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印刷2024/10/01 12:00

インタビュー

[インタビュー]プレイヤーに何か悪いことを言われても,もう大丈夫。「大きな家族の中での出来事」として受け止められるようになりました―――5周年を迎えた「Sky 星を紡ぐ子どもたち」は,まだまだ進化していく

 2024年7月13日と14日の2日間,新宿住友ビルのイベントスペース「三角広場」で,「Sky 星を紡ぐ子どもたち」iOS / Android / Nintendo Switch / PS5 / PS4 / PC)の5周年を記念したイベントが開催された。
 このわずか2日間のリアルイベントには,全国から“星の子”達が集まっていろいろな交流を楽しんでいたが,ゲームの最新情報のみならず今後の予定なども公開され,プレイヤーは皆大満足。そんな2日間のイベントで,バタバタと忙しいJenova Chen(ジェノバ・チェン)氏を捕まえて,わずかながら時間をもらうことができた。

 筆者の都合で掲載がたいそう遅れてしまったが,いつもの“Jenova節”も健在で,イベントで発表されていないことについても触れられているので,星の子達はぜひ一読してもらいたい。Skyはもちろんだが,聞けば聞くほど「新作」も楽しみになってくる。
 なるほど,Skyのローンチからすでに5年が経過しているわけで,新作がそろそろ形を成してきてもまったく違和感のないタイミングだ。発表も思ったより近そうなので,Skyファンは皆,心して待とう。

thatgamecompany President & Creative Director Jenova Chen氏
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4Gamer:
 とてもとても,お久しぶりです。2年ぶり……ですよね。

Chen氏:
 いや本当にお久しぶりです! お元気そうで何よりです。私も元気ですが,最近白髪が増えてきまして……(笑)。

4Gamer:
 いやいや,まだ頑張ってもらわないと。しかし今回のこれもだいぶ大がかりなイベントですけど,つい先日は京都で公演もしてましたよね。

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 thatgamecompanyは7月13日と14日の2日間,イベント「SkyFest 2024」を,東京・新宿住友ビル三角広場で開催した。本イベントは,「Sky 星を紡ぐ子どもたち」が2024年に5周年を迎えることを記念して企画されたもの。この記事では,本作の最新情報が公開された基調講演を中心に,会場の模様をお伝えする。

[2024/07/19 16:06]
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[2024/07/03 11:40]

Chen氏:
 そうですね。京都精華大学で講演をしてました。ちょっと寄り道して,任天堂さんにも行きましたよ!

4Gamer:
 お,どんな印象でした?

Chen氏:
 なんて言うんでしょう……未来的ですよね。SFっぽいという意味ではなくて,我々のずっとずっと先を行っているような。でも,そこで働くプレッシャーは確かに感じました。

4Gamer:
 そういうタイプの感想は初めて聞きました。
 しかし京都に限らず最近イベント続きですよね。先月は,成都でイベントしてましたし。

中国・成都でのイベントの様子
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※「光・遇(Skyの中国語名)」5周年フェス(中国語です)


Chen氏:
 ああ,そうです! 中国でイベントをしてました。いやでも,そんな情報は日本でリリースしてないと思うんですけど,どこで聞いたんですか?

4Gamer:
 中国メディアの記事で(笑)。
 それで,その記事で読んだんですけど,1日の入場者数が15万人って書いてあったけど……本当ですか? 機械翻訳が間違えたかなと思って何度かチェックしたんですけど,やっぱり15万人でした。

Chen氏:
 合ってます。初日が15万人で,2日めが14万人でした。

4Gamer:
 すごい数字……。
 ちょっと調べたんですけど,成都の人口は大体1600万人くらいで,東京都全体よりちょっと大きいんですね。何も考えずに数字だけの話にするなら,成都の人口の1%がSkyのイベントに来てるわけで,東京換算でも1日で14万人くらいが来たイベントだというわけです。

Chen氏:
 そうなりますね。大体,成都市は東京都と同じくらいの規模感ですし。

4Gamer:
 いつもながら中国の規模感には驚かされるんですが,もしかしてJenovaは,その1日15万人が来たイベントで,サイン会とかしてたんですか? 写真がありましたけど。

