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格闘ゲームと共に歩んだ情熱のあとさき――鉄拳・原田Pの不定期連載「原田が斬る!」,第2回はアークシステムワークス森Pとのガチンコ対談
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印刷2016/11/12 00:00

連載

格闘ゲームと共に歩んだ情熱のあとさき――鉄拳・原田Pの不定期連載「原田が斬る!」,第2回はアークシステムワークス森Pとのガチンコ対談

店舗間通信対戦が開く,ゲームセンターの未来


4Gamer:
 そろそろお二人の本業(?)である格闘ゲームについて伺ってみたいと思っているんですが……アイドルの話,もうちょっと続けます?

森P:
 いや,次に行きましょう。やっぱり格闘ゲームの話もしないとね(笑)。これは僕自身,原田さんにぜひ聞いてみたかったんですが,アーケード版の「鉄拳7」で店舗間通信対戦を実現されましたよね。あれにもう興味津々なんですが……実際のところ,どうなんでしょうか。手応えのほどは。

原田P:
 ああ実はあれ,6年ぐらい前から「早く誰かやらないかな」って思ってたんですよ。こういうのは実店舗を持っているメーカーじゃないと難しいから,僕としてはセガさんが本命だと思っていたんだけど。

4Gamer:
 実店舗を持っているメーカーでないと,環境を作るのがまず大変ですからね。

原田P:
 そうそう。でも技術的なハードルだけでなく,運営面での難度が高いこともあって,結果的にどのメーカーも手を出してこなかった。これはマズいと思って,自分でリスクを取ることにしたんです。「パイオニアになりたかったので実現しました」って言ったほうがカッコいいんだろうけど,一番手に名乗りをあげるのは苦労が多いので,少し待っていたというのが真相です。結果的に,先陣を切ることになっちゃっいましたけど(笑)。

森P:
 コインオペレーションが絡むと,実験的なことをやるのは度胸が要りますよね。実際にやってみて,感触はいかがですか?

原田P:
 結論から言うと,本当にやって良かったなって思ってます。
 最近考えるんですけど,「良質なゲーム作ること」自体なら,今はどこだってやれるようになってきた。それこそインディーズでも,技術的に良質なゲームは作れる時代です。じゃあどこで差がつくかっていうと,まずは「広告宣伝費」。これこそ大企業の強みで,そこにお金をかけられれば,結果としてゲームの価値は高まります。これがまず一つ。それからもう一つあって,それが「利便性(ベネフィット)」の部分です。

4Gamer:
 利便性とは?

原田P:
 例えば家庭用ゲームだったら,家に居ながらにしていろんなゲームが遊べちゃうから,アーケードゲームと比べたら便利だよね。これが携帯ゲーム機やスマホなら,それこそどこでも遊べちゃうわけで,もっと便利。こういうゲームを遊ぶ環境を整備するというのは,大企業でないとできない。

4Gamer:
 ああ,なるほど。

原田P:
 で,これは森さんならきっと分かってくれると思うんだけど――ハイエンドな家庭用ゲーム機や便利なスマホがあってなお,ゲームセンターのコミュニティって,我々にとってすごく大事じゃないですか。

森P:
 もちろん分かります。ずっとゲーセンで育ってきましたから。

原田P:
 そもそもこの時代に,最新作である「鉄拳7」をアーケード先行で出したのって,元はと言えば,そうした「ゲームセンターでしか生まれないコミュニティ」を消したくないからだったんだよね。ゲーセンというコミュニティを守りたいと思った。だけど蓋を開けてみたら,プレイの80%近くが店舗間通信対戦というデータが出ちゃった。つまり,従来の店舗内での対戦はほとんど行われなくなってしまったってことなんです。

森P:
 ああ……やっぱりどの時間でも対戦相手がいるっていうのは,圧倒的に便利ですものね。友達を無理に誘う必要もないわけで。

原田P:
 そう。つまり利便性ってやつには,誰も勝てないんです。ゲームセンターという独特で濃いコミュニティでさえ,ただ便利なほうを選択したんですから。驚きましたけど,それが分かったのは収穫だったと思います。

画像集 No.007のサムネイル画像 / 格闘ゲームと共に歩んだ情熱のあとさき――鉄拳・原田Pの不定期連載「原田が斬る!」,第2回はアークシステムワークス森Pとのガチンコ対談

