企画記事
「OCTOPATH TRAVELER」5周年記念。ドット絵RPGの新たな方向性を示したその魅力を改めて深堀りしたい
かつて,日本製のRPGは,ゲームの花形ジャンルだった。「職人芸ともいえるドット絵」と「ターン制のコマンド入力型の戦闘」がその象徴で,多くの人が美麗なドット絵で描かれた世界に魅了された。
しかし,いつしかそれは骨董品のような扱いになり,次第にその数は減っていった。「ゲーム機の映像進化による開発費の高騰」と「海外製RPGの台頭」が主な要因ではないだろうか。
日本産のRPGは世界的に見れば,ある意味特殊なジャンルにもなってしまい,かつての勢いはなくなっていた。「ターン制の戦闘」「西洋ファンタジーな世界設定」「アニメ,マンガ絵的なキャラクターデザイン」といった要素のあるRPGを“JRPG”と称し,揶揄する使われ方も見られた。今でこそJRPGという言葉は,1つのサブジャンルを指す意味で使われることも多いが,日本のクラシカルなRPGが好きな筆者は,かつてほどの勢いがなくなっていることを少々寂しく思っていたものだ。
そんななか,2018年に発売された「OCTOPATH TRAVELER」は目が覚めるようなタイトルだった。
プレイヤーの視覚に訴えかける「映像」,聴覚を刺激する「音楽」,ゲームの目的にも関わってくる「物語」,主人公を自分で操作し,ゲーム内に形作られた世界を体感できる「探索」,そして,ゲームとしての楽しさを決定づける「戦闘」。RPGはこの5つの要素で構成されていると筆者は思っているが,「OCTOPATH TRAVELER」はすべてが完璧なRPGだったのだ。時代の流れという濁流の中で打ち上げられた,JRPGの反撃の狼煙のように感じられ,たまらなく嬉しかったことを覚えている。
前置きが長くなったが,本稿ではそんな「OCTOPATH TRAVELER」の発売5周年を記念し,筆者が感じた「OCTOPATH TRAVELER」というRPGの魅力を改めてお伝えしたい。
2023年2月には続編の「OCTOPATH TRAVELER II」が発売されたこともあり,「タイトル名とドット絵がすごいのは知っているけど……」という人も,本稿を読み進めてプレイのきっかけとなってもらえれば幸いだ。
なお,「物語」についてはネタバレになってしまうので,ほんのりと触れる程度にしつつ,「映像」「音楽」「探索」「戦闘」の魅力を順に語っていきたい。
「OCTOPATH TRAVELER」公式サイト
「OCTOPATH TRAVELER II」公式サイト
2D? 3D? いいえ,HD-2Dです
まず「映像」の見どころは,なんといっても「HD-2D」だ。「OCTOPATH TRAVELER」を遊んだことがなくとも,名前や画像は見たことがあるという人は多いのではないだろうか。ドットと3DCG,エフェクトを合わせたHD-2Dは,“立体的になったドット絵”とでもいうべき独自の雰囲気を醸し出している。多くのRPGが2Dから3Dへと進化していくなかで,「ドット絵のRPGを現代の技術で進化させたら,こうなるんだ!」という新たな可能性を提示してくれた。
かつてのドット絵を使用したRPGは上空からの見下ろし視点が採用されていたが,「OCTOPATH TRAVELER」では視点がやや下がり,町やダンジョンを「横から眺める」ような感じになっている。これによって,奥行きや立体感をより感じられる。建物の裏側や物陰に宝箱が隠されていることもあるなど,決して見た目のインパクトだけではない,ゲームとしても効果的な新たな映像のアプローチだ。
美しいのは風景だけではない。巨大なサイズのドットで描かれるボスも見どころだ。
フィールド画面では,さっきまで主人公たちと同じサイズだった敵が突然巨大化するが,正直に言うとあまりのギャップに,最初はちょっと吹き出してしまった。しかし,よくよく思い出すと,こういった戦闘シーンにおける巨大化というのは,昔のRPGでもよく見られる表現方法だった。ドット絵で迫力を出すためには緻密な描き込みが必要だが,それを可能にするには,サイズそのものを大きくするしかない。敵の強大さを表すには,物理的に大きくするしかなかったわけだ。
