プレイレポート
「Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼」プレイレポート。オアシスと共に生き,共に育っていく小さなタネビト達の活躍を体感しよう
「タネビト」と呼ばれる植物をモチーフにしたキャラクターが,砂漠にオアシスを作り,そのオアシスと共に生きていく姿を描くアクションアドベンチャーRPGとして開発された本作。グレッゾの石井浩一氏がプロデューサー兼ディレクターを務めており,4Gamerでは同氏へのインタビューも掲載済みだ。配信中の体験版をプレイした人もいるかもしれないが,ここでは製品版のプレイレポートをお届けしたい。
ニンテンドー3DS「Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼」インタビュー。石井浩一氏が,新たなエジプシャンファンタジーの世界を構築するまでの秘話を聞いた
「Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼」公式サイト
水の精霊と小さなタネビトがおりなす
オアシスと成長の物語
本作においてプレイヤーは,砂漠の住人「タネビト」の長(デフォルト名は「トト」)となって,自身が砂漠に作りあげたオアシスを,水の精霊「イスナ」や,そこに集まってくる仲間(ゲーム中では「ナカマ」と呼称)達と共に育てていくことになる。
舞台となる砂漠の世界「ヴィストラーダ」に,かつてたくさん存在していたオアシスだが,「カオス」と呼ばれる恐ろしい存在により失われてしまった。今やこの世界に残るオアシスは,主人公達が作ったこの場所だけで,その噂を聞きつけた人々がここへ集まってくるというわけである。
旅の拠点でもあるオアシスは,RPGの町のような存在でもあり,この場所を発展させていくことが本作の大きな目的となっている。主人公が砂漠へと冒険に向かうのも,このオアシスの発展のためで,ゲーム中でのすべての行動が,オアシスの発展へとつながっているのだ。
オアシスの発展には,旅人との出会いが重要だ。砂漠での冒険の最中に旅人と出会い,その「おねがい」を聞いてあげることで,彼らがオアシスへとやってきて住人になる。また,彼らはほかの旅人に関する情報を持っていることもあり,その情報を頼りに再び冒険へと旅立つという展開も多い。
オアシスの噂を聞きつけて,旅人達がオアシスへとやってくる |
彼らの「おねがい」を聞いてあげることでナカマとしてオアシスに定住する |
潤いを求めてオアシスにやってくる旅人には,主人公と同じ種族のタネビトと,獣ような容姿の「ケモビト」が存在している。
タネビトは頭にタネを持った種族で,オアシスに「ハナミセ」という店舗を開いて商業活動を行う能力を持っている。ハナミセを建てると,その売り上げが定期的に主人公の元へと入ってくるようになる。
一方のケモビトにはハナミセを開く力はなく,あくまで冒険のパートナーに特化したナカマだ。その分,戦闘やアイテムの採集などに長けた力を持ち,即戦力として頼もしい存在となる。
頭にツノのようなタネがあるのがタネビト。ハナミセでの商売が本業だが,冒険にも連れていける |
種族ごとに異なる武器を持つケモビト。洞窟などの特定の地形で特技を発揮することも |
こうして旅人が住人になっていくと,オアシスがレベルアップして広くなり,より多くの住人を受け入れられる体制を作っていける。そのことで,主人公の冒険を助ける「虹の加護」などの恩恵を受けられるようにもなるのだ。
ナカマとのコミュニケーションが
オアシスをより大きく育てていく
オアシスの育成について,もう少し詳しく説明しておきたい。住人が増えたオアシスには,そのメインストリートとなる大通りに,タネビトのハナミセを開けるようになる。ハナミセを開くと,オアシスにはどこからともなく「ペンクロウ」というペンギンとフウロウのような姿をした訪問者が現れ,彼らがハナミセで買い物を始め,その売り上げが本作における貨幣的な位置付けの「アクアジェム」として,主人公の元に入ってくるようになるのだ。
ハナミセはスペースさえあればどこに建ててもOK。建てたあとでも移動や撤去は可 |
アクアジェムのアイコンがあるハナミセから売り上げを回収できる |
ここでポイントとなるのは,ハナミセでタネビトがペンクロウ達に売る在庫は無尽蔵ではないということ。ハナミセの在庫は,主人公が旅先やオアシスの栽培園などで入手する素材を納品することで復活し,さらにはハナミセのランクアップにもつながっていく。
こうしたオアシス育成に関連するナカマとのコミュニケーション要素は,「どうぶつの森」シリーズのような,箱庭タイプのコミュニケーションゲームにも近い感触があった。これがアクション要素やRPG要素と直結しているのが,本作ならではの特徴だ。
定期的に在庫数を確認して納品し,ハナミセがランクアップすると,新たな商品を販売できるようになる |
旅人と共にやってくるペンクロウ達は大通りを行き来し,ハナミセで買い物をしていく |
ナカマとのコミュニケーション自体は,オアシスの育成に重要な要素ではあるものの,たとえ放置したとしても,タネビトに嫌われたりハナミセがなくなってしまったりするようなマイナス要素はない。オアシス育成に縛られることなく,冒険の合間に適度に対応しているだけでもゲーム自体は十分進められるバランスになっているのは,嬉しいところだった。
オアシスでは,装備品やアイテムの合成も行える。その素材集めも冒険の楽しみの一つ |
野菜など素材はオアシスにある栽培園で作ることも可能。種は旅先で入手したり,行商人から購入したりできる |
カオスモンスターがはびこる砂漠への旅は
危険がいっぱい!?
