レスラーの実名収録に一切の後悔なし！　PS4版「ファイヤープロレスリング ワールド」の現状とこれからを，松本総監督に聞いた

　2018年8月9日にPS4版が発売予定の「ファイヤープロレスリング ワールド」（以下，「ファイプロW」）がシリーズ冠スポンサーとなった，新日本プロレスリングのシングルリーグ戦「ファイヤープロレスリング ワールド Presents BEST OF THE SUPER Jr.25」が，5月18日に東京・後楽園ホールで開幕した。
　既報にあるように，PS4版「ファイプロW」の発売日が発表された同開幕戦の会場内には，いたるところに「ファイプロW」の飾り付けがなされ，そして印象的なセルリアンブルーのリングマットのド真ん中には「ファイプロW」のタイトルロゴが描かれていた。

ジュニア戦士達が上空を派手に飛び回るリングに描かれた「ファイプロW」のロゴ。プロレス好きのゲームファンにとって感慨深い

　人気プロレスゲームシリーズ「ファイプロ」と，プロレス界の盟主である新日本プロレスがガッチリとタッグを組んだ本作だが，しばらく新情報が途絶えていただけに，今回の発売日と限定版の発表に，多くのファイプロファンおよびプロレスファンは心躍ったはず。4Gamerではさらなる詳細に迫るべく，後楽園ホールに来場していた「ファイプロW」総監督の松本朋幸氏にここぞとばかりにインタビューを敢行。開発の現状，そして今後の展開について時間の許す限り聞いてきた。

「ファイヤープロレスリング ワールド」公式サイト

スパイク・チュンソフトの「ファイプロW」総監督 松本朋幸氏

4Gamer：
　ついにPS4版の発売日が発表されましたね。おめでとうございます。

松本朋幸氏（以下，松本氏）：
　ありがとうございます。そして，お待たせしました！
　本当はG1 CLIMAX（※）開幕の前に出すつもりだったのですが，決勝大会に合わせたタイミングでの発売となりました。

※夏の恒例イベントとして行われる，新日本プロレスのヘビー級最強を決めるリーグ戦。今年（2018年）の「G1 CLIMAX 28」は，7月14日の東京・大田区総合体育館で開幕。8月12日に日本武道館で優勝決定戦が行われる

4Gamer：
　現在の開発状況について聞かせてください。

松本氏：
　実名レスラーやストーリーモードの完成の目処がついたところですね。6月中にはそれらの作業が終わるかと思います。

4Gamer：
　参戦レスラー第1弾として，39人の選手が公開されましたね。外国人や若手といった顔ぶれもですが，想像していた以上の人数だったので驚きました。

松本氏：
　これでもまだジュニアヘビー級の選手は，数人しか入っていないですからね。
　ジュニアヘビー級の選手とストーリーモードは，後日ダウンロードコンテンツとして販売する予定です。ほかの選手についても，新たに権利がクリアになり次第追加していきたいと考えています。

4Gamer：
　ファイプロ公式や松本さんのTwitterでは，実際のレスラーとの音声収録の様子も公開されています。

松本氏：
　「オオッ」や「オリャ」といった，技を出すときの掛け声はもちろん，「3つ言わせてください」といった，プロレスファンにはおなじみのセリフなど，大体1選手で60パターン，多い選手だと90パターン近くのボイスを収録しました。

4Gamer：
　39人分でそれだけのパターン数となると，収録作業はかなり大変そうですね。また，どのボイスをレスラーにセットするか悩まされそうです。

松本氏：
　収録については柴田勝頼選手と鈴木みのる選手を残すのみで，ほぼ終了しています。これまでボイスは1人のレスラーに2種類までセットできましたが，これを拡張して5種類まで可能にするので，より自分好みの組み合わせでボイスをセットできるようになります。
　ファンでしたら，好きな選手のボイスを，エディット画面で選んで聞いているだけでも十分楽しめると思います。

4Gamer：
　音声収録を進める中で，選手側からの意見などはありましたか。

松本氏：
　例えば「ブレイク！」を連呼する矢野 通選手ですが，台本上では「ブレイク！」と言う回数が2回だったところを，より“らしく”なるということで「3回にしたい」と提案してくれました。あと，SANADA選手が「こういう風には言わない」と，その場でセリフのニュアンスを変えてくれたこともありましたね。
　やはり自分自身のセリフというところもあってだと思いますが，みなさんにはこだわりをもって収録に挑んでいただけました。おかげで，より実際の選手らしく，その個性が生かされたものになったと思います。

4Gamer：
　松本さんは音声収録作業や，テレビ番組「新日本プロレス大作戦」（※）への出演など，実際にレスラー達と交流する機会が多いと思います。参戦したレスラー本人達は，「ファイプロW」に対してどんな反応を見せているのでしょう。

※プロレス，格闘技の専門チャンネル「FIGHTING TV サムライ」で放映中のテレビ番組。新日本プロレスの選手達がさまざまなミッションに挑む“体育会系バラエティ”

松本氏：
　みなさんめちゃくちゃ紳士的で，凄く好意的に受け取ってくれているんですよ。非常に光栄ですし，なにより「ファイプロ」の看板の大きさをあらためて実感します。選手のみなさんが自身のキャラクターを嬉しそうに操作する姿を見るたび，「やっぱりファイプロを復活させてよかった」と。
　そんなレスラーのみなさんとの交流をとおして，これまでファイプロを追っかけてくれていた層とは別の，新日本プロレスファンのみなさんからのTwitterフォロアーも増えています。とくに，ファイプロを知らないような若い女性のフォロアーも増えていて，より実際のプロレスやファンとのつながりが強くなったと感じますね。

