インタビュー
「Death end re;Quest」開発スタッフインタビュー。3名のキーパーソンが語るコンセプト,シナリオ,キャラデザイン,そしてゲームとしての遊びとは
今回4Gamerでは,「Death end re;Quest」の開発統括を務める東風輪敬久氏と,ディレクターの佐藤洋平氏,そしてキャラクターデザインを手がけるナナメダケイ氏に,本作のコンセプトやゲームの概要などを聞いた。
「Death end re;Quest」公式サイト
ゲーム開発にとっての“鬼門”を“エンターテイメント”に
本日はよろしくお願いします。まずは「Death end re;Quest」のコンセプトや世界観を改めてご紹介ください。
佐藤洋平氏(以下,佐藤氏):
プロモーションなどで大きく掲げているとおり,本作のコンセプトは「バグ」です。ゲームの世界観やシステム,物語は,すべてバグから派生し展開しています。
4Gamer:
ただ,バグという存在はゲームにおいては鬼門ですよね。
佐藤氏:
ええ,我々ゲームの開発者にとって,バグとは避けるべきものではあります。その一方で,一人のプレイヤーとしてゲームをプレイしているとき,バグを発見すると意外に楽しかったりするのもまた事実です。マニアックなプレイをしていて,本来は入れないところに入る方法を見つけてしまって「おおっ!」と思ったり。それをうまく落とし込んでいけば,エンターテイメントの一つとして成り立つのではないか,という思いがありました。
東風輪敬久氏(以下,東風輪氏):
プログラムのバグと,“bug”という言葉の本来の意味である“虫”を掛けている部分もあります。今回,ヒロインキャラのデザインは虫がモチーフになっているのですが,ナナメダが可愛らしく仕上げてくれたので,「これはうまくいくだろう」とさらに突き詰めていったんです。
4Gamer:
最初から,ゲームのバグをコンセプトやテーマとして決めていたのでしょうか。
東風輪氏:
実はバグに決定するまでには,紆余曲折がありました。もともとはダークファンタジーをやろうと考えており,「どうすれば刺激的な世界観を作れるか」と四苦八苦したんです。例えば恐怖体験を提供するために,ゲームプレイにもVRを使おうという話が持ち上がったり。
佐藤氏:
SMの要素を入れようという話もありましたよね。
ナナメダケイ氏(以下,ナナメダ氏):
ありましたね(笑)。今でも,なんだかんだでバッドエンドなどにSMっぽい部分も少しだけ残っていますよ。
東風輪氏:
ともあれ,そうやって仕込んでいったものが,バグというテーマを見つけたときにすべてうまくハマったんです。
4Gamer:
なるほど。本作ではコンセプトデザイナーとして日下一郎さんを起用していますが,日下さんはどのように関わっているのでしょうか。
佐藤氏:
日下さんには,バグをテーマにすると方針を定め,徐々に企画を練り上げていく過程で参加していただきました。日下さんの手がけられた「Final Re:Quest -ファイナルリクエスト-」は,まさにバグをテーマにしている漫画ですし,また日下さんご本人も実際にゲーム開発に携わった経験のある方ですから,バグをゲームシステムとしてどのように落とし込めば面白くなるのか,多くのアドバイスをいただきました。
例えば,ゲームをプレイしているときに突然バグが発生するとして,それが日常にも及ぶようなものだとすごく怖くなるよね,というような話をしました。日下さんには,そういった企画の大枠の部分に関わっていただいています。
4Gamer:
すでに「Death end re;Quest」と「Final Re:Quest -ファイナルリクエスト-」のコラボレーションも発表されていますね(関連記事)。
佐藤氏:
ゲーム本編に「Final Re:Quest -ファイナルリクエスト-」のキャラクター・シロテが登場します。物語の本筋とは少し外れたサブシナリオ的な位置付けですが,やはりバグをうまく使った設定となっています。基本的にはコメディタッチで話が展開するのですが,よくよく見ると「バグって何?」というような,ゲーム本編に少しだけ関わりがあるところもあります。
4Gamer:
コンパイルハートの最近の作品はダークファンタジー寄りのタイトルが増えているように思うのですが,何かそのあたりは意識されているのでしょうか。
東風輪氏:
とくにそういったことは意識していません。「ネプテューヌ」シリーズのようなヒロインものも大事にしていますし,いろんな方向性で皆さんに楽しんでいただきたいと考えています。ただ「Death end re;Quest」のようなダークファンタジーは,作り手として楽しいんですよ。
虫をモチーフにしつつも可愛らしく格好いいデザインを
4Gamer:
それでは先ほど少し話題に上がった,キャラクターデザインについても教えてください。
ナナメダ氏:
ダークファンタジーとバグという要素が決まったところまでは良かったのですが,それをどうキャラクターに落とし込むかという部分で頭を悩ませました。そもそもバグは形のあるものではなく現象ですから,表現としては映画「マトリックス」の数字を使ったエフェクトなどが真っ先に頭に浮かびますよね。「Death end re;Quest」でもそうした表現を取り入れてはいますが,ややありがちです。
そこで本作ならではのバグ表現ができないかと,いろいろ考えました。最初はそれこそ身体にノイズが入っていたり,手など身体の一部をおかしな形にしてみたり。しかし,それだとキャラクターとしてのまとまりが出なかったんです。
4Gamer:
そこから,どのようにしてモチーフを決めていったのでしょうか。
ナナメダ氏:
最初は,「バグ=虫だよな」という言葉遊びから始まったんです。そこで実際に形にしてみたら意外とハマって,今のキャラクターデザインのコンセプトにつながりました。そしてコンセプトが定まったことによって,道が見えたといいますか,キャラクターのみならず世界観や武器のデザインなど,いろんな要素がすんなり決まっていったんです。
4Gamer:
モチーフを虫に決めるまでが大変だったわけですね。
ええ。またモチーフにする虫も,害虫とまではいかなくとも,あえてイメージの良くないものにしようと考えました。例えば主人公のしいなは蜘蛛,リリィは蜂,アルはムカデ,ルシルは蝿,クレアはカマキリをモチーフにしています。セリカだけは蝶と少し綺麗なイメージですが,これは特殊な例ですね。全体的には,毒々しいイメージを打ち出していますが,皆さんが嫌悪感を抱いてしまっては元も子もないので,どのヒロインキャラも可愛らしさや格好よさを感じていただけるよう仕上げました。
また敵のボスキャラはリアルめのデザインに仕上げていますが,こちらはヒロインキャラとの対比を狙っています。
東風輪氏:
ナナメダが最初に上げてきたのが,セリカのデザインだったんです。先ほど言ったとおり,それを見て「これはイケるな」と。
ナナメダ氏:
最初の設定では,セリカが主人公だったんですよね。
東風輪氏:
そのあとに「やっぱり,しいなでしょ」という話になったんです。今振り返ると,あのときの判断は正しかったですね。セリカだと王道すぎるんです。
4Gamer:
ナナメダさんが会心の出来だと思うキャラクターはいますか。
ナナメダ氏:
しいなですね。自分の中でガチッとハマったという感覚があります。
4Gamer:
敵対する謎の組織「ルーデンス」のキャラクターデザインにも,何かモチーフはあるのでしょうか。
佐藤氏:
ルーデンスのキャラクターデザインは,hukeさんにお願いしています。それをもとにナナメダがイラストを描き起こしました。ネタバレにつながってしまうので詳しくはお話できませんが,hukeさんを起用したことも含めて,ほかのキャラクターとは一線を画した存在になっています。
ナナメダ氏:
hukeさんがデザインしたことにきちんと意味があるので,ぜひプレイして確かめてください。また,現実世界の登場人物については文字どおり現実的なデザインにしていますが,あまり普通すぎても面白くないですから,キャラクターとして個性が立つようにワンポイントやアレンジを入れています。
予想を裏切る展開と祁答院 慎氏の容赦ない描写に注目
4Gamer:
次にシナリオについて教えてください。「Death end re;Quest」では,「99%の絶望に抗え」というキャッチコピーを掲げ,シナリオに祁答院 慎さんを起用していますが,その狙いは何でしょうか。
独特の世界観を作り出すという点で,以前から祁答院さんには注目していました。また祁答院さんはトリック系のシナリオ作りを得意としていますから,本作にぴったりハマるだろうと。そこで実際に顔合わせをしたら,その場で興味を持っていただけて「ぜひ」という話になったんです。
佐藤氏:
あとは,とことんやっていただけるだろうという期待もありました。例えば,シナリオライターによってはバッドエンドを抑え気味にしてしまうこともあるのですが,祁答院さんは「やってください」とお願いすれば全力で取り組んでくださるんです。もちろん,その結果が世に出すのが憚られるような内容だったら,修正をお願いしますが。
東風輪氏:
祁答院さんには,いい意味で普通のゲームと違う歪さを出していただきました。今回はRPGとノベルゲームを特殊な形で絡めた内容になっているんですが,祁答院さんはすごい掘り下げ方をなさっていて,「これは今までに見たことがない」というものに仕上がりました。普通の冒険ものとは違う,プレイしていて考えさせられるものになっています。
4Gamer:
シナリオの一部を読みましたが,いかにも祁答院さんらしい独特のテキストになっていますよね。
東風輪氏:
思わず引き込まれてしまいますよね。
4Gamer:
ここまでやるのか,というくらいのスプラッター表現があったり。
ナナメダ氏:
あれをそのままイラストに起こすと,世の中に出せなくなってしまうんですよね(笑)。どこまで描くべきなのか,いつも迷っていました。
佐藤氏:
それでも,シナリオもイラストも何とかCERO「D」(17歳以上対象)の範疇に収めましたが(笑)。
4Gamer:
今回は,ゲームの中と現実という二つの世界がありますが,具体的なゲームの進め方についても教えてください。
佐藤氏:
シンプルに説明すると,ゲーム編がRPG,現実編がアドベンチャーというスタイルになっています。
ゲーム編では,開発中止となったはずのVRMMORPG「ワールズ・オデッセイ」の世界に閉じ込められたしいなが,現実世界へ帰還する方法を探し求めて冒険を行います。その中で,祁答院さんが手がけた謎やサスペンス的な要素,なぜこの世界がバグってしまったのかを知る手がかりなどが少しずつ見つかっていきます。
一方,現実編ではゲーム編で見つかった,それらの謎を解き明かしていきます。そうやって二つの世界がリンクすることで,物語の全貌が明らかになっていくわけです。
4Gamer:
二つの世界を交互に遊んでいくと。
佐藤氏:
基本的にはそのとおりですが,遊びやすさを重視して,ゲーム編と現実編を切り替えるタイミングはプレイヤーの任意で選べるようになっています。
4Gamer:
ゲーム編で気になる何かを見つけたら,その場で現実編に戻って調査できるというイメージでしょうか。
佐藤氏:
そのとおりです。
4Gamer:
ゲーム編をある程度進行させてフラグを立てておかないと,現実編で何も起こらず話が進まないといったことはありますか。
佐藤氏:
もちろん,そういうケースもあります。例えば,現実編で物語を進めないとゲーム編で行けない場所があったり,その逆もあったりという感じですね。
4Gamer:
普通に考えると,ゲームの世界から脱出するためのイベントや謎解きを,すべてその世界の中で完結させてしまうこともできます。あえて現実世界を用意したということは,そこに何か仕掛けがあると考えていいのでしょうか。
佐藤氏:
もちろん,仕掛けがあります。ただ,これは物語の核心にもつながる部分で,はっきりと言えないことが多いのがツラいところです。
東風輪氏:
ゲーム全体に散りばめられた伏線を,二つの世界を行き来しながら回収していくという仕掛けにはきちんと意味があるので,その部分を実際にプレイして楽しんでいただければと思います。
表向きの目的は,しいなをゲームの世界から救出することですが,その一方で,現実編ではもう一人の主人公である新(あらた)が,身に覚えのないサイバーテロの犯人として追われていたり,オカルトめいた噂が街で流れていたりと,サスペンスチックな展開が見られるのも気になるところです。
