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「UNDERTALE」の楽曲が演奏された「MUSICエンジン 第五回演奏会」をレポート。代表の河合晃太氏へゲーム音楽に対するこだわりも聞いてきた
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印刷2018/05/24 12:24

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「UNDERTALE」の楽曲が演奏された「MUSICエンジン 第五回演奏会」をレポート。代表の河合晃太氏へゲーム音楽に対するこだわりも聞いてきた

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「UNDERTALE」の楽曲が演奏された「MUSICエンジン 第五回演奏会」をレポート。代表の河合晃太氏へゲーム音楽に対するこだわりも聞いてきた
 2018年5月19日,東京・新宿の東京オペラシティ・コンサートホールにて,「MUSICエンジン 第五回演奏会」が開催された。

 MUSICエンジンは,“大好きなゲームタイトルの音楽をつきつめていく演奏団体”としてこれまで,「エストポリス伝記II」や「MOTHER」「ルドラの秘宝」「ブレスオブファイア」といった数々の演奏会を行ってきた団体だ。

 今回の演奏会で取り上げられたのは,国内外で高い人気を誇るインディーズゲーム「UNDERTALE」PC / PS4 / Switch / PS Vita)の楽曲だ。※Nintendo Switch版は2018年内に発売予定。

 UNDERTALEの楽曲は,2017年9月に開催された第三回演奏会でも演奏されているが,今回は編成がフルオーケストラとなり,新たに演奏楽曲を追加しパワーアップを遂げていた。
 本稿ではそんな演奏会の夜公演のレポートと,直前に実施したMUSICエンジン代表の河合晃太氏へのインタビューをお届けする。
 なお,公演の性質上ゲーム本編の内容に触れる部分があるので,ゲームをプレイしてから読むことをお勧めする

MUSICエンジン公式サイト

「UNDERTALE」公式サイト


会場には物販コーナーも設けられていた。ご覧通り大盛況で,終始行列が絶えることがなかった
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PS4/PS Vita版で登場した「イヌじんじゃ」も会場に造営されていた
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おさい銭を入れるファンの姿も
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いきなりクライマックス? 会場が驚いたプレコンサート


 今回の公演では,本公演の前にプレコンサートが行われることが予告されていたが,具体的な内容は当日まで伏せられていた。
 何が演奏されるのかと楽しみにして待機していると,会場へ「公演にあたっての注意事項」がアナウンスされた。内容は主に「場内での飲食禁止」「許可のない撮影は禁止」といったごく普通の内容だったが,最後にこんな一言が伝えられる。

 ――当団体は「UNDERTALE」のすべてのルートをプレイ済みです。その点をご理解いただいたうえ,プレコンサートをお楽しみください。

 「どういうことだ……?」と考えていると,演奏者たちが入場。プレコンサートが始まり,「Battle Against a True Hero」,続けて「Power Of "NEO"」が演奏されると,会場からは「まさか……」というざわつきが。そして3曲目「Megalovania」のイントロが聞こえると驚きの声があがった。

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 UNDERTALEのプレイヤーならご存じのとおり,この3曲はゲーム内で“ある特殊なルート”を通ると聞けるもので,ゲームの流れを考えれば,コンサートのラストを飾ってもおかしくないほどの存在感を持つ曲たちなのだ。「それをまさかプレコンサートに持ってくるとは……」とファンは驚きを隠せない様子だった。筆者も驚いた。

 その後はバイオリンのソロ演奏による「Start Menu」が披露され,コンサートは終了。なんともサプライズに満ちたプレコンサートだった。

実は夜公演の前に行ったインタビューのとき,代表の河合晃太氏は「ぜひ夜公演はプレコンサートから聞いてください」「あんなことして,怒られるんじゃないかな……」と漏らしていた。なるほどそういうことでしたか
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UNDERTALEの物語を追体験する本公演


