インタビュー
「バイオハザード7」川田プロデューサーと中西ディレクターにインタビュー。挑戦的な最新作は何を目指し,開発の現場で何が起きていたのか
今回,「バイオハザード7」の鍵を握る川田将央氏と中西晃史氏にインタビューを実施した。「バイオハザード7」は何を目指し,開発の現場で何が起きていたのか。そして,なぜ「変革」を選んだのか。興味深い話を聞くことができた。
ぜひ,インプレッション記事やインタビューと合わせてご覧いただきたい。
- 「バイオハザード7」最新インプレッション。全貌は明らかになっていないが,この感覚は紛れもない「バイオハザード」だ
- 「バイオハザード7」開発チームを指揮する竹内 潤氏に聞く,プロジェクトの“これまで”。プロモ戦略の狙いや「全編PS VR対応」を決めた経緯とは
- カプコンの開発スタッフが語る「バイオハザード7」。最高の“ホラー体験”を実現するために,それぞれのセクションで何に挑んだのか
「バイオハザード7 レジデント イービル」公式サイト
新しいことへのチャレンジとファンが求める安心感
4Gamer:
よろしくお願いします。
来年はいよいよ「バイオハザード7」が発売(2017年1月26日)となりますが,今の率直な気持ちを聞かせてください。
川田将央氏(以下,川田氏):
我々が当初,想定していた完成予想図にうまくハマったので,非常に満足しています。コンセプトが固まってから,これだけ順調に進んだタイトルは,ちょっとなかったんじゃないかと思うほどですね。もちろん,個々のスタッフの苦労はあったと思うのですが,それだけの手応えを感じています。
中西晃史氏(以下,中西氏):
構想段階では,企画がひっくり返ることもあったんですけど,いざ開発に入ってからはおおむね予定どおりに制作できました。今回の機会もそうですが,ようやくメディアやユーザーの皆さんにプレイしてもらえる段階まできました。プレイしてもらった反応を聞くと,僕らが「『7』を通じて感じてほしい」と思っていることが伝わっている実感があります。
4Gamer:
海外のファンの反響はいかがですか。
とてもいい感触ですね。昨今のバイオハザードシリーズはアクション寄りのスタイルでしたが,「もっとホラー要素を強くしてほしい」と望む声が多かったんです。その点,「7」はド直球のホラーです。何かしら響くものがあったのではないでしょうか。
4Gamer:
「バイオハザード4」「5」「6」では,アクション寄りのスタイルを確立していました。それを捨てて「ホラーに特化する」というのは,大胆な決断だったと思います。
川田氏:
もともと「7」に関しては,竹内※が「最近の流れから一新して,ホラーを前面に押し出した『バイオハザード』を作ろう」と提案したんですけど,社内でネガティブな意見がほとんどありませんでした。
クリエイターだけでなく事業部の人間も,かなり前向きに「7」のコンセプトを捉えてくれました。おそらく皆さんが想像するよりも,社内調整も順調に進行したと思います。
なによりもカプコンはクリエイティビティを大事にする会社なので,比較的マーケティングよりも先に,まず「面白いゲームを作る」ということに重きを置いているんです。
※「バイオハザード7」開発総責任者の竹内 潤氏。
中西氏:
クリエイターも,やっぱり新しいことにチャレンジするのが好きなんですよ。僕らに限らず,スタッフ一同「やってやろう!」みたいな意気込みでしたね。
新しいバイオを作るのに,ただ売れ線の要素とか,見たことあるものを作っても意味がない。バイオはバイオでしかできない経験を作るべき,と。
開発のプロセスとしては,まずやりたいことを詰め込んで,その後にそぎ落としたり,要素と要素が機能するように調整していきました。場合によっては,シーンをまるごと変更したこともありました。それを繰り返す周期を経て,現在の形に落ち着いています。
こういったスクラップアンドビルドは,どのタイトルでもやっていることですが,開発初期はとくに「まずはやってみよう」と。アイデアを否定せずに,取り入れる方針を強調していました。
川田氏:
アイデアというのは,どこまでいってもアイデアなんです。そのアイデアをどう実現させるのか,現実の仕様にするのか。ここのやり取りが大事になってくると思います。
今回,開発期間はあまり長くなかったと思いますが,スタッフはベストな範囲でアイデアを投入して,より良いものを選択できた。それは大きな成功だと思っています。
4Gamer:
「7」はこれまでの作品と比べて,大きな変化を遂げました。そうなると,ファンが求める安心感を両立することが難しいと思います。そのあたりはどのようにバランスを保ったのでしょうか。
川田氏:
最も大きな変化は,やはりビジュアル面ですね。カメラ視点が変わり,フォトリアルなグラフィックスにもなった。でも,コントローラを触ってもらえれば,「ああ,バイオハザードだ」と安心してもらえるという自信はあります。プレイした瞬間に分かる「バイオハザード」らしさが実感できたとき,「7」のポテンシャルを感じてもらえると思っています。
中西氏:
プレイヤーが直接体験する表現や演出の部分に関しては,「一新しよう」という意識がありました。一方,バイオハザードならではの経験,たとえばドアを開けるときのドキドキ感や,弾薬が少なくなったときの不安感といったものはちゃんと残していこう,と。
コアメンバーは何かしら,シリーズ作品の開発を経験しているので,そのあたりも分かってくれています。
4Gamer:
イメージが共有できているから,意思疎通も図れるということですか。
中西氏:
そうですね。ただ,スタッフそれぞれに「バイオハザードはこうあるべき」というものがあり,なかなか意見がまとまらないときもありました。同じシリーズとはいえ,携わってきた作品が違うので,それぞれに思い入れがありますね。
そのため,竹内は開発初期の段階で,頭をリセットするために「バイオハザードらしさはいらない」とまで言っていました。
中西氏:
また,最初の企画書と同時に,30秒のホラームービーを作りました。登場するのは,廊下と女性のみという,最低限の要素でびっくりする動画です。それでいて,それぞれのクオリティは高い,というものです。これはイメージの共有を図る目的もあって,竹内は「素うどん」と呼んでいましたね。
4Gamer:
素うどんですか。
中西氏:
麺とダシ,そのものの味をしっかり出す。そこには,雑念を払うという意味もありました。
それから,スタッフ全員で「死霊のはらわた」の鑑賞会を行いました。山小屋と数人の登場人物だけで構成されている映画なのですが,エネルギーがすごいから,と。
4Gamer:
オリジナル版は30年以上前の作品ですよね。初めて鑑賞する人も多かったのでは?
