企画記事
「スターオーシャン:アナムネシス」ストーリー第2部はシリーズファン必見! 物語のクライマックス直前までのあらすじ紹介
このSOAでは2018年7月より,オリジナルキャラクターを主役とした「メインストーリー第2部」がはじまり,先日クライマックスパートに突入しました。そんな熱いタイミングに合わせて,現在配信中の第2部 CHAPTER:09までのあらすじを,シリーズ未プレイヤー向けの用語解説とあわせて,一気に紹介していきます!
もちろん,SOAファンはこれまでをあらためて振り返る用途に。SOAを遊んだことがないシリーズファンは,「紋章」「神の十賢者」「地球と宇宙」「タイムゲート」「グリゴリ」など,どれかひとつでもピンときた言葉があれば,この壮大なスペースオペラの一端に触れてみてください!
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登場キャラクターを知っておこう!
SOAのメインストーリーには,物語の導入としてイヴリーシュやベルダといったオリジナルキャラクターにスポットを当てた第1部(完結済み)と,物語の真相に迫っていく第2部があります。今回は第1部については触れませんが,基本的に“初見の人でも第2部から読んで問題なし”ですよ!
それと,本編にはさまざまな情報が入り乱れますので,まずは前提となる情報を羅列しておきました。SOシリーズならではの用語についてはネタバレとまではいきませんが,念のためクリックしないと見られないようにしているので,興味がある人は参考にしてください!
●第1部からの重要キャラクター
○ 艦長(主人公):
プレイヤー。「艦長」と呼ばれる人物。銀河連邦第22宇宙基地所属の軍人。任務中に宇宙海賊からの攻撃を受け,宇宙艦のワープドライブで逃走したものの,なぜか地球から7万光年も離れた銀河連邦の管轄外に飛ばされてしまった。故郷に帰れる可能性は絶望的であったが,召喚紋章術を扱う少女イヴリーシュと出会い,地球に戻るための旅に出た。
○ コロ:
艦長の相棒。宇宙艦に搭載されたオペレーションAI。おにぎりのような形状だが,腕と足は収納されているだけで,任意で出せる。人との円滑なコミュニケーションのために人間らしい感情を備えているが,ロボットの割に落ち着きがない。すぐに取り乱す。
○ イヴリーシュ:
召喚紋章術を扱う謎の少女。愛称は「リーシュ」。艦長が遭難直後に降り立った惑星で出会った。各地に点在する「紋章石」を媒介に,異なる時間軸から戦士(SOキャラクター)を呼び出せる。自身の名前以外,ほぼすべての記憶を失っている。召喚紋章術を使える理由や出身惑星などもいっさい不明。
○ ベルダ・クレーマン:
ランビュランスの科学者で天才少女。武器は光線銃。艦長がランビュランス宇宙基地で出会った。13歳にして,流行り病「灼死病」の研究の第一人者となる。灼死病で亡くなった祖父の夢,「宇宙から1mlでも多くの涙をなくすこと」を胸に抱いている。
●第1部の重要用語
○ 召喚紋章術:
イヴリーシュしか使うことのできない,謎の紋章術。
○ バーベッド:
艦長たちが旅の途中で出会った,光る棘の生えた魔物。正体は不明。
○ ランビュランス:
艦長たちが(第1部の)旅の途中で行き着いた惑星(ならびに,その支配圏)。
○ 灼死病:
ランビュランス本星で流行った病。かかると,ほぼ絶命する。一時期は本星ごと凍結保存する計画が立てられたが(惑星コールドスリープ計画),艦長が灼死病に罹患したときに抗体が生まれたことで,灼死病ワクチンの精製と量産に成功した。
○ パルスタワー:
惑星コールドスリープ計画のためのレアメタルを作成する土壌改変装置。ベルダの祖父が開発した。
○ ランビュランス軍:
惑星コールドスリープ計画のためのレアメタルを確保するべく,さまざまな惑星で侵略行為を働いた。
ストーリー第2部を,CHAPTER:01から紹介!
