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剣豪のイケメン子孫たちを斬って斬って斬りまくる「乙女剣武蔵」。本作を手掛ける風之宮そのえ氏と菜摘かんな氏にゲームの魅力を聞く

2017/12/19 12:00 　花梨エンターテイメントの新ブランドkarintoより，2018年に配信が予定されているスマホ向けゲーム「乙女剣武蔵」（iOS / Android）。この作品は，剣豪の子孫たちが通う学園を舞台に，宮本武蔵の二代目として覚醒したヒロインが，立ちはだかる剣豪の子孫たちと剣を交えていく青春活劇アドベンチャーゲームだ。

　ストーリーや登場人物，プロモーションビデオが公開されているものの，まだまだ謎の部分は多い本作。今回，4Gamerでは花梨エンターテイメントのタイトルすべてを手掛けるプロデューサー・風之宮そのえ氏と，シナリオ兼ディレクター・菜摘かんな氏にインタビューを行い，「乙女剣武蔵」について詳しく聞いてきた。
　作品の魅力はもちろん，PlayStationVitaからスマホ向けへプラットフォームを変更した理由など，突っ込んだ内容もうかがったのでお届けする。

風之宮そのえ氏と菜摘かんな氏

「乙女剣武蔵」立ち上げの経緯とは

花梨エンターテイメントにはステキなインテリアが飾られていた

4Gamer：
　花梨エンターテイメントさんのインタビューは2015年に掲載した「絶対迷宮 秘密のおやゆび姫」以来ですね。初めての読者もいらっしゃると思うので，あらためておふたりの花梨エンターテイメントにおける立ち位置を教えていただけますか。

風之宮そのえ氏（以下，そのえ氏）：
　はい。花梨エンターテイメントで企画全般のプロデューサーをしております。風之宮そのえです。今回はシナリオも担当しています。


菜摘かんな氏（以下，菜摘氏）：
　花梨エンターテイメントでシナリオやディレクションをしております。菜摘かんなです。よろしくお願いします。

4Gamer：
　ありがとうございます。「乙女剣武蔵」のお話の前に，新ブランド「karinto」についてもうかがいたいのですが，こちらのブランド立ち上げの経緯を教えてください。

そのえ氏：
　今まで花梨エンターテイメントは「絶対迷宮グリム〜七つの鍵と楽園の乙女〜」や「英国探偵ミステリア」など，西洋ファンタジーやゴシック要素のあるゲームを中心に作ってきました。一貫したブランドイメージももちろん大事なのですが，ポップな世界観や和モノのゲームが作りにくくなってしまったのが悩みどころで。
　一方で弊社の立ち上げているボーイズラブゲームのブランド「花梨シャノアール オメガ」では，現代社会を軸にした，違う世界線の未来の日本を舞台に自由に制作していたので，和モノを作るなら思い切って新ブランドを作ろうと菜摘さんに相談しました。

ブランド名はかわいらしい“かりんとう”をイメージしているという

菜摘氏：
　お話を聞いたときは素直にありだなと思いました。花梨エンターテイメントも2000年に立ち上げて17年が経つので，ずっと同じイメージのままよりは新しい方向性で舵を切るのも大事なので。

4Gamer：
　確かに，花梨さんといえばゴシック系のイメージが強いですね。「karinto」では「乙女剣武蔵」のような和の世界観を持つタイトルがラインナップされるのでしょうか？

そのえ氏：
　そこがまだ決めかねているところでして。当初PlayStationVitaで発売予定だった「乙女剣武蔵」をアプリでリリースすることになったので，「karinto」はアプリゲームのブランドになるのか和モノやポップ系になるのか，まだ検討中ですね。


4Gamer：
　そうですね。その件もお聞きしたいと思っておりました。PS Vitaからスマートフォンに移行したのはどのような狙いがあったのでしょうか。

そのえ氏：
　最近の市場を見ていると，女性向けゲームがコンシューマからスマホ向けに流れてきていますよね。その上PS Vitaも生産終了（※）という影響もあって。ただ僕としては，すでにPS Vita用にプロットを切って，シナリオも書き始めていましたし，何よりパッケージゲームに思い入れがあったんですが……。
※一部の機種が生産を終了している。

菜摘氏：
　私の個人的な意見ですが，新ブランドを立ち上げるにあたって，和モノを作ることは弊社では新しくても，世間から見ると新しいことではない。またコンシューマからスマホ向けに移行していることもあり，すでにPS Vita向けタイトルとして情報を出していた本作のプラットフォームの変更については，社内でも何度も話し合いました。
　ただ，アプリに方向性を変えたからにはアプリとして必ず面白いものにしなくてはならないと思っています。


そのえ氏：
　弊社はパッケージやプロダクトに拘りを持っているので，アプリとしてリリースした本作の世界観やキャラクターが受け入れていただけたら，関連商品の一つとして，パッケージもあらためて考えられたらと思っています。