佐藤氏:
ゲームの世界でバグというと「何でもアリ」になりがちですが,現実編では「なぜバグが発生したのか」というところに,ある種のリアリティを持たせようと考えたんです。
二つの世界の物語がリンクした先には,おそらく皆さんが驚かれる展開が待っています。うまく伝わるといいのですが,「Death end re;Quest」には「身近に感じるもののほうが,より恐怖を感じる」という部分があるんですよ。例えば首を撥ねるシーンよりも,爪のあいだに針を差し込むシーンのほうがゾワッとするような。そういった表現は,現実編があるからこそうまくできていると思います。
4Gamer:
ゲーム世界ではバトルに負けるとゲームオーバーになるかと思いますが,現実世界でもゲームオーバーはあるのでしょうか。
佐藤氏:
ゲームオーバーというよりも,バッドエンドですね。現実編はアドベンチャーですから,選択肢次第でバッドエンドになることがあります。祁答院さんが用意したバッドエンドですから,かなり怖いですよ。
4Gamer:
プレイヤーとしては,できればバッドエンドは避けたいところですが,逆にバッドエンドを見ることによるメリットはありますか。
佐藤氏:
バッドエンドは,単に嫌な体験をもたらすだけでなく,それはそれで楽しめる内容にしています。例えばオチがバッドエンド風でも,「見てよかった」と思える映画ってありますよね。今回は,そういった仕上がりを目指しました。
東風輪氏:
あえてバッドエンドを選択したくなるような(笑)。
ナナメダ氏:
「バッドエンドを取り逃した!」となるかもしれません。
佐藤氏:
また「エピソードチャート」というシステムを用意しており,バッドエンドを含めたイベントをアンロックしていくと,それに応じてアイテムがもらえます。コンプリートを目指すという楽しみ方もできるのではないでしょうか。
4Gamer:
プロモーションムービーなどで公開されているバッドエンドは目を覆わんばかりの内容でしたが,それでも見ておいたほうがメリットがあると。
佐藤氏:
そのとおりです。ただ,見なくともゲームを進められるので,「キャラクターが酷い目に遭うところは見たくない」という方でも大丈夫です。
4Gamer:
バッドエンドのほかには,どんなエンディングがあるのでしょうか。
佐藤氏:
マルチエンディングになっているので,物語はさまざまな形で終わりを迎えます。こちらもぜひ実際にプレイして,確認してください。
さまざまなスタイルで楽しめるように設計されたバトルシステム
4Gamer:
それでは,バグをモチーフにしたゲームシステムの中で,とくに見どころとなるものをご紹介いただけますか。
佐藤氏:
まずは,バトル中に敵を吹き飛ばせる「ノックバグ」システムですね。敵を吹き飛ばすテンポ感や爽快感が,プレイしていて一番楽しいと感じられる部分ではないでしょうか。
また,このシステムをベースとして,敵を壁にぶつけたり,プレイヤーキャラにマイナスの効果を与える「フィールドバグ」を消したりといった,いろいろなテクニックや戦術を使えるようになっていますから,理解するほど楽しくなっていくと思います。
4Gamer:
ノックバグはおはじきみたいで面白いですよね。
東風輪氏:
ええ。さらに味方に向かって敵を吹き飛ばすと,打ち返し技の「ノックブロウ」が発生するんですよ。
佐藤氏:
うまくやると連続で打ち返しができて,これが気持ちいいんです。実は開発の初期段階では,延々と打ち返しが続き,それだけでバトルが終わってしまうということもあったんです。ほどよいところで打ち返しを終わらせる調整には,時間をかけました。
東風輪氏:
また,小さい敵は派手に吹き飛ぶけれど,大きくて重い敵はあまり飛ばないといった具合に,敵の大きさと重さによって吹き飛び方が変化します。
佐藤氏:
そこで多数の小さい敵を吹き飛ばし,大きな敵にぶつけていくといったテクニックが重要になるわけです。
4Gamer:
個人的には,バトル中にゲームのジャンルそのものを変えてしまうシステムにも驚かされました。
佐藤氏:
通常はターン制で進行するバトルを,シューティングや格闘ゲーム,パズルなど,ほかのゲームジャンルに変更してしまう「インストールジャンル」というシステムですね。飛び道具的な存在ではあるのですが,エッセンスとしてすごく楽しめるものになっていると思います。「この敵は,このジャンルならイケるんじゃないか」という思いつきで試すこともできますし。
東風輪氏:
ボス戦でも,意外に相性がいい組み合わせもあるんですよ。バトルではこのほかにも,倒したボスを召喚蟲として使える「召喚」や,独特な形でのスキル習得システムなど,遊ぶ人それぞれのスタイルで楽しめる要素を盛り込んでいます。
4Gamer:
スキルの習得は,バトル中に選択した3つのアクションの組み合わせによって,一定確率で閃くという形式になっていますよね。
佐藤氏:
ええ。ぜひ,いろんな組み合わせを試してください。
東風輪氏:
最初のうちは楽に習得できるんですが,あとあと習得しにくくなっていくので,貴重なスキルをぜひ頑張って見つけてほしいですね。
4Gamer:
フィールド探索で役に立つシステムもあるのでしょうか。
佐藤氏:
「バグアクション」というものがあります。お話したとおり,味方キャラクターはそれぞれが虫の特性を持っており,それに沿ったアクションを取ることができます。例えばしいなであれば,蜘蛛の糸を飛ばして通常では行けないところに移動できます。
東風輪氏:
お尻から糸が出るんですよ。
佐藤氏:
またセリカは蝶ですから,羽根を使って飛べます。そうやってキャラクターの特性を活かして探索を進めていくわけです。ダンジョンを探索していると「何かありそうだな」と思う部分がたくさんありますので,ぜひいろいろ試してください。
「OROCH 4」と「Mizuchi」によって,これまで以上の表現を実現
4Gamer:
本作ではゲームエンジンにシリコンスタジオの「OROCHI 4」と「Mizuchi」を採用していますが,開発の手ごたえはいかがでしたか。
コンパイルハートでは,「新次元ゲイム ネプテューヌVIIR」のときにOROCHI 4とMizuchiを使っているのですが,これは「VII」のリメイクでしたので,まっさらな状態から新たに作った事例となると今回が初めてとなります。その「VIIR」である程度ノウハウを蓄積した状態でしたから,キャラクターの質感や背景に対するエフェクトの効果などを意識して開発を進めることができました。
とくに光や質感の表現に強いゲームエンジンですから,デザイナーが作り込みすぎてしまって(笑)。どこまでも作り込めるので,楽しみながらも,こだわりを持って開発していたようです。
佐藤氏:
キャラクターのビジュアルもいい感じに表現できるんですよ。ナナメダのイラストを3D化していくにあたり,今まで不可能だった光や質感などもうまく表現できています。
東風輪氏:
もともとMizuchiは写真的な表現を得意としているのですが,今回はコンパイルハートのアニメ的,キャラクター的な表現と,写真的なリアルさの融合を目指して,シリコンスタジオさんと相談を重ねました。専用のチューニングを施していただいた結果,独特の絵作りができたと思います。
実を言うと,キャラクター性を持たせたうえで,素材感がきちんと出るような表現というのはハードルが高いんです。双方のいいとこ取りをしようとすると負荷が高まってしまうのですが,そこをうまくチューニングしていただきました。
ナナメダ氏:
最初はキャラクターがフィギュアっぽくなっていたんです。それをいろいろな効果などを調整することで,今の形に落とし込んでいきました。
また,Mizuchiは金属や布などの質感を表現するのが得意ということを知っていましたから,衣装をデザインする際にも「ここは金属でいこう」といった感じで意識しています。例えば,しいなが右手に着けている小手がそうですね。
東風輪氏:
カメラが寄っても余裕で耐えられますからね。本当に綺麗に仕上がりました。
ナナメダ氏:
発光も綺麗ですよね。蜘蛛の脚の紫部分などはデザイナーが微調整しながらどんどん効果を付け加えて,すごくいい感じに仕上がっています。
4Gamer:
部屋の中に埃が舞っているようなところの空気感もいいですよね。
