プレイレポート
“バトルロイヤル”がストラテジーにも到来。「シヴィライゼーション VI」に突如追加された殺伐モードは,シューターと違った理不尽な面白さ
そんなバトルロイヤルだが,実は2019年9月に,あるタイトルにも新モードとして追加された。「どのFPS? それともTPS?」と思うかもしれないが,どのタイトルかを予想してみても,おそらく100人中100人が外れることだろう。なにせ,正解は「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」(以下,Civ6)なのだから。
そう,Civ6である。「あと1ターン……」とついつい遊び続けてしまい,悪魔的に人類の時間を浪費させまくる,やめどきの見つからないストラテジーゲームシリーズの最新作。PC版の発売は2016年10月だが,3年経ってもアップデートが継続的に行われており,なぜか9月に突然バトルロイヤルモードが追加されたのだ。ストラテジーでバトルロイヤルというと,「オートチェス」ジャンルのタイトルが名乗っていることもあるが,Civ6に関しては,完全にCivのまま展開される。もはやまったく意味が分からないが,実際のところ,ストラテジーでバトルロイヤルというのは,楽しめるものなのだろうか。
意外にもバトルロイヤルらしいゲームプレイ
なぜか追加されてしまったバトルロイヤルモードの名前は「レッドデス(Red Death)」という。すでに大変物騒な雰囲気だ。
このモードでは何をするのかと言うと,もちろん最後まで生き残ることが目的となる。舞台となるのは30XX年の滅びゆく惑星。プレイヤーは衰退した文明を率いて,死に瀕した星からの脱出を目指す。しかし,脱出するための宇宙船に乗れる勢力は1つだけ。ほかの文明にはすべて消えてもらわなければならない。
プレイヤーが操作する文明は,日本? アメリカ? イギリス? いやいや,そんな古い文明が存在するわけがない。指導者達は道を誤り,30XX年の世界では我々が知る文明は影も形もなくなってしまったのだ。この時代,国々の指導者に代わって人々を率いているのは,もっと世紀末な連中である。危険に魅入られた戦闘マニア,カルト思想に染まった教団員,放射線を浴びた海賊,倫理観にかなり問題がある科学者,下劣極まりない筋肉バカなど,個性的すぎる面々が最後の文明としてたくましく生きているのだ。文明とはいったい……?
各文明は,通常のゲームにおける近代の近接戦闘ユニット「歩兵」と,長距離戦闘ユニット「機関銃」,そしてレッドデス用の「民間人」が与えられた状態でスタートする。民間人は,戦闘力も労働力も一切ないのだが,レッドデスの敗北条件は自分の民間人がすべて死亡,もしくは敵文明に奪われることなので,最後まで守らなければならない。逆に言えば,民間人さえ生存していれば,ほかのユニットがどうなろうが勝利となる。
レッドデスでは,建物を建てたり,リソースを獲得したりといった内政は一切行わない。プレイヤーがやるべきことはシンプルで,マップを探索して廃墟となった街を見つけ,そこから使えそうなものを見つけることだ。バトルロイヤル系シューターで廃屋から武器を拾うように,レッドデスでは廃墟から戦闘ユニットを拾うのである。
街からは歩兵や機関銃,民間人のほか,護衛に向く「対戦車兵」や,機動力の高い「ヘリコプター」が見つかる。これらで自文明の戦力を増強し,来るべき敵文明との戦いに備えるのだ。
また,マップ上には「襲撃者」と呼ばれる勢力が存在する。こいつらは,通常のゲームにおける「蛮族」で,突然マップ上に出現して周囲の文明に攻撃を仕掛けてくる迷惑な連中だ。ただし,襲撃者の拠点では良いものが手に入りやすく,占領すると戦闘ユニットのほか,「核融合兵器」を入手できることもある。何者だよ襲撃者。
プレイ中,もっとも注意しなければならないのが,モード名になっている「レッドデス」だ。これは放射能の嵐であり,ゲーム開始10ターン後から赤いエリアで表示され,徐々に拡大していく。レッドデスの中にいるユニットは継続的にダメージを受け,いずれ死んでしまうので,何が何でも逃げなければならない。レッドデスに汚染されていないエリアはどんどん狭まっていくので,最終的に文明同士の戦闘が巻き起こるわけだ。
しかし,レッドデス付近にはチャンスも転がっている。レッドデスに飲み込まれそうな危険地域に,何者かが投下物資を置いていくからだ。中には「戦車」や「ロケット砲」といった強力なユニット,核融合兵器が入っているので,いち早く確保したいが,敵文明とぶつかる可能性も高い。
