レビュー
ホラーアドベンチャー「深夜廻」PS4版をレビュー。2人の少女の視点から,闇夜の新たな恐怖を体験しよう
2015年に発売された「夜廻」(PC/PS Vita)に続く“夜道探索アクション”として開発された本作は,夜の静寂が生み出す恐怖の中を探索して歩くゲームシステムを継承しつつ,新たなストーリーと広くなったマップ,そしていくつかの新システムを導入した内容となっている。
また前作がリリースされたPlayStation Vitaに加え,本作で初めて据置機のPlayStation 4に対応したのもポイントだ。本稿ではそのPS4版のレビューをお届けしていこう。
主人公は性格の異なる2人の少女。お化け達がうごめく街で互いを探す
主人公のユイとハルは夏休みの終わり,2人で花火を見た帰り道に,つないでいた手を離してしまい,離ればなれになってしまう。2人はいなくなってしまった相手を探して,夜の街を探索することになる。
前作と大きく異なるのは,本作には主人公が2人いるということ。明るい性格のユイ(赤いリボン)と,おとなしい性格のハル(青いリボン)の対照的な2人で,物語の展開によって視点が切り替わる仕組みだ。
両者の行動が同じ時間軸にあるのかは不明だが,お互いがいる場所は本人のセリフや周囲の雰囲気などからなんとなく分かり,探索時にどこへ向かえばいいのか,あるいは自分が相手のいた場所にたどり着いたときにどうすればいいのかのヒントにもなっている。
ゲーム本編は前作と同様,クォータービューの街の中を歩き回り,いなくなってしまった友達の手がかりを探していくというシンプルな内容で,操作自体も難しくない。[L]スティックまたは方向キーによる移動と[R1]でのダッシュ,そしてタッチパッドで手持ちの懐中電灯のオンオフができる。また[R]スティックで懐中電灯の向きの変更,[L1]で並行移動,[□]でアイテム使用が可能で,これらは本作の敵である「お化け」を退けるのに役立つアクションにもなる。
夜の街には得体の知れないお化け達があらゆる場所を徘徊している。お化けが近くにいると,心臓の鼓動音が大きくなるのだが,静寂の中に突然現れるものも多数存在するので,ビビリな性格でなくてもドキッとさせられることは必至だ。
またお化けの中には敵意を持って襲いかかってくるものもいて,彼らに捕まればその場でゲームオーバーとなってしまう。反撃する手段を持たない少女達は,ダッシュして逃げるか,草むらや看板などの物陰に隠れてやり過ごすのが基本で,もし周囲に隠れる場所がないときは,知恵やアクションを駆使して退けなければならない。
とくに要所に現れるボスに相当するお化けは,見た目も攻撃方法も凶悪で,場合によっては何度も襲われることになる。単純にアクションゲームとしての指先の技術だけでなく,パズルのように手順を踏んだ対処方法が必要なものもいるので,どうしても退けられないというときは,その周囲で見つけたメッセージなどから攻略の糸口を探してみるといいかもしれない。
ほとんどのお化けは,触れた瞬間にゲーム終了だ。セーブしたお地蔵さんから再挑戦となる |
茂みや立て看板,屋内なら箱などに身を隠せる。アイテムのビニール袋でも代用できる |
マップの広さは前作の倍以上。探索の楽しさも強化
2人が夜の冒険をする街は,前作に引き続き昭和テイストがあふれる懐かしい街並みを残しつつ,その広さは倍以上となり,さらに屋内の探索もできるようになった。ゲーム序盤は行ける場所が限られているが,物語を進めていくと行ける区域が広がり,以降は自由に行き来が可能となる。
屋内での探索はマップが表示されず,周囲が真っ暗になったり,部屋に閉じ込められてしまったりすることもあり,屋外とはまた違った緊張感を味うことになる。ちなみに屋内で行ける場所は夜の図書館や廃屋,ダムの地下通路など,一般的にあまり立ち入る機会のないシチュエーションがそろっていて,夜の街を歩く感覚と同様に,プレイヤーの好奇心を刺激してくれる。
また街を探索していると,物語の本筋とは別のサブイベントが発生する手がかりを発見できることもある。これはコレクションアイテムを手に入れられる小さなイベントながら,マップを開拓して発見できるとちょっと嬉しい。
