プレイレポート
「世界樹と不思議のダンジョン2」プレイレポート。シリーズ第1作のシステムをベースに新要素が追加され“さらに深く遊べる”作品に
本作は,同社の人気シリーズで,2017年1月に10周年を迎えた「世界樹の迷宮」と,スパイク・チュンソフトのローグライクRPG「不思議のダンジョン」のコラボレーションタイトル第2弾だ。前者の世界観や冒険要素をもとに,後者の特徴である自動生成ダンジョンを探索するという前作「世界樹と不思議のダンジョン」のシステムをベースに,新たな職業や新要素が追加された作品となっている。
そんな本作の製品版を発売前にプレイできたので,さっそくレポートをお届けしよう。
「世界樹と不思議のダンジョン2」公式サイト
4人パーティで探索する,不思議のダンジョンの妙
そこへたどり着けば「神の国」へと行けるという巨大な樹木「世界樹」。プレイヤーは世界樹を目指す冒険者達が集う街「オーベルフェ」で,冒険者達をとりまとめる「ギルド」を結成した主人公となり,世界樹へと続く無数の迷宮へと挑んでいくこととなる。
本作では,ダンジョン探索の進行と合わせて,オーベルフェの住人や冒険者達,そしてプレイヤーの前に現れる謎の少女ナディカにまつわるストーリーが展開していく。1作めのストーリーとの直接的なつながりはないので,本作で初めて「世界樹と不思議のダンジョン」に触れるという人も,問題なく本作の世界に没入できるだろう。
かくいう筆者も前作「世界樹と不思議のダンジョン」は未プレイだったのだが,それにもかかわらず,その世界観はもちろん,ゲームの進め方も比較的すんなりと受け入れることができた。それは,本作のダンジョン探索要素が「不思議のダンジョン」シリーズのゲームシステムを主体にしていたからだと思う。
ほかの「不思議のダンジョン」シリーズにはない本作の特徴といえば,最大4人のパーティを編成して,パーティメンバーの中から操作するキャラクターを切り替えながらダンジョンを探索するというものだ。
スーパーファミコンの時代から「不思議のダンジョン」シリーズをプレイしていた筆者にとっては,操作する人数こそ違えどそのベースに慣れ親しんだゲームシステムがあったため,戸惑うことは少なかった。
また,細かな操作の感触まで従来のシリーズ作品を踏襲されていたようにも感じたが,このあたりは,「不思議のダンジョン」を良質なRPGシリーズとして作りあげた,スパイク・チュンソフトへの信頼や安心感もあるかもしれない。
自身が操作していないパーティメンバーの動きにも注目したい。プレイヤーは「リーダー」に設定したキャラクターを動かすことになり,それ以外のメンバーはAIによる操作となるのだが,このAIがかなり賢く設定されていてストレスがほとんどないのだ。
メイン画面は迷宮を見下ろすトップビューのスタイル。踏破することで下画面のマップが展開していく |
行動はターン制で,マップの上側にあるアイコンの順番に敵味方が行動する。リアルタイムではないので,敵の動きをしっかり考えながら行動しよう |
敵がいる際の攻撃範囲への移動や適切なスキル使用はもちろん,場所が判明している罠は必ず避けて行動してくれるし,踏むことでスキルの使用に必要なTPが回復する「結晶床」などはリーダーが踏むかどうかを見てから必要に応じて踏みに行くような挙動を見せるなど,仲間としての信頼度が非常に高い。
また,攻撃対象が複数いる場合や適度な回復が必要なときなどはプレイヤーに選択を委ねられたり,スキル使用のON/OFFを切り替えられたりもするので,それらを使用することで,パーティメンバーへの戦術指示も行える。
筆者はとくに“適度な回復”をプレイヤーが選択できるという点が重要だと感じた。確実に回復が必要な場合はAIが自動で行ってくれるのだが,判断が難しい絶妙な場面で,プレイヤーに選択を委ねてくれるのはありがたい。
これまでの「不思議のダンジョン」シリーズとは違う,パーティを編成してダンジョンを探索するという本作ならではの要素としては,リーダーが戦闘不能になっても残りのメンバーで探索を続けられるという点がある。また,もし全滅してしまった場合でも,控えのメンバーで「救助隊」を派遣することも可能だ。
迷宮をクリア,または脱出してもレベルが1に戻らないという点も,本作ならではの要素だろう。
リーダーとなったキャラクターはプレイヤーが操作する。行動すると「空腹」になる概念はリーダーのみに適用される |
ボスとの戦闘時はパーティ全員を操作することになる。[R]ボタンで表示されるグリッドを見て距離や方向にも気を配ろう |
一方「世界樹の迷宮」シリーズのシステムを受け継ぐ特筆すべき要素として,キャラクターメイキング時に選べる職業の多さが挙げられる。