まとめると,レッドデスの範囲から逃げながら,探索して戦闘準備を整え,遭遇した敵と戦うか,それとも逃げるか,投下物資の確保に向かうかなどの駆け引きをしつつ,安全地帯を目指す。最後は生き延びた文明同士で戦争だ。
つまり,やっていることはバトルロイヤル系のシューターとまったく同じ。走って敵を撃つ操作が,ユニットに指示を出して探索や戦闘を行う形に変わっただけで,きちんとバトルロイヤルとして成立しているのだ。
笑える理不尽展開がプレイヤーを襲う
基本ルールはシューターと同じでも,ストラテジーになったことでプレイ感はだいぶ違ったものになる。あえて悪い言い方をすると「運要素が強い」。
シューターの場合,装備が良かろうが悪かろうが,敵の頭をぶち抜いてしまえば勝ちなので,勝敗は戦ってみなければ分からない。その点,ストラテジーはユニットの数や質が正義であり,勝敗はぶつかる前からほぼ決まっている。つまり,下準備がとにかく重要で,探索をすればするほど勝利にグっと近づくバランスとなっている。
しかし,探索しても街が見つからなければ何も始まらない。広範囲にユニットを送るには数も必要だ。ユニットの移動力も探索力に直結するため,序盤にヘリコプターが入手できるかどうかも重要となる。
また後半は,ユニット同士を合流させて「軍団」「大軍団」を結成し,戦闘力を上げることで有利になるので,ここでもユニットの数がいる。
こうしたユニット集めは,本当に運としか言いようがないので,どうにもならないときはどうにもならない。
さらに運要素を強めているのが,レッドデスだ。レッドデスは毎ターン拡大し,一定まで広がったら数ターン止まり,また拡大を始める。これに対して,ヘリコプター以外のユニットは移動力が2しかなく,さらに地形によって移動が制限されるので,簡単にレッドデスに飲み込まれてしまうのだ。
運悪くレッドデスの発生地点から近いところでゲームが始まると,終始逃げ続けるしかなくなり,探索する暇すらない。結果的に戦力が集まらず,生き残るのが難しくなってくる。
探索中に敵文明と出会ってしまった場合も,非常に困る。シューターの場合,敵を倒せばそいつが持っていた武器やアイテムを奪って強くなれるが,レッドデスにおいては,得られるものが民間人ぐらいなのだ。ユニットが破壊されて戦力が落ちるだけでなく,レッドデスから逃げる時間が削られ,さらには戦っている間はほかの文明がフリーで探索し放題になるので,どんどん遅れていく。
戦わずに探索範囲を拡大できる文明ほど,投下物資も確保しやすい。優位に立ち回れる文明と,そうでない文明の差が大きいのだ。
これだけでは,「ストラテジーでバトルロイヤルやってもダメじゃん」ということになるのだが,ここでスパイスになるのが,ストラテジーならではの「何が起こるか分からない」展開だ。ベースがCiv6なだけに,ユニットの数や質以外にも,文明の能力や地形,襲撃者,核など,さまざまな要素が絡み合うため,最後まで油断できないのである。
いろいろ体験したので,いくつかのケースを紹介してみよう。
ケース1:
戦闘ユニットの数に恵まれず,限られた戦力で探索を続ける筆者。しかし,運悪く戦力の揃った敵文明に見つかり,包囲されてしまった! 削られる体力。撃破されるユニット。もうダメかと思ったその時……突然,敵ユニットが全員消失した。後方に出現した襲撃者により,筆者も発見できていなかった敵文明の民間人が奪われてしまったのである。マジかよ!?
ケース2:
強大な敵文明が,有利な地形にがっしりと陣を構え,筆者の前に立ちはだかる。正面から戦えば敗北は必至。敵はいくつかの文明を滅ぼして民間人を3体確保しており,襲撃者による“うっかり死”も期待できない。もはや勝利を確信しての布陣だ。
しかし,筆者には運よく手に入れた2発の核があった。同じ地点に連発すれば100ダメージなので,どんなユニットも即死である。食らえ!
視界の関係で,敵軍すべては見えていない。そこで,敵の集まっていそうな場所へ2発の核を放つ。すると,敵の主力ユニットと一緒に,偶然3体の民間人も蒸発し,敵文明は滅んでしまったではないか。マジかよ!?
ケース3:
探索中に3発の核を手に入れた筆者。レアアイテムをこれだけ確保したのだから,後半まで生き延びてしまえば,核で制圧しておしまいだ。堅実に戦闘を避け,戦力を集め,いよいよ最終戦争がやってくる。バカめ,こっちは核が3発だ,消し飛べ!
