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[GDC 2019]VRの世界をより現実的にするためのキャラクター制作とは。「Blood & Truth」開発者が制作過程を語った
テーマとなった「Blood & Truth」は,日本国内では「ライアン・マークス リベンジミッション」というタイトルでリリースが予定されているPlayStation VR用FPSだ。セッションでは,本作を制作するSIEロンドンスタジオのToby Hynes氏が登壇。本作のリードキャラクターアーティストを務める同氏から,VRゲームにおけるキャラクター作りについて語られた。
「Blood & Truth」では,犯罪組織から家族を助けるために戦う特殊部隊員のライアン・マークスの物語が描かれる。PlayStation Move モーションコントローラーで楽しめるアクション要素に加えて,ドラマチックなストーリーを現実の出来事のように体験できる点が大きな特徴だ。
Hynes氏は,妥協のない姿勢で制作に挑み,実在すると感じられるような深い人間描写と,そこから生まれるリアリティによって,“VRゲームを次のレベル引き上げられた”と自信を覗かせる。そして,その始まりには,同スタジオが過去に手掛けた「The London Heist」(ロンドンヘイスト)があったという。
「The London Heist」は,PS VRのローンチソフト「PlayStation VR WORLDS」に収録されたタイトルだ。プレイヤーはロンドンのギャングとなり,銃撃戦やカーチェイスをVRならではの臨場感と共に楽しめる。映画の主人公になったかのようなゲーム体験をできることで評判となったタイトルだが,キャラクター制作チームにとっても,本作は大きな経験となったようだ。
「プレイヤーは皆,『誰かと同じ』であることは望まない。それぞれがイメージする主人公となり,現実で活躍しているような体験が得られることを望んでいる」と語るHynes氏。この“現実らしさ”をVRで表現することが難しい部分であるのだが,「The London Heist」の経験から,それを成すための「主観で見えるもののクオリティ」が重要であることをつかんだようだ。
今回のセッションでは,物語のキーキャラクターの制作を通して,その説明が行われた。キーキャラクターは実際の役者をもとに3Dモデルが作られているのだが,3Dモデルを作る前に,あらかじめストックしていた3Dスキャンモデルなどのデータをエンジンに取り込み,デモ用のキャラクターを制作し,動きや表情といったさまざまなテストを行ったという。
印象的だったのが,さまざまなポーズでシミュレートされ,何パターンも取り込まれた“衣服のシワの寄り方”だ。VRゲームは登場人物をあらゆる角度から見ることができるため,衣服のシワ一つをとっても,それが不自然なものだと現実とのギャップが生まれてしまうという。話を聞くだけでは些細なことに感じられるが,リアリティを追求する制作チームにとっては見逃せない部分だったようだ。
モデルとなる役者のデータを取り込む際も,本人の顔や体型だけではなく,表情や仕草,実際にキャラクターが着用しているような衣服をまとった上でのポーズなども細かくスキャンしているという。さらに,髪型や服装,アクセサリー,傷,タトゥーなど,こだわりのポイントはさまざまあるが,それらはすべてキャラクターごとに持つバックグラウンドにも関わるため,物語を深く描く上で妥協なく取り組んだと語っていた。
「現実の物語」であるかのような体験ができる「Blood & Truth」だが,今回語られた人物描写のリアリティとは別に,アクションヒーローになったかのような銃さばきといった,現実では叶えられない体験ができるのも魅力の一つ。国内外ともに発売日は発表されていないが,その仕上がりに期待が高まるところだ。
「ライアン・マークス リベンジミッション」公式サイト
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Blood & Truth
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ライアン・マークス リベンジミッション
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