プレイレポート
揺らぐ世界を進む文明の旅路。「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のプレイインプレッションをお届け
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」
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古代から現代,そして未来へ。文明の盛衰を体感できるターン制シミュレーションである本作には,新たな要素が多数導入されたほか,カートゥーン調の親しみやすいグラフィックスが採用されている。
ここでは,数多く導入された新システムの1つ「積極的な研究」がプレイにもたらす影響の紹介を通じて,「シヴィライゼーションという名前は知っているが,難しそう」と思っている人へ向けて本作の魅力を解説していきたい。
ちなみにCiv6には,都市の周囲に施設を作る「区域」(関連記事)や,宗教を創始して布教することで勝利を収める「宗教による勝利」(関連記事)などがあり,いずれも本作の興味深い部分になっている。
なお,今回プレイできたのはメディア向けのプレビュー版で,「すべての文明は使えない」「難度を変更できない」「ゲーム開始時の細かな設定ができない」などの制限があった。そのため,ゲームバランスや訳語などが製品版と異なっている可能性があるので,この点はあらかじめご了承頂きたい。
プレイに新たな揺らぎをもたらす,「積極的な研究」システム
本作は科学技術を「技術ツリー」で,社会の仕組みを新たに加わった「社会制度ツリー」で発展させるシステムだ。おおまかにいうと,技術ツリーを進めると強力なユニットが生産でき,社会制度ツリーを進めると,文明の成長を助ける「政府」「政策」が手に入るという感じだ。ここでは,2つのツリーで開発するものをひとまとめに「技術」と呼ぶ。
さて,これまでの技術開発は,プレイヤーの行動とは無関係に,開発したいものをクリックして一定のターン数の経過を待つだけだった。しかし本作では,例えば「弓術」なら「投石兵でユニットを倒す」,「石工術」の場合は「採掘場を建設する」,「マスメディア」は「無線通信を研究する」など,それぞれの技術に用意された条件を満たすことで,ブーストが発動し,通常より短い期間で研究が完成するのだ。
また,技術開発だけでなく探索でも効果を発揮し,積極的にユニットを使ってマップを探索し,新たな発見をすることでブーストが発生することがある。
以上が積極的な研究の基本だが,このシステムの面白いところは,思わぬところでブーストが発動するため,プレイに揺らぎが生まれるところだ。
ブーストの発動条件は比較的単純で,そのため,意外なところで意外なブーストが発動したりする。例えば,都市の近くに川があれば「水車小屋」や「用水路」が作れるが,そこで「建築学」「軍事工学」のブーストが発生したり,蛮族が自文明の周囲に配されたマップでは,弓術や「軍の伝統」など,戦闘が条件となったブーストが早い段階で発動する。
ゲームで優位に立つためには,新しい技術は一刻も早く手に入れたい。とはいえ,目指す勝利条件に無関係の技術を手に入れても仕方ない。あれこれ発生するブーストに引っ張られて無駄な技術を開発すると,文明の発展が中途半端になることもあるのだ(というか,筆者はしばしばなった)。もっとも,ブースト発生をきっかけに勝利目標を変えてしまうという選択をすることだってできる。戦争から宗教の布教まで,さまざまな勝利条件が用意されている本作だけに,途中で方針を切り替えるのも大いにアリなのだ。
シリーズ従来作と同様,マップはランダムで生成されるため,プレイのたびに展開が異なり,それが高いリプレイ性を提供してきた。さらに今回の,積極的な研究によって技術開発などにもランダム性が加わり,「必勝法」が考えづらくなった。
また,ブーストが発動した際,その状況を物語風に綴るテキストが表示されるところも興味深い。例えば,「槍兵」で敵を倒すと,“敵は強力になっているのでもっと長い槍が必要になるかも知れない”というテキストと共に,「長槍兵」を作れるようになる技術「戦術」にブーストがかかるという具合だ。単に特殊な効果が発動するだけでなく,没入感をより高める工夫が施されているように思える。
マップで「自然遺産」を見つけると,“国民はこの星の雄大さに感銘を受けました”として「占星術」のブーストが発動。他の文明を接触すると,“他国と接触したことで国をいかに統治すべきか考えが定まった”と「政治哲学」がブーストされるなど,ゲーム中,いろいろな局面でブーストが発動する。テキストの描写から,自分の文明の細かい部分をいろいろ想像するのも楽しい。
