プレイレポート
鉄道を軸に街を発展させ,ジオラマ気分でも楽しめる。「A列車で行こうExp.」のインプレッションをお届け
鉄道系ゲームの定番がPS4に。動画ガイドでより遊びやすく
「A列車で行こうExp.」は,アートディンクの都市開発鉄道シミュレーションの最新タイトルだ。前作であるPC版「A列車で行こう9」のアレンジ移植となっており,同作のアップデートで追加されたものと合わせて40種以上のマップが収録されている。
また,新幹線をはじめとする実在車両が登場。山手線を走る「E235系」,関西の「阪急1000系」,北海道の「キハ40形『ながまれ号』」,東京メトロ日比谷線の「13000系」といった全国の車両が新規に収録されている。建物も,近年流行している「イルミネーション」やハイテクな「ツインタワー」,レトロな「鉄道舎」などが追加され,観光や町おこしに鉄道が活用される現代日本の風景を再現することが可能だ。
ゲームの根幹部分はA列車で行こう9と同じだ。鉄道や道路を引いて列車やバスを走らせ,人や物の流れを作ることで都市を発展させていく。40種類以上あるマップにはそれぞれテーマが設定されており,僻地にある空港の利便性を高めたり,エコ発電に転換しつつ電力不足を解消したり,赤字を垂れ流す子会社を処分したり……と,その目的はさまざまだ。
資金を10兆円にするという目標は用意されているものの,そこにたどり着くまではどういう遊び方をしてもいい。この辺りの自由度の高さは実にPCゲーム的といえるだろう。
また本作では,A列車シリーズに触れたことのない人に向けた新要素として,「動画ガイド」と「ガイド付きマップ」が用意されている。動画ガイドは,本作のさまざまな要素と,その操作説明をまとめた2分前後のショートムービーから構成されている。表現を変えるなら「動画付きヘルプ」といったところだろうか。
画面の見方からカメラ操作,ちょっとしたテクニックまでを20本以上の動画で解説してくれる。ゲーム中いつでも確認することができるうえ,早送りや巻き戻しもできる。「あの操作を忘れた」とか「画面のこの表示はどんな意味だったっけ」といった疑問を解決するときに便利だ。
ガイド付きマップは,初心者がゲームを覚えるためのマップだ。このマップは,動画ガイドでも使われており,動画をお手本にして操作すれば,ゲームの基本を掴めるようになっている。ただ,本当に右も左も分からないような人のために,システム側が指定する操作をしない限り,先に進まないタイプのチュートリアルもあった方が良かったのではないか……とも感じられた。
ゲームシステムから体感する,鉄道を中心とした都市の発展
列車やバスの運行には経費がかかるが,乗客からの運賃収入がこれを上回れば問題ない。そのために線路の引き方を工夫したり,ダイヤを調整したりしていく。マップには,すでに列車が走っていることが多いため,その情報を精査し,乗客もいないような夜中に列車を走らせていたらそれを休止するなど,無駄をなくしていこう。
街を発展させるには,駅を建て,資材を供給していけばいい。まずは発展させたいエリアに新たに駅を立てていく。田舎にあるような趣深い駅や,都内などで良く見る,駅ビルと一体化した大規模なものまで,好きな形の駅を選択できる。
駅単体ではもちろん機能しないので,次はレールを敷いていく。すでに発展した地域にある駅とつなげば,それだけ人の行き来が多くなるというわけだ。
もう1つのポイントとなるのが,資材の運搬だ。まずは資材工場と操車場を建て,次に発展させたい地域の駅に資材置き場を作り,両者を鉄道やバスで結ぶ。ゲームのことを良く分かっていないうちは,貨物列車で通勤列車の行く手を塞いだりしないよう,貨物専用線を引くのが手っ取り早いだろう。
こうして人の流れと資材が揃うと,新駅の周囲も拓けていく。自分の手腕で街が発展するというわけで,感慨もひとしおだ。手っ取り早く収益を上げる手段として,環状線の構築がある。いくつかの駅をぐるりと線路でつなぎ,複数の列車を運用すれば,安定して利益を得られるのだ。
どんな列車を走らせるかは,プレイヤーの好みと想像力次第。全国の新幹線やローカル線,線路を検査する黄色い新幹線「ドクターイエロー」,そして「デゴイチ」や「シゴナナ」といった蒸気機関車まで,さまざまな車両が用意されている。
効率のみを考えるのであれば,現実で使われているのと近いものを選ぶことになるはずだが,敢えて趣味によった車両を走らせるのも面白い。また,これらの車両を自由に組み合わせることで,夢の編成もできる。想像次第でさまざまな遊び方ができるだろう。