しかし,勝利を確信した筆者に対して,敵文明は4発の核を撃ってきたのであった。マジかよ……。
ケース4:
最後の最後まで残った1対1の勝負。安全地帯はわずかな広さしかない。そのど真ん中に陣取る大量の敵ユニット。対して筆者の戦力は,敵に囲まれたヘリコプター1体! あとは核1発と,居場所がバレていない民間人2体! どう考えても無理である。
ヤケクソ気味にど真ん中に核をぶっ放し,民間人1体を囮に,ヘリコプターを逃がす。すると,核で中央が汚染された関係で,敵と筆者は安全地帯の両端に分断される形となった。そして,こちら側だけに運良く2つの投下物資が……。
核の汚染が終わり,筆者の残党をひき潰しにくる敵戦力。しかし,投下物資からは2体のロケット砲が登場していた。予想外の遠距離攻撃で,敵軍は壊滅。絶望的な戦力比での殴り合いだったはずなのに,筆者は勝利してしまった。マジかよ!?
ケース5:
何戦も遊んで,一度だけ遭遇したレアケース。本モードにおける水辺はすべて汚染されており,入ったユニットはダメージを受ける。また,海戦用ユニットは一切登場しないので戦闘もできない。水に入るときと陸に上がるときは,強制的に移動がその場で終わる(「海賊」文明の場合は無視できる)ペナルティもあり,基本的には入りたくないタイルだ。ただし,海上では移動力が6になるので,どうしてもレッドデスから逃げたいときなどには役に立つ。
そんな微妙な海タイルなのだが,レッドデスの安全圏がここだけになってしまったことがある。最後の安全圏は全部海! 陸地,1タイルもなし! 海上のユニットは勝手に死んでいくわけだが,この時先に海に入っていたのが,最大の戦力を持つ文明だった。ほかの文明の残党を始末すべく,どう見ても勝利は確実なユニット数で捜索に出ていたのだ。当然,すべて海の藻屑と消えてしまった。マジかよ……。
こんな感じで,本モードではとにかく予想外の事態が巻き起こる。ほかにも,「安全地帯の境界から3タイル以内にいると戦力+10」の「エッジロード」や,「レッドデス内での全ユニットの移動力+3」の「ミュータント」といった爆発力のある能力の文明がいると,盛大に計算が狂って悲鳴をあげるというのも,よくあることだ。
シューターの場合,地形の有利不利や武器の相性はあっても,結局は撃ち合いで勝敗が決まる。これが公平で良いところでもあるのだが,ストラテジーでバトルロイヤルを表現しているレッドデスには,こうした公平性がまったくない。その代わり,理不尽な展開の数々が,腹筋をぶっ壊しにくる。競技性は皆無だが,面白いかと聞かれたら,涙が出るほど面白いと答えるしかない。
一言でまとめるなら,レッドデスは「運要素が強すぎるけど爆笑できるモード」だ。個人的には,こうしたバトルロイヤルもアリだと思うし,よくCivでこのモードに挑戦したなと感心している。1人で遊ぶためのランダムマッチングは用意されているが,できれば友達を集めて遊ぶのがオススメだ。プレイヤー2人,AI4人のルームを作成して遊んでも十分に成立する。
欠点を1つ挙げるならば,敗北するとリザルト画面に飛ばされてしまい,観戦が一切できないことだ。筆者が友人と遊んだときは,外部のボイスチャットツールの画面共有機能を活用して,敗者も観戦ができるようにしてから始めたが,仲間内で楽しみたいならそういった工夫が必要になる。
レッドデスを遊ぶには,最新のアップデートを適用するだけでOKだ。拡張パック「嵐の訪れ」「文明の興亡」を入れている人も,そうでない人も,一緒にプレイできる。1プレイも30分〜1時間程度なので,気軽に人を誘いやすい。周りのCiv6所持者に声をかけて部屋を建てると,ゲラゲラ笑いながら盛り上がれるだろう。
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」公式サイト
- 関連タイトル:
シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI
- この記事のURL:
キーワード
COPYRIGHT 2016 TAKE-TWO INTERACTIVE SOFTWARE AND ITS SUBSIDIARIES. SID MEIER’S CIVILIZATION, CIVILIZATION, CIV, 2K, FIRAXIS GAMES, TAKE-TWO INTERACTIVE SOFTWARE AND THEIR RESPECTIVE LOGOS ARE ALL TRADEMARKS OF TAKE-TWO INTERACTIVE SOFTWARE, INC. ALL OTHER MARKS AND TRADEMARKS ARE THE PROPERTY OF THEIR RESPECTIVE OWNERS. ALL RIGHTS RESERVED.