その数は,1作めに登場した10種の職業に,新規に5種の職業が追加さた全15種。もちろん職業によって見ためや特徴も違い,さらに最初から全職業を選べるので,どんな職業のキャラクターで,どのようなパーティを編成するのか迷うことになるだろう。
15種の職業は,それぞれ性別とカラーが選択できる。各職業の性別と色は,見ためが変わるのみで強さに変わりはない。好みのキャラクターを選択しよう |
冒険者を登録できる数は決まっているが,クエストをこなしてギルドのレベルが上がると登録できる人数も増えていく |
「世界樹の迷宮」シリーズでおなじみの彼らが,3Dキャラクターとなって不思議のダンジョンで活躍するところも本作の大きな特徴と言えるだろう。また,効果範囲や属性の異なるスキルを使った戦略はパーティ編成によって大きく変わるので,ちょっとしたシミュレーションゲームのような感覚も味わえるかもしれない。
序盤は最小限の4人だけでも十分に戦えるが,ゲームを進めると少数のメンバーでは対応できなくなることもあるはず。控えや後述する「砦」に配置したキャラクターにもわずかながら経験値が入るシステムや,ストーリー本編とは別のクエスト,あるいはダンジョン内である程度の強さを持った「徘徊冒険者」をスカウトするといった要素もあるので,新たな職業のキャラクターをパーティ投入するのも難しくはない。パーティ編成の妙をぞんぶんに堪能してほしい。
迷宮で遭遇する徘徊冒険者。出会う迷宮に準じたレベルがあるので,即戦力になるのが魅力だ |
スキルはツリー形式で,「スキルポイント」を消費することで修得,レベルアップ,新規解放ができる |
新たに追加された5つの個性的な職業で
戦い方の選択肢もさらに広がる
今回新たに登場した5つの職業についても簡単に説明しておこう。
「ケンカク」はソードマン以上に武器による攻撃に長けており,スキルもすべて攻撃系と徹底している職業だ。初期段階から修得できるパッシブスキル「二刀マスタリ」があれば,本来なら防具しか装備できないスロットに刀を装備して二刀流で戦える。
同じ武器を装備すれば単純に攻撃力は倍加し,その分防具は少なくなるので,必然的に防御力は低くなる。防御より攻撃という,先手必勝のスキルと言えるだろう。
「パイレーツ」は突剣と銃の2種類の武器を装備できるクラスで,遠近両方の攻撃を行えるという特徴を持っている。
パッシブスキルの「ガンソードマスタリ」を修得すると,右手に銃,左手に突剣の「ガンソード」という,ケンカクとはまた別の“二刀流”となり,接近戦なら銃で撃ちつつ剣で切り付けるという攻撃方法で,与えるダメージは増える。ガンソード時は,ケンカクと同じく防具の装備数が減る分防御力は下がるので,こちらも先手必勝のスキルだ。
「アルケミスト」は「術式」と呼ばれるスキルで,主に攻撃を行う職業だ。1作めから登場している職業のルーンマスターが使用する「印術」が遠距離の1方向,あるいはその部屋すべてに効果があることに対し,アルケミストの術式は射程が短い分,1回で複数方向に貫通性のある魔弾を飛ばせるものがある。不思議のダンジョンのマス目で構成された迷宮での戦いにも向いているスキルだ。
また,味方の武器にさまざまな攻撃属性を持たせる術式も持っており,苦手属性を持つ敵に対してはかなり強さを誇る。
ちなみに筆者は,ボスが倒せなかったタイミングでこのクラスを投入してその実力を実感し,以降ずっとレギュラーとして使っていた。
「モンク」は武器の「拳」を装備できる唯一のクラスで,敵の攻撃に対し一定確率で反撃する「カウンター」などのスキルを使うことでアタッカーとしての活躍を見せつつ,回復系のスキルも覚えていくという,頼りになる存在だ。
回復のスペシャリストであるメディックには劣るものの,メディックが倒れたときなどに素早く回復役へと回れる強みを持っている。
「ファーマー」は戦いよりもアイテム収集が得意で,伐採や採掘,採取ができるポイントで素材を多く見つけられる「鉱物学」「樹木学」「薬草学」を1人ですべて修得できる。
そのほか,地面に穴を掘って何らかの効果を掘り当てる「穴掘り」や,破裂するブドウを投げる「四散ブドウ」,自分が眠ってしまうというリスクもあるが,部屋の敵を一定確率で眠らせる「子守唄」など,ほかの職業が持っていない,特殊なスキルを多く覚えていくという,冒険が楽しくなる職業だ。
これら5つの新職業のほか,本作では「サブクラス」という新要素が加わっている。これはキャラクター本来の職業とは別に,さらにもう一つの職業に就かせることで,2つの職業の特徴やスキルを併せ持ったキャラクター育成が楽しめるというものだ。
この,15種の職業とサブクラスの組み合わせで,迷宮での戦略の幅はさらに大きく広がっている。それらを生かしたパーティを編成して,謎の多い迷宮や手強いモンスターに挑もう。