 プレコンサートが終わったあと,少しの間を置いていよいよ本公演がスタートした。
 演奏者たちが入場すると,その後,MUSICエンジン代表の河合晃太氏が登場。ステージの中央にUNDERTALEのマスコットともいえる「イヌ」のぬいぐるみを置くと,会場が笑いに包まれた。

 MUSICエンジンの公演は,ゲームの物語を追体験するように楽曲が演奏されるのが特徴で,今回の演奏会でもその手法が取られていた。本編のストーリーがM1〜M12に分られ,物語の流れを汲みながら,それぞれのシーンで印象的な楽曲がメドレー形式で奏でられた。

公演は,UNDERTALEの始まりを告げるオープニング「Once Upon a Time」で幕を開けた
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 MUSICエンジンの演奏会は,単なるオーケストラアレンジにとどまらず,プレイヤーなら誰しも記憶している印象的な音が挿入されているのも特徴だ。例えば,M2で流れたサンズのテーマ「sans.」の冒頭では,ブーブークッションの音が再現されていたり,楽曲によってはギター演奏が挿入されていたり。ふと劇中の名シーンが呼び起こさせるようなニクい演出だ。

 また,終始楽しそうに演奏していた姿も印象的だった。特に後半に披露された「Death by Glamour」では,皆が激しく体を揺らしながら曲を奏でていた。「UNDERTALEが好きだ!」という一面が見えたようでなんだか嬉しい気持ちになれる。

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 今回の公演では,第三回公演では演奏されなかった「Here We Are」「Amalgam」が初めて演奏されていた。本編でも重要な場面で流れるこの2曲が追加されたことで,より公演のストーリー性に厚みが増したように思える。

 アンコールで演奏された最後の曲「Before The Story」では,ストリングスとフルートを残し,他の奏者が退席してから演奏が始まった。さらに曲が進むにつれて徐々に奏者がはけていき,残ったピアノのソロ演奏が終わるとピアノもそのまま退席。心の中にじわりと余韻が残るなんとも素敵な締めで,本公演は幕を閉じた。

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 公演はUNDERTALEの物語に沿って楽曲が展開されたため,筆者はゲームのシーンを思い浮かべながら音楽に浸ることができた。また,ファンの「ゲームをプレイした体験」と音楽をうまくリンクさせる聞かせ方も見事だ。少し気持ちは早いかもしれないが,再再演にも大いに期待したいところだ。

MUSICエンジン 第五回演奏会 プログラム

(作曲:トビー・フォックス 編曲:河合晃太 オーケストレーション:中村康隆(夜長オーケストラ)

◆本公演(昼夜共通)
曲名:
  • M1 Once Upon a Time〜Ruins〜Anticipation〜Enemy Approaching(むかしむかし…〜いせき〜緊迫のとき〜ENEMY APPROACHING!)

  • M2 Home〜Determination〜Heartache〜Fallen Down(ホーム〜ケツイ〜心の痛み〜おちてきた子)

  • M3 sans.〜Nyeh Heh Heh!〜Snowy〜Snowdin Town〜Shop〜Bonetrousle(サンズ〜ニャハハ!〜雪景色〜スノーフルのまち〜いらっしゃいませ〜Bonetrousle)

  • M4 Dating Start!〜Dating Tense!〜Dating Fight!〜Premonition(DATE START!〜DATE DANGER!〜DATE FIGHT!〜もしかして…DATE START!〜DATE DANGER!〜DATE FIGHT!〜もしかして…)

  • M5 Undyne〜Waterfall〜Run!〜Quiet Water〜Memory〜NGAHHH!!〜She’s Playing Piano〜Spear of Justice(アンダイン〜ウォーターフェル〜逃げろ!〜やすらぎの水辺〜思い出〜ぬあああああ!〜彼女がピアノを弾いている〜正義の槍)

  • M6 Alphys〜It’s Showtime!〜Metal Crusher〜Spider Dance〜Oh! One True Love〜Oh! Dungeon(アルフィー〜イッツ・ショータイム!〜メタル・クラッシャー〜スパイダーダンス〜ああ!運命の人よ!〜ああ!とらわれの恋人よ!)