地方の駅と都心が結ばれて発展すること,専用線を走る貨物列車,環状線が生み出す繁栄。いずれも我々が現実で見たことのある光景であり,作品世界のリアルさを体感すると同時に,自分が作った街への思い入れも深まる。慣れていないうちは線路を敷設しなおしたり,貨物列車で通勤列車を塞いでしまったりと,いろいろなポカをやってしまうが,そうしたステップの1つ1つが思い出になっていくのだ。
本作の面白さは経営だけではない。列車や建物を組み合わせ,理想の街や実在する都市を再現した箱庭を作るという楽しみ方もできる。「マップコンストラクションモード」だと,資金の心配をすることなく,いくらでも建物を建てたり地形を変更したりと,思う存分箱庭作りに専念可能だ。
ここでありがたいのが“マウス対応”である。本作の場合,USB接続のマウスであればそのまま使用できるようで,筆者の場合だとPCで使っていたものをPS4に接続すれば,そのまま使用できた。
マップコンストラクションモードに限らず,通常のプレイでも操作性が向上するので,余っているマウスがある人はぜひ試してみてほしい。地形の自動生成もあり,こだわり始めるとどこまでも奥深い。PS4のSHARE機能を使い,おらが街自慢の動画を作って共有するのも面白いだろう。
街を観賞し,ジオラマとしても楽しむ
本作では街を観賞する機能も充実している。走っている列車をカメラで追尾するだけでなく,自分の手で運転することも可能だ。加えて,自動車や船舶を用意し,街の中を自由に見て回れる。自分で発展させた区画を回るのは格別だ。
また,空を飛んでいるように移動できる「フライトモード」は,今回DUALSHOCK4のモーションセンサーに対応しており,コントローラを動かして旋回できる。経営やマップ作成に熱中した後の息抜きに丁度いいだろう。
とくに面白いのが「ジオラマモード」だ。自分の作った街が鉄道模型のジオラマになり,Z,N,HO,Oゲージという異なる縮尺で楽しめる。また,10台までの列車を持ち込んで走らせることが可能だ。机の上にジオラマ化した街が並ぶ様は,まさに鉄道模型のようだ。
ただし,本作のマップは最大で10km×10kmとなるため,街を丸々ジオラマにすることはできない。そのため,ジオラマとして見栄えがいいように,街を切り出すことになるわけだが,ここではセンスも求められる。
切り出すといっても特殊な操作は必要なく,カメラを操作するのと同じようにアナログスティックを動かして,切り出す場所を決めるだけだ。風景写真を撮影するときに,どの要素をファインダーに含めようか……とあちこちカメラを動かしつつ思案する感じに近い。いろいろと悩むのも楽しいし,ジオラマとして収まりのいい区画を予め作っておくのもいいだろう。
ジオラマはバーチャルな部屋の中に設置されており,鉄道模型を眺めるように,角度を変えたり,カメラを近づけたりしてじっくり楽しむことができる。文章にすると,前述の運転機能と同じように思えてしまうかも知れないが,実際に車や電車を操縦し,そこに住む人間の視点で街を見るのと,模型としての街を眺めるのとでは異なる趣があり,どちらも男の子のロマンを刺激してくれる。
とくに,縮尺1/45のOゲージともなれば,部屋を丸々占領する位の大きさ。現実でもなかなか実現できない夢の巨大模型をゲームで体験できるというわけだ。ジオラマモードはPlayStation VRにも対応しており,文字通りの仮想ジオラマとして眺めることができるので,持っている人は試してみるといいだろう。
鉄道会社の経営や街作りといった,ゲーム的な遊び。そして,自由に地形や建物を配置しての箱庭作り。A列車で行こうExp.は,男の子のロマンが詰まった作品と言えるのではないだろうか。シリーズのファンはともかく,初めて本作に触れる人だと,序盤からやることの多さに面食らうこともあるかも知れないが,動画ガイドと首っ引きでゆっくりと覚えていくといいだろう。
こうしたゲームだと,凄いエディットマップを作る達人的なプレイが注目されがちだが,自分で試行錯誤して作りあげた街であれば,どんなに見た目が不格好でも思い入れが沸いてくるはず。年末年始は,ゆっくりと理想の街作りに励むのも楽しいのではないだろうか。
「A列車で行こうExp.」公式サイト
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A列車で行こうExp.
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