東風輪氏:
そういったエフェクトに関しては,もともとあったコンパイルハート内製のツールと,OROCHI 4やMizuchiを融合して作っています。煙系は内製,発光系やフォグ系はMizuchiと,それぞれの強みを活かしました。
4Gamer:
2Dアニメーションは,シリコンスタジオの「Motion Portrait」を使っているのでしょうか。
東風輪氏:
いえ,今回はコンパイルハートの内製ツールをOROCHI 4に組み込んでいただきました。その意味では,今回は本当にシリコンスタジオさんとタッグを組んで開発を進めたと言えます。シリコンスタジオさんには,わがままを言いすぎましたけれども(笑)。
ユニークな予約キャンペーンなど,事前プロモーションにも注力
4Gamer:
「Death end re;Quest」では,パッケージ版の予約数が「Rank SS」に到達すると,ゲーム中に登場するVRMMORPG「ワールズ・オデッセイ」が,リアルで発売決定されるという予約キャンペーンをやっていましたが,最終結果はどうなったのでしょうか。
おかげさまで,最終結果は「Rank A+」を達成しました。ただ発売日が延期になってしまったので,皆さんには「Rank S」相当の報酬を無料配信します。
4Gamer:
万が一,「Rank SS」を達成していたら,本当に「ワールズ・オデッセイ」の企画が立ち上がることになったのですか。
佐藤氏:
もちろんです。僕ら自身,夢を見ていましたから。きちんと予算なども検討して,東風輪からGOサインをもらおうと。でも,普通のMMORPGではなく“VR”MMORPGとは,ずいぶん大きく出たなとは思いましたが(笑)。
東風輪氏:
その意味では,今回は残念でしたね(笑)。その代わりといってはなんですが,予約特典のバッドエンド画集「Death end Note」が魅力的なものに仕上がっていますよ。
4Gamer:
予約特典としてはもう一つ,RPGツクール製のPCゲーム「END QUEST」がありますよね。
佐藤氏:
「END QUEST」の元ネタは,「Death end re;Quest」発表前のティザームービーなんです。あの中にレトロな雰囲気のRPGの画面が登場しますが,これを本格的にやったら面白いだろうという話になって。
東風輪氏:
その話がうまく進み,実績のあるRPGツクールの作者の方に作っていただけることになりました。
佐藤氏:
内容は「Death end re;Quest」の前日譚で,主人公はしいなでも新でもない謎の女の子です。彼女は記憶を失っており,名前も覚えていません。ゲームを進めていくと,リリィやセリカなどが仲間になっていきます。
その中で,「Death end re;Quest」本編の謎に触れる部分もあります。「END QUEST」を遊ばないとダメということはないですが,プレイしていると,より深く謎に迫れるんじゃないかと思います。また「END QUEST」は純粋にゲームとして面白く仕上がっていますので,ぜひプレイしていただきたいです。
4Gamer:
「END QUEST」の体験版はいいところで終わってしまうので,続きが気になります。
佐藤氏:
基本的なシステムは「RPGツクールMV」のものをそのまま使っているのですが,コマンドバトルに特殊な要素を入れたり,ギミックを盛り込んだ探索要素を用意したりしています。ボリュームも結構ありますよ。
東風輪氏:
「Death end re;Quest」がまだ開発中なのに,並行してもう1本作っているような感覚でしたからね。
佐藤氏:
本当に大変でしたよ(笑)。
東風輪氏:
ちょっと無理はしたけれど,皆さんが喜んでくださることを考えれば,やってよかったです。
佐藤氏:
さらに,キャラクターはドット絵で描かれているのですが,ナナメダが1体1体デザインしているんですよ。
ナナメダ氏:
イラストを描いただけで,ドット絵に起こしたのはほかのスタッフですけどね(笑)。各キャラクターは「Death end re;Quest」本編と姿が違うので,それに合わせて新しくデザインを起こしています。
4Gamer:
「END QUEST」の時点で,すでに世界がバグっている感じですよね。
