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シリーズ初の体験に観客もうっとり。「遙か美男子祭りコンサート−遙かなる時空の中で3&6−」をレポート
コーエーテクモゲームスの女性向け恋愛ゲームブランド「ネオロマンス」のタイトルである「遙かなる時空の中で」シリーズは,「龍神の神子」と呼ばれるヒロインと,彼女を守る「八葉」たちとの恋,そして鬼の一族との戦いを描く“和風恋愛アドベンチャー”だ。そんな同シリーズの17年という歴史で初のコンサート「遙か美男子祭りコンサート−遙かなる時空の中で3&6−」が,2017年6月3日に千葉県の市川市文化会館で開催された。公演は昼と夜の2回行われたが,本稿では昼公演の模様をレポートしよう。
「遙かなる時空の中で3」(以下,遙か3)は源平争乱期,「遙かなる時空の中で6」(以下,遙か6)は大正時代の東京に似た世界を舞台にしたストーリーを描く作品。
今回のコンサートでは,以前にもシリーズのイベントで演奏を担当したことがある演奏集団,YUKARIが,尺八とバンドネオンをフィーチャーした「美男子祭りVer.」となって生演奏を披露してくれた。
コンサートは「遙か3」の「流転」,「遙か6」の「黒蝶〜君は舞う」というメインテーマ2曲で幕を開けた。「流転」では尺八のソロが“和”を前面に出し,「黒蝶〜君は舞う」ではバイオリンのソロに,近代らしいバンドネオンが加わる。この2曲で会場は一気に「遙かなる時空の中で」シリーズの世界へ。
2曲続けての演奏が終わると,高橋直純さん(「遙か3」ヒノエ役),保志総一朗さん(「遙か3」平 敦盛役),阿部 敦さん(「遙か6」コハク役)が登場。
今回のコンサートは,「遙か3」と「遙か6」の物語を,音楽とキャストによる生ナレーションで表現するという構成で,セットリストもストーリー仕立て。
まず「遙か6」の物語がコハク視点,続いて「遙か3」がヒノエと平 敦盛の視点で描かれ,スクリーンにはゲームのイベントスチルなどの名シーンが次々に映し出されていく。
「遙か6」のコハクは真の敵,禍津迦具土神との戦いを終え,帝都に残ったヒロインとの日々を語り,その情景をバンドネオンとギターが奏でる優雅な音色が包む。
「遙か3」のストーリーでは,尺八や笛がメインの演奏に。スクリーンにはゲームのものだけでなく,アニメ「遙かなる時空の中で3 終わりなき運命」の映像が流れ,敦盛の兄である平 経正が登場したり,有川将臣と源九郎義経の戦いが描かれたりと,手に汗握る展開を回想できた。
続いて,「金色のコルダ4」の音楽ディレクターを務めオペラ歌手の平林 龍さんが登場し,「遙か6」のエンディング曲である「Seasons〜遙かなる空」を熱唱。
ゲーム中で流れるものはアンフィニが歌っているほか,2月に開催されたイベント「ネオロマンス・フェスタ 遙か祭2017−Black Butterfly−」では,ヒロイン役の斎賀みつきさんと高橋美佳子さんが歌唱するなど,ファンには馴染み深い1曲だ。生演奏をバックにした平林さんの優しい歌声が観客を癒していた。
トークコーナー「遙か de トーク」では,高橋さん,保志さん,阿部さん,そしてアンフィニがステージに登場。今回のコンサートについて,「こうやって改めて聴くと,いい曲ばかりだなと思いました。生ならではの迫力があるし,じんわりと伝わってきますね」と阿部さんが話せば,保志さんは「ナレーションを読むときに,いつもより緊張感がありました。生演奏に負けない生声を届けないと!」とコメント。
ここでは,「遙か3」のメロディを奏でる尺八についての説明も,演奏者の中村仁樹さんから行われた。どのような素材でできているのか,どうして尺八奏者になったのかなど,キャスト陣から寄せられる質問に答えていく中村さん。
そこに,アンフィニから「尺八で変わったことができるんですよね」という無茶ぶりが。しかし中村さんは余裕の表情で,FAXの受信音や救急車のサイレンを吹いてみせた。
会場は大いに沸き,続いてキャスト陣から提案されたキーワードに沿った即興演奏をすることに。阿部さんは「スマホの通知音」,高橋さんは「ときめきを表現した音」,そして保志さんからは「焼肉を焼いて,食べて,胃がもたれたときの様子」という何ともバラバラなお題が出されたが,中村さんは一瞬悩んだ様子を見せるも,3つの音を見事に表現。高橋さんが「鳥肌が立った!」と興奮するほどだった。