Chen氏:
 ええもう4時間くらいずっとサインです(笑)。

4Gamer:
 腱鞘炎になりそう……。しかしそれだけの人数が集まるイベントだと,会場の運営が本当に大変そうです。

Chen氏:
 確かにそうですね。でも数字以上に大きな意味があるイベントだと思っていますし,今後も同様のイベントは可能な限り続けていきたいとも思っています。プレイヤーの皆さんとの直接的な交流は,私たちにとってもとても大きな刺激になりますから。


この5年間で,「愛を持ち続けることの大切さ」を学びました


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4Gamer:
 今日はイベントが終わった直後で次もあるということでお時間もあまりないので,すぐ質問に入っちゃいますね。
 TGC(thatgamecompany)といえば運営に定評がある会社だと思うんですが,ゲームの開発側/運営側とプレイヤーとの関係について,Skyのローンチから5年経った今では,どのような考えを持ってますか?

Chen氏:
 あなたには言うまでもないことですが,プレイヤーとの関係は,私たちにとって非常に重要です。ユーザーさんとのインタラクションについては,5年前から真剣に考えていたことですし。

4Gamer:
 5年前ということは,コロナのあたりですね。

Chen氏:
 ええ。私たちは小さな独立系デベロッパーとして始まって,リアルのコンベンションに参加することをとても大切にしてきました。プレイヤーと直接会って話をする機会を,常に求めていたわけです。

4Gamer:
 そのオフラインイベントの重視の姿勢が,とてもTGCっぽいです。あなた自身は,自分のことをシャイだと言っているようですけど(笑)。

Chen氏:
 事実ですから(笑)。でも,そうこうしているうちにコロナ禍のような難しい時期が始まりました。そういう時でも,私たちはプレイヤーとの繋がりを保つ努力をしました。オンラインイベントやファンミーティングなどを通じて,ですけど。

4Gamer:
 そのときのプレイヤーの反応はどうでした?

Chen氏:
 プレイヤーのみなさんは本当に熱心で,私たちの努力に正面から応えてくれました。チームのメンバーが,プレイヤーとサインをしたり,おしゃべりをしたりする中で,感動のあまり涙を流すこともありました。

4Gamer:
 オンラインゲームであっても……いやオンラインゲームだからこそ,かな。プレイヤーとの直接的な交流が,開発チームにとっても大きな意味を持つということですね。

Chen氏:
 その通りです。プレイヤーと直接会って感情を共有することで,私たちも“燃えてくる”んです。Skyというゲームは,プレイヤーに感情的な魔法をかけるゲームだと常々言っているのですが,それは開発者である私たちにも言えることなんです。

4Gamer:
 なるほど,自分達にも効力のある魔法なんですね。
 Skyのローンチから5年間,本当におつかれさまです。そしておめでとうございます。私自身は今ではコアプレイヤーというわけではないのですが,5年前の一番最初から,あなたから話を聞いたり状況を見たり,自分でもプレイしてみたりしているので,なんだか自分自身のアニバーサリーであるかのように嬉しいです。

Chen氏:
 ありがとうございます。あなたみたいな人もそうですが,まずプレイヤーの皆さん,そして今まで我々とやり取りをしてくれた皆さんや,私たちと一緒に歴史を共有してくれている皆さんに,本当に感謝しています。もう大家族のメンバーのような感覚です。いままで一緒に,長旅をしてくれて,本当にありがとうございます。

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4Gamer:
 この5年間で,何かあなたの中で大きな変化はありましたか? 前回は「政治を理解するようになった」と言ってました(笑)。

Chen氏:
 ははは,そうでしたね。
 あのときもちょっと言ったかもしれませんが,僕の中では割と大きな変化がありました。以前は,プレイヤーが何か悪いことを言ってくると,すごく落ち込んでたんですが,今では「大きな家族の中での出来事」として受け止められるようになりました。言い換えると「愛を持ち続けることの大切さ」を学んだ……とも言えます。

4Gamer:
 もはや家族愛の領域?

