インタビュー
アップデートで巻き返しを図る「SOUL REVERSE」クリエイターインタビュー。バランス調整が施されたVer.1.2の狙い……のその前に,苦戦の理由を聞いてみた
不公平感を是正するマッチングと装備の価値について
4Gamer:
では,マッチングについてはいかがでしょうか。ここについても,修正点が多々あるようですが。
小田嶋氏:
マッチングもなかなか難しい問題で,何を重視するかでアルゴリズムが変わってくるんです。大人の事情であまり詳しく言えないのですが,カルマやオーダー,それからバトル数といった軸があります。それから,現在のプレイヤー数ですね。これは時間帯によって変動しますから,また別な軸になります。概ねこの4つの軸でバランスを考える必要がある。今回の修正は,その中から初心者同士がマッチングしやすいように配慮しつつ,勝率を主に参照してマッチングするように調整しています。
4Gamer:
プレイヤーの声として,そういう要望が多かったわけですよね。
小田嶋氏:
そうですね。これは「ボーダーブレイク」の頃からの課題でして,プレイヤーはとにかく模擬戦――本作でいう仮想戦※をやりたがらない傾向にあります。どんなに腕前が離れていても創世戦役(全国対戦)がしたいと言う。けれどもいざマッチングが成立すると,今度は同じ腕前のプレイヤー同士で対戦したくなる。
※模擬戦/仮想戦……マッチングが成立しなかった場合に発生する,NPCを加えた対戦モード。マッチング成立した段階で,自動的に全国対戦に移行する。
4Gamer:
それは当たり前なのでは?
小田嶋氏:
はい。だからそこをフレキシブルに対応するようにアルゴリズムを作らなくてはならなくて……今はそれができない。なので,ここはもっと時間をかけて研究していく必要があると思っています。
4Gamer:
そのほかで不満が大きかった部分というと,宝箱関連でしょうか。これは単純にレアリティの高いものが出やすくなったのですか?
小田嶋氏:
はい。これは今までちょっとしょっぱかったと反省しています。また,僕らが想定していたよりも,低オーダー帯での昇格にかかるバトル数が多くなる傾向にあった。そこで締め付ける意図はなかったので,これは緩和する方向で調整を行いました。
4Gamer:
宝箱を全部開けるのに,GPが必要になる部分は変わらないのでしょうか。正直,ここで消費するGPが高すぎるように感じるのですが。
小田嶋氏:
これは言っていいのか分からないですが……ゲームバランス的には少しずつ装備を集めていっても,戦えるようにはなっているはずなんです。銅装備が極端に弱いかというと,そういうわけではないですし。もちろん,気持ちとして全部開けたくなるのは分かりますが,問題はむしろそういう気持ちにさせてしまうこと――射幸心をあおりすぎている部分なのかなと。
4Gamer:
キャラクターの強さにおける装備品の比重については,開発チームとしてはどう考えているんでしょうか。とくに遠距離攻撃職であるメイジとレンジャーは,装備が揃っていないとキツイという声をも聞きますが。
小田嶋氏:
装備品の比重という話の前に,遠距離攻撃職がなぜキツイかという話をすると,それはやっぱり生命力(HP)が少ないからなんですよ。ちょっとのミスも許されないけど,一方的に攻撃できるのがこのゲームの遠距離攻撃職なので。そのピーキーさが,初心者にとって難しく感じられてしまう。強みが分からないから,前に出て死んでしまうという。
4Gamer:
ああ,確かによく見る光景ですね。
小田嶋氏:
それでもメイジだったら,遠くから魔法を放り込めばそれなり以上に効率よく戦えることが比較的分かりやすいんですけど,レンジャーはAim力も必要になってくるので攻撃がなかなか当たらない。メイジに比べると生命力(HP)も持久力(ST)も多いから,前に出られそうに思ってしまうけど,そうするとやっぱり死んでしまう。その両面でレンジャーは難しいんだと思います。
4Gamer:
そもそも,最初は近接職のみアンロックされていて,遠距離攻撃職は後にならないと選べない形にすることは考えなかったのですか?