さて,ここから本格的に,SOAのメインストーリー第2部 CHAPTER:01〜09までを順に紹介していきます。短くまとめているつもりですが,それでも結構な大ボリュームになっていますので,少しずつでも読み進めていただければ幸いです。
●CHAPTER:01「銀河の迷い子」
「艦長! 目標宙域に到達しました」
第2部の物語は,艦長たちがランビュランス本星を後にしたところからはじまる。
次の星に向かって進む,主人公(艦長),イヴリーシュ(リーシュ),ベルダ・クレーマン,コロの途上には,ランビュランスがパルスタワーを建造しようとしたとき,先進惑星のものであろう謎の艦隊による襲撃事件が起きていた,いわくつきの宙域が存在した。
当の宙域を迂回しようとした一行であったが,コロはその辺境の中から,銀河連邦のものと思われる救難信号をキャッチする。信号の出所を探るため,やむなく危険宙域に向かった艦長たちは一隻の救命艇を収容した。そこから現れたのは,幼き少女だった。
「は、初めまして。助けてくれて、ありがとうございます」
救助した少女「ティカ・ブランシュ」が乗っていた移民船は,突如として他艦から襲撃され,彼女は救命艇で脱出することになった。救命艇のAI「レコロ」によれば,襲撃の理由は思いつかないという。
その話を聞いたベルダは推測する。謎の艦隊の正体は「惑星ダフティーネ」の軍隊であり,以前ランビュランス軍を退けたのもダフティーネ軍ではなかったのかと。
なにはともあれ,艦長たちはティカをダフティーネに送り届けるため,同惑星への着陸を試みる。もしかしたら,移民船に乗っていた彼女の両親も,すでに惑星に戻っているかもしれないから。
「ありがとう! リーシュお姉ちゃん、ベルダお姉ちゃん、コロ! 艦長!」
しかし,惑星内の様子はおかしかった。コロのセンサーで捉えたダフティーネの文明レベルは,地球の16〜17世紀程度に該当し,宇宙艦を建造する技術など存在しないという。救命艇に登録されていたティカの住所を探しても,そこにはさびれた鉱山があるだけだった。
「分からなければ行ってみるまでだわ!」
意気揚々のリーシュに,コロは「この惑星は未開惑星保護条約の対象です!」と反対の意を示したが……結局,一行はティカを連れてダフティーネに降り立つこととなった。
※未開惑星保護条約:SOシリーズの頻出用語。高度な先進文明による未開惑星への接触は,その星の歴史そのものに大きく干渉してしまう可能性が高い。未開惑星の文明進化を歪めないよう,当該惑星を保護するために作られた銀河連邦の条約
「非力な子どもでも扱える、身を守るためのパワードアームじゃ」
天才科学少女のベルダが,ティカに自己防衛用の武器を渡していると,彼らの前に「バーベッド」(惑星を脅かすSOAのエネミー)が現れた。
バーベッドはこれまでの旅路でも宙域をまたいで存在していたため,この星にもなんらかの理由で生息しているようであった。だが,ダフティーネ人であるティカも,情報に長けているはずのAIのレコロも,バーベッドなる存在にはまったく覚えがないという。
なにかがかみ合わない。懐疑的にならざるを得ない状況下で,艦長たちは近くにある村を目指す。その道中,バーベッドに襲われていた子供を助けた。その子は獣を指さし,「バッシェンの獣」と呼んでいた。
助けた子供が住む村「ダグリス」は,ティカの住所地である「ルバーリカ州カルローネ市ダグリス」と一致する場所にあった。けれど彼女は,ダグリスの村に着いてもなお,その景色に見覚えがないと口にする。
そのうち,艦長たちは村での会話をとおして近況を知る。
現在ここ「ルバーリカ王国」は,隣の「バッシェン帝国」と戦争中であり,バーベッドの存在はバッシェンの獣と呼ばれ,バッシェン国で兵器として扱われていた。ティカも,学校でそう習ったらしい。
翌朝,ダグリスをバーベッドの群れが襲った。艦長とリーシュが打って出たとき,ひとり逃げ遅れていた少年が,なす術もなく獣にやられる姿を目に――するかと思いきや,その直前。光り輝く双刃を持った青年が現れ,バーベッドを一瞬にして倒してしまった。
「ふぅ、危ない危ない。君、大丈夫?」