佐藤氏:
そんな雰囲気があるのは確かですが,実はまだバグってはいないんです。例えば「END QUEST」の体験版にもしいなが出てきますが,あれはまだ「ワールズ・オデッセイ」の開発段階の話です。
4Gamer:
「Death end re;Quest」と「END QUEST」,どちらを先にプレイするか迷いますね。
佐藤氏:
どちらが先でも大丈夫なように作っていますので,お好きなほうからプレイしていただくのがいいと思います。
4Gamer:
体を張ったネタともいえるユニークな予約キャンペーンや,豪華な予約特典でも話題を集める「Death end re;Quest」ですが,とくに注目してほしいポイントはありますか。
東風輪氏:
今回は,技術的にもシステム的にも,今までより1段階,2段階上がったところがあります。マニアックにプレイを突き詰めることもできるし,シンプルにテンポよくゲームを進めることもできる。それは,プレイの快適さにこだわってゲームを作ってきたことの延長線上で,スキップやショートカット機能など,コンパイルハートファンの皆さんが気にされる細かい部分も今までどおり充実しています。
ナナメダ氏:
キャラクターに関していうと,実は僕自身,イラストと3Dモデルの頭身が同じというゲームは初めてになります。ムービー用のモデルでイラストと頭身が同じになることはありましたが,ゲーム内ではデフォルメモデルになるというケースばかりだったんです。そのため,いかに可愛らしさを表現するかというのが大きな課題となりました。
今回は,顔も単にテクスチャを張るだけでなく,口や鼻もきちんとモデリングして,どこから見ても可愛らしく見えるように作っています。その間ずっと,「ネプテューヌ」シリーズを超える可愛いモデルにしようと考えていました。頑張った甲斐がある仕上がりになりましたので,ぜひじっくり見て楽しんでください。
佐藤氏:
僕はディレクターですが,それ以外に3Dモデルを使ったイベントシーン(キャラ劇)を担当しています。今回,コンパイルハートでは本格的にツールを用意してキャラ劇の制作に臨んだのですが,これが思った以上に大変で,何度かくじけそうになりました。2Dだけでは表現しきれない部分を3Dで補うことで,より楽しんでいただけるものになりましたので,ぜひ注目してください。
4Gamer:
では最後に,「Death end re;Quest」に期待している人に向けて,メッセージをお願いします。
東風輪氏:
今回は,デザイナーさんやシナリオライターさん,声優さんを始め,社内のスタッフや関係者など,開発に関わったすべてのクリエイターのクセが入った1本になっています。その力を集結した結果,今まで以上のタイトルを作れました。ぜひ手に取って遊んでください。
ナナメダ氏:
「Death end re;Quest」は,世界観もシナリオもキャラクターも,すべてに“バグ”というコンセプトが絡んでいます。それを本作の個性や特徴として楽しんでいただけるとありがたいです。
それに加えて,祁答院さんの衝撃的なシナリオと,可愛らしいキャラクターのギャップもあります。キャラクターが気に入っている方にはツラい部分もあるかもしれませんが,それを乗り越えた先にある結末を目指してプレイしてみてください。
佐藤氏:
バッドエンドも含めて,ぜひ最後までプレイしていただきたいです。ある意味,最後の展開のためにすべてを準備しています。そこへたどり着くためにはいろいろツラい思いをすることもあるでしょうけれど,それを乗り越えた先の体験には,新しい感情が生まれるかと思います。ぜひ,そこを体験してください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「Death end re;Quest」公式サイト
(2018年3月6日収録)
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Death end re;Quest
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