酒井氏:
確かにそうする手もありました。ですが,「メイジがやりたいのに,なんで選べないんだ!」というストレスも与えかねないため,こうなっています。
小田嶋氏:
今の形を選んだのは,そうした世界観を重視した結果です。アンロック式にすることもできましたが,やっぱり「ファンタジー世界で魔法使いになりたい」っていうパッションは,止めようがないだろうし,その欲求に応えられないのは,ゲームの入口として健全でないと考えました。
4Gamer:
なるほど。
小田嶋氏:
それで,装備品の話に戻るんですが,開発目線でいうと,防具とソウルは両天秤なんですよ。単純に体力が上昇する防具を選んでいくと,コスト的にソウルが自由に選べなくなる。反対に防具を妥協できさえすれば,ソウル選びに幅が出る,というような。
4Gamer:
防具とソウルがジレンマの関係になっていると。そこでバランスをとっているわけですね。
小田嶋氏:
ええ。もちろんプレイを重ねていけば,その努力へのインセンティブとして,ちょっといい防具が手に入る。ただ,それも極端に性能が良いかというと,そういうことはないと思います。プレイヤースキルさえあれば,その差を覆すことができる。だから我々としては,高レアな装備にそこまでこだわらず,順序よく揃えていってくれればと思うんですが……。
4Gamer:
しかし,例えばメイジについて言うなら,「高レアの呪殺のワンドがないと話にならん」という声が大きいようです。これは防具でなく武器の話ですが。
小田嶋氏:
話にならないということはないと思います。ほかの杖で戦えないわけではないですし。ただちょっとでもいい武器を……という気持ちは分かりますし,勝っている人が「呪殺が強い」って言ったら,皆がそう感じてしまうのも無理はないかなと。
4Gamer:
では開発としては,「呪殺のワンド」は強い武器ではないという認識なんでしょうか。
小田嶋氏:
いや……初期のバランス調整がうまくなかったこともあって,確かにちょっと強すぎました。そこは至らなかった点として受け止め,今後のバランス調整に活かしていきたいと考えています。
4Gamer:
Ver.1.2の意図については,概ね理解できました。とにくスタミナ周りの変更は,遊びやすさに直結しているだけあって,プレイヤーにとっては待望の修正になるのではないかと。ただ,これはあえてこう聞きますが……なぜこれが最初からできなかったのでしょう。
小田嶋氏:
当然そう思われますよね……。
酒井氏:
そうですね……我々の方針として,今作ではまずゲーム本編をしっかり濃く作ろうという思いがありました。それを重視した結果,ゲーム序盤のチュートリアルなど“始めたばかりのプレイヤーに対するゲーム内でのケア”は後回しにせざるを得なくなってしまった。違うやり方もあったかもしれませんが,本編が薄くなってゲームが短命に終わることだけは避けたかったんです。
4Gamer:
Ver.1.2で手が加えられた部分は,ロケテストの段階でも不満が出ていたのではないかと思うのですが,それは汲み取らなかったのでしょうか。
小田嶋氏:
もちろん,ロケテスト時に判明した問題点のうち,対処が可能なものについては修正を行いました。ただ短時間でのロケテストでは,根本的な問題の解決が難しく,ある程度大きなバージョンアップを待たなくてはならなかった。
酒井氏:
あとはやっぱり,実際に稼働してみないと分からないことも多くて……。
4Gamer:
いや,例えばマッチング中にGPが減っていく問題あたりは,これも今回のアップデートで修正済ではありますが,少しプレイすれば誰でも気付くでしょう……。
小田嶋氏:
台数が少なくて,ロケテストではマッチングの待ち時間が発生しなかったんですよ。
4Gamer:
……じゃあ,ロケテストではどんなテストを?
