなってきたぞ――という本音が関の山。

 業界全体で見れば,プレイヤー人口も大会賞金も申し分なく,画期的なプロライセンスも誕生して,プロ層の安定化に努めている。
 彼らをさらに次のステージに跳ね上げるには「プロチーム主体の公式プロリーグ化」など,より大きな枠組みがあればさらなる飛躍を望めそうだが,その一歩前までの整備は済んだ,といったところに思える。

 プロライセンスの存在も,日本のeスポーツ界隈では意欲的かつ将来性のある取り組みと言えるので,荒野行動の行く末を見て,界隈がどのように影響されていくのかも,あるいは注目になるのかもしれない。

「荒野王者決定戦」1日目(動画)

「荒野王者決定戦」2日目(動画)


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