筆者がボスのドット絵で最も好きなのが,ジョブ「武芸家」を解放するために倒さねばならない強敵「豪武匠ウィンヒルド」だ。6本腕で目元はマスクのようなもので隠れており,女性と思われる衣装をまとっている。最強の剣士ともいえる存在が女性であるという意外性と,目元を隠しても戦えますよという強者感に,「やべぇ,絶対つえぇ……」と思わずうろたえた。
RPGの戦闘中に「思わず見惚れる」というのは,ドット絵ならではのことではないかと思う。筆者はドット絵をゲームにおける芸術品だと思っているが,ドット絵の良さは何かと言われると,「適度なデフォルメ」と「想像の余地を残す」ことではないだろうか。
高解像度の写真が撮れる時代になっても,水彩画や油絵の良さは変わらない。限られた色数しか表示できず,ボイスもなかった時代に,キャラクターに命を吹き込もうとした執念の賜物だ。
「OCTOPATH TRAVELER」は,開発陣の「かつて自分たちが楽しいと感じた,あのころのドット絵のRPGを現代に蘇らせよう」という志で制作されたものらしい。本作のHD-2Dは,制作側のやりたいことがヒシヒシと伝わってくる,完璧な映像だった。
RPGにおける,音楽による盛り上がりのハードルを上げた“バトルエクステンド”
良いRPGのBGMには,必ず名曲がある。もちろん,「OCTOPATH TRAVELER」も例外ではない。本作は間違いなく,HD-2Dで描かれた世界に,BGMが命を吹き込んでいる。
音楽は個人の好みがあるので,万人に向けて書くことは難しいのだが,町は落ち着くし,戦闘曲はカッコいいし,イベントシーンは盛り上がるしで,どんな人がプレイしても,総合点は非常に高いと思われる。何より,「OCTOPATH TRAVELER」の音楽には,どこか“気品”がある。ファンタジーRPGの世界に,これ以上ないくらいにフィットしている。
そんな本作の音楽で話題となったのは,ボス戦が始まる前のイベントシーンの曲からシームレスにボス戦の曲へと遷移していく「バトルエクステンド」と呼ばれる仕組みだ。ゲーム中は曲のつなぎ目が感じられないため「こういう曲なんだ」と勘違いしてしまうが,イントロ部分とボス戦の曲は別のパーツになっていて,サントラでも,各キャラのイントロ部分だけが別の曲として収録されている。
難しいのは,イベントシーンのメッセージ送りのタイミングはプレイヤーによって異なるため,どのタイミングでボタンが押されても,スムーズにボス戦の曲に移行させなければならない点だ。これには開発陣も作曲者も苦労したと思うが,その成果は劇的だった。盛り上がりが違う。
ボス戦前のイベントシーンは,プレイヤーも「この流れは,絶対ボス戦だよな……」と予感しながら観ているわけだが,「何の因果か踊り子稼業,仇をたずねて三千里。流れ流れて幾星霜,ここで会ったが百年目! それでは戦っていただきましょう,プリムロゼ因縁の相手! 左腕の男──ルフス!」という前口上が聞こえてくるかのような,シーンに合ったイントロから,鬼のように盛り上がるボス曲「ボスバトル 2」がドカーンとかかるのである。
「ボスバトル 2」は,オリジナルサウンドトラックの公式サイト(関連リンク)の「Disc 3」のページで試聴できるので,聴いたことのない人はぜひ聴いてみてほしい。崖の上から特撮ヒーローが登場したかのような,開始12秒でテンションをMAXまでもっていく神曲で,いざ始まるボス戦を前に「よっしゃあ,やったるぞぉぉぉ!」という気分にさせてくれる。
この「バトルエクステンド」は,アーティストのライブで「CDとは異なるイントロから始まって,おなじみの曲の出だしにつながっていく」というライブならではの演出からヒントを得たらしいのだが,言われてみればなるほど,あれは盛り上がる。
ただ,作曲者の西木康智氏のnote(関連リンク)によると,3種類あるボス曲すべてにつながるよう設計しなければならなかったため,イントロのスタート音が「ソ」に限定されるという制約があったそうだ。大変だったろうなぁ……と思いつつも,RPGにおけるボス戦で最高の体験をさせてもらったことに,ただただ感謝しかない。
広大な世界を自分の足で歩き,新たな発見をしていく楽しさ
