プレイレポート
初見プレイは驚きの連続。本日発売となった「UNDERTALE」のプレイレポートをToby Fox氏のメールインタビューと共にお届け
本作は,2015年9月にPC向けに発売されたインディーズタイトルで,リリースされるや否や海外のゲーマーから非常に高い評価を受けていた。日本国内においても口コミで評判が広まり,英語版をプレイする人や非公式の日本語化パッチを作ってしまう有志まで現れるなど,熱いファンを増やし続けている。
さて,本稿ではそんな本作の公式日本語版を紹介していきたい……と言いたいところだが,物語の内容を書こうとすると,どうあがいてもネタバレにつながってしまう。
そこで,詳しいゲーム内容は避けつつ,物語のイントロダクションとゲームシステムを紹介しながら,実際にプレイして感じた本作の面白さを紹介したい。また今回4Gamerでは,Toby Fox氏へのメールインタビューを行う機会を得た。記事の最後にはその内容を掲載しているので,合わせて読んでほしい。
Lv1でもクリアできる! “誰も死ななくていいやさしいRPG”
UNDERTALEの世界では,過去に地上で人間とモンスターによる戦争が勃発し,敗北したモンスター達は地下世界に追いやられたという歴史があり,現在地下はモンスター達が暮らす領域となっている。
本作の主人公は,そんなモンスターの支配する地下世界に落ちてしまった1人の子供で,地上に戻るために冒険に旅立つことになる。
本作は“誰も死ななくていいやさしいRPG”を謳い,モンスターとの戦闘を回避できるバトルシステムが特徴的だ。バトル中に選べる「こうどう」コマンドで,モンスターに対してさまざまな行動を取ることができ,選択肢次第で相手の戦意をなくすことが可能なのだ。モンスターの説得に成功した後は「みのがす」コマンドから「にがす」を選ぶことで相手を倒すことなく戦闘を終わらせられる。
もちろん,モンスターを倒してはいけないわけではなく,「たたかう」コマンドで相手を倒しながらLvを上げ,ステータスを強化していくというプレイスタイルも取れる。どちらを選ぶかはプレイヤー自身に委ねられているのだ。
巧みな演出で表現された“生きた”モンスター達と,温かくヘンテコな世界観
バトルシステムにおいてもう1つ特徴的なのが,モンスター達の攻撃方法だ。このゲームは敵の攻撃ターンに,バトルウインドウの中に存在する自機を操作し,敵の繰り出す攻撃をかいくぐっていくというシューティングゲーム風のバトルが展開される。
この戦闘システムの演出が非常に巧みで,自機を操作するバトルウインドウを「キャラクターの個性を表現する空間」として上手く使っているのが面白い。例えば,犬のモンスターなら「ワンワン」という鳴き声そのものを弾として飛ばしてくるし,モンスターが悲しいと思っているときは涙で攻撃してきたりする。前述した「こうどう」コマンドのリアクションと合わせて,モンスターの個性づけに一役買っているのだ。
冒険の道中で出会うモンスターも「異常にハイテンションな猫のような何かよく分からない生き物」や「なぜか1人だけテキストが縦書きなスケルトン」など,個性のかたまりといえる存在ばかり。ヘンテコだけれど味のあるモンスター達だ。
ゲームを彩るサウンドもキャッチーで,その場その場に適した音楽がしっかりと差し込まれ,ゲームを盛り上げてくれる。さらに,同じメロディやフレーズが複数の曲で繰り返し使われており,「雪のエリアはこのフレーズ」といったように世界観の統一がなされていることもプレイしていて印象的だった。こういった部分に注目して遊んでみると,ゲームを進めていくさまざまな局面で,別の一場面がふと呼び起こされたり,そのメロディやフレーズに込められたテーマ性が見えてくるかもしれない。
プレイすればきっと誰かと内容を語りたくなるゲーム。だからこそ情報を断って遊んで欲しい
本作は,作者のToby Fox氏が「日本のRPGにインスピレーションを受けて作った」と語っている通り,海外のゲームながらも日本のRPGに近いエッセンスがちりばめられているためか,海外のゲームをプレイするとよく感じるズレはほとんどなかった。総じてシナリオ重視のRPGが好きな幅広い層におすすめできるタイトルといえるだろう。日本語化においてもToby氏がイチから監修に関わっており,原作の意図が反映された翻訳になっているのもポイントだ。
筆者は過去にPC版をプレイしており,今回の日本語版は久々のUNDERTALEだったのだが,初見の時はシステム面においてもゲーム内容においても,プレイしていて非常に驚かされた場面が多かったし,これからの行動をどうとるべきかを真剣に悩んでプレイした場面もあった。一気にゲームクリアまで夢中になってプレイしてしまったし,遊んだ後にも心地よい余韻が残るので,誰かとUNDERTALEについて語りたくなるような感情がしばらく心の中で渦巻く状態に陥っていた。
冒頭でも述べたようにこのゲームは,ネタバレを食らうと面白さが損なわれてしまうのだが,現在では海外での発売から約2年が経過していることもあり,既にプレイした人達によるネタバレ有りの考察がネット上で数多く見られる。このタイトルは事前知識がないということがゲームを楽しむうえでの最大の調味料となるので,ぜひ情報を断ってのプレイをおすすめしたい。
「UNDERTALE」原作者Toby Fox氏へのメールインタビュー
――まず始めに,Tobyさん自身のことについてお聞かせください。UNDERTALEを開発する以前はどのような経歴を歩んできたのでしょうか。
Toby氏:
「UNDERTALE」を開発する前の僕は,Andrew Hussie氏が手がける「Homestuck」というウェブコミックのサウンドトラック制作に参加したコンポーザーとして知られていました。
Homestuckは「コミック」といっても,音楽がついていたり,インタラクティブなアニメーション要素などもある作品で,アメリカでは大人気になったんです。魅力的なキャラクターがたくさん登場したり,いわゆるメタ表現が取り入れられている点などは,UNDERTALEにも影響を与えてくれたように思います。