  • M7 CORE〜Death by Glamour〜For the Fans(コア〜華麗なる死闘〜愛するファンのみんなへ)

  • M8 Undertale(UNDERTALE)

  • M9 Bergentrückung〜ASGORE〜Your Best Nightmare〜Finale〜An Ending(Bergentrückung〜アズゴア〜最高の悪夢〜フィナーレ〜ひとつのエンディング)

  • M10 Here We Are〜Amalgam(真実〜アマルガム)

  • M11 Small Shock〜Fallen Down (Reprise)〜Don’t Give Up(小さな衝撃〜おちてきた子(リプライズ)〜あきらめないで)

  • M12 Hopes and Dreams〜SAVE the World〜His Theme(夢と希望〜SAVE the World〜彼のテーマ)

  • M13 Reunited〜Respite〜Bring it in, Guys!〜Last Goodbye(再会〜自由〜全員、集合!〜これでホントにサヨナラ)

◆プレコンサート

昼公演:
  • Start Menu(スタートメニュー)
  • Your Best Friend(キミの親友)

夜公演:
  • Battle Against a True Hero(本物のヒーローとの戦い)
  • Power Of "NEO"("NEO"の力)
  • Megalovania(MEGALOVANIA)
  • Start Menu(スタートメニュー)

◆幕間

昼公演:
  • Temmie Village(手ミーむら!)

夜公演:

  • Pathetic House(みすぼらしい家)
  • Chill(まったり)

◆アンコール
昼公演:
  • Menu(Full)(スタートメニュー(Full ver.)
  • Battle Against a True Hero(本物のヒーローとの戦い)
  • Power Of "NEO"("NEO"の力)
  • Megalovania(MEGALOVANIA)
  • Start Menu(スタートメニュー)

夜公演:
  • Stronger Monsters(強敵たち)
  • Before the Story(はじまりの前)


MUSICエンジン代表の河合晃太氏へのインタビュー


 ここからは,夜公演前に行った,MUSICエンジン代表の河合晃太氏へのインタビューをお届けする。河合氏が演奏に込めたUNDERTALEへの思いや,MUSICエンジンのゲーム音楽を演奏するうえでのこだわりを聞くことができた。なおインタビューには,広報の西田奈緒子氏も同席し,話してもらっている。

MUSICエンジン代表 河合晃太氏
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4Gamer:
 本日はお忙しい中,お時間をいただきありがとうございます。
 MUSICエンジンが,UNDERTALEの楽曲を演奏されるのは,第三回演奏会,闘会議2018でのコンサートに続き今回が3度めです。これはMUSICエンジンの取り扱ったタイトルの中で最多ですが,やはりファンからの反響は大きいですか。

河合晃太氏(以下,河合氏):
 そうですね。初めてUNDERTALEの曲を演奏した第三回演奏会には,とても多くのファンの方が来てくださいました。その反響を見て「これだけのファンが来てくれるなら,もっと面白いことができる」と思ったんです。そこで演奏曲を追加し,編成をフルオーケストラにして行ったのが,今回の第五回演奏会です。

西田奈緒子氏:
 あと,第三回演奏会を録画したものを一部YouTubeにアップロードしていて,こちらも大きい反響があり,それがきっかけで闘会議2018へのお誘いをいただきました。こういった動画での盛り上がりも,今回の演奏会開催につながった要因だと思います。


4Gamer:
 MUSICエンジンは,単にゲーム音楽をオーケストラで演奏しているだけにとどまらない印象を受けます。音楽面については,どのように決めているのでしょうか。

河合氏:
 基本的に音楽面は私個人が全部決めています。今回はフルオーケストラになり,編成人数が増えているので,昨年私が作ったものをベースに,金管楽器や木管楽器が入ったものをアレンジャーの方に新しく書いてもらっています。
 UNDERTALEは原曲がとてもすばらしいので,そこから変に楽曲をいじればいじるだけイメージからどんどん遠ざかっていく印象がありました。なので,原曲の良さをなるべく崩さないようにしながら,私たちの形にして皆さんと共有できたらいいなと思って作っています。