続いてコンサートはキャラクターソングコーナーへ。まずはヒノエ(高橋さん)の「月を抱く天秤」だ。高橋さんは切ない雰囲気の歌はもちろん,セクシー&クールなダンスでも観客を魅了。最後はウィスパーボイスで「愛してるよ……」と決めて,会場から悲鳴のような歓声が上がった。
続く「花篝のささやかな恋よ」では,尺八を笛に持ち替えた中村さんによる繊細な音色と,バンドメンバーによる演奏に乗せて,平 敦盛(保志さん)が歌声を聞かせてくれた。
最後はコハク(阿部さん)による「徒花〜されど尊き花〜」。ここでは尺八・笛に代わってバンドネオンが入り,どこかジャズテイストでムーディな雰囲気に。阿部さんはコハクのゲーム中の衣装である花柄の着物を羽織って登場し,切々と歌い上げた。
音楽で,語りで,歌でと,思い出の場面が脳裏に蘇ったコンサートも終盤へ。鬼や怨霊によってヒロインや八葉が追い詰められていくシーンで演奏される音楽は,まがまがしく不気味なものへと変化。照明も音色に合わせて激しく切り替わり,緊迫した感じが伝わってきた。
そして激しい戦いに決着がつき,八葉がヒロインへ思いを告げる場面へ――ネオロマンスシリーズのイベントではおなじみの,「愛のメッセージ」コーナーだ。
帝都巡回中にデート中の男女とすれ違ったコハクは,それを羨ましがりつつ,いつかヒロインに告白することができたならば「貴女のことが大好き,と伝えたい」とつぶやく。
ヒノエは,ヒロインが怨霊と戦う姿を美しいと評し「今まで近くにはいなかった女だ。彼女がオレの気を惹く理由が何なのか,それを突き詰めていくのがおもしろい」と語る。
そして敦盛は,兄・経正のことで落ち込んでいたときに,ヒロインがプレゼントしてくれた鈴を手に,これがあることで心が救われているとつぶやく。しかし,怨霊である敦盛はいつか神子の手で浄化され,神子は元の世界へと帰る。「離れることがつらい……しかし,神子の幸せのためにはこの思いは殺さなければならない……」と切なげに思いを吐露した。
それぞれがヒロインに対しての想いを語り,コンサートもいよいよエンディング。万感の思いを込めたエンディング曲「結実」と「祝福」が演奏される中,またもやキャラクターたちからヒロインへメッセージが。「貴女と一緒の思い出が増えてうれしい! またお祭り,楽しもうね」という天真爛漫なコハク,「宴はどうだった? そのかわいい唇でオレだけに教えてよ」と甘くささやくヒノエ,「美しい楽の調べと貴女の笑顔で私はとても幸福だ。ありがとう」と真摯に語る敦盛。
カーテンコールでは,演奏者とキャスト,アンフィニの計16名がステージへ勢ぞろいした。阿部さんは「絵や声が作る世界もあるけれど,音楽が作り出す世界観は大きいものがあると思いました。また機会があれば参加して,いろいろなメンバーと共演したいです」,保志さんは「コンサートはお客さんとしては好きですが,出演者としていると緊張しますね。……音楽っていいでしょ? BGMや楽器ひとつひとつの音を好きになってもらえるとうれしいです」,高橋さんは「とても贅沢な,幸せな時間でした。僕,曲を聞いていたら,ヒノエと望美(遙か3のヒロイン)のエンディングを思い出して,感動しました」とそれぞれ感想を語ってくれた。
最後は会場一体となって,「遙か6」のもう1つのエンディング曲「時空を旅する君へ」とアニメ「遙かなる時空の中で3 紅の月」のオープニング曲「運命の月は紅」を合唱し,コンサートは幕となった。
高橋さんが言うように,非常に贅沢な時間を過ごすことができ,満足できた今回のコンサート。生演奏の音楽をメインとなり,キャスト陣が要所要所で出演するという形式も,とても良かったと感じた。「音楽を聴くと思い出の場面が蘇る」ということを実感できるものだったので,ぜひ,ほかの作品のコンサートも開催してほしいと願うばかりだ。
「遙か美男子祭りコンサート−遙かなる時空の中3&6−」公式サイト
イラスト/水野十子
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
キャラクターデザイン/水野十子 (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
キャラクターデザイン/水野十子 (C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.