Chen氏:
 ええ。どんなことを言われても,家族への愛は揺るがないでしょう? たまに罵られたからといって,愛は持ち続けられます。自分にだって,その人にだって,素晴らしいところがあるからです。以前は,他人が何か悪いことを僕に言ってきたら,それを正面から捉えて「悪いこと」について考えてしまっていました。でも今は違います。

4Gamer:
 一番最初にお会いしたときから「いい人だなー」と思ってたんですが,“いい人度”がますます上がって,さらに強くなってきてませんか。

Chen氏:
 ありがとうございます,そうありたいです(笑)。
 私たちは,プレイヤーさんも含めて,一つの大きなファミリーとして成長していると感じています。これからもこの関係を大切にしていきたいですね。

4Gamer:
 その「ファミリー」の中で一般のプレイヤーさんが占める数字はどれくらいなんですか?

Chen氏:
 いま……ダウンロード数で言うなら大体2.7億くらいでしょうか。いや口にすると,すごく大きい家族ですね(笑)。

4Gamer:
 5年もやっていると,その2.7億のユーザー層に何らかの変化がありますよね。

Chen氏:
 御多分に漏れず,コロナ期間にはユーザーさんがとても増えたんですけど,そのときに始めた若い世代の人達が,オトナになって仕事を始めるタイミングなんですね。ですので昔のように遊ぶというわけにもいかず,やはり年齢層によってバラつきが出始めています。

4Gamer:
 あぁ……それはメディアも同じですね。基本的に,読者の皆さんと一緒に歳を取ってしまうので,若返る努力をしないと厳しい未来が待っているという。

Chen氏:
 そう,同じですね。ですので最近は,若い世代の皆さんにどうやってSkyを見つけてもらって,そして遊んでもらうかについて,よく考えています。

4Gamer:
 しかし先ほど「Skyというゲームは,プレイヤーに感情的な魔法をかけるゲーム」だという言葉がありましたが,となると年齢層の変化と共に“魔法のかけ方”に少しずつ違いが出てきたりはしないんですか?

Chen氏:
 うん,そうですね。いつもながらとてもいい指摘です!
 だから僕は,新しいエモーショナルな経験をプレイヤーさんと一緒に作っていくために,毎年“新しい何か”をしているのです。

4Gamer:
 その“新しい何か”について,最近のもので何かアピールしたいことってありますか。

Chen氏:
 うーん,そうですね……やはりゲーム内での「ライブ」ですかね。

4Gamer:
 音楽的な意味の?

Chen氏:
 いえ,言葉どおりの意味です。「生の」というか。
 例えばリアルイベントでミュージシャンが演奏していたら,ゲーム内でも同じように演奏しています。今日は僕は日本にいて,日本のイベントでキーノートスピーチをしましたが,ゲーム内での僕のアバターもリアルタイムでキーノートスピーチをしました。

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4Gamer:
 なるほど,そっちでしたか。

Chen氏:
 僕らはそれ用のサーバーを開発して,世界中どこでも,同じタイミングで,同じものが見られるようにしたんです。

4Gamer:
 それは……聞くだけだとちょっと地味ですが,プレイヤーならすごく嬉しいやつです。
 はるか昔,海外のMMORPGを遊んでいたころ,情報のタイムラグなどが結構あって「アメリカのプレイヤーと日本のプレイヤーは同じ土俵に立てない」ということを意識することが多かったんですが,なるほどSkyはそういうものから解放されているんですね。

Chen氏:
 そうなります,というか,そうしたいと思っています。


Skyの中でやり取りされているメッセージの,一人あたりの平均数は1日45通


4Gamer:
 あと昨日のリリースを見たときに思い出したんですけど,2年前にコラボ相手として僕がお勧めしたのが「ムーミン」でしたよね! あなたにだけは自慢してもいいですか(笑)。

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 thatgamecompanyは,運営中の「Sky 星を紡ぐ子どもたち」「ムーミン」とのコラボを公式Xアカウントで発表した。詳細については明らかになっていないが,コラボの開始は2024年秋を予定しており,Skyの美しい空の世界にムーミン一家など,おなじみのキャラクターが登場するようだ。

[2024/07/14 11:58]