双刃の青年は「ユーイン・ラクスター」と名乗った。ラクスター家とはこの村一帯の領主のことで,自分は現当主の五男にして末っ子であるとも教えてくれた。「一家のはみだし者で,気づいたら冒険家崩れの,一族の恥さらしってやつさ」などと自嘲しながら。
彼が手にする双刃は,この星の文明レベルには似つかわしくなかった。それは明らかに,先進文明のものと思われた。
ベルダがユーインの双刃を怪しんでいると,ユーインもまたベルダの光線銃を珍しそうに見つめる。「その使いの光矢のほうがよほど珍しい」。青年もまた,この星における「聖地戦争」のことを知らない艦長たちの存在を訝しんでいた。
お前らは何者だ。そう尋ねるユーインに対して,リーシュが咄嗟についた嘘は……「あたしたちは旅芸人の一座なの!」というものだった。
世界中を旅して回っているせいで世情に疎く,道中で遭難していた娘さん(ティカ)の親の手がかりを探すのにも困っている――リーシュたちにそう説明されたユーインは,「ティカ・ブランシュという名前には聞き覚えがある」と答えると,ある1枚の手配書を差し出した。
手配書を流布した者の名は,ルバーリカの「リカルド・フランツ将軍」。書面には「ティカ・ブランシュを無事ルバーリカ王都に導いた者に10万フォルを授ける」と書かれている。人相書きの特徴からして,それは明らかにティカを探すためのものであった。
ティカが知るダフティーネとは,明らかに様相が違う世界で,彼女のことを探している人物がいる。不可解さは残されたままであったが,それでもリカルド将軍に会えば,なにか手がかりを得られるかもしれない。艦長たちはもう少し,この星の事情に付き合うことにした。
ユーインに,当面の目標が定まったと告げる。すると彼は,何百年も続いてきた聖地戦争を真に終わらせたい。だから目的を叶えるために,リカルド将軍に面会を願うと言った。そして,そこに艦長たちも同行できるのならば,ティカが将軍と話せるのではないかと考えて。
ユーインを加えた一行は,ルバーリカ王都へと旅立つ。それぞれの思惑は,まだ秘めたまま。
●CHAPTER:02「ダフティーネ彷徨」
聖地戦争。それはこの星のどこかにある「聖地アジール」の所有権をめぐり,ルバーリカとバッシェンの間で何百年も続けられてきた,長年にわたる戦争の名だという。
アジールを手中にした国は,聖地に降りた「月影の梯子」から現れる,「ダフテスの使い」を迎え入れることができる。ダフテスの使いとは,これまで両国に人知を超える力,知識,思想をもたらしてきた超越的な人物であるらしい。そして,自国に益をもたらす使いをより多く迎え入れること――それこそが,二国を隔てる理由のすべてであった。
ユーインによれば,ダフテスの使いによってもたらされる超常的な恩恵「使いの力」の中には,ベルダの光線銃と似たものがあるらしい。そこでベルダが「君の双刃も使いの力なのか」と聞いてみると,彼は「これは友達にもらったものなんだ」と答えた。
王都に向かっていた一行は,道中のカルローネ市にたどり着く。だが,その先の王都へと続く街道は,バッシェンの獣が多数現れたことで封鎖されてしまっていた。いっそのこと,獣を自分たちで倒してしまおう。そんなベルダの提案にユーインは「無茶だ」と首を横に振った。
解決策が見いだせないまま宿屋に身を寄せる。艦長はユーインの留守を見計らい,衛星軌道上の宇宙艦にいるコロに通信を送った。コロには街の周辺をスキャンしてもらったが,この地域からはダフテスの使いのような痕跡は見つからなかった。そのうえバッシェンの獣,つまりバーベッドが現れた形跡すら,コロのセンサーでは検出されなかった。
ほどなくして宿に戻ってきたユーインは,言葉少なに「街道はしばらく封鎖されるそうだ」と告げると,我先にと寝てしまった。
――その日の深夜。ティカは,ユーインが宿屋を抜け出そうとしている姿を目撃する。彼はひとりで,封鎖された街道にいる獣を倒しにいこうとしていた。「私たちにはダメだって言ったのに」。押し迫るティカに向かい,ユーインは理由を打ち明けた。
「どうも、血の気が多い僕の友達が、ちょっと無茶をしようとしてるみたいでね」
