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「ベリアル抱き枕カバー」のシチュエーションCDは敵という制約があるからこそ魅力的に描けた。試行錯誤を重ねたシナリオチームに話を聞いた
このフェスのひとつの目玉でもある新グッズとして発売されたのが,「抱き枕カバー(ベリアル)」だ。これまで販売されてきた抱き枕カバーはすべて女性キャラクターだったので,男性では初となる。ベリアルはそもそも人気キャラクターではあるが,大胆なポージングで描かれた絵柄も話題となり,各所で大きな反響を呼んだ。
人気キャラクターであるベリアルの抱き枕カバーがどんな思いで制作されたのか。前編ではイラストチームにそのこだわりを聞いたが,本稿では付属の「シチュエーションCD」の脚本を担当したシナリオチームに独占で話をうかがったので,その内容をお届けする。
なお,本稿にはシチュエーションCDのネタバレにつながる内容が含まれる。また,若干のメタ的発言も含むため,自身の耳で確かめたい・世界観を大切にしたいプレイヤーは閲覧に注意してほしい。
ギリギリを攻めたデザインにCygamesの本気を見た! 「抱き枕カバー(ベリアル)」の制作でイラストチームがこだわりぬいたポイントとは
12月21日と22日に開催される「グランブルーファンタジー」のリアルイベント「グラブルフェス2024」にて,人気キャラクター「ベリアル」の抱き枕カバーが販売される。初の男性キャラクターでの抱き枕カバーは,どのような思いで制作されたのか。今回はイラストチームにそのこだわりを聞いた。
「グラブルフェス2024」公式サイト
ベリアルのキャラクター性を生かした没入感作り
ベリアルは4周年記念イベント「失楽園 どうして空は蒼いのか Part.II」で初登場して以来,さまざまな形でゲーム内外のコンテンツに顔を出し,プレイヤーからの人気を獲得していった。
今回話をうかがったなかで最初に断言されたのが,「ベリアルは存在しています」という言葉だった。こうしたプレイヤーの感情に寄り添ったやりとりは,Cygamesのカスタマーサポートへ問い合わせたことがあればお馴染みだろう。どんなポジションであっても自社の作品が持つ世界観を,そしてそれを楽しんでくれるプレイヤーを大切にするという視点は共通だ。
つまり,シチュエーションCDの内容はベリアルとの実際のやりとりであり,本稿で語られる内容はある意味で蛇足になってしまう可能性もある。ベリアルを愛するプレイヤーの複雑な感情にも触れてしまうため「今回のインタビューは(ありがたいのですが)それこそ毒林檎のようなもので,聞きたくないと思う方もいるかと思います。どうかご勘弁くださいませ……!(シナリオ担当)」と前置きしつつ,シチュエーションCDのシナリオについて答えてくれた。
ベリアルは,騎空団の仲間のように親密な関係性にはなれない立場だが,プレイヤーである団長と直接かつ積極的にコミュニケーションを取っているキャラクターのひとりだ。ある種やりたい放題できる,自由なキャラクターである点はシナリオ作成にどう作用したのか。
これについては,結論から言えば「天井知らずにプラス」だったと言う。ただしベリアルのそうした行動面での自由奔放さは魅力となるが,あくまで主人公とは敵対している……という点から,物語上でも自由が利くわけではないと語られた。
「今回は主人公の枕元に現れるシチュエーションですが,『敵』であるベリアルに対しては応戦するのが自然です。『VR天司』や『グラブルフェス』に登場するベリアルは,あくまでも一方的に『こちら』に語り掛けている状況です。実際にシナリオ上で交流を描こうとすると,ベリアルの『我々の目線で魅力的な一面』のみを都合よく切り取ることはできません(シナリオ担当)」
それであれば「一方的に『こちら』に語り掛けるベリアル」といったシチュエーションにすればいいのではないかと考えられるが,しかし今回のCDのような音声作品で重要となるのは“没入感”である,と続ける。
「自分(=主人公)が今どのような状況にいるか」を具体的に想像できなければ「ベリアルが枕元でなんか囁いてるけど,そもそもなんで私(=主人公)は反撃しないんだ?」などと感じてしまい,ノイズになってしまう可能性もある。また,主人公との関係性を考えれば「主人公が膝枕を喜んで受け入れる」「主人公から甘える」といったシチュエーションもあり得ない,という制限もあったと語ってくれた。