剣豪の子孫たちに帯刀が許された世界観

4Gamer：
　いろんな覚悟があってのアプリ化なのですね。では，その「乙女剣武蔵」のお話に入りたいと思います。まずはプロジェクト発足の経緯を教えてください。

そのえ氏：
　僕がもともと宮本武蔵が好きで，「武蔵を主人公にしたゲームを作りたい！」と思ったのがはじまりです。それに平安や戦国，幕末の人物を題材にしたゲーム作品は沢山ありますが，武蔵が生きた戦国の終わりから江戸時代にかけては，あまりフィーチャーされていないので，差別化もできると思いました。
　ただ，最初はボーイズラブゲームで出すつもりだったんです。

4Gamer：
　え!?　そうなんですか？


そのえ氏：
　スーツと日本刀ってかっこいいじゃないですか。でも去年の「AGF（アニメイトガールズフェスティバル）2016」で多くの方から，乙女ゲームの新作のご要望もいただいいて，それに応えるという形で企画を進めました。

4Gamer：
　そこで江戸時代ではなく，現代の学園モノにしたのはなぜでしょうか？

そのえ氏：
　そのままの時代感より現代が舞台のほうが今の子に受け入れられやすいのと，学園モノのほうが手に取りやすいと思ったからです。それで帯刀させるなら学ランのほうがクラシカルなイメージでカッコいいなと思い，「学ラン×日本刀」になりました。

菜摘氏：
　シナリオも時代モノだと重くなっちゃうので。「乙女剣武蔵」では女の子が手軽に遊べるようなポップな路線でシナリオも制作していて，ラブコメの要素も意識していれています。

4Gamer：
　ラブコメというと，恋愛を前面に押し出したものではないんでしょうか？

菜摘氏：
　乙女ゲームらしい一対一の甘い恋愛というより，ケンカしたりみんなでワイワイしたりの青春＆ラブコメディです。シナリオも全体的にギャグ多めで。油断するとシリアスになってしまいますが……。

そのえ氏：
　ポップな感じにしたかったので，イラストもセルっぽくてかわいらしい塗りを意識しています。あとユルめの落書き風のイラストは絶対譲れないということで入れました。でも僕は個人的にシリアスな展開も好きなので，笑いだけではなくキャラクターごとにいろいろ抱えている部分も作っています。

4Gamer：
　先ほどPS Vita用にプロットを切っていたとお話されていましたが，アプリ化にあたって，シナリオなども大幅に変更されたんですか。

そのえ氏：
　はい。まさに今，加筆修正の真っ最中です。巌流学園だけで完結していたものが，舞台が広がったことで世界観やストーリーにもさまざまな変更や追加がありました。例えば，彼らは帯刀していますが，それは政府が弱体化した日本に再び武士道を復活させ，国力の回復を図るプロジェクトの一環。剣豪の子孫たちは帯刀が許されていて，幼い頃から剣を学んでいる世界観になっています。また，江戸時代に実際に武士に認められていた「切捨御免」の制度も復活しているので，彼ら剣豪の子孫同士は斬り合っても罪に問われることはありません。

菜摘氏：
　といっても，帯刀しているのは各学園に通う剣豪の子孫と，学園関係者など一部のみです。巌流学園を出て，ほかの学園に行くと，また独自の校風があります。新選学園の場合は，学生が帯刀していて京の街を守っているという新選組の子孫らしい世界観になっています。

4Gamer：
　島を出るということは，メインストーリーの舞台が巌流学園というわけではないんですね。具体的にどういったストーリーに？

そのえ氏：
　じつはヒロインの庵は，剣の修行に出たきり戻らない父親を捜しているんです。その過程で，父親の情報を聞きつけて，いろんな学園を渡り歩き，戦いに巻き込まれていくというお話になっています。


菜摘氏：
　巌流学園の生徒たちは武蔵に切られた過去のある剣豪の子孫なので，とくに恨みが強いため，二代目武蔵が現れたと魂が感じ，次々と勝負を挑んで来ます。「二代目宮本武蔵，いざ尋常に勝負！」といった具合に。

4Gamer：
　父親を捜しているヒロインが巌流学園を出てしまうと，その生徒たちは他校のストーリーには出てこないんでしょうか？

そのえ氏：
　メインストーリーの鍵となるキャラクターもいるので，途中に出てくる場合もあります。でも基本的には行く先の学園の生徒たちがメインになっていきます。

菜摘氏：
　戦闘に当たる「稽古」で好きな剣豪で部隊を組んで戦ったり，カードストーリーとして剣豪たちとの物語も読めたりもするので，学園を離れても継続して登場しますよ。カードストーリーでは，本編にはない剣豪たちとの少し甘いシチュエーションも楽しめると思います。

斬られた剣豪たちは全員ヒロインを好きになる？

4Gamer：
　続いてキャラクターたちについてお聞きしたいです。「巌流学園」「維新学園」「新撰学園」「京八学園」の4つの学園が存在しますが，こちらはどのようにして選ばれたのでしょうか？