本作のメインとなるアクションの部分は,石井氏が過去に手掛けてきた作品の手触りを感じさせつつも,よりアクション性の強いもの仕上がっている印象だ。
主人公は強弱2段階の攻撃(弱攻撃が[A]ボタン,強攻撃が[X]ボタン)を組み合わせたコンビネーションと,回避行動([B]ボタン)を織り交ぜたテンポのいいアクションで戦闘を行える。レベルアップして条件を満たせば,戦闘に役立つ「SP特技」([R]ボタン)を使うことも可能となる。
強弱を使い分けた攻撃が基本となる。互いのダメージはポップアップで表示される |
ゲームには昼夜の概念があり,夜になると凶暴なカオスモンスターが現れる |
物語の展開上,主人公は序盤に1人で砂漠へと旅立つことになるのだが,実はこのときが一番緊張感がある。右も左も分からない状態で,装備も貧弱なまま進まなければならないうえ,セーブができるのはその時点では拠点となるオアシスのみだ。
アクションRPGなので,無理して行こうと思えば行けてしまいそうな気がするものの,思わぬところでやられてしまい,何度かやり直すことになってしまった。ゲーム序盤における独特の緊張感は,かつてのRPGで味わった感覚を思い出させてくれるものだった。
その後,オアシスがある程度まで育ってくると,主人公はナカマになったキャラクターをパーティメンバーとして2人まで連れて行けるようになり,戦力は一気に増強される。パーティに加えられるのはケモビトだけでなく,ハナミセを開いているタネビトでもOKで,後者は連れている間,ハナミセが一時閉店となるのも面白い演出だ。
ナカマが増えても操作するキャラクターは1人だが,十字ボタンで切り替えができる |
オアシスの成長とともに設置される「サフラーのカウンター」で,パーティの入れ替えが可能 |
主人公の風を起こす「風魔法」も含めて,ナカマはそれぞれ異なる特技を持っていて,旅先のダンジョンでは,それぞれの力を使って突破するような仕掛けも存在している。その一部には近年の「ゼルダの伝説」の謎解きをほうふつとさせるものもあるので,あの感覚が好きならば本作にもすんなり入っていけるだろう。
主人公やナカマの持つ特技によって特定の仕掛けをクリアできる。怪しいところは新たなナカマを連れてこよう |
複数のキャラクターを切り替えて操作することで解除できる仕掛けなどもある |
パーティメンバーが気絶してしまったときは,別のキャラクターに切り替えて蘇生処置も行える |
強大なボスも登場。特技をうまく使った攻略が必要となることも |
もう一つ,冒険のルールで面白いのが,オアシスに戻らないと敵を倒したときに入る経験値によるレベルアップが行われないという点だ。石井氏へのインタビューでは,「オアシスに戻ってきたときの安心感と嬉しさをレベルアップと同期させる」という意図が語られており,確かに序盤の1人旅で疲弊して帰ってきたときの安心感は格別なものがあった。
ゲームを進めて移動範囲が広くなるのに合わせて,出先とオアシスを瞬間移動できる「アクアゲート」が使えるようになるなど,帰る手段は増えていくので,ボスが出てきそうな気配がするときには一度帰ってレベルを上げてから,戦いに挑むといった戦略もとれるようになるだろう。
愛らしいキャラクターとキャッチーなサウンドが
プレイしていて印象に残る
ゲームをプレイしていて個人的に印象深かったのは,登場キャラクターの可愛さだ。キャラクターデザインのしずまよしのり氏は,「艦隊これくしょん -艦これ-」で「島風」や「長門」など人気の高い艦娘を数多く手掛けているが,それとはまた違った可愛さを持つデフォルメキャラクターを本作に提供していて,それがゲーム中でもかなり忠実にCGで再現されている。
会話シーンでの表情も豊かで,彼らがCGそのままの姿で冒険に出て戦いを繰り広げる姿も,健気で魅力的に見えてくる。
また,キャッチーなサウンドも好印象で,できれば大きめのボリューム,またはイヤホンなどでしっかり聴きながらプレイしてほしい。
ちなみに本作のサウンドを手掛けているのは,ATTIC INC.に所属するコンポーザーのセバスチャン・シュワルツ氏。ゲーム作品では「HEAVENSTRIKE RIVALS」(iOS / Android),「バイオハザード6」(PC / PlayStation 4 / PlayStation 3 / Xbox One / Xbox 360),「サムライ&ドラゴンズ」などの楽曲を手掛けてきた人物だ。
石井浩一氏が新たに提示する世界観を
アクションRPGで体感する
かつて,アクションRPGの金字塔とも言える「聖剣伝説」シリーズを送り出した石井浩一氏が新規に立ち上げた本作は,非常に遊びごたえのある作品として完成していた。
ナカマと共に砂漠を冒険するアクションRPGにオアシスの育成要素を融合することで,世界観やキャラクターに対する感情移入を促し,さらに両者を飽きさせないバランスにまとめたゲームデザインはさすがである。
配信中の体験版は,すでにオアシスがある程度育っていて,ナカマも数人いる状態で始まる内容となっているが,製品版ではそこに至るまでの過程も濃密なストーリーや演出で描かれている。体験版で味わえたゲームシステムを気に入った人は,石井氏が提示する新たな世界観やストーリーを製品版で,最初から味わってみてほしい。
ニンテンドー3DS「Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼」インタビュー。石井浩一氏が,新たなエジプシャンファンタジーの世界を構築するまでの秘話を聞いた
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