中西氏:
若いスタッフの中には,ちょっと戸惑っている人もいました。
4Gamer:
さすがにそうですよね。
中西氏:
確かにチープな部分もありますが,当時はセンセーショナルだったわけじゃないですか。シンプルで低予算,だけどアイデア勝負で映画界に革命を巻き起こした。そんなサム・ライミ先生のパッションを受け取ってほしい,と説明しました。
(一同笑)
川田氏:
その後,バーティカルスライス(作品の一部分のみを完成形に近い形で仕上げた物)として,試作品を制作したんですよ。
このプロセスを踏むことで,スタッフには「7」が持つパワーを感じてもらえたと思います。新しいことをやろうとしている。それでいて,バイオハザードらしく仕上がりそうだ,という確信が持てた。そのあたりを共有できたことが,スタッフ間の安心につながったと思います。
PS VR対応にはさまざまなオプションを用意
4Gamer:
続いて,PlayStation VR対応についてもお聞きします。どのような点にこだわったのでしょうか。
川田氏:
ヘッドマウントディスプレイを装着することで,匂いまで感じられるような雰囲気を出したかったんですよ。登場人物の存在感を間近で感じられるような。結果として,密閉空間を歩くスタイルの「7」に,すごくハマったのではないかと。
中西氏:
VRに関しては,「酔い」の問題もあります。スタッフの中にも最初は全然慣れなくて,気分が悪くなっていた人もいます。
VRの酔いの原因の一つとして,ゲームの移動速度や回転の感覚が,現実のそれと異なるというものがあります。逆に言うと,最初は無理でもゲームの移動や回転の感覚を覚えれば,快適に遊べるようになります。
もちろん,個人差があるものなので,保証できるわけでありませんが。
4Gamer:
今年のE3で取材したときは結構酔いましたが,今回体験した最新ビルドでは平気でした。
もちろん,E3以降にはさまざまな調整を施しています。
さらに,カメラの回転方法や,距離感を安定させる基準ラインの表示といったオプションを充実させました。これらは何十人ものテスターを使って実験を繰り返し,実際に「快適に遊べるようになった」という効果のあるものを実装しています。
4Gamer:
今回,CEROレーティングが異なる2バージョンが発売されます。CERO Z版(グロテスクVer.)とCERO D版の違いは,やはりゴア表現ですか。
中西氏:
主なものはそうですね。ただ,通常版は冷蔵庫の中身に入ってる食べ物が若干マイルドになっていたりもします。赤すぎるものが茶色になっていたり。
4Gamer:
PC版とコンシューマ版は同じ内容ですか。
川田氏:
はい。PC版でも2バージョンをリリースします。
中西氏:
グロさも,ホラー要素の一つですが,「そこはいいよ」というユーザーさんもいらっしゃるので,選択肢を用意できたのは良かったと思っています。
川田氏:
意外にもバイオハザードシリーズは,これまで凄まじい描写には挑戦していなかったんです。今回はそれを実現するために,あえてバージョンを分けてみました。
4Gamer:
なるほど。
難度に関してはいかがですか。今回の最新ビルドでは,「Normal」でもかなりの歯ごたえを感じましたが。
中西氏:
初期の「バイオハザード」では,苦労の先にある達成感がやみつきになる要素の一つだったと思うんです。その感覚を感じてもらいたいので,意図的にそのような調整にしている場面もあります。難易度「Casual」では,そこまでではないですが。
4Gamer:
戦闘だけでなく,探索や謎解きについても,さりげないところにヒントが隠れていて探し出すのに苦労しました……。
中西氏:
探索や謎解きに関しては,戦闘の難度調整よりも苦労しています。テストでも,謎解きのゲームに慣れているプレイヤーと,そうでないプレイヤーでは求められる難度がかなり異なります。
4Gamer:
確かにバイオハザードのような作品だと幅広い層がプレイしますから,調整も大変でしょうね。
中西氏:
ええ。そのぶん,時間をかけて調整しています。やはり,未知の敵に初めて遭遇したときに焦りや不安,そして絶望感を感じられることが,ホラーでは重要です。
ただ,今までのバイオもそうであったように,立ち向かって攻略していくことで,戦えるようになっていきます。最初に苦戦していた敵を対処できるようになって「俺,スゲェじゃん」という気分に浸れるのも,バイオハザードが持つ強みだと思います。
4Gamer:
ますます発売日が楽しみになってきました。本日はありがとうございました。
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