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より美しく,遊びやすくなった「ドラゴンズクラウン・プロ」プレイレポート。グラフィックスの魅力を4K解像度の画像や制作者コメントで紹介
本稿では,あらためて「ドラゴンズクラウン」のゲームの流れを振り返りながら,本作の新要素,PS4 Proを使用した4K解像度とPS3版の画像と,ヴァニラウェアのプランナーであり,「ドラゴンズクラウン・プロ」でグラフィックスの4K化を担当した中西 渉氏のコメントを交えた解説などで,より美しく,遊びやすくなった「ドラゴンズクラウン・プロ」の魅力を紹介していこう。
また,並々ならぬこだわりが感じられる出来だった先着購入特典の「デジタルゲームブック 悪霊島の秘宝」にも触れているので,こちらもお見逃しなく。
「ドラゴンズクラウン・プロ」公式サイト
魔物の巣くう迷宮に挑む名作2DアクションRPGが
より美しく,遊びやすくなって登場
「ドラゴンズクラウン」は,剣と魔法,そしてドラゴンが登場するハイ・ファンタジーの世界観を持つアクションRPG。昔ながらのベルトスクロールタイプのアクション,キャラクターの育成やハック&スラッシュといったやり込み要素,「これぞヴァニラウェア」という美麗な2Dグラフィックスなど,多くの魅力を持つ作品だ。
大きな魅力の1つとなっているグラフィックスは,PS3版の時点で1080pのフルHDが実現されており,それは今見ても色あせていない。まるで絵画のように描かれた背景やキャラクター,そのキャラクター達のケレン味豊かな動きやアクションは,眺めているだけでも満足してしまうほど。4Kに対応した「ドラゴンズクラウン・プロ」は,PS4 Proでより美しくなったグラフィックスを楽しめるのだ。
プレイヤーは冒険者となり,仲間を集めてパーティを組み魔物の巣くう恐ろしい迷宮に挑むことになる。プレイヤーキャラクターにはファイター,アマゾン,エルフ,ドワーフ,ソーサレス,ウィザードという6つのクラスがあり,その特徴やアクションもさまざまだ。
個性的なキャラクター達はどれを使っても楽しいが,テクニカルな操作を求められるクラスもある。もちろん好きなクラスから始めてもいいが,操作に自信がないプレイヤーは,選択時に表示される操作難度を確認して,慣れるまでは難度の低いクラスを使うと良いだろう。
ファイターは初心者も扱いやすいキャラクターだ |
スキルポイントがあれば新たな攻撃方法やパッシブスキルを得られる |
なお,プレイヤーキャラクターは,ゲームの進行中でも追加で作成が可能だ。新規で作ったキャラクターはゲームを始めから進めることになるが,最初の依頼をクリアすれば,それまで使っていたキャラクターが入手した武器やアイテム,仲間のNPCなどが共有できるようになる。ゲーム進行中のキャラクターは,ローカルマルチプレイ用のキャラクターとしても使用可能だ。
また,成長要素のあるアクションRPGとしては珍しくスコアが存在し,残機制を採用しているのは,かつてのベルトスクロールタイプのアーケードゲームをほうふつとさせる。古くからのアーケードゲームファンなら,ついスコアアタックをしたくなるような,ちょっと嬉しい仕様だろう。
ファンタジーRPGらしい要素を感じさせるものが,仲間となるNPCの復活だろう。仲間は,ダンジョン内で力尽きたキャラクターの遺骨を拾って持ち帰り,街の寺院にて所持金を払って復活させることで,酒場で仲間にすることができるのだ。
ゲームはプレイヤー1人だけでもプレイはできるが,仲間がいれば単純に戦闘力は上がり,強敵やボスを相手にする際には頼もしい存在にもなってくれる。また,オンラインになっていると,ほかのプレイヤーの遺骨が落ちていることも。この場合,通常の遺骨よりも装備などが充実していることもあるので,復活させることでより頼りがいのある仲間となってくれるだろう。
志半ばにして倒れた冒険者達の遺骨。持ち帰って損はない |
蘇生にはお布施が必要。レベルの高いキャラクターほど高額になる |