小田嶋氏:
僕が印象的だったのは,ロケテストで100円だけ入れて,チュートリアルだけプレイして帰っていった人ですね。「おかしいな」って顔をしながら首をかしげてて,それを見ていた僕も首をかしげていたという。
4Gamer:
……確かに,GP制のゲームで100円だけ入れて終わる人は,今どき珍しいかもしれません。プレイヤーの間では,3クレジット単位で購入するのが基本になってきていますし。
小田嶋氏:
僕自身が「ボーダーブレイク」に慣れ過ぎていたんでしょうね。「1プレイで1試合遊べない」という意見も,最初は意味が分からなかった。これは認識を変えないとダメなんだって,そのとき強く思いましたね。
ここからの1年,そして3年先の「SOUL REVERSE」に向けて
4Gamer:
現状については分かりましたので,今後の施策について聞かせてください。2018年末までのロードマップが公開されていますが,これに変更はありませんか。
酒井氏:
はい。JAEPO2018でのステージや生放送などでお話したとおり,今後は夏の大型バージョンアップに向け,開発を続けていく予定です。ただ,今後もプレイヤーの皆さんの声を真摯に聞きたいと考えているので,それまでの間にもう一回,今回のVer.1.2のような小中規模のバージョンアップが入るかもしれません。
4Gamer:
夏の大型アップデートが,具体的に何月かまでは,現状決まっていないのですか。
小田嶋氏:
そうですね。これは先ほど酒井が言った,追加の小中規模のアップデート次第でもあります。今回のアップデートの反響を見たうえで,それでも大きな不満があるようなら優先的に解消したい。だから,それ次第でスケジュールは少し変動するかもしれません。ともかく,より面白いゲームにしたいので。
4Gamer:
プレイヤーの要望に応えるという方針は分かります。ただ面白いゲームって,そういうことで作られるものでもないと思うんです。開発として,このゲームをどこに持っていきたいのか,そういうビジョンについて聞かせていただけないでしょうか。それはつまり,先の差別化の部分,「このタイトルのウリはどこなのか」という問いでもあるのですが。
小田嶋氏:
……これは酒井と自分でちょっと違うと思うので,先に酒井さんお願いします。
酒井氏:
冒頭でもお答えしたとおり,本作は「多人数対戦をファンタジーでやる」というところからスタートした企画です。なので,それをどう楽しくしていくのか,というところがキモだと考えています。プレイヤーの要望に応えるという話でも,そこの取捨選択はしっかりやっていきたいと考えています。
4Gamer:
ゲームバランスを考えながら,ということですか?
酒井氏:
ゲームバランスもそうですが,友人同士であったり,遠隔地の友達であったりと一緒に遊べるというところが,本作の面白いところだと思うんです。だから,そういったコミュニティの要素を強化していくことが,長く遊んでいただくための秘訣なのかなと。
小田嶋氏:
自分はもう少しゲーム寄りの話になりますが,やっぱり“対戦”の部分に,何か仕掛けを用意していきたいと考えています。CPU戦は基本的に自分との戦いで,いかに精度を高めるかというところに重心が置かれますが,対戦の場合は思いどおりにならないのが面白いわけじゃないですか。相手の思考を読んで,そして勝利する。そうした対戦ゲームの醍醐味を,多くの人に味わってもらいたいなと。
4Gamer:
それはつまり,格闘ゲームのような?
小田嶋氏:
そうですね。だけど本作の場合,対戦相手は1人じゃなく,もっと大人数が読み合いに参加するわけです。だから格闘ゲームよりもずっとままならないし,だからこそ面白い。だけど現状はそれがプレイヤーにうまく伝わっていない状態なので,そこをどう改善して広めていくかが,本作における僕の仕事だと思っています。
だからとりあえず,神将がすごく強くなったりとか,そういうことは今後もないでしょう。一方で,新しい役割を持たせたクラスを増やすとか,新しいソウルを加えていくような施策は,対人戦を面白くするうえでも十分にありえます。
4Gamer:
酒井さんが「”濃い”お客さんには刺さっていてる」とおっしゃっていたように,本作の“やり込めば面白い”という点については,実はあまり心配していません。だけど問題として大きいのは,小田嶋さんが今おっしゃったように,それが「伝わっていない」ってところですよね。
酒井氏:
……そうですね。そのオイシイ所にいくまでにちょっと時間がかかって,味を感じられるようになるまでが長いというか。
4Gamer:
しかしコンシューマゲームならいざしらず,ことアーケードの世界では,“やり込めば面白い”ではダメなことぐらい,長年アーケードゲームを作ってきたセガさんなら,分かっているはずですよね。
小田嶋氏:
おっしゃるとおりです。そこが課題でして……最初にできることを減らせばとっつきやすくはなりますが,飽きられるのも早くなります。その兼ね合いが難しい。チュートリアルを厚くするにしても,今度はそれ自体が億劫になるでしょうし。
