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新型スマートスピーカーやワイヤレスヘッドセットでAI活用が進む。Google新製品発表会レポート
そこで本稿では,発表イベント全体から,新製品の見どころを紹介しよう。
AI第一主義を実現するために,Googleは自社でハードウェアを手がける
今回のイベントで発表されたのは,以下の6ジャンル計8製品。近年のGoogleは,「Made by Google」と称して純正ハードウェア製品を拡充しているが,それをさらに充実させたのは,今回のポイントだろう。とくに,今までになかったヘッドセットやカメラの新製品を投入してきたところは,注目に値する。
- スマートフォン:Pixel 2,Pixel 2 XL
- スマートスピーカー:Google Home Mini,Google Home Max
- Chrome OS搭載ノートPC:Pixelbook
- VRヘッドマウントディスプレイ:Daydream View(新モデル)
- ワイヤレスヘッドセット:Google Pixel Buds
- 小型カメラ:Google Clips
今回のイベントでPichai氏は,「Googleマップ」や「Googleストリートビュー」,「Google翻訳」といったサービスが,AIと機械学習で機能向上を実現してきた経緯を紹介したうえで,「モバイルファーストからAIファーストのシフトに興奮している。機械学習を我々の製品に適用することで,コンピューティングがいかに動作すべきか,根本的に再考することになる」と,誇らしげに述べた。
その実現に必要なのが,AIとハードウェアとソフトウェアのコンビネーションであり,それこそが,Google自身がハードウェアを手がける理由であるというわけだ。
Google Homeは小さなスピーカーと大きなスピーカーをラインナップに追加
それでは,製品ごとの紹介を見ていこう。まず紹介されたのは,Google Homeの新製品だ。
Google Homeとは,音声でネット検索やIoT機器の操作を行う機能を持つスマートスピーカーである。従来からあるGoogle Homeは,円筒の頂部を斜めにカットしたようなデザインの製品だけだったが,これに加えて,小さいサイズと大きなサイズの2製品を追加するという。
小さいほうの新製品である「Google Home Mini」は,手のひらサイズの饅頭型をしたスマートスピーカーだ。360度どこからでも聞こえるスピーカーを搭載し,音声でのコマンドだけでなく,ボディの中央をタッチして音楽の再生操作などができるとのこと。
Google Homeシリーズは,家庭内に設置した複数台を連携して利用することを想定しており,とくにGoogle Home Miniは,個別の部屋に置いて使うことに重点を置いているようだ。
Google Home Miniは,米国では10月19日に発売の予定で,価格は49ドル。日本でも10月23日に発売の予定で,税込価格は6480円となっている。
ちなみに,既存のGoogle Homeは日本でも10月6日に発売となり,税込価格は1万5120円だ。
小さいGoogle Home Miniに対して,比較的大型の据え置き型スマートスピーカーが「Google Home Max」である。2つの4.5インチウーファーと,0.7インチのツイーターを搭載し,従来のGoogle Homeと比べて,20倍の音量を実現したという。音質も重視しているそうで,音楽サービスと連携した高音質音楽再生をアピールしていた。
米国での発売は2017年12月の予定で,価格は399ドル。日本での発売は未定だ。
Google Home Maxには,「Smart Sound」という機能も特徴であるという。AIと機械学習により,スピーカーが周囲の状況や環境を判別し,朝は控えめの音で,洗い物中は大きな音でといった具合に,音量や音質をコントロールして再生できるとのこと。
そのほかに,Google Homeシリーズ共通の新機能としてアピールされたのが,「Voice Match」という機能だ。これは,複数ユーザーの声を個別に認識することで,Google Homeがその人に応じた返答を返すことができるようになるというもの。
また,「ハンズフリーコーリング」機能では,声でスマートフォンの電話帳から相手を指定して,電話をかけられるようになる。Voice Matchで個人を判別しているので,家族がいても,それぞれの電話帳から相手を選んでくれるそうだ。