「映像」と「音楽」がゲームを構成する“素材”であるとするならば,「探索」と「戦闘」は,プレイヤーが介入できる“ゲーム”の部分だ。プレイヤーはキャラクターを動かして移動させることで,擬似的な旅をする。町から町への移動,そこで目にする風景,道中での意外な発見,ザコ敵に倒されそうになるハプニング等,旅の道程そのものがRPGの“探索”であり,思い出となる。近年のRPGでは,フィールドが簡略化されることも多いが,本作はそうしたRPGの探索の楽しさもしっかりと作り込まれている。
本作は最初から世界各地を移動できるため,ストーリー上,まだ行かなくていい洞窟やレベル的に厳しい場所にも行くことができる。本来なら終盤に行くはずの町に,全滅覚悟でボロボロになりながら到達して,その町の店で性能の良い武器防具をいち早く入手するという進め方もできる。
一度到達すれば「ファストトラベル」が可能になるので,後々の利便性が向上するし,到達することによる達成感も大きい。こうして世界地図が少しずつ埋まっていく楽しさは,間違いなく,RPGの気持ち良い部分だ。
そうやって到達できても,店で売られているアイテムが高額で手が出ない……という悩みにも対応できるのが,「OCTOPATH TRAVELER」の懐の深さだ。
まず,お金については,商人のトレサが「歩いてリーフ」という,面白いアビリティを持っている(リーフはこの世界における通貨)。フィールドやダンジョンを移動すればするほど,お金が入るのだ。
また,各キャラは「フィールドコマンド」という専用のコマンドを持っており,盗賊のテリオンであれば,NPCの持ち物をいただく「盗む」を実行できる。NPCの所有物はすべての町のキャラクターに個別に設定されている。すさまじい物量だ。
ただしフィールドコマンドには失敗した場合,町人との関係性が悪化するというリスクを伴うものがある。「盗む」もそういったコマンドの1つで,何度も失敗していると関係性が最悪になり,ついには,町でフィールドコマンドを一切使用できなくなってしまう。
町人が持っているアイテムは欲しい,けど,盗むのは気が引けるという人は,商人のトレサが「買取る」というコマンドを持っているので,そちらを活用するといいだろう。ものによっては盗める確率が0%で,買い取りでしか入手できないものもある。
仲間たちの「フィールドコマンド」は豊富で,町の人ひとりひとりに設定されたフレーバーテキストが楽しめる「探る」「聞き出す」コマンドや,町の人を1人だけ連れ回せる「導く」「誘惑」コマンド,町の人と1対1のバトルができる「試合」などさまざまだ。
こうした仕様により,物語的な推奨レベルの町に留まらず,冒険して先の町を目指すメリットや楽しさがちゃんとある。無理なく進めるルートと,思うがままに世界を回る自由度の高さが両立されているのが,非常に好印象だ。
懐かしくて新しい。スクウェア・エニックスの遺伝子を感じる戦闘システム
本作では「ジョブ」と「アビリティ」システムが採用されている。経験を積んだジョブの能力をアビリティとして習得し,別のジョブになったときも,そのアビリティを活用できる。スクウェア・エニックスのRPGに親しんできた者であれば,おなじみのシステムといってもいいだろう。
しかし,“いつものそれ”では終わらないのが,「OCTOPATH TRAVELER」だ。本作には「ベースジョブ」と「バトルジョブ」というものがあり,ベースジョブは変更できない。一方,バトルジョブは好みで何度でも変更することができる。たとえば,「商人」がベースジョブのトレサがバトルジョブを「薬師」にすると,商人+薬師,2つのジョブのアビリティを駆使して戦うことができるというわけだ。複数のキャラに同じバトルジョブをセットすることはできないため,どういう組み合わせにするかが重要になってくる。
戦闘ではお金や経験値とともに,「JP」というポイントを入手できる。これを使って「アビリティ」と「サポートアビリティ」の習得をしていくのだ。「アビリティ」は各ジョブが戦闘中に使える能力で,「サポートアビリティ」は戦闘に限らず,冒険が有利になるもの。
サポートアビリティはアビリティの習得数に応じて開放されていき,習得したサポートアビリティは,ジョブに関係なく最大4つまで装備することができる。これがセッティングの幅を広げている。