4Gamer:
確かにそうですね。
小田嶋氏:
アーケードはこれまでチュートリアルの文化が薄かったので,その正しいあり方というのが確立していない面があるのかもしれません。……小分けにしていくのがいいのかもしれないですね。最初は最低限の操作だけ覚えて,CPU戦をやってもらう。それではもの足りなくなったところで,応用を伝えるといったような。そういう作りの方が,もしかしたら離脱を防げるかもしれない。
4Gamer:
そのあたりの研究は,スマホゲームの方が進んでいる印象がありますね。あるいはアーケードでは,ゲームセンターのコミュニティがそれを代替していたのかも。
ちなみにゲーム外の施策については何かお考えはないのでしょうか。例えば公式サイトやTwitter,あるいは「ソルリバ隊が往く!!」のようなイベントでの露出強化など,まだまだできることはあるように感じるのですが。
酒井氏:
公式サイトについては,知りたい情報が載っていないという意見が非常に多いので,ゴールデンウィークに向けて改修していきたいと考えています。とくに,初めてプレイする人には不親切な状況になっているので,このフォローをきちんとしていく予定です。もちろん,ある程度プレイしている人に対しても,不足している情報は補っていきます。
小田嶋氏:
チュートリアル的な動画を用意するのがいいのかもしれないですね。どうすれば勝てるのか,バトル評価が稼げるのかという取っかかりの部分であったり,一段レベルアップするためのテクニック集みたいな。
4Gamer:
「SOUL REVERSE ZERO」との連動についてはいかがでしょうか。セガのほかのタイトル――例えば「三國志大戦」と「さんぽけ 〜三国志大戦ぽけっと〜」(iOS / Android)などでは,かなり密な連携も行っているようですが。
酒井氏:
直近では,どちらのタイトルにも登場するキャラクターである“クロウ・クルワッハ”を軸にした連動イベントを,4月に実施する予定です。ただ,我々としてはあまり紐づけを強くすると,両方を遊べる環境にないプレイヤーさんが離れていく懸念があって,まずは緩い連携から模索していこうと考えています。
4Gamer:
分かりました。では,この記事を読んでいる「SOUL REVERSE」プレイヤーに向けて,何かメッセージをお願いできますか。
酒井氏:
先ほどから話しているとおり,僕らとしては皆さんに楽しく遊んでもらいたいというのが根本にあります。引き続きご要望に耳を傾けながら,より良い製品にしていきたいと思っていますので,今後もどうか応援よろしくお願いします。
小田嶋氏:
自分としては,不満を修正するのは当たり前なので,そのうえでプレイヤーがどういうことがしたいかを先回りして考えていきたいですね。それで初めて,僕らが本当に求めていたゲームになるんじゃないかと。少なくとも,そういうタイトルを目指して開発していきたいと思っています。
酒井氏:
あとやっぱり,自分はゲームセンターが好きで,ゲームセンターを盛り上げたいと思っています。そこがアーケードゲームを作っている自分の根っこ部分なので。ゲームセンターにたくさん人が来て,たくさん交流して,その中に自分も入っていけるような世界にしたい。でも今はそれこからかけ離れちゃっているので,なんとか実現に向けて頑張りたいなと。
4Gamer:
ちなみになんですが,酒井さんの中では,先ほどのロードマップの続きを何年くらい先まで考えてらっしゃいますか。
酒井氏:
……アーケードのゲームって,なんとなく1クール3年という共通認識がある気がするんです。だから,そこは必ずクリアしたい。それを乗り切れたら,次は6年,9年と。「ボーダーブレイク」が今年9年目ですから,それに続けたらいいですね。
4Gamer:
じゃあ,3年は間違いなく遊べると。いや,“今このタイトルをプレイしている人達の気持ち”って,「このゲームを続けて,果たしてちゃんと見返りがあるんだろうか」ってことなんじゃないかと思うんです。もしかしたら,今頑張っても1年で終わっちゃうんじゃないか。身も蓋もなく言ってしまえば,7月稼働の「Fate/Grand Order Arcade」までの腰掛けなんじゃないかとか。そこのところの,開発の本気度合いが知りたいなと。
酒井氏:
「SOUL REVERSE」は,制作に4年はかかっているタイトルです。そこまでして作ったものを,僕らが本気でやらないわけがない。
4Gamer:
であれば,まずチュートリアルだけプレイした人が,首をかしげて帰らないようにしなくちゃならないですね。
小田嶋氏:
今は未プレイのAimeカード(300円)があれば600GP分――チュートリアルも含めて1試合は無料で遊べます。まだプレイしていないという人は,ぜひ最寄りのゲームセンターで試してみてください。
4Gamer:
今後のアップデートにも期待したいと思います。本日はありがとうございました。
「SOUL REVERSE」公式サイト
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