森P:
 しかし,ラグの問題は残りませんか? 通信対戦だと,ラグの発生はどうしても避けられないですよね。とくにアーケードの格闘ゲーマーには,納得できないところだと思うんですが。

原田P:
 ラグの問題には,ゲームデザインの段階から最大限注意を払っていますけど,どうしても発生することはあります。それはもう,物理的な距離が存在する以上,そして何よりインターネットの仕組み的に,避けようがないケースがある。しかしそれでも,プレイヤーは店舗間通信対戦を選んだということです。

4Gamer:
 つまり原田さんとしては,この結果は想定外だった?

原田P:
 「面と向かって対戦するのがいいんだ」みたいなゲームセンター文化を守るという意味では想定外でした。アーケードの客層なら,それでも半数近くは店内対戦を選ぶかもしれないって,期待していましたからね。とはいえ,こうした試みによって良いことも多く見えてきた。例えば鉄拳7は,とくに地方のゲームセンターからの評判がいい。それこそ,朝10:00にゲーセンに行っても,対戦相手がいるわけだから。

森P:
 東京に住んでいる僕らは,電車でちょっと移動すれば人が集まるゲーセンにいけるけど,地方はそうじゃないから。

原田P:
 ただ,やっぱりプレイ人口は都会の方が多いから,統計的に見ると都会の方が勝率は高いわけです。その分,地方のお店にはインカムが入る。都会のお店はプレイ人口の多さでカバーする。そういう構図になってます。

森P:
 うーん,そうか。それはやっぱり,悩みどころですね。

原田P:
 森さんが不安に思われるのは分かりますけど,きっと「BLAZLUBE」シリーズも店舗間通信対戦に対応すれば,さらに幅広い客層が掴めると思いますよ。だから,僕としては良い影響の方が大きいんじゃないかなと。

森P:
 や,個人的にはやる気満々なんですよ。ただ一つだけ,どうしても気になってることがあって。連勝記録なんですけど,通信対戦だとこれをどうするかが難しくないですか。

原田P:
 ああ,途切れさせたくないってことですね。鉄拳7の場合は,10連勝するとそこでプレイが終わりますが,次にコインを入れると連勝数は引き継がれる仕組みになっています。

森P:
 ええ。でもやっぱり,「100円でどれだけ遊び続けられるか」っていうのは,アーケードの格闘ゲームの醍醐味じゃないですか。彼らの100円にかける想いが,そこに乗っかっている気がして。

原田P:
 分かります。例えばですけど,トイレも行かずに頑張った30連勝と,10勝ごとに途切れた30連勝ではなんというか,こう……体験として別物なんだよね。

森P:
 そこさえクリアできれば,BLAZBLUEでも店舗間通信対戦にチャレンジしたいですね。


格ゲーはアーケードがなくても大丈夫?


4Gamer:
 少し話題が変わるのですが,とくに最近,アーケード版がない格闘ゲームが増えつつあるじゃないですか。お二人は,そこについてどうお考えなんでしょうか。格闘ゲームは,アーケードがなくても大丈夫だと思いますか?

原田P:
 これはねえ,ここは意地でもNOって言いたいところなんだけど,実際はストレートには言えそうにないところもある。森さんはこのあたり,どうなんですか?

森P:
 僕はNOですね。ゲームセンターの数は確かに減ってはいますけど,文化としては残ると思っていますし,僕自身も残したいと思っています。原田さんは違うんですか?

原田P:
 僕の解答は,「アジアに限りNO」ですね。まず欧米については,僕らが思い描くようなゲーセンはもう限りなくゼロだから,これはもう仕方がないでしょうね。一方アジアに目を向ければ,今の生活様式の中なら,ゲーセンが残る余地はあると思っています。

4Gamer:
 対戦の場,コミュニティの場としてのアーケードは残り続けると。

森P:
 ただ格ゲーマーもそうですけど,アーケードのコアゲーマーって,何事にも自虐的な面がある気がするんですよね。それが,自分で自分の居場所を潰そうとしているように見えてしまう。