2-in-1デバイスとなったChrome OS搭載ノート「Pixelbook」
Chromebookこと,Chrome OS搭載ノートPCの新製品として登場したのが,「Pixelbook」である。米国での価格は999ドル(税別)だ。
Pixelbookは,厚さが約10mm,重さは約1kgという薄型軽量ボディが特徴のコンバーチブル型2-in-1デバイスで,ディスプレイ部分を回転させて,タブレット形態やテント形態でも使えるのが売りだ。
Pixelbookのスペックも簡単に紹介しておこう。
液晶ディスプレイは,12.3インチサイズで解像度2400×1600ドット,スタイラス入力も可能なタッチパネルとなっており,ワコムが開発した別売りの専用スタイラス「Pixelbook Pen」(価格は99ドル)にも対応する。
搭載CPUは,Kaby Lake世代のCore i5またはCore i7で,メインメモリ容量は8GBもしくは16GB,内蔵ストレージはSSDで,容量は128GB,256GB,512GBのいずれかとのこと。
新型スマートフォンPixel 2は,最も高性能なカメラ搭載をアピール
スマートフォンのPixel 2とPixel 2 XLについては,発表当日の速報記事で詳しい情報はほとんど掲載済みなので,ここでは簡単に説明しよう。
まずPixel 2だが,5インチサイズで解像度1080×1920ドットの有機ELパネルを採用するのが特徴の製品だ。一方のPixel 2 XLは,6インチサイズで解像度1440×2880ドット,アスペクト比は18:9という,はやりの縦長有機ELパネルを採用するのが特徴である。
両製品共通の仕様としては,認識速度の速い指紋認証センサーの搭載や,IP67相当の防水防塵機能,画面オフ時に時計や通知などを常時表示する「Always On Display」などが挙げられていた。
Googleによると,カメラ性能を評価する専門サイド「DxOMark」による測定では,Pixel 2のカメラは「98」という高いスコアを記録したという。前世代の「Pixel」は,「89」というスコアだったそうで,大幅に画質が向上した「最も性能の高いカメラ」になったと,Googleはアピールしていた。
もっとも,最近のハイエンドスマートフォンでは,デュアルカメラを搭載するのが一般化しつつあるが,Pixel 2やPixel 2 XLは,1つのカメラしか備えていない。それでも,レンズとセンサー,そしてAIと機械学習を応用することによって,高画質を可能にしたとGoogle側は強調している。
たとえば,ポートレートモードでは,機械学習によって適切に被写体と背景を分離するようになり,より自然なボケを可能にしたとのことである。
ワイヤレスヘッドセットPixel Budsは,スマートフォンと組み合わせて会話をリアルタイム翻訳
Pixel Budsのデモでは,スマートフォンの「Google翻訳」と連携したリアルタイム翻訳が面白かった。スマートフォンを会話相手に向けて発言を聞き取らせると,Pixel Budsから音声でその翻訳が聞こえる。そして,Pixel Budsに触れながらユーザーが話すと,スマートフォンがそれを翻訳して,会話相手の分かる言葉で返事をするのだ。デモという限定された環境であるとはいえ,自然な会話のやりとりを実現していたのが印象的だった。
Pixel Budsを使った翻訳機能の対応言語は,日本語を含む40カ国語にもなるそうだ。
最後に紹介するのは,「Google Clips」という小型カメラだ。価格は249ドルで,発売時期は未発表である。
自動での静止画撮影だけでなく,短時間の動画も自動撮影できるそうで,後からベストショットを切り出せるのがポイントだ。AIと機械学習を利用して,ベストショットを狙うほか,ユーザー本人や家族,友人などをそれぞれ認識して記録することができるそうで,無秩序に撮影するだけの単なるライフログカメラとは違うというのが特徴だろう。
新ジャンルの製品も登場して,盛りだくさんの内容だったが,ハードウェアとソフトウェアにAIを追加することで,既存ジャンルの製品でも,一歩進化させることができるということを示したのが,今回のイベントにおける大きなポイントだったのではないだろうか。
Googleの新製品発表ページ(英語)
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Pixel
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