個人的な問題だから。ひとり先走ったユーインであったが,街道でバーベッドの群れと遭遇してしまう。そこに,艦長たちが助けに現れた。「ユーインも友達だから,困っていたら助けたい」とティカが伝えると,彼は照れ臭そうにそれを受け入れた。
それからユーインが目指していた場所に一緒に進んでいると,なにやら騒々しい少女が走り回っていて……。
どうやらこの少女こそ,ユーインの「血の気の多い友達」らしい。しかも,その子は大型のバーベッドの群れを引き連れ,自らの身の危険を叫びながら逃げ回っていた。
同じく危機を察した一行もなんとか逃げたところで,件の少女「ウェルチ・ビンヤード」が近寄ってくる。艦長たちは驚きを隠せなかった。彼女の姿にはデジャヴがあった。しかし,ウェルチは彼らのことなどまったく知らないという。どうも,艦長が知る“ウェルチ”とは別人らしい。
※ウェルチ・ビンヤード:初出は「SO3」だが,リメイク版を含めると全シリーズ作品に登場しているキャラクター。外見や服装は作品によって異なり,SOAにもさまざまな姿を見せてきた。それを“かけて”の場面。
ユーインの双刃はウェルチが作ったものであった。彼女によると,ダフティーネにはベルダの光線銃とよく似た「使いの光矢」が存在し,それもダフテスの使いによってもたらされたらしい。ただ,ダフテスの使いは聖地戦争ごとに必ず現れるわけではなく,現れたとしても有益な力を持っているとは限らないという。究明の手立ては少なそうだった。
そもそも「ダフテス」とは,月の裏側に存在する,ダフティーネの双子星の名称だという。遥か空の向こうからやってくる奇跡の存在として「ダフテスの使い」と名付けられ,彼らがまるで月から降りてきているようだから,その道が「月影の梯子」と呼ばれていた。
「森から出たら、皆一度討伐隊と合流しよう。それから……」
「ちょっとそれは困るわね」
彼らが森から脱出しようとしていた,そのとき。突如キツネのような尾を持つ女性に奇襲される。それはバッシェンの獣を操る,バッシェン軍の主力部隊「獣の魔女」の中でも一番の実力者とされる,狐魂の民の六つ尾「カーリン・ケイソン」であった。
「たゆたう光……我に従えっ!!」
一行に動揺を与えたのは,リーシュだけが使えるはずの召喚紋章術を使役する,カーリンの姿であった。コロのスキャンをもってしても,街道のバーベッドの姿を認識できなかったのは,獣の魔女により,その時々で召喚されていたからなのだ。
倒しても倒しても,新たに召喚されるバーベッド。総合的な戦闘能力は,カーリンが圧倒的に上回っていた。リーシュが「一体どこでその召喚の力を手に入れたの」と問いかけても,彼女は「死にゆくあなたたちに教える必要はないわ」と一笑に付す。疲弊しきった一行を目がけて,バーベッドが途切れなく襲いかかる。
万事休すか――というそのとき。轟音と剣閃が,魔女の紋章を崩壊させた。それをしたのは,黒い仮面をつけた謎の男であった。
思わぬ横やりを入れられたカーリンは,ここが潮時と撤退する。ホッと胸をなでおろした艦長たちは,仮面の男に礼を言おうとするが,彼は粗暴に言い放った。「ティカ・ブランシュをおとなしく引き渡すなら相応の礼はしてもいい。だがやる気なら,死ぬぞ?」。
男の態度に憤激したウェルチの巨大ハンマーは,仮面の男の片腕で受け止められた。「使いの光矢でも撃ち抜けねぇ素材の鎧だ。有象無象が束になったって俺には敵いやしな……」。彼の鎧の肩を,ベルダの光線銃が撃ち抜く。「その銃は」。彼は声色を変えた。
身の危険を感じれば,即座に逃げる。衛星軌道上の艦への転送収容すら視野に入れたベルダであったが,仮面の男はなぜか舌打ちをして,ここは引くと宣言しはじめた。「ティカを連れている限り,また会うこともあるだろう」。そう言って,男は去っていった。
「……大丈夫。あたしは……大丈夫だから……」
いくつもの騒動の後に残されたのは,自分自身も由縁を知らない召喚紋章術を使っていたカーリンに,えも言われぬショックを受けるリーシュの姿だけだった。「今はそっとしておこう」。艦長とベルダは彼女を見守りながら,この星とは,じっくり付き合う必要があると確信していた。
●CHAPTER:03「秘密のラボとラボの秘密」