あと,UNDERTALEの開発を始めた場所は,実はHussie氏の自宅にある地下室だったんですよ。Homestuckのサントラを制作するかたわらでしたけど。だから,UNDERTALEはまさに「地下」で誕生したゲーム,ということになりますね。
――UNDERTALEを開発しようと思ったきっかけや経緯を教えてください。
Toby氏:
2012年の12月に,ウィキペディアを拾い読みしていたら「配列データ構造」の記事を見つけたんです。僕はそこまで上級者のプログラマーじゃないので,配列データ構造なんてそれまで知らなかったんですが,その記事を読んで「これを使ってRPGのテキストシステムが作れるんじゃないか」と思ったのがきっかけです。それを元にテキストシステムを完成させたら,今度は戦闘システムを作ることを思いついて,最終的にゲームになったという感じですね。
恐らく皆さんは「400年ぐらい構想を練ってました!」みたいな話を期待してるかもしれないけど,そんな大層な経緯はないんですよ。実際はどういうわけか急に降って湧いてきたという感じだったんです。UNDERTALEという作品には,どこか気まぐれな雰囲気があるように思うんですが,そういう生い立ちのせいかもしれないですね。
――本作をほぼ1人で作り上げたTobyさんですが,クリエイターとしての原点はなんでしょうか。
Toby氏:
UNDERTALEは,皆さん結構私が1人で作ったと思われがちなんですが,他のアーティストに作ってもらった部分も山ほどあります。確かにゲーム内のグラフィックスは,かなりの数を僕が手がけましたけどね。Temmieは,イントロを始め,たくさんのアートを制作してくれましたし,Merrigoはパララックスの背景を,EverdraedはPhotoshop周りのことを手伝ってくれました。ここで全員の名前を挙げることはしませんが,クリアしたら,クレジットに載っている名前をどうぞよく見てください。
僕のクリエイターとしての原点はそうですね……先ほどお話ししたように,2010年に始めた「Homestuck」のサントラ制作がはじめの一歩でした。コンポーザーとしての初仕事だったので,すごく貴重な経験だったと思います。あれがなかったら,今ほど作曲もうまくなっていなかったと思うし,自作ゲームのクオリティもずっと低くなっていたと思うので。
「Homestuck」に参加する前は,ショボいROMハックを作ったりしてましたね。「RPGツクール2000」やGameMakerでショボいゲームを作ってみたりもしました。でも,完成に至ったものはひとつもなく,リリースしたものもなかったんです……。
だから,僕がこれまでに作ったゲームの中でちゃんとしてるのはUNDERTALEだけなんですよッ!!
(トビーは,お菓子の入ったボウルをテーブルからたたき落とした!)
それ以外はゴミばっかなんですよッ!!
(トビーは,お菓子の入った別のボウルをテーブルからたたき落とした!)
他の作品は見ないでくださいッ!!
(トビーは,お菓子の入ったさらに別のボウルをテーブルからたたき落とそうとして,ちょっと迷った末にお菓子をつまんで食べた)
あ,これ,おいしい。
――Tobyさん自身,日本のゲームが好きでUNDERTALEを制作する際にもインスピレーションを受けたとおっしゃってますが,具体的に影響を受けたタイトル名を教えてください。また,どのようなタイトルを好んでプレイしていますか。
Toby氏:
UNDERTALEを作るうえで特に影響を受けたと思うタイトルは,この6つです。
- 「MOTHER」シリーズ
- 「東方Project」
- 「真・女神転生」
- 「ブランディッシュ」
- 「マリオ&ルイージRPG」(特に戦闘システム)
- 「洞窟物語」
UNDERTALEの制作にはあまり影響しなかったけど,僕が好きなゲームを挙げるなら「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズ,「星のカービィ」シリーズ,「スーパーメトロイド」,「エストポリス伝記II」,「マリオペイント」,「ポケットカメラ」,「ガイア幻想紀」,「ロックマンX」,「ガンスターヒーローズ」などですね。
――今回コンシューマ機に展開されますが,その狙いを教えてください。
Toby氏:
コンシューマ機でリリースすることにしたのは,1人でも多く,日本の皆さんにUNDERTALEをプレイしてもらいたかったからです。日本ではPCゲームはあまりポピュラーではないので,コンシューマ機に移植する必要がありました。日本のゲームは僕にインスピレーションをたくさん与えてくれたので,その恩返しがしたかったんです。僕からのささやかなプレゼント,楽しんでもらえるとうれしいです! イェッフゥー!
ソニー大魔神様には大変よくしていただきましたので,PS4版とVita版をサポートいただければ幸いに存じます。(ひずんだ低い声で)イェッフゥー!
――UNDERTALEはどんなゲームを求めている人におすすめしたいですか。
Toby氏:
弾幕をよけるスキルさえあれば,どんな人にもおすすめできると思います。この記事を読めている方ならまず大丈夫ですよ。
他に必要なものといったら,ユーモアのセンスでしょうか。このゲームを気に入るかは,その人の性格によるところが大きいんじゃないかな。僕と似たタイプの方には,気に入ってもらえると思います。
「Undertale」公式サイト
UNDERTALE (C)Toby Fox 2015-2017. All rights reserved.
UNDERTALE (C)Toby Fox 2015-2017. All rights reserved.
UNDERTALE (C)Toby Fox 2015-2017. All rights reserved.