遊びやすく,歴史のロマンが感じられる
個人的には,このようなランダム要素が加わったことで,シリーズのベテランプレイヤーには新鮮な驚きが与えられ,ビギナーにとっても遊びやすい作品になったという印象だ。
ビギナー向けにはさらに,「助言者」による豊富なアドバイスと優れたUIの存在も見逃せない。助言者はさまざまな状況で登場し,プレイヤーにアドバイスを与えてくれる。「ゴールドが余っているので,何か買ってみよう」「都市国家を見つけたので代表団を送ってみてはどうか」「新しい政策を取り入れてみよう」など,とにかく親切だ。アドバイスの際に出てくる「もっと詳しく教えてくれ」ボタンを押せば,シリーズの伝統である充実したヘルプ「シヴィロペディア」の当該ページに飛ぶ。アドバイスに従って行動しつつ,シヴィロペディアを読んでいけば,自然とゲームが理解できるわけだ。
また,プレイ中に注意すべき部分は画面の右側にまとめられている。下の大きなボタンは,技術や社会制度が開発できるようになったときや,行動できるユニットが残っているときなど,プレイヤーの指示が必要な際にアクティブになり,これを押してちゃんと行動しないとターンが進められない仕組みになっている。また,敵が迫ってきたり,都市に住宅が足りなくなったりといった警告も表示される。
助言者のアドバイスを読みつつ,画面右下のボタンでしっかり指示を出し,警告に合わせて対応していれば自然にゲームが進んでいく。初めてシリーズ作品をプレイするという人でも,わけの分からないまま放り出されるといったことはないのだ。
ゲームから歴史のロマンを感じられるのも,個人的に面白い点だ。
例えば,ゲーム中に登場する政府は「軍事」「経済」「外交」といった属性のスロットを持ち,ここにさまざまな効果を持つ政策をはめ込むことで文明をパワーアップさせるというシステムになっている。政策側にも属性があるため,いろいろな組み合わせを考えるのが楽しく,政治をカスタマイズしている気分になる。
政府はタイプによってスロットの数が異なっており,例えば「ファシズム」は軍事スロットがやたらと多く,「共和制」には軍事のスロットがない代わりに経済のスロットが多いなど,特色はさまざまだ。ファシズムは軍の力がないと成り立たず,共和制では経済が重視されるなど,開発者の歴史,および文明解釈が見えてくる。
北条時宗とセオドア・ルーズベルトとクレオパトラが同時に登場するなど,シヴィライゼーションシリーズは必ずしも歴史的なリアリティを追求した作品ではない。しかし,開発者達が歴史や文明を徹底的にリサーチし,そのあとでゲームに向けたデフォルメを施しているのは間違いなく,作品の端々にそれが垣間見られる。歴史に詳しくなくても十分に楽しめるが,詳しければ詳しいほどのめり込めるはずだ。
技術や社会制度を開発した際には,関連した格言が表示される。ローマの著述家であるプルタルコスや地動説で知られるガリレオ・ガリレイ,そして著名なSF作家のアーサー・C・クラークなど,人選は非常に幅広く,考え込まされる名言ぞろいであるうえに朗読付きなので,次はどんな格言が見られるかと楽しみになる。
また,シリーズではおなじみの「偉人」も今回はスケールアップし,実に181人も用意されている。彼らは毎回ランダムにゲームに登場し,例えば,進化論を唱えたチャールズ・ダーウィンは自然遺産の周囲で能力を発動すると科学力が得られるといった具合に,それぞれ異なる特殊能力でプレイヤーを助けてくれる。日本の偉人としては葛飾北斎がおり,「凱風快晴」(いわゆる“赤富士”)などの傑作を描いてくれるそうだが,筆者はまだお目にかかっていないので,期待している。
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シヴィライゼーションシリーズは中毒性が高いと言われるが,Civ6をプレイする限り,「次はあんなことを試してみたい」「今度は別の勝利条件を目指してみよう」といった,探求心を刺激するシステムが,こうした現象を生み出しているのではないかと思える。
テーマは高尚だが,気軽にプレイできる。奥深くはあるが,複雑過ぎない。プレビュービルドなので,触れられなかった部分にとんでもないモノが潜んでいるかもしれないが,そのすべてを味わえたわけではないのが,今は逆に嬉しい。製品版が発売されれば,さらにいろいろな楽しみが待っていそうだからだ。本作がどんな反響を巻き起こすのか,発売を楽しみにしたい。
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