艦長たちがカルローネから旅立とうとしていたところ,なにやらウェルチが追っかけてきた。
「決まってるじゃなーい。あんたたちのフシギでワンダーでミステリアスなあれこれを徹底的に研究させてもらうのよん! 特にそう、ベルダの『光矢』とティカのその素敵な色々……ぐふ、ぐふふ!」
ベルダの持つ光線銃などに興味津々の彼女は,自分もついていくと言って聞かなかった。これは……放っておくと面倒なことになりそうだった(その確信があった)。こうして新たにウェルチを迎え入れることになった一行は,あらためて王都への歩みを進める。
「完全にわたしのオリジナルってワケじゃ、ないのよね」
使いの光矢より,ユーインの双刃やウェルチのハンマーのほうがすごいのではと聞かれた彼女は打ち明ける。ウェルチが手づから作ったはずの武器たちは,実際のところ,どのような原理で動いているのかをまったく理解できていないらしい。
あまりの事実に先進文明の者たちがビックリしているのにも気づかず,ウェルチは「少しだけ寄り道させてほしい」と頼む。先日,カーリンや仮面の男と出会った森の奥に,彼女が行っておきたい場所があるという。
まもなくたどり着いた,ただのガラクタの山にしか見えないそこには,光学迷彩で隠された,秘密のラボへの入り口があった。
8年前の聖地戦争時。ウェルチは空から落ちてきた不思議な光をたどり,落下地点と思われる場所で,このラボを見つけた。やがて稼働させられた施設の内部からは,見たこともない武器の設計図を発見した。
設計図はダフティーネ語で書かれていたが,その内容は8年後の今も生み出せるはずがない,オーバーテクノロジーの塊であった。それでも作れてしまったウェルチの手腕に艦長たちは驚くが,彼女はそれにも気づかず「ベルダならこの変な装置とか動かせない?」と無邪気に聞いてくる。
ベルダは言葉を濁して,誤魔化すほかなかった。
「う、うわー、これはなんじゃろのー?」
ウェルチとユーインが武器を調整しているとき,艦長たちはそっと外に出た。先ほどのベルダのおとぼけは,実はそれほど間違っていなかった。このラボの設備は,艦長の宇宙艦よりも文明レベルが遥かに進んでいるものであったからだ。それなのに,ラボ内に表示されている言語は未開惑星のダフティーネ語で,高度な翻訳機すら介していなかった。
これらの事実からレコロは,「この世界はティカが暮らしていた時代から,200年ほど時間を遡った時代」と推測する。だが,仮に過去へと時間を遡っているのだとしても,あれほどまでに高度なラボを今の時代に送り込んだのは,一体どこの誰なのか。それは見当もつかなかった。
そうして悩んでいる彼らの元に,今まで見たこともない「狼男のようなバーベッド」が襲来する。
狼男型バーベッドをどうにか撃退してから,一行は王都まであと一息の場所にある,宿場町エズルーネに訪れた。そこの宿屋で休んでいた艦長を,ベルダが買い物に誘う。当然,それはユーインたちへの方便であった。艦長とベルダは転送収容で宇宙艦に戻っていた。
ベルダは新種の狼男型バーベッドの遺伝子照合をコロに頼んだが,ダフティーネに関する情報不足もあり,ダフティーネ人とは異なる組成である,くらいしか分からなかった。それでも彼女は「人間がある日,バーベッド化してしまうのでないならそれだけで充分じゃ」と安心できた。
ほかにも,コロからいくつかの情報がもたらされた。
ダフテスはダフティーネの双子星で,中間に衛星(月)を挟んだハビタブル二重惑星だが,そこに文明の存在は認められておらず,人類が生存できる大気と水がありながら,ティカがいたダフティーネの記録では緊急避難先に登録されていなかった。そこに意図があるのかも不明であった。
ウェルチのラボについては,銀河連邦の技術で作られていたことが判明する。施設内に表示されている言語こそダフティーネ語だが,内部構造やプログラムコードの大半は,コロが知る銀河連邦のものであるという。つまるところ,この星は絶対的に歪な状況にあった。
――ところ変わって,ルバーリカ王国の王都に対する,バッシェン帝国の皇都の一角。バッシェン軍の総司令官「ジヴェレーゼ(ジヴェル)」と呼ばれる男が,兵士からカーリン帰還の報告を受けていた。そして彼は,月を見上げて,意味深に呟く。