看板には，オカダ・カズチカ選手，棚橋弘至選手，内藤哲也選手，ケニー・オメガ選手のゲームキャラクター姿が

4Gamer：
　選手といえば，1月3日の大プロレス祭りで，KUSHIDA選手が「コラボ技を作りたい」と発言されていました（関連記事）。こちらはどうなっているのでしょう。

松本氏：
　今大会では，コラボ技に先行してコラボTシャツ（※）が発売されましたが（笑），技のほうはまだ実現していないんですよ。KUSHIDA選手と相談したうえで，道場にお邪魔してモーションを収録したいのですが……現状はいろいろあってできていないんです。
　でも，必ずやります！　あと，お声がけがあれば，ほかの選手ともコラボ技の開発ができればと考えています。

※初代NJPWファイプロ王者でもあるKUSHIDA選手の熱いリクエストによって生まれたコラボTシャツ。背面にはKUSHIDA選手の必殺技の一つ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の連続画像がプリントされている（新日本プロレス「闘魂SHOP」のコラボTシャツ商品ページ）

4Gamer：
　コラボ技の実装もですが，実際のレスラーが新技を生み出したときなど，どうなるのか気になります。最初に登場する39人の実名選手のアップデートはあるのでしょうか。

松本氏：
　ご要望が大きければアップデートで対応していきたいと考えていますが，まず，これまでデフォルトのレスラーはエディット不可能でしたが，これを変更してエディットできるようにします。
　なので，モデルレスラーで呼び出し，技を入れ替えて……という感じで，プレイヤーが自分自身で好きなようにカスタマイズできます。先ほどお話しした，ボイスのセットもですね。

4Gamer：
　おお，ファンがより自分好みに，応援しているレスラーをファイプロのリングに上げられるんですね。これはプロレスファンとして期待が高まります。
　今回，実名選手のほか，限定版や予約特典も発表になりましたが，こちらもプロレスファンなら見逃せないものとなっています。

松本氏：
　限定版「PREMIUM EDITION」のグッズはヤバいですよね。僕もすぐにでも欲しいですよ（笑）。「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」（※1）とコラボしたTシャツとタオルですが，かなり攻めてますよ！　もちろんCMLL（※2）の許諾を取っているものなので，“ロスインゴ”のオフィシャルグッズになるんです。


※1 新日本プロレスの人気ユニット。略称は「L・I・J」
※2「L・I・J」の本家となる「ロス・インゴベルナブレス」が活動拠点とするメキシコのプロレス団体

4Gamer：
　あと，どこかで見覚えのある雰囲気のミニフィギュアですが（笑），これは古くからのファンにはたまらないものがあります。


松本氏：
　ちゃんと“アレ”を手がけた造形師さんが作ってくださっているんです。あと，39選手の技やデータを網羅した，予約特典の「新日本プロレスレスラー名鑑」もいい仕上がりですよ。

4Gamer：
　こちらも，プロレス雑誌の選手名鑑のようなデザインで面白いです。
　さて，PS4版ももちろんですが，PC版の新要素である「団体経営モード」も気になるところです。こちらの完成見通しはいかがでしょう。

松本氏：
　Twitterでも発表いたしましたが，こちらの開発は現在80％で止まっている状態で，楽しみにしてくださっているみなさんには申し訳なさでいっぱいです。
　いまはPS4版の完成が最優先なので，団体運営モード担当のプログラマーも移植作業に回ってもらっているため，どうしても手が足りないんです。開発会社が変わったこともあって，どうしてもうまいことアサインをできていないという面もあります。
　先ほども少しお話しましたが，PS4版の移植作業が6月いっぱいでひと段落する予定なので，そこから作業を再開します。秋口くらいにリリースできればと考えているので，PC版のプレイヤーのみなさんにはもう少しお待ちいただければと思います。

4Gamer：
　今，さらっとおっしゃいましたが「開発会社が変わった」というのは。

松本氏：
　メインスタッフはそのままですが，それ以外をガラッと変えたんです。なぜそうなっちゃったかという話なら，いくらでも話せるのですが（苦笑）。

4Gamer：
　気になるところですが，それはまた次の機会にゆっくりとお願いします（笑）。
　最後に読者へのコメントをいただきたいのですが，その前に今回の実名レスラー参戦についてその思いを聞かせてください。

松本氏：
　「やってよかった」と，めちゃくちゃ思っていますね。これまでの「ファイプロ」シリーズのファンのみなさんのことを考えれば，いろいろ思うところもあるだろうというのは理解しています。でも，本作に限って言えば，タイトル名にあるとおり，新しいファイプロの世界（ワールド）を作り上げるうえでは大正解だと思っていますし，一切後悔はしていないです。

4Gamer：
　では，発売に向けての意気込みをお願いします。

松本氏：
　PC版アーリーアクセスのリリースから1年近くお待たせしてしまいましたが，PS4版も無事に完成できそうです。お待たせした分，さらに成長した「ファイプロW」をお届けしたいと思いますので，ご期待ください。
　発売のタイミングで開催されているG1 CLIMAXには協賛として加わっているので，会場での情報発信もできばと考えています。あと，G1には，できれば来年は（協賛ではなく）メインとして関わりたいですね（笑）。ともかく，発売が遅れないように頑張ります！

4Gamer：
　ありがとうございました。

赤コーナーのコーナーマットに表記された「ファイプロW」の略称である“FPW”。そして青コーナーには，「ファイプロ」シリーズに登場する架空の団体“VIEW JAPAN”の文字が。意外にも新日側からの提案なのだとか
同大会の名物となっている出場選手垂れ幕に混ざり，「ファイプロW」の垂れ幕も

「ファイヤープロレスリング ワールド」公式サイト