原田P:
 そういうのって自虐なんですかね? 僕自身は,何に関してもそうですが,わざわざ盛り下げるようなことや,世界がひっくり返ってもどうにもならないようなことを,あえて言う理由が分からなくて。なんとかその背景を読み取ろうと思うんだけど,さっぱり見当がつかないことがしばしばです。だからTwitterでそういうことを問われても,沈黙せざるを得ない瞬間がある。

森P:
 でも,実は今も昔もあまり変わってないのかもしれないです。SNSなんかが発達したことで,単に僕らの目に付きやすくなったと言うだけで。ただ文句が言いたいって気持ちも,分からないではない。……僕もゲーセン仲間と文句を言い合いながら,鉄拳を遊んでましたから(笑)。

原田P:
 そうなんですか(笑)。じゃあ,そういうものなのかなあ。
 そういえば森さんって,僕の勝手のイメージだと,プレイヤーにかなり食ってかかられているイメージですけど,実際どうなんですか。Twitterなんかは直接アタックしてくるのでしょうがないとして,掲示板を自分で見に行ったりしますか?

森P:
 見ていた時期もありましたが,今はまったく見なくなりました。やっぱり,精神衛生上よろしくない(笑)。

原田P:
 ああ,じゃあ僕と一緒ですね。僕も最初の10年くらいは自分で見ていたんですが,せっかくの良いフィードバックに汚い言葉がくっついてたり,勝手な思い込みや誤解に基づいて書かれたものがあったりして,一人で読んでたら「これは良くないぞ」と(笑)。以来,フィードバックはスタッフが端的にまとめたものを読むようにしていて,原文は見ません。
 けどね……カプコンの小野さん(小野義徳プロデューサー)は,これを自分から進んで見にいくらしんですよ。

森P:
 マジですか(笑)。

原田P:
 彼はそこがすごくて,原文のママ読んじゃう。自分のことがボロクソに書かれていても,それを平気な顔して読むんです。しかも,これは付き合いが長いので分かるんだけど,強がってるとかじゃなく,本当に自然に読めちゃう。それを見て感情的に爆発してるのも見たことないし……あれはX-MENか何かの能力なんじゃなかろうか。

(一同笑)

原田P:
 小野さんは,BADワードを頭の中で消去して読めるみたいです。僕はそういう言葉が入っていると,どんなにきちんとした意見が書いてあっても,冷静に読めなくなってしまう。どうしても「わざわざ汚い言葉を選ぶなんて,なにか背景があるんじゃないか」とか,言葉のノイズに振り回されてしまう。それだと良くないので,スタッフとか第三者の読み手を通してレポートを見るようにしています。Twitterなんかは例外ですけど。

森P:
 そこはうちのスタッフも同じですね。不具合の報告が,そういうところに紛れていることがよくありますから。

原田P:
 そうそう。しかも,意外にそれが一番早い報告だったりすることもある。

森P:
 僕がそういった掲示板なんかを見なくなったのは,石渡(GUILTY GEARシリーズ ゼネラルディレクター 石渡太輔氏)の影響が大きいです。今でこそ,石渡に対して皆さん温かい声をかけてくれますが,GGXの当時はめちゃくちゃに叩かれていましたから。それで彼は掲示板を見なくなって,僕もほどなくして見なくなった。

原田P:
 タイトルについたファンの場合,年月が経つごとにピュアな人だけが残っていっていくものだからね。例えば「鉄拳4」なんて,当時は不評だったのに,今になって謎の再評価現象が起きてたりする(苦笑)。

4Gamer:
 ……それは高確率で,自分の周りの連中のような気が(汗)。

原田P:
 これは小野さんも自身の例で同じような話をしていました。時間が経って絶賛していた人だけが残った結果,再評価されるという現象で,世の作品にはそれぞれ,こういう側面って絶対あると思う。

森P:
 あるでしょうね。僕はやっぱり石渡と比較されることが多くて。「GUILTY GEAR Xrd」シリーズの1作目が発表されるまでは,とにかく「森がBLAZBLUEを作ってるから,GUILTY GEARの新作が出ないんだ!」って言われまくって,本当に辛かった。
 でもそもそもの話をすると,僕がBLAZBLUEを立ち上げたのは,なんとか石渡に充電期間をあげたかったからなんですよ。石渡という人間が大好きで,彼にもっと色々なことをやらせてあげたいという思いがあったからなんです。