「……見ているがいい、マスティマよ。貴様のその傲慢なツラが驚愕に染まるとき、全ては終わるのだ……」
●CHAPTER:04「ルバーリカ王都の陰謀」
一行はついに,ルバーリカ王都に到着した。そして警備兵が手にするものを見て,目を疑った。それは明らかに,先進文明の光線銃だった。
この星の文明を完全に逸脱している,ルバーリカの兵士。あれこそがダフテスの使いがもたらした,使いの光矢。しかも光矢はすでに量産体制が確立されているのか,兵員にも広く行き渡っているようであった。
艦長たちの驚愕の傍ら,リカルド将軍との面会手続きに向かっていたユーインは,将軍が戦争の前線指揮をしていることから,会えるまでに時間がかかると報告した。「のんびり待とう」。そんな考えをあざ笑うかのように,一行は王都内で何者かに襲撃される。
騒ぎを聞きつけた王都警備兵は,一方的に艦長たちを加害者と決めつけ,捕縛しようとしてくる。ユーインがラクスターの家名を利用し,どうにかそれを阻止したものの,「不問に処すからカルローネに帰れ」と言われた。彼らの対応は,あまりにも不自然であった。
ユーインはその理由が,リカルド将軍にあると推測する。リカルドは,4年前の聖地戦争でルバーリカに降りたダフテスの使いによって取り立てられ,革新的な軍事理論で王国騎士団を立て直した人物で,その成果は「リカルド将軍こそが使いの力なのではないか」と言われるほどだ。
それだけに,彼に地位を奪われた権力者に恨まれているそうで……つまるところ,彼に近づこうとすると「同じように見られる」のだろう。
このとき,艦長たちに単純な疑問が浮かんだ。「ダフテスの使いは,人なのか?」。ユーインは「一応,人だと言われている」と曖昧に答える。どうやら,たとえラクスター家の人間であっても,「4年前に降りた使いは女性だ」くらいの噂しか耳にできないらしい。
そんな中,世界でたったひとり,「私がダフテスの使いだ」と公言している者がいるという。それが敵国バッシェンのジヴェル将軍である。彼は8年前の聖地戦争の終結時にバッシェンに降りたダフテスの使いであり,使いの力をもって,バッシェンの獣をもたらしたとされている。獣の魔女の召喚紋章術も,彼から与えられている力なのだろうか……?
それから3日間。王都警備兵の企みか,泊まる宿を毎日襲撃されていた艦長たちの元に,リカルド将軍から面会の知らせが届いた。
夜。「その人に会えば,わたしのことがなにか分かるかもしれない」。そんなことを考えていて,眠れなくなっていたティカに,ベルダは艦長の旅についていくきっかけとなった,ランビュランスでの出来事を語り聞かせる。「この宇宙の涙を1mlでもなくしたい」という夢とともに。
ベルダの想いは,幼い少女にも「しっかり」伝わった。
元気を取り戻したティカの姿が,そう教えくれた。
これまでの襲撃を鑑みて,王城でリカルド将軍を待とうとしたが,それをあざ笑うかのように城内にバーベッドが現れた。ここルバーリカに,バッシェンの獣の魔女,それらを率いるカーリンが潜入していたのだ。そして彼女こそ,例の狼男型バーベッドを召喚していた張本人だった。
「どうも手強い連中がいるって聞いて来てみたら、見たことある顔がいるじゃない、ちょっと嬉しくなっちゃった」
そんな配下の様子を,ジヴェルはバッシェンの将軍執務室からうかがっていた。背後に,リーシュやカーリンと同じような召喚陣を展開しながら。カーリンの才を見いだした自らの目に狂いはない。それを誇るジヴェルが感知したのは,当の彼女が倒された事実であった。
「出せーーーーーーーーーーーーー出せ出せ出せ出せ出せだあああああああせえええええええええええちくしょおおおおおおお!」
数時間後。艦長たちとカーリンは,(ウェルチの絶叫がおまけで轟く)ルバーリカ王都の地下牢に捕らえられていた。リーシュが召喚紋章術を使うのを見ていた警備兵が,みなを獣の魔女の一味と見なしたからだ。
どうにも,この地下牢には特殊なエネルギー遮断フィールドが張ってあるようで,コロに艦への転送収容をしてもらうこともできなかった。