そして戦闘における最大の特徴が,「ブレイク」と「コマンドブースト」という2つのシステムだ。敵には複数の「シールド」が張られており,弱点属性で攻撃することで,シールドを1つ破壊できる。シールドをすべて破壊された敵は「ブレイク」状態となって,ブレイクしたターンを含めて2ターン動けなくなり,無防備になる。ブレイクが解除されると敵のシールドが復活するので,またシールドを破壊しブレイクする必要が出てくる。この無防備タイムに味方の火力を全力で注ぎ込んで一気呵成に攻めるのが,本作の醍醐味だ。
弱点属性は,「剣・槍・短剣・斧・弓・杖」の物理攻撃6種と,「火・氷・雷・風・光・闇」の魔法攻撃6種の計12種。初見の敵は弱点がすべて「?」で不明になっており,まずは弱点を判明させるところからになる。面倒臭そうに聞こえるかもしれないが,これは各ジョブがまんべんなく活躍できる要素でもある。
たとえば,分かりやすい前衛職である「剣士」は,使用できる武器が「剣」と「槍」に限られている。そのため,弱点が「短剣」「斧」「弓」などの敵に当たると,弱点を突くことができない。弱点を突くための装備武器を補う目的でバトルジョブを選ぶのもいいし,他の仲間のジョブで武器種をカバーするのもアリだ。ここに,仲間との協力と,ジョブの組み合わせの妙がある。
シールドの破壊や,シールドの破壊後の攻撃において重要なのが,「BP」による「コマンドブースト」だ。各キャラは1ターンごとに「BP」というポイントが溜まっていき,BPを使うと攻撃回数が増えたり,威力が上がったりする。
シールドが3つ張られた敵がいたとして,BPが2ポイント溜まっているキャラが味方にいるなら,これを消費して弱点属性の「たたかう」を選択することで3回攻撃になり,1回の行動でシールドを3つ破壊できる。一気にブレイクまでもっていけるわけだ。
BPをシールド破壊に使うのか,シールド破壊後の攻撃に使うのかといった部分や,最初から仲間の1人をシールド破壊役に徹するセッティングにするなど,戦略性は高い。
また,敵と味方の行動順が常に表示されているので,敵がブレイクから復帰するまで,こちらがあと何回攻撃できるか……などの組み立てを行えるのもいい。「マズい,このままでは全滅する!」というピンチの際にも,とりあえずBPをすべて使ってシールドを破壊してブレイクすることで,味方の回復に使う時間を稼ぐという戦い方もできる。
敵下のパネルに表示される弱点の並びは「剣・槍・短剣・斧・弓・杖・火・氷・雷・風・光・闇」の順になるため,この並びを利用して,ある程度は推理することもできる。たとえば,見えている弱点が「?・槍・氷・?」という敵がいたとしたら,左端は「槍」の前なので「剣」で確定。右端は氷以降なので,少なくとも「火」ではない,という感じで絞っていける。
BPを使ったブーストは「ブレイブリーデフォルト」,ブレイクからの一気呵成に攻める戦いは「FINAL FANTASY XIII」でもおなじみのものだ。しかし,本作はジョブと使用武器と弱点のシステムがあることで,より深く,そして洗練されている印象を受ける。
こうして文章に起こすとややこしく見えるかもしれないが,いざやってみると,やるべきことは単純明快だ。ターン制のRPGにおける戦略性については,正直,もうネタが出尽くしたのではと思っていたのだが,各要素が実に見事に絡み合い,奥深いバトルを作り出している。スクウェア・エニックスの遺伝子が確実に受け継がれていることを感じられる,完成度の高い戦闘システムだ。
8人の旅が終わったとき──真実が姿を現す
「OCTOPATH TRAVELER」というタイトル名には,8つ(OCT)の道(PATH)を征く8人の旅人(TRAVELER)という意味が込められている。境遇も目的も異なる8人が行動を共にし,時には協力しながら,各々の目的を達成する。
しかし,8人の物語はそれぞれ独立しており,同じ世界を舞台にした短編集のようでもあった。この8人の話を1つのゲームとしてまとめた意味があまり感じられなかったのだ。筆者が8人のメインストーリーをクリアしたとき,この部分が少々残念だと感じていた。
しかし,そんな唯一の欠点だと感じていた部分は,予想外の展開で塗り替えられた。
クリア後にラスボスより強い敵がいたり,隠しダンジョン的なものがあったりすることは,RPGではもうお約束のようになっている。筆者はそういうものが大好きなので,8人の物語を終えた後も,まだクリアしていないサブクエストなどをコツコツとこなしていたのだが,そのサブクエストのなかの1つが,思いもよらぬ展開を見せ始めたのだ。