迷宮探索に向けて必要な要素は多いが,
順を追って覚えていけば大丈夫
迷宮は,一つの入り口から入ったフロアから複数のフロアへと枝分かれするという,いわゆる「アリの巣構造」となっている。上下の階段で行き来が可能な自動生成ダンジョンである各フロアは,足を踏み入れるたびにその地形や構造が変わっていく。
形は変わるものの何度でも挑戦でき,階段やアイテムを使って脱出すれば街へ戻れるので,いわゆる“ハック&スラッシュ”型のRPGのように,経験値稼ぎやアイテム集めをしながらキャラクターを育てるということももちろん可能だ。
資金を使って拠点となる「砦」をフロア内に建設することで,迷宮のアリの巣構造を固定。さらに控えのキャラクターを砦に派遣することで取得経験値の増加や新たなアイテムを入手できる点も前作から継承されている。こちらもキャラクター育成に活用しよう。
冒険に必要な知識は,専用の画面で詳しく説明をしてくれるので初心者も安心だ |
迷宮の特定のフロアに建設できる砦。アリの巣構造が固定され,探索がしやすくなる |
とにかく覚えることが多い本作だが,とくに重要な要素は専用のメッセージで説明してくれるし,メニューの「冒険メモ」で再確認もできる。
序盤はそれほど多くのことを考えなくても,バランスのいいパーティを組んでいれば迷宮のクリアは難しくなかったので,ゲームを進めながら順を追ってダンジョン探索の方法を覚えていけば問題ない。そして「ここは厳しい!」と感じたとき,冒険メモを見直して,難関を突破する術を探し出そう。
これらのさまざまな要素を,ストーリーやクエストの内容に合わせて段階的にプレイヤーに身に付けさせていく設計は見事なもので,さらに前作に引き続き登場する凶悪なモンスター「D.O.E」の存在によって,迷宮探索で味わうものとは違った緊張感を演出している。
このD.O.Eは,プレイヤーのギルドが建設した砦を目指して,迷宮の深部から少しずつ迫ってくる。つまり,D.O.Eに対抗するには,ダンジョン探索のパーティはもちろん,砦に派遣するメンバーも重要となるのだ。
迷宮深部から少しずつ迫ってくる強敵D.O.E。砦があれば進撃を止められ,防衛隊を配置しておけば撃退も可能だ |
闇の女商人が経営する迷宮ショップ。部屋に置かれたアイテムを購入できる。商品を持ち逃げすることもできるが……!? |
古代祐三氏入魂のサウンドも必聴
「世界樹の迷宮」シリーズといえば,コンポーザーの古代祐三氏が手掛けるハイクオリティなサウンドも魅力だ。本作もその例に漏れず傑作揃いで,とくに迷宮のサウンドは,新たな場所が出現するたびに音を聴くのが楽しみになったほどだ。
何よりプレイしていて驚くのは,イヤホンやヘッドホンを使わずとも,3DSの本体スピーカー(今回の試遊ではNew3DSを使用している)から聞こえるサウンドだけで十分にその味わいを楽しめるという点。3DSでこれほどインパクトのあるサウンドを楽しめる作品は久しぶりかもしれない。携帯ゲーム機の性質上,音を切ってプレイする機会も多いかもしれないが,個人的には必ず音が聞こえる環境でプレイをしてみたいと思っている。
ちなみに本作のサウンドトラックは2017年9月20日に発売される予定だ。また,本作の先着購入特典として,シリーズの人気曲を収録した「世界樹の迷宮 ユーザーズベストアルバム」も付属するので,ゲーム本編と合わせてこちらも楽しもう。
オーベルフェのBGMはこれから冒険に出るプレイヤーの気分を高めてくれる |
第1迷宮「森林の遺跡」は最初に訪れる迷宮だけあり,そのBGMもキャッチーだ |
「世界樹の迷宮」と「不思議のダンジョン」
両方の魅力が詰め込まれた“じっくり長く遊べるRPG”
今回初めて「世界樹と不思議のダンジョン」をプレイしてみて,あらためて「世界樹の迷宮」と「不思議のダンジョン」の相性がいいことを実感した。
両者のいいとこ取り,と言ってしまうのは簡単だが,単純な融合させただけではここまで良好な手触りにはならないかと思うので,“どれを削ってどれを採用するか”といったバランス取りに,開発陣はかなり苦労したのではないかと思う。
前述したように,ストーリー自体に1作めとのつながりはなく,またダンジョン探索を進めながらゲームシステムを覚えられるように作られているので,筆者のように「世界樹と不思議のダンジョン」に初めて触れるという人も,問題なく本作の世界に没入して,ゲームを楽しめるはずだ。
じっくり長く遊べる良質なRPGに仕上がっている本作。この夏のラッシュで発売された大作が一息つくタイミングで,手に取ってプレイしてみてはいかがだろうか。
「世界樹と不思議のダンジョン2」公式サイト
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