カーリンはカーリンで,リーシュが見せた召喚紋章術に驚いていた。同時に,リーシュが必死な様子で「この召喚の力について教えてほしい」と聞き出そうとしてくることも,彼女は不思議に思っていた。そうして牢に閉じ込められていた一同の前に,森で出会った仮面の男が現れる。
「本気で聖地戦争を終わらせる気があるのか」。仮面の男は一行の中から,ユーインに覚悟を問う。できるかは分からない。だけど。「もちろんだ」。青年の気概に満足した男は牢の鍵を開けていく。なぜ助けてくれたのか。「俺が考えるのはティカ・ブランシュの安全だけだ」。自身の目的は答えてくれても,ティカについては教えてくれなかった。
仮面の男はカーリンを牢から出すとき,彼女に「召喚紋章術を使うと爆発する首輪」を着けさせた。そして,「こいつらをバッシェンに連れていけ。やらねぇならテメェは明日にでもあの世行きだ」と命じる。敵国の将であるカーリンはもちろんだが,艦長たちもルバーリカに留まれば警備兵にまた追われる以上,今は彼の言うとおりに動くほかなかった。
そこでカーリンは,リーシュの召喚の力がジヴェルによって与えられたものでないのならば,その力は彼に報告する価値があるものだと口にした。ベルダとリーシュはそれを聞いて,「彼女についていけば案外早く,ジヴェルなる人物に会えるかもしれない」と踏んだ。
当初の目的としていたリカルド将軍には会えなかったものの,こうして一行はルバーリカ王都から無事逃げ去り,敵国であるはずのバッシェンへと向かうのであった。
●CHAPTER:05「召喚紋章術の使い手たち」
バッシェンへの道のりは,困難の連続であった。主に,ウェルチとカーリンのソリがまったく合わないことによる,喧嘩ばかりの旅路により。
「付き合う女の子は選んだ方がいいわよ。あなたのためにも、家名のためにもね」
「こっ……このクソアマ……!! もっぺん言ってみ……!!」
両国の国境線にほど近い村コルリネにたどり着いたとき,村人から手厚い歓迎を受けるカーリンの姿を目にした。ルバーリカの民からすれば憎き獣の魔女でも,バッシェンの民からすれば頼もしき守護者なのだ。そんな村民に,彼女も優しい笑顔を返していた。
カーリンが用意した宿にて。艦長たちは,ユーインとウェルチがカーリンに連れ出されている隙を見て,またしてもコロとの通信を試みる。
仮面の男の正体はいまだ謎であったが,彼が話している言語は正真正銘のダフティーネ語であり,この星の現地住民であることは間違いなかった。ただし,どのような技術でもって銀河連邦製のセンサーの目をすり抜けているのか,その真相を暴くことができない。
ついでにカーリンの首輪に関してだが,そこに爆薬は仕込まれていなかった。代わりに紋章の反応があった。それが本当に爆発したのなら,どれほどの威力になるのか。コロにも予測不能であるらしい。
翌朝。バッシェン皇都に向かおうとしたとき,村がルバーリカ軍に襲撃された。この事態にカーリンは,すぐに旅立つとみんなを急かす。
そこでウェルチは,この機に乗じてルバーリカ側に逃げようと提案した。だが,カーリンはまだしも,ユーインまでもが止めに入る。なぜ止めようとするのか。カーリンはバッシェンに,私たちはルバーリカに行けばいいじゃないか。そんな彼女に状況を理解させたのは,光矢兵が敵のバッシェン兵のみならず,力を持たぬ村人をも虐殺する姿であった。
「嫌よ……だって、あんなこと、許しちゃ……」
「ユー坊あんた、あんたあれを見て何とも思わないの! あいつら、あいつらの掲げてる紋章!!」
「ラクスター家の……カルローネの兵隊じゃないっ!!」
一行は村を脱出するため,道を塞ぐルバーリカ兵たちと対峙する。しかし,ウェルチだけは戦争の現実に打ちのめされていた。その原因は目の前に広がる光景だけでなく,カーリンとの昨夜の対話も関わっていた。
「バッシェンにあなたの作った武器があれば,こんな戦争は武力で抑え込んで終わる」「力で抑え込む平和なんて,平和じゃない!」「じゃあもし,ルバーリカに同じことを依頼されていたら,どうしてたの?」。
かつて,少女は無邪気にはしゃいでいた。