ただ,ベリアルが「何をやっても許される」という意味での自由度が高いキャラクターであることは事実だ。「私は今回のお話をいただいたとき,『単なるドラマCDではなく,本格的な最高の音声作品を作りたい!』と思いましたが,これはベリアルにしかできないことだと思います(シナリオ担当)」と語ってくれたように,ベリアルの魅力を存分に発揮できる場になったと振り返る。また,先ほど挙がった「敵」であるという制限も,逆手に取って生かすことができて,結果的にはプラスに働いたと語っていた。
敵対キャラクターという制限も音声作品ならではの魅力に
このシチュエーションCDでは,毒を口にしてしまって身動きが取れなくなった主人公の寝室にベリアルが忍び込み,解毒のために近づく――といった形で物語が展開される。この今回の「解毒」といったシチュエーションは,どのようなアイデアから生まれたのか。
「前出の通り,『最高の音声作品を作る』が今回のテーマでした。抱き枕に付属するCDを聴く際,多くの方はベッドの上で目を閉じて動かずにいると思います。その現実の状況と,作品内の状況をシンクロさせることで,没入感を高めたいと考えていました。ベリアルは『敵』ですが,主人公の抵抗を不可能にしてしまえば,『主人公に積極的にアプローチする者』として説得力があります(シナリオ担当)」
こうして敵であることを生かした状況でありつつ,ベッドの上で受け身で聴いているプレイヤーの現実と完全にリンクした構図を生み出せた,と続ける。
「ここまで要件を整理すると,主人公には『意識はあるが動けない』状況になってもらう必要がありました。ただし,『ちょっかいを掛けに来た』では,単なる悪事の延長線上であり,主人公というキャラクターの視点では受け入れがたい行為で,ただ『耐える』だけの時間になってしまいます。そこで心理的ハードルを下げるべく,主人公のために行う『プラス』の行為である,という建前が必要でした。
そこからベリアルのキーアイテムである林檎,御伽噺になぞらえたキスなどの要素を鑑みて,『解毒』という具体的なストーリーに落とし込んだ形です。『ベリアルの自作自演か』と思いつつも,『いや本当に解毒してくれたのかも?』とも少しだけ思えるような,絶妙なラインにいるのもベリアルならではのバランスですね(シナリオ担当)」
そう聞いて思い当たったのは「セラフィックウェポン」のひとつ「サイス・オブ・べリアル」作成時のストーリーだ。実装当時や「グラブル」を始めたばかりのプレイヤーにとっては,ほぼ確実に闇属性の武器編成へ入ってくる有用な武器であるため,ベリアルへどういった感情を抱いていようが作成せざるを得ない。「ベリアルに手を貸すのは複雑だが,有用性を考えたら従うしかない……!」という気持ちにさせられたプレイヤーも少なくないだろう。プレイヤーの敵でありながら,何とも言い難い距離感を維持できるのがベリアルというキャラクターのもつ魅力の一端であるとあらためて納得できる。
ちなみに,この「サイス・オブ・ベリアル」のストーリーも,本作を書きあげたシナリオ担当者が執筆したものだそうだ。
主人公と視聴者の状況をシンクロさせ,最高の没入感を演出
プレイヤーとベリアルが1対1になるシチュエーションは,すでに「VR天司」でも展開されている。今回のシチュエーションCDと差別化を図るため,意識した部分はあるのだろうか。
「VRはシナリオを能動的(主観的)に五感で体験できる一方で,音声作品は受動的でなおかつ聴覚情報しか受け取れません。受動的である点の活用にはすでに触れましたが,『聴覚情報しかない』という制限も実は特長になっていると思います。聞き手がシナリオに没入できた場合,その脳内に広がる世界が100%自分の想像と一致するという点で,VRの効果を上回れるためです(シナリオ担当者)」
VRを上回る音声作品として目指したのが,徹底した没入感だ。本作には男主人公/女主人公のビジュアルは存在するものの,実際に聞いているプレイヤー自身の現実との相違が気になり,没入感が損なわれる恐れがある,と続ける。
そのため主人公の体型や部屋の状況などプレイヤーの主観と異なる可能性がある情報はとことん排除し,そもそも言及しない表現に変えたほうがいいと判断。実際,シナリオ担当自身も多くの音声作品を聴くなかで,そういった情報により現実に引き戻される感覚があったため,この点はかなり強く意識したそうだ。