そのえ氏：
　宮本武蔵に斬られた剣豪たちの子孫を集めた巌流学園と，剣術の礎を築いた剣豪の子孫を集めた京八学園は，最初から候補にあがっていました。あまり知られていなかったり，名前が難しかったりで少し心配な面もありましたが，和モノ作品に慣れ親しんだ今の子たちならきっと大丈夫だろうと。あとは誰もが知るメジャーなところも入れたかったので，それなら維新と新撰の剣豪も取り上げ，両学園の対立を描くことになりました。

4Gamer：
　歴史上の人物にスポットを当てると，下調べも大変そうですね。花梨さんは作品を制作される際に入念なロケハンをされることで知られていますが，今回もゆかりの地を訪れたのでしょうか。

そのえ氏：
　今回は宮本武蔵が兵法書「五輪書」を書いたと言われている熊本県の「霊巌洞」と，京都の「一乗寺下り松」が奉納されている八大神社に行ってきました。京都では武蔵関連のお土産がたくさん売っていたので，つい資料という名のお土産も買っちゃいましたね。あとは巌流島や鞍馬山など，背景の資料としてたくさん写真を撮りました。吉岡一門の子孫が開いた染物屋さんにも行きました。

菜摘氏：
　彼らの通う学園も，巌流学園は田舎の高校らしく風情を出して，新撰学園は屯所風，維新学園は明治の洋館風……など，趣向を凝らしたアレンジになっています。

4Gamer：
　公式サイトやプロモーションビデオではヒロインたちの変身後のビジュアルが公開されていますが，性格も変わるのでしょうか？

菜摘氏：
　剣豪の子孫なので，過去の記憶が蘇り覚醒すると若干好戦的になりますが，基本的には変わりません。ただヒロインと一部の剣豪は性格が変わることも。あとヒロイン同様，男の子の剣豪たちにも脱衣して変身する「変身シーン」を用意しているところは，ちょっと恥ずかしいけど見どころだと思います。

4Gamer：
　ちなみにキャラクターボイスは決まっていますか？

そのえ氏：
　絶賛オーディション中です。みなさん魅力的なので，とても悩んでいます。


4Gamer：
　公開が楽しみです。制作にあたりとくに苦労した点がありましたら教えてください。

そのえ氏：
　一番の苦労はシナリオです。すべての剣豪とヒロインがぶつかり，一度は真剣勝負をする。ヒロインが守られたり，ほかのキャラクターと協力して戦うのがメインの普通の乙女ゲームとは少し違う展開が多いため，試行錯誤しながら制作しています。

4Gamer：
　斬られた相手はどうなるんでしょうか？

そのえ氏：
　彼らは恨みや何かしらの負の感情を抱えているんですが，その怨念をヒロインに斬られることによって解放されるんですね。そして斬った張本人であるヒロインのことが好きになってしまう。

4Gamer：
　なるほど。ではそのバトルのゲームシステムについて伺いたいです。プロモーションビデオを見ていると，文字を繋げて単語を作るという形のようですね。

菜摘氏：
　実際にはコトダマという文字を通して「斬る」ことで攻撃します。攻撃方法はスワイプで斬り，タップで突きになります。また剣道をベースにしているので，「面」「胴」「小手」など有効打も設定しています。例えば胴より面（顔）を狙えばより大きなダメージを与えられるなどの戦略性もあります。


4Gamer：
　個人戦のみなんでしょうか？

菜摘氏：
　団体で戦うものもあります。全員をまとめて斬ってもいいですし，ターゲットを絞って攻撃することも可能です。


4Gamer：
　「乙女剣武蔵」における今後の展望やお取り組みについてお聞かせください。

そのえ氏：
　まずはアプリを配信しての反響次第になりますが，キャラクターソングは出したいと思っています。イベントもやりたいですが，人数が多いのでもし開催できるとなると，各学園縛りになるかな？

菜摘氏：
　舞台化もしてみたいですが，それはそれとして。まずはゲームでたくさんの剣豪さんに盛り上がっていただけたら！

4Gamer：
　最後に読者へメッセージをお願いします。

菜摘氏：
　アプリは手軽に遊べるものですし，本作だけの独自の要素もいろいろ試みていますので，リリースした際にはぜひ一度体験してほしいと思います。一緒に盛り上がっていければいいなと思っているので，よろしくお願いします。

そのえ氏：
　「乙女剣武蔵」は，剣豪ならではのストーリーや流派などによる関係性もありますが，青春ものやラブコメとしても楽しめる可愛い作品です。剣豪や時代モノが好きな人はもちろん，知らない人も気軽に楽しめるので，ぜひ楽しみに待っていただけるとうれしいです。

4Gamer：
　ありがとうございました。

「乙女剣武蔵」公式サイト

（C）karinto 2017-2019

（C）karinto 2017-2019