Chen氏:
 ええ,そうでした。
 先方はとてもこだわりのある方達で,そんな人達を説得するのはとても難しいチャレンジだったんですが,そのときにいつも,あのときのことを思い出してました。勇気をありがとうございます(笑)。

4Gamer:
 いやあ,素直に嬉しかったですね。
 もちろんムーミンそのものが素晴らしいんですが,中でもニンニというちょっとマイナーなキャラクターが,キーになっているんですねこれ。ニンニというキャラクターの背景を考えると,すごくSkyっぽいなと思って,これもすごく嬉しくなりました

短編集「ムーミン谷の仲間たち」に収録した「目に見えない子」に登場するニンニ
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Chen氏:
 ニンニを選んだのは……なぜでしょうね。本当にSkyのような選択なので,もしかして私達が選んだのではなくてSkyが選んだのかもしれません。
 オリジナルのニンニは,おっしゃる通りややマイナーなキャラクターですが,それがSkyのキャラクターとして生を受けて,Skyのキャラクターになるのです。

4Gamer:
 キーキャラクターを選ぶのは難しかったですよねきっと。あれだけキャラがいる作品ですし,そもそもコラボイベントなので,プレイヤーが触れる時間も限られているし。

Chen氏:
 とても難しい選択でした。ムーミンにはたくさんの本もありますし,日本で一躍有名になったアニメーションも,たくさんあります。1シーズンでそれらのコンテンツを使うことは,まさに不可能です。
 そして何より難しいのは,日本ではムーミンがとても有名なので,みなそれぞれ「見たいキャラクター」がいるんです。

4Gamer:
 あぁ,それはそうかもしれません。僕だったら「めそめそ」とか「スティンキー」が見たかったです。でもこれ,アメリカではかなりマイナーなIPなのでは。

Chen氏:
 そう! そうなんです。アメリカだとほとんどの人がムーミンを知らなかったりするので,「これはカバではありませんよ」という基本の説明から始めないとなりません。
 でも前提知識がどうであれ,プレイヤーのみなさんが5〜6個のクエストだけをプレイするだけで,そこに愛着をもってもらうのは難しい問題なんですけどね。

4Gamer:
 なのでストーリーにした?

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Chen氏:
 ええ。ストーリーの中でニンニを好きなように動かして,誰かの感情を動かせたらいいなと思っています。ニンニはすごく傷ついた人で,それを救っていくのがメインストーリーです。そしてそれこそが,Skyのエッセンスなのです。

4Gamer:
 その場合の“エッセンス”とはどういうことを指してます?

Chen氏:
 わざわざ言わずともみんな知っていますが,ゲームはインタラクティブメディアです。観衆は,そこで起こっていることを見ているのではありません。椅子に座ってゆっくり眺めるのではなくて,自分が参加して,自分が動いて,自分が進めるのです。その中で,何かしらの感情が動けばいいな,とそういう風に思っています。

4Gamer:
 とくにSkyは優しさを思い出させてくれる作品なので,もしかしたら本当にこういうことの積み重ねが,世界に安寧をもたらすのかもしれませんよ。

Chen氏:
 今朝のニュースを見ましたが,世界は平和な方向へは行きませんでした。この戦争の時代は,このあと何が起こるんでしょうか……。

※イスラエル・パレスチナ 中東情勢(7月13日,NHK)


4Gamer:
 Skyは……今や世界をつなぐメタバースのようになってるじゃないですか。少なくともSkyなら,平和な思いやりにあふれた世界を作れるのでは。

Chen氏:
 それは……ちょっと考えますね。
 これは初めて公共の場で口にすると思うんですが,Skyの中でやり取りされているメッセージの一人あたりの平均数は,1日45通なんです。

4Gamer:
 45! 結構多いですね。僕プライベートで1日45通ものメッセージは打たないですよたぶん。ましてやこれ,ゲーム内の話ですよね。

Chen氏:
 はい。ゲームにログインしたあと,みんな45通分,誰かと話しているんです。ゲームを遊ぶのではなくて,45個のメッセージを送って,誰かと話をしてるんです。もはやメッセージソフトウェアともいえるかもしれません。