8人の物語は,各々の因縁の相手を討伐することで,それぞれが完結を迎える。しかし,あるサブクエストによって,この世界で起きていた出来事の“過去”が明らかになっていき,8人の物語は,思わぬ形でつながっていく。最初に選んだキャラクターの物語を終えたときにスタッフロールが入るから勘違いしていたが,まさか本編がまだ終わっていなかったなんて……。
本作の物語は,最後の最後に8つの道が1つに収束し,8人が同じ熱を持って1人の敵に挑むことになる。そう,短編集などではなかったのだ。筆者はこの展開を見て,「嬉しい」という感情が真っ先に来た。子供のころに夢中になったRPGに,ここまでの仕掛けを盛り込んだ作品はなかった。「かつてのドット絵のRPGを現代に蘇らせよう」という志を持って作られた作品が,蘇るどころか,かつてのRPGを超えてきたのだ。
冒頭で少し書いたような,RPGというジャンルが抱える事情とは別に,筆者はRPGというものに諦めの感情すら抱いていた時期がある。自分にとってのRPGは,誰もが「あのころは良かった」と感じる,青春のようなものだったのかもしれない。仮に,あのころのようなRPGがまた出てきたとしても,歳をとり,自分がRPGを楽しめる時期はもう終わったのではないか──と。
しかし「OCTOPATH TRAVELER」は大きく異を唱えてくれたのだ。RPGというジャンルに元気がないように感じられたのは,RPGが時代遅れのものになったわけではなく,自分が歳をとったからでもなかった。
それを証明する作品が2018年という時代に現れてくれたことによる感動。そして,良質なRPGを世に出していたスクウェアとエニックスが合併したスクウェア・エニックスからそれが再び出てきたということが,たまらなく嬉しかった。「OCTOPATH TRAVELER」の最後に出現する“まだ終わっていないぞ”という真相は,筆者のRPGに対する感覚へのメッセージのように感じた。
ストーリーの最後の仕掛けはある意味では大きなネタバレともいえる内容なため,この部分について書くべきかどうかは迷ったし,担当編集とも協議した。そして,「OCTOPATH TRAVELER」の素晴らしさを語るうえで,「ここを避けて通れるのか」と熟考した結果,最低限は触れている。
ちなみに続編の「OCTOPATH TRAVELER II」では,8人の物語を終えた後に「終章」としてまとめの章に入るようになっているため,プレイヤーが見落とさないようになっている。初代では隠しボスまで頑張った人への特別なご褒美という扱いだったが,見つけたときの嬉しさがあった半面,おまけにしては,あまりにももったいないという気がしたので,この変更は素晴らしいと思う。
最後の収束感だけではなく,8人の物語をひとつひとつしっかりと理解していくと,キャラクターや世界設定が非常に良く練られていることも分かる。オフィーリアのメインストーリーで語られる「式年奉火の儀式」は,そもそも何のために始まった儀式なのか。アーフェンが薬師を目指すきっかけとなった命の恩人は,なぜ無償で薬を与えてくれたのか。
8人の物語はそれ自体が真相に向けた伏線のようでもあり,ラストまでプレイすることで,上質のファンタジー小説を読み終わったかのような体験が得られる。「OCTOPATH TRAVELER」は,戦闘の戦略性を楽しむというゲーム面はもちろん,物語を読み解くことでも極上の体験をさせてくれる,珠玉のRPGだ。
本作を未プレイならば,ぜひ遊んでほしい。体験版も配信されているので,まずはそちらを試してみるのもいいだろう。プレイ後の満足感は,筋金入りのRPG好きである筆者が自信を持ってオススメする。
とくに,スーパーファミコン後期のRPG黄金期を体験し,当時夢中で遊んだ中年世代にはブッ刺さるはずだ。「最近のRPGはちょっとなぁ」とか「時間がない」とか言っている場合ではない。子どもだった我々を夢中にさせ,心に感動を打ち込んでくれた“JRPG”は,まだ終わってなどいなかったのだから。
「OCTOPATH TRAVELER」公式サイト
「OCTOPATH TRAVELER II」公式サイト
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