4Gamer:
 第三回演奏会のときも,ベースを使ったり,ゲームのブーブークッション音を再現したりするなど,UNDERTALEの世界観を表現するためにさまざまな音を使っていました。

河合氏:
 ゲームの音楽には「これがなきゃこの音楽じゃないよ!」という楽器があると思うんです。変に「クラシック楽器じゃなきゃ駄目」という縛りを設けてしまうと,楽しめない部分も出てきますし,逆にオーケストラだからといって必要のない楽器を加えるのは違うのではないかと思います。
 なので,MUSICエンジンは演奏する楽曲によって,使う楽器をチョイスして編成を変えています。

4Gamer:
 今回のUNDERTALE演奏会に限らず,MUSICエンジンは,ゲームのストーリーを追体験させるような曲構成も特徴的です。

河合氏:
 そうですね。MUSICエンジンは,実際にゲームの中でプレイヤーが体験する物語に沿って演奏していくことにしています。音楽単体を見れば,もっとカッコいい曲の繋げ方はあるかもしれませんが,それをすると「物語の序盤から,突然終盤に場面がワープしてしている」という矛盾が起きてしまうことがあります。
 ゲームをプレイしている人にとっては「この曲の前には絶対にこれがないと!」という曲もあると思いますので,そういう流れを大切にしています。

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4Gamer:
 ゲームの流れというのは,実際にゲームをプレイしていないと掴めないと思います。今までの演奏会で取り扱ってきたタイトルは,河合さんもプレイしているのでしょうか。

河合氏:
 はい。むしろ私がプレイしたことのあるタイトルしか扱っていません。すごく人気だけど,私のゲーム人生でプレイしたことのないタイトルはやっていないんです。

4Gamer:
 では,もしMUSICエンジンに演奏してもらいたいタイトルがあったら,河合さんにゲームを勧めればいいんでしょうか(笑)。

河合氏:
 (笑)。
 でもUNDERTALEは,まさに知人に勧められてプレイしたらハマったタイトルなんですよ。

4Gamer:
 え,そうなんですか。

河合氏:
 はい,「あ,これはすごいぞ」と衝撃を受けましたね。
 年齢を重ねてくると興味の範囲が狭まって遊ばないゲームが増えてくると思うんですが,UNDERTALEはストーリーの序盤からどんどん引き込まれ,戦闘も音楽も魅力的で終始楽しくプレイできました。

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4Gamer:
 河合さんが好きだからこそ,色々な部分にこだわっておられるんですね。

河合氏:
 はい。好きだからこそ,「曲順をどうしようか」「楽譜をどうしようか」と一生懸命考えられますし,本当に楽しいです。
 特に今回の演奏会では,前回諸般の事情で入れられなかった「Here We Are」と「Amalgam」を演奏できたのがよかったです。UNDERTALEの中では重要な曲なのに,前回演奏できなかったのを僕自身,すごく後悔していたので……。

4Gamer:
 UNDERTALEに対する河合さん熱い気持ちが伝わってきて,私もこれからの夜公演が楽しみです!
 さて,そろそろお時間ですので,最後に今後のMUSICエンジンの活動について聞かせてください。また,UNDERTALE演奏会の再再演も期待したいところですが,こちらも可能性はありますか。

河合氏:
 MUSICエンジン自体は,今年中にあと1回演奏会を予定しています。タイトルはまだお話できないのですが,楽しみにしていただければと思います。UNDERTALEの再再演については,私としては実現したいなと……。今回の演奏会で,「もっと原曲の良さに近づけるんじゃないか」「自分たちでにできることがもっとあるんじゃないか」と今後やりたいことがまた出てきたので。まったく予定は決まっていませんが,いつか実現したいですね。

4Gamer:
 今後のMUSICエンジンの活動に期待しています! ありがとうございました。

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