実のところ筆者は,本作をエンディングまで遊んだが,初回プレイではコレクションアイテムを半分程度しか手に入れられなかった。それなりに探索はしたつもりなのだが,見逃していたサブイベントもかなりあったようで,コンプリートを狙うにはじっくり探してみる必要がありそうだ。
サブイベントはメッセージなどから手がかりを探さなければならない |
コレクションアイテムはメニュー画面で確認できる。一部を除き,とくに効果などはない |
そのほか,探索で手に入られる新しいアイテムとして「おまもり」が登場している。こちらはプレイヤーである少女にちょっとした恩恵をもたらすもので,手に入れると嬉しいアイテムとなっている。持てるおまもりは1つだけで,自宅で持ち替えが可能だ。
PS4版は,より臨場感のある恐怖を味わいたい人にオススメ
前作がPS Vitaで発売された本作だが,今回PS4でも発売されるということで,据置機でプレイする意義についても触れておきたい。
まずは大画面かつ,音響機器の充実した環境でゲームをプレイできるということ。デフォルメキャラクターが主役の作品ながら,彼女達はよく動いているので,大画面だからこそ気付ける演出もあるだろう。また,本作の恐怖を煽る演出である効果音をヘッドホンや立体音響で聴けることで,怖さも倍増する。もちろんPS Vitaでも環境をそろえられないわけではないが,据置機であるPS4であれば,すでに環境が整っている人も多いだろう。また心臓の鼓動音などとシンクロしているDUALSHOCK 4の振動もPS4版だけの特権で,これもまた演出面で効果的に働いている。
もちろん,PS Vita版には携帯できるという大きな利点もあるが,両方のユーザーならリモートプレイという手段もあるので,個人的にはPS4版がオススメだ。
奥行きが感じられる横スクロールのシーンも。この演出はかなり美しい |
DUALSHOCK 4の振動が,恐怖をさらに増強する |
前作を昇華し,より遊びごたえのある内容となったホラーゲームの新しい形
ゲーム中,離ればなれになった少女2人の心情が,恐怖を通して描がれる。筆者も今回のプレイでひとまず結末を迎えたわけだが,切ないストーリーの中にも,要所でかなりショッキングな描写があるので覚悟して挑んでほしい。
エンディングまでのプレイ時間は10〜12時間程度といったところだろうか。今回はレビューということで一気に通してプレイしたが,ゲームの性質としては夜の時間帯に章(少女が日記を残すまで)ごとに進めていくのがいいと思えた。ちなみにゲームクリア後もちょっとした遊びが残されているので,そちらにも期待しておこう。
章立ての流れは具体的には表示されないが,少女が描く絵日記が章の終わりを表している |
ストーリー展開の中にお化けが絡んだものもある。中には切ないものも |
ゲームを通してプレイしてみて,気になるところもいくつか見受けられた。例えばビックリ箱的な驚かせ方をするお化け達が多いという点だ。静寂の中にワッと現れるのは,怖がらせ方として効果的ではあるのだが,頻繁だと慣れてきて効果は薄れてしまう。段階を追ってじわじわと怖がらせるタイプのお化けも当然いるのだが,もう少しバランスよく配置してほしかった気もする。
またこれは前作から思っていたことなのだが,出会って怖い思いをしたお化けに関しては,ライブラリにまとめてほしい。お化け達はある意味本作の主役でもあり,拾ってから形がわかるコレクションアイテムよりも収集意義があるものだ。本編と関係なくてもいいので,登場するお化け達全員に簡単なエピソードでもあれば,彼らへのイメージも変わるのではないだろうか。
とはいえ,ややボリューム不足が否めなかった前作と比較すると遊び応えのある内容となり,少女2人の目線で綴られる物語にも深みが出たことで,総合的には前作以上に楽しめた。ホラーという人を選ぶジャンルではあるものの,ゲームシステム的にはあまりないタイプのゲームなので,前作をプレイしていない人も,PS4で発売されるこの機会にぜひプレイして,夏の終わりを涼しく過ごしてみてはいかがだろうか。
「深夜廻」公式サイト
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(C)2017 Nippon Ichi Software, Inc.
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