4Gamer:
 太古の昔から,オンライン上での「会話」は独特のものですよね。リアルとはちょっと違う。しかしSkyはその価値を提供しているわけですね。

Chen氏:
 そこなんです。私たちのゲームの価値は,プレイヤーに,安心してオープンに話せるスペースを提供できているということです。そしてゲームの中で人々が心を開くとき,人々は必ず感情を伴っています。

4Gamer:
 そのとおりです。

Chen氏:
 そして,オープンになったところで話をしていれば関係性も深まっていきます。まぁそれはSkyだけではないかもしれませんが,ゲームの中で,人々はより良い関係を作ることができると思います。

4Gamer:
 そんな「人々がより良い関係を作れるゲーム」を作っているJenovaの,新作開発状況もちょっと気になるんですが。

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Chen氏:
 前回ちょっと言いましたっけ? 数年前から,少人数のグループで新しいアイデアに取り組んでいます。ただ,Skyの様々な,定例シーズン業務もあるので,なかなかそちらばかりに集中できない状況ですが(笑)。

4Gamer:
 運営型ゲームを進めながら新作を開発するのは,確かにすごく大変そうです。

Chen氏:
 そうですね。でも,去年アフリカに……これ言いましたっけ?

4Gamer:
 あ,人づてに聞いてます(笑)。

Chen氏:
 あれ,そんなことをあなたに言いふらしてるのは誰だろう(笑)。アフリカに長期旅行する機会があって,そこですごくたくさんのインスピレーションを得ました。それを新しいゲームに活かしていきたいと考えています。

4Gamer:
 アフリカとはまた,とても興味深いです。どんな要素が入りそうなんですか? 部族的な何かとか,シャーマニズム的な何かとか,それとも自然に溢れた何かとか……。

Chen氏:
 さすがに詳細はまだお話しできません(笑)。話せる時期になったら真っ先にお知らせすることを約束します。

4Gamer:
 すごく楽しみにしています。
 でも1つだけ。以前ちょっと話してくれたように,かなり違うタイプのゲームになるんですか?

Chen氏:
 完全に違うというわけではないですよ。似たような要素もあります。
 例えば,サーバー技術などは活かされると思います。Skyで学んだ,何百万人もの人が一緒に集まっても平和な方向に管理していく方法なども,新作に活かされるでしょう。

4Gamer:
 それで……その新作の発表はいつ頃になりそうですか?

Chen氏:
 現時点では何も確実なことは言えませんが,半年から1年くらいの間で何かしらお話できるようになるかもしれません。

4Gamer:
 思ったより早い! とても楽しみです。

Chen氏:
 ありがとうございます。私たちも早く皆さんにお見せできるのを楽しみにしています。
 ただ,ほかの開発者達の新作も気になっているんです。例えば……上田さんの新作とか。

4Gamer:
 あのときお二人で話したように,「作品で語れば」いいじゃないですか。

Chen氏:
 まぁ……お互いやっぱり,ゲームがある程度形になるまで話さないのがいいですよね。すべてはゲーム自身に語ってもらいましょう(笑)。

上田氏:
 そうですね。Chenさんとは,作ったものでコミュニケーションができるはずですので楽しみにしています。

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[2019/12/28 00:00]

Chen氏:
 そうですね(笑)。ワクワクする半面,少し怖さも感じます。もし私たちの新作と重なる要素があったら……とか。でもまぁ,そういった緊張感も開発の原動力になっているんですけど。


ゲーム業界は常に新しいことにチャレンジしているのに,それが業界外にあまり伝わっていない


4Gamer:
 ところで,これは何の悪意もなく言うのですが,Skyはこんなに多くのプレイヤーがいるのに,なんで世間の認知度がイマイチ高くないように感じてしまうんでしょうか。

Chen氏:
 それは……とても面白い質問ですね。実は,私たちも同じことを考えています。
 例えば中国では,SkyはNetEaseを通じてパブリッシュされているので,多くの人が“NetEaseのゲーム”として知っています。私の名前を知っている人はいても,例えば会社名はあまり知られてないですね。