今回,話をうかがううえで,完成したシチュエーションCDの音源の一部を先んじて聴かせてもらったのだが,音声面においてシナリオと合わせての移動表現が巧みに入れ込まれており,よりリアルに「ベリアルが目の前にいるような体験」を味わえた。
それはまるで耳元への吐息を感じるような,肌に触れられているような,強い視線に射抜かれているような体験であり,覚悟を決めて視聴したのだが,思わず
「近い!! 近い!!!!!」
とイヤフォンを外してしまうくらいだった。冷静になれば違うことは当然理解しているのだが,そう錯覚してしまうほどリアルな臨場感を伴っており,本当に“ベリアルがここにいる”と思わされてしまう。強いこだわりをもって制作された音源は,そんな没入感が味わえるものに仕上がっていた。
「『音声作品』としての最高を目指すうえで,王道のシチュエーションや表現はしっかりと押さえたかったので,『ベリアルらしさ』を生かしつつ,さまざまな演出や展開を盛り込んでいます。個人的に好きな箇所は『カウントキャンセル』です。
音声作品において数字を数える表現は,没入感を高める意図でよく用いられます。ベリアルがその定番の『カウント』をいきなり破るという行動に出るのですが,ベリアルの悪戯心が感じられつつも,『俺の掌の上にお前の生命はある』という支配関係の再確認の意味もあってゾクゾクします。その後はしっかりカウントしてくれる場面も用意しています(シナリオ担当者)」
これらの演出は,Cygamesのサウンドチームとも連携していると語られた。キャラクターがその場にいるような表現をするために音の移動感や距離感の調整を細かく行い,没入感のある立体表現を目指したそうだ。衣擦れのSEや耳かき音などは多様なパターンを試しつつ納得のいくものをチームで模索し,とくに耳かき音は質感や速度などの試行錯誤の果てに完成版へ辿り着いたと太鼓判を押す。
想像以上の熱意……これはリビドーとも呼ぶべきだろうか。ベリアルというキャラクターの魅力を引き出すべく,音声作品における制約すらも武器に変え,現実と虚構を曖昧にしていく。これもすべては,プレイヤーへ最高の没入感を提供するため。今回の話を通じ,Cygamesの掲げる「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンは,こうしたグッズ制作にも深く根付いていると確かに感じられた。
最後に,あらためてベリアルというキャラクターのもつ魅力についても伺った。この回答で本稿を締めくくろう。
「ベリアルというキャラクターの魅力の基本は『危険な悪役』であり,その点は私だけでなく,声優の細谷佳正さんも非常に大切にしてくださっています。今回の音声作品では,その危険さを前提にセクシーな魅力が存分に発揮されています。私も収録現場に同行していたのですが,細谷さんの演技があまりにも素晴らしく,興奮が抑えきれずに歯を食いしばり拳を握り締めていました。
ほとんど細谷さんのおかげなのですが,全編にわたって聞き込み甲斐のある仕上がりになっています! ちなみに私が好きなパートのキーワードは『耳』『息』です。ぜひ寝る前に聴いていただきたいです。そして,『こんなもん聞いて眠れるわけねえだろ!』と,皆様の心の中のビィくんにいい意味でキレてもらえましたら幸いです!(シナリオ担当者)」
盛況のうちに閉幕を迎えた「グラブルフェス2024」だが,それは販売グッズも同じで,今回紹介した「抱き枕カバー(ベリアル)」は公式オンラインストア「CyStore」上では瞬く間に完売となった。
ただし,グラブルフェスでは完売したアイテムでも,開催後に一部商品の在庫が「CyStore」にて数量・期間限定で追加販売されることがある。今回の「抱き枕カバー(ベリアル)」は現地では品切れていなかったということもあり,近く再販される可能性は高いのではないだろうか。今回欲しかったが手に入れられなかった人は,その機会をぜひ待ってほしいと思う。
また,Cygamesには再販してもらうのはもちろん,今後もプレイヤーが期待する新たなグッズ(今回のような抱き枕をぜひ)の展開にも力を入れてもらいたいと願うばかりだ。
CyStore「グラブルフェス2024」特設ページ
「グラブルフェス2024」公式サイト
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