筆者が特筆したい本作の魅力の1つが,ゲーム中のシチュエーションを語る「ゲームマスター」によるナレーションだ。プレイヤーを「君」と呼びかけ,淡々とした口調で語られるそれは,テーブルトークRPGやゲームブックを思わせるテイストで,旅における緊張感,あるいは安らぎなどを演出してくれる。
この,独特の雰囲気でよりゲームに深みを与えるナレーションを担当したのが,「ドラゴンズクラウン」発売前年の2012年に惜しまれながら逝去した声優の谷口 節さんだ。「ドラゴンズクラウン・プロ」では,谷口さんの名調子はもちろん,PS3/PS Vita版のDLCとして販売された,ファイター役の津田健次郎さん,アマゾン役の田中敦子さん,エルフ役の今井麻美さん,ドワーフ役の石塚運昇さん,ソーサレス役の井上喜久子さん,ウィザード役の安元洋貴さんの6種類のボイスも収録。さらに,それらの海外版の英語音声も最初から選択できるという豪華仕様となっているのだ。
そのほか,「ドラゴンズクラウン・プロ」の新要素として注目なのが,生オーケストラや特殊なパーカッション,民族楽器などで新録されたサウンドだ。元よりベイシスケイプの崎元 仁氏によるクオリティの高いサウンドが収録されていたが,新録バージョンはこのオリジナル版と違った魅力を持つものとなっている。4Kモニター+ホームシアタースピーカーの環境を作ることができれば,より迫力のある体験ができるだろう。
ここで嬉しいのは,オプション画面でオリジナルとオーケストラを切り替えられるということ。聴き比べてみるのもよし,気分で切り替えるもよし,楽しみ方も自由だ。
ほかに印象的だったのは,PS4ならではとなるタッチパッドでのカーソル操作だ。マップ移動や盗賊ロニへの指示といった操作が直感的にでき,なかなか快適だった。操作性以外でも,PS4になったことによって画面切り替えやセーブが速くなっているなど,ゲーム全体の手触りがかなり良くなった印象だ。スタンバイモードですぐにプレイを再開できるのも,本作にマッチしている部分だと言えるだろう。
また,本作は,PS3/PS Vita版とのクロスセーブにも対応している。セーブデータ以外にもトロフィーの獲得実績も引き継がれるので,冒険の続きはもちろんトロフィー集めも継続可能だ。さらにマルチプレイも充実しており,ローカルで友人達と,PS4のシェアプレイ機能でゲームを持っていないフレンドと,オンラインでPS3/PS Vita版のプレイヤーといったように,さまざまな条件のプレイヤーと冒険が楽しめるようになっている。
なお,PS3/PS Vita版とPS4版でクロスセーブやクロスプレイを行うためには,PS3/PS Vita版で2月8日に配信されるアップデートVer.1.08を実施する必要がある。ソフトを持っている人は忘れずアップデートをしておこう。
各カバンに名称を付ける機能や,タリスマンの入手状況と現在いる階層の踏破報酬を確認する機能,魔法道具店でアイテムがまとめて売れるようになるなど,機能追加や改善,不具合修正などが行われる「ドラゴンズクラウン・プロ」及びアップデートVer.1.08は,まさに“かゆいところに手が届く”という仕様となっている。
初めて「ドラゴンズクラウン」に触れるという人はもちろん,PS3/PS Vita版をプレイしていた人達も,このタイミングでまた新たな冒険の旅に出てみてはいかがだろうか。
並々ならぬこだわりが感じられる先着購入特典
「デジタルゲームブック 悪霊島の秘宝」
今回の“隠し玉”とも言えるのが,本作の先着購入特典として用意された「デジタルゲームブック 悪霊島の秘宝」だろう。これは1980年代から90年代に青春を送ったという人達なら思わずニヤッとしてしまうであろう「ゲームブック」をデジタル上で再現したもの。「ドラゴンズクラウン」で活躍するキャラクター達が繰り広げるオリジナルの冒険物語が,実際のゲームブックのように楽しめるのだ。
タイトル画面では,実際にありそうな装丁のゲームブックが表示される。これには思わずニヤリとしてしまう“アラフォー”ゲームファンも多いのでは?