4Gamer:
 2.7億ダウンロードもあれば,身の周りに遊んでる人も多いでしょうに。

Chen氏:
 そう,とても多くの人が,友人や家族がこのゲームをプレイしていることを知っています。でも,どれくらい遊ばれてるかは知らないです。

4Gamer:
 Skyは,大規模なCMとかもやりそうにないですしね。

Chen氏:
 うん,そうですね。私たちは,テレビCMなどの大規模な宣伝を積極的にしたりはしません。なので多くの人は,周りの人がプレイしているのを見て知るだけなんです。

4Gamer:
 それでもこれだけ大きな成功を収めているというのが,また素晴らしいところなんですが。

Chen氏:
 まあでもこれは,ゲーム業界全体でも似たような状況になってますよね。ゲーム業界外の人は,ゲーマーがゲームをストリーミングしていることすら知らないことがあります。

4Gamer:
 ゲーム業界の数字規模を考えると,ちょっと意外ですよね。

Chen氏:
 ですよね。例えば,私たちの中国でのゲームイベントは,先ほど言ったように2日で30万人を集めましたが,一方で東京ゲームショウは4日間で25万人ほどです。
 どちらが強いとか弱いとか,いいとか悪いとかの話ではなく,この差はとても大きく感じます。

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4Gamer:
 この“正しい認知度の低さ”は,業界にとって今も昔も課題だと思います。

Chen氏:
 ゲーム業界は常に新しいことにチャレンジしているのに,それが業界外にあまり伝わっていないんですよね。

4Gamer:
 その課題を克服するためには,何が必要だと思います?

Chen氏:
 まずは,私たちの存在を知ってもらうことから始める必要がありますね。
 例えばイベントを開催するときも,最初は周りの人に信じてもらえないことがあります。でも,実際に大勢の人が集まると,認識が一気に変わるんです。

4Gamer:
 結局は地道な努力が必要である,と。

Chen氏:
 そうですね。また,ゲーム業界の技術や創造性をもっと広く伝えていく必要もあります。私たちのゲームで使っているサーバー技術や配信技術なども,実はかなり高度なものなんです。これらをもっと多くの人に伝えることができれば,巡り巡って業界の認知度も上がるのではないかと思います。

4Gamer:
 確かに,ゲーム以外の分野でも応用できる技術がたくさんありそうです。昨今の最新のゲームエンジンなんかもそうですが,あれをゲームだけに使うのはもったいないと思うんですよね……。何かしら社会貢献に寄与できると思います。

Chen氏:
 はい,まったくその通りです。ゲーム業界の可能性は無限大だと思います。我々も,これからも新しい挑戦を続けていきたいですね。

4Gamer:
 ゲーム業界は,オンラインサービスを取り込んでからとても大きく変化しましたし,ここから先もテクノロジーとの融合で,どんどん進化していくと思います。

Chen氏:
 そのオンラインゲームサービスも,この数年で大きく変わりましたよね。特にCOVID-19のパンデミック以降,その変化は顕著だと思います。

4Gamer:
 どのあたりで感じました?

Chen氏:
 あの期間には,とても多くのマルチプレイヤーゲームが発展しましたよね。世間的に最も有名なのが,おそらく「Animal Crossing」(邦題:どうぶつの森)です。私たちも,あの作品からはなんらかのインスピレーションを得ていますが。

4Gamer:
 なるほど。しかし発展したということは,競争も激しくなったわけです。

Chen氏:
 競争は確かに激しくなっていますけど,それと同時に新しい可能性も広がってますよ。

4Gamer:
 お。いま言える「新しい可能性」については何かありますか?

Chen氏:
 例えば私たちは現在,ゲーム内でのアニメーション制作や映画上映のような機能を開発しています。これは従来のゲームの概念を超えたものだといえるでしょう。

4Gamer:
 「制作」……? 配信も含めて,いろんな意味で技術的な課題も多そうです。

Chen氏:
 そうですね,技術的には大変チャレンジングです。例えば何千人ものプレイヤーが同時に映画を観るような機能を実現するには,かなり高度なサーバー技術が必要になります。