「私の発明があれば『使いの力』なんかいらないってみせつけたいー!」
今は,涙をこらえて口をつぐんでいた。
やがて,バッシェン皇都にたどり着いた。首輪をつけたままの姿のカーリンであったが,彼女いわく「あまりジヴェル様をナメないことね」。ジヴェルはバッシェンで一番の紋章術士であり,たとえ目の前で爆発が起きようとも,傷ひとつ負わないのだという。
一方,リーシュはここにきて,己の胸中をみんなに告白した。ジヴェルに会って,この紋章術の力の正体を聞いて,自分自身のルーツを探りたいと。そして艦長たちは,カーリンに捕らえられた捕虜の“てい”で,バッシェン皇帝の前に引っ立てられた。
皇帝とともに姿を見せたジヴェルは,「こいつらがカーリンを倒せるほどの者たちには見えない」と訝しんだが,リーシュの姿を目にした瞬間,目の色を変える。焦ったように少女の名を知りたがる彼は,カーリンが「イヴリーシュ」と呼んだのを聞いた途端,態度を豹変させた。
「信じられん、信じられんぞ! どれほどの幸運に恵まれようと、五万年はかかると思っていた!!」
「お前さえいれば、お前さえいれば! もうこんな国に用は無いのだ!!」
衆目があっても意に介さず,ジヴェルはひとりあざ笑っていた。「選ばれなかった哀れなマスティマ」のことを。
彼の驚異的な紋章力の増幅を察知したコロは急遽,艦長たちの転送収容を試みる。だが,それはジヴェルに阻止されてしまった。彼はダフテスの使いを名乗る,先進惑星の人間だったのだ。
「ともに行こう」と語りかけてくるジヴェルに,「あんたなんて知らない」と強気に怒鳴りつけるリーシュ。彼女の無礼を咎めるカーリンであったが,すでに己の正体をさらけ出したジヴェルによって吹き飛ばされてしまった。「けがわらしい狐魂め」。
また,ジヴェルはティカの名を聞くと,当の少女を見やった。「似ていると思ったが,この娘は早めに処分したほうがよさそうだ」。だが,彼は直後に理解しがたきものを目にする。「おまえは記憶が封印されているのか?」。そこには,ティカを守ろうとするリーシュの姿があった。
ジヴェルが召喚陣を発動する。リーシュの心を縛る,艦長たちを消し去ろうとして。リーシュも自らの召喚紋章術で対抗すると,その場に黒と白の紋章が重なり合った。そんな混戦の最中,用済みとされ,命を狙われたカーリンの首輪が外れてしまった。すると,首輪から不思議な紋章が現れ,大量の光が周囲を包んだ。
――紋章の反応に,ふと気づいたかのような,何者かの声を乗せて。
一行が目を開けると,そこにはジヴェルの姿がないどころか,あたり一面が岩と砂だらけの見知らぬ場所に変わっていた。レコロによれば,ここはルバーリカでもバッシェンでもないようだ。ただし,コロとの通信がつながらないため,詳しくは分からなかった。
唯一,はぐれてしまったウェルチの身を案じていると,当の本人が駆け足でやってきた。これもデジャヴというのか。バッシェンの獣のような,狼男のような姿の生命体を引き連れて。狼男たちは不思議なことに,バーベッド化していない,ただの獣であった。
ジヴェルに見捨てられたショックを引きずるカーリンも,次から次へと襲いかかってくる狼男たちを支配しようと体を動かす。だが,彼女の召喚紋章術は発動しなくなっていた。このままでは――といったそのとき,狼男の群れに強力なビームの一閃が放たれる。
「君達がこの星の原生生物に襲われているのを探知して、救援に駆けつけた。君達への害意は無い」
謎のサイボーグ少女が面々を一瞥した。すると艦長を見るなり,「君は地球人ではないか?」と聞いてきた。「地球人のDNAを見間違えるわけがない」。その姿は,喜びに打ち震えているみたいで。
「名を、ヴァルカ・S90(エス・ナインティ)という。モーフィスの戦士だ」
そう名乗ると,ここは彼女がダフト星系の観察のために1年前から留まっている,ダフティーネの双子星「ダフテス」だと教えてくれた。
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スターオーシャン:アナムネシス
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