さすが独特なファンタジーRPGを生み出すヴァニラウェアが制作しただけあり,そのこだわりはなかなかのもの。単にページをめくって読み進めていくだけでなく,シートに鉛筆でサラサラと描き込まれていくパラメータや,モンスターとの戦いや選択肢の結果を求めるときなどに振られるサイコロといった演出の細かさは,とくにゲームブックを親しんだ世代にはグッとくるものがあるだろう。かく言う筆者も,ゲームブックのシリーズ「ファイティング・ファンタジー」を遊んでいた世代なので,この「悪霊島の秘宝」をプレイして,懐かしさはもちろん,なんとも形容しがたい思いが沸いてきた。
キャラクターごとにそのパラメータは異なる ゲーム本編でも馴染みのキャラクター達が登場
サイコロの転がり方やゲームを中断するときのしおりを挟む演出といった細かい部分からも,実際のゲームブックの要素を大事にしていることが感じられる
デジタルによる遊びやすさとレトロな雰囲気のある「悪霊島の秘宝」は,当時を知らない人にとってもゲームブックの魅力を知るいい機会になるはず。このDLCは,別途販売される予定はないとのことなので,確実に手に入れたいという人は早めの購入を検討しておこう。
「悪霊島の秘宝」のディレクターを務めた西村芳雄氏から,そのこだわりやオススメのポイントについてメッセージをもらっているので,ここに掲載しよう。
ドラゴンズクラウンが,昨今ほとんど見られなくなったベルトスクロールアクションゲームの復活と進化を試みたように,昨今ほとんど見られなくなったゲームブックの復活と進化に挑戦したのがこの「悪霊島の秘宝」です。
デジタル版ならではの手軽な遊び方と,冒険を盛り上げる音楽や効果音の演出なども追加されて,幼少のころ「火吹山の魔法使い」や「グレイルクエスト」などのゲームブックを楽しんでいた世代の方はもちろんのこと,ゲームブックは初めてという方や,本を読むのが苦手という方でも楽しく遊べる内容となりました。
とくにこだわったのは,臨場感を高める効果音や,少し違った「ドラゴンズクラウン」の世界が楽しめるストーリー,そしてリアルタイムでゲームブックを遊んでいた人達がニヤリとできるような小ネタの数々です。ゲームブックの進化系となる「悪霊島の秘宝」を,ぜひ遊んでみてください。(西村氏)
“職人仕事”でより美しくなったグラフィックス――
その魅力を画像とプランナー中西 渉氏のコメントで紹介
最後に,PS4 Proを使用した4K解像度とPS3版の画像に,ヴァニラウェアのプランナーであり,グラフィックスの4K化を担当した中西 渉氏のコメントを交えながら,「ドラゴンズクラウン・プロ」の魅力に迫ってみたい。
比較用のゲーム画像は,PS4 Pro / PS3ともに開発機材を用いて撮影したので,限りなくオリジナルの状態に近いものとなっている。
中西氏からは「もとよりフルHDでハイクオリティだったPS3版が4K対応でいったいどのように変化しているのか」「4K化ではどのような作業が行われたのか」,そして「さすが美麗なグラフィックスに定評あるヴァニラウェアだ」というそのこだわり,“職人仕事”といえる作業といった貴重な話をいただいているので,ヴァニラウェア作品のファンにはぜひ読み進めてほしい。
まずは4K対応の高解像度・高画質化の作業について。これは大きく分けて「より解像度の高い元データへの置き換え」「ツールを使った拡大+加筆修正」「新規で作成し直す」という,3つの作業を行ったという。
単純にそのまま解像度を上げただけでは,絵のフチにジャギが出たり,パーツの境界が見えたりしてしまう。その処置として,テクスチャの外周に,目では見えない程度のぼかしを施すなどといった加工も合わせて行ったそうだ。
「過去の開発タイトルより,さらに高画質になる圧縮形式を採用したことも,画質向上の一因になっているかと思います」(中西氏)
PS4 Proの4K解像度 |
PS3のフルHD |
元々フルHD前提だったタイトルをさらに高解像度となる4Kで出力するにあたっての最大の難関が,この“絵のつなぎ目やズレが目立ってしまうこと”。プレイヤーがそういった粗を見つけてしまうと,途端に世界が作り物のような感覚に陥ってしまう。没入感を台無しにしないように,可能な限り粗を潰していくことに力を入れたそうだ。
「実はこの作業が一番大変でした。すべてのグラフィックスのデータを4Kディスプレイに映して,目視による確認と修正を繰り返すのですが,この作業だけで約6か月掛かりました」(中西氏)
高解像度化された本作の見どころの1つはインタフェースだ。ゲームをプレイするうえでプレイヤーが普段よく見ることになる部分なのでとくに力を入れたとのことで,これにより全体が引き締まって見えるようになったという手応えも感じているという。