4Gamer:
 さっきの話ではないですが,そういった技術はゲーム以外の分野にも応用できそうですよねえ。

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Chen氏:
 ええ。私たちが開発したCDNサーバーは,世界中にビデオ,字幕,音声,イメージを配信するのに使用できます。おっしゃるとおり単にゲームのためだけではなく,様々な分野で活用できる技術だと思います。

4Gamer:
 すごい……。でも,そういった新しい試みは,IT業界あるあるなんですが,概念や社会通念,ルールなどが追いつかないがゆえに制約もありそうですけど(笑)。

Chen氏:
 まさに! それがとても重要で,例えば我々のような仕事だと(ゲームの)プラットフォームの制約があります。PlayStationのようなプラットフォームでは,コンテンツに関する制限があることがありますが,私たちは常にそういった制約との戦いになります。

4Gamer:
 あぁプラットフォーマーの制約との戦いはなかなか大変そうです……。なるほど,そういった制約を乗り越えるのも,開発者の腕の見せどころですね。

Chen氏:
 その通り。制約があるからこそ,新しいアイデアや技術も生まれます。私たちは常に「どうすればより良い体験をプレイヤーに提供できるか」だけを考えているというわけです。

4Gamer:
 ではそれを踏まえて,これからのオンラインゲームサービスはどのように変化していくと思います?

Chen氏:
 これは私個人の考えですが,ゲームはますますソーシャルな場になっていくと思っています。単なる娯楽ではなく,人々が出会い,交流し,新しい経験を共有する場所になっていくでしょう。Skyもそういった方向性を目指しています。

4Gamer:
 それは今風に言うと「メタバース」というやつでは。

Chen氏:
 本当ですね(笑)。


Skyのソーシャルシステムを,完全に刷新することを計画しています


4Gamer:
 では「サービス」ではなくて「開発」については,どんな観点を持ってますか? 将来に対して,ですが。

Chen氏:
 そうですね……私たちは常に成長し,新しい経験を創造することを目指しています。特に,プレイヤーとの関係性をさらに深めていくことに注力したいと考えていますし,それがやりやすい世の中になることを期待しています。

4Gamer:
 プレイヤーとの関係性を深めるというのは,具体的にはどんなことを指してます?

Chen氏:
 ゲームのソーシャルシステムを,完全に刷新することを計画しています。

4Gamer:
 それはまたドラスティックな……。

Chen氏:
 Skyを5年前にローンチした時,そのソーシャルシステムは非常にユニークだったという自負がありますが,それは5年間変わっていません。

4Gamer:
 つまり,5年間の運営で見えてきた課題がある?

Chen氏:
 その通りです。コミュニティの発展を見てきて,デザインのループホールやフローの問題点が見えてきました。これらを改善し,いわば「Relationship 2.0」をゲームに導入したいと考えています。

4Gamer:
 先ほど会場で発表してたやつですね。あえて日本語にすると「関係性2.0」みたいな感じですが,とても興味深いです。ほかに新しい取り組みはありますか?

Chen氏:
 あ,同じく会場で言いましたが,新しいアニメーションシリーズの開発も進めてますよ。2025年の発表を目指していますが,これはゲーム内で視聴できるものになる予定です。

4Gamer:
 それさっきもちょっと触れてましたが,ゲーム内でアニメを観られる?

Chen氏:
 ええ,技術的にはかなりチャレンジングなプロジェクトです。ゲーム内で大きな画面で何かを見せるというのは,これまであまり開発されてこなかった分野なので。

4Gamer:
 いつもながら,ほかのゲーム会社とは違うアプローチを取ってますね。

画像集 No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]プレイヤーに何か悪いことを言われても,もう大丈夫。「大きな家族の中での出来事」として受け止められるようになりました―――5周年を迎えた「Sky 星を紡ぐ子どもたち」は,まだまだ進化していく
Chen氏:
 私たちは,常に新しい可能性を探っています。例えば,ゲーム内で映画を観て,その映画の世界に入り込めるような体験を作りたいと考えていますし。

4Gamer:
 それはまた……いろんなことに応用できそうです。
 あ,次のサイン会の時間のようです。頑張ってください。お時間ありがとうございました!

Chen氏:
 次会ったときは新作の話をしましょう!(笑)

――――2024年7月14日
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