とくに高解像度化の恩恵を受けていると感じる部分はステージ背景だという。例えば,「ウォレスの地下迷宮」のBルート,サイクロプス戦前の背景に描かれた大きな柱にある,囚人が遺したものと思われる刻み文字。こういった,PS3/PS Vita版では潰れて見えなかった部分が鮮明になり,絵の情報量が全体的に増したそうだ。
「社内で初めて4Kディスプレイに画面を映したときは,スタッフも感嘆していたほどで,ゲームの世界への没入感もかつてないレベルのものとなりました。環境を揃えるには大変ハードルが高いのですが,ぜひ4Kディスプレイで堪能いただければと思います」(中西氏)
中西氏にはグラフィックス以外にも,これまでのアップデートや本作の魅力についても話を聞いたので,最後にそれをお届けしよう。
――PS3/PS Vita版発売後に行われたアップデートについての苦労話はありますか。
中西氏:
リリース済みのタイトルに対してアップデートを行うこと自体が,当時のヴァニラウェアとしては初めての試みで,過去最大規模のプロジェクトであることも相まって,不具合の修正や機能の追加,バランス調整など,どれも大変な作業でした。
その中でも一番思い出深いのは,やはりVer1.05(第5弾アップデート。2013年12月20日配信)ですね。発売直後に目の当たりにした我々の想定を上回るほどのプレイヤースキルの上達と攻略速度に対して,お礼も兼ねて少しでも遊べる箇所を増やすことを考えたのがVer1.05なんです。
当初は難度「インフェルノ」のバランスをさらに激化させる案もありましたが,トロフィーやシナリオに絡む箇所を高難度化すると,あとから遊ぶお客さんが大変な目にあってしまうので,新たに難度「ウルティメイト」と新ダンジョン「夢幻の天廊」を実装することになりました。
できるだけ長く遊べるようにするため,単にインフェルノの続きのバランスではなく,あえて通常のダンジョンを初見では攻略不能なほどの“超高難度”としたのもウルティメイトの特徴です。それをいつか攻略するため,夢幻の天廊で装備品を集めたり,プレイヤースキルを更に鍛えたりするような流れにして,夢幻の天廊の踏破記録自体も目標となるよう設計しました。
ウルティメイト専用の敵の動きや,マスポップと呼ばれる敵の大量出現,敵がオーラをまとうエリート化など,代表的な要素は担当プログラマが自由に実装したものです。「なるほど,これでいい」で知られる(?)語りも,実はプログラマの大西さん(大西憲太郎氏)が書いたものだったりします(笑)。
――「ドラゴンズクラウン・プロ」の発売にあわせてPS3/PS Vita版向けに配信される,アップデートVer1.08についてお聞かせください。
中西氏:
今回のVer1.08については,約4年を経て開発環境が大きく変わったPS3とPS Vitaへの対応自体が最も困難でした。セーブデータの残り空き容量が4ビット(1ビット=1バイトの8分の1)しかない中,寺院に保管されている遺骨のデータを一部削るという荒業を行うことにはなりましたが,カバン名変更機能や,スキルリセットの大幅改造で可能とした「エクストラポケット」の解除など,心残りだった要素をいくつか実現できてよかったと思います。
――今回初めて「ドラゴンズクラウン」に触れるという人や,PS3/PS Vita版のプレイヤーで,発売のタイミングであらためて始めようという人達に向けてメッセージをお願いします。
中西氏:
ゲームのメインとなるのはベルトスクロールアクションとハック&スラッシュですが,気楽に始められるオンラインモードも本作ならではの魅力の一つです。偶然居合わせたほかの冒険者との,緩いつながりによる共闘には,ほかに味わえない独特の楽しさがありますので,初めて遊ばれる方はぜひ,オンラインにしてダンジョンへと足を踏み入れてください。PS3/PS Vita版をお持ちの方も,一緒に盛り上がっていただけると嬉しいです。
また,グラフィックスだけでなく,ゲーム全体を彩る珠玉の音楽も,ベイシスケイプさんの手により大幅なパワーアップを遂げていますので,いろいろな場面で意識して聴いて頂けるとより「ドラゴンズクラウン」の世界を楽しめると思います。
開発当時は,これほど息の長いゲームになるとは思っていなかったので,5年近くも皆様に支え続けていただけたことは,開発スタッフとして感謝のかぎりです。装いを新たにした「ドラゴンズクラウン・プロ」が加わったことで,この冒険はまだまだ続きます。末永く楽しんでいただけると幸いです。
「ドラゴンズクラウン・プロ」公式サイト
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