原田P:
 森さんとしては,石渡さんを助けたかったわけだ。

森P:
 助けたというより,共存共栄ですね。実際BLAZBLUEシリーズでは,石渡からも楽曲提供をしてもらっていますし,そもそもコアなスタッフは皆,GUILTY GEARで育ってきた人間なんです。今,BLAZBLUEがうまく回っているのも,そうした経緯があるからだと思っています。

原田P:
 いやあ,すごい良い話だなあ。これはあくまで昔話だし,もう十数年前の話だけど,旧ナムコ時代って,鉄拳シリーズと「ソウルエッジ」「ソウルキャリバー」(以下,キャリバー)シリーズを並行してやっていたじゃない。……そりゃもう,ウチは火花バチバチでしたけどね。開発チーム同士がライバル意識しすぎてて。

森P:
 噂には聞いてます(笑)。違う開発チームの人間が会話していただけで怒られたとか。

原田P:
 まあずっとではないけれど,実際にそういう雰囲気のときもありました。そもそも,違う格闘ゲームを作っていても,同じメーカーだったらスピリットはどこかしら通じてるものじゃないですか。鉄拳もキャリバーも,元はと言えば同じチームから派生したようなものですけど,それにしては格闘ゲームに対する哲学が違いすぎた。同じメーカーなのに,ガード操作が違ったくらいなんだから。

4Gamer:
 鉄拳はずっとレバー後ろ入れで,キャリバーはガードボタンでしたね。

原田P:
 つまり,ゲームシステムの時点で客層が分かれちゃうようなことをやってたわけだ。本当に仲が悪くてね。

4Gamer:
 そんなに!?

原田P:
 当時キャリバーの開発チームを率いていた世取山さんは,もともと鉄拳のアニメーション制作リーダーで,僕も最初はソウルエッジのデバッグを手伝ったり和気藹々としてた時期もあったんだけど。格闘ゲームの考え方や,制作へのアプローチがまったく違いましたね。今でこそ良い関係になってるし尊敬もしてますが,あの当時はお互いに大嫌いだった。そこに,某社のIさんが誌面を通して僕に攻撃を仕掛けてきたりして……敵が多かったですね。だからとにかく,昔は森さんと石渡さんみたいな,「お互い助けてあって」みたいことは,まったくなかったです(笑)。

森P:
 とはいえ,GGXやGGXXを作っていた頃の石渡は,本当に鬼でしたからね。僕も3回くらい,殴ってやろうかと思ったくらい(笑)。でも今の僕がいるのは,やっぱり彼のおかげだと思っています。

森P「ところで,鉄拳4ってなんでアンジュレーションを入れてしまったんですか? 先行する失敗例が目の前にあったのに」
原田P「今だから言えますけど,あれは手違いだったんです。元々は,ビジュアル的には高低差があるように見えて,ゲーム的には影響ないっていう設計のはずだった。当時メインプログラマーはすごく優秀な人で,にも関わらず終ロム2か月前になっても絵が出てこない。なにやらものすごい作り込みをしてるらしいんだけど,ディレクターやプランナーは焦ってました。で,ようやく絵が出たっていうんで見てみたら,何を思ったかベースプログラムにものすごく精巧なアンジュレーションが組み込まれてたっていう。そこからなんとかゲームデザインで巻き返そうとしたけれど,結果的に今までの格闘ゲームファンからは不評だった。ディレクターとしての自分も若かったし……色々と苦心しました」
画像集 No.016のサムネイル画像 / 格闘ゲームと共に歩んだ情熱のあとさき――鉄拳・原田Pの不定期連載「原田が斬る!」,第2回はアークシステムワークス森Pとのガチンコ対談


BLAZBLUEのストーリーは難解すぎる!


原田P:
 BLAZBLUEについて,今度は僕からお聞きしたいんですけど,ストーリーモードがあるじゃないですか。すごくボリュームがあって,真面目な話,あれを僕は10回くらい読んだんです。でも失礼ながら……まったく理解できなかった。

(一同笑)

4Gamer:
 BLAZBLUEシリーズのストーリーは,確かに難解かもしれないですね(苦笑)。

原田P:
 いやこれ,ものすごく珍しいことなんですよ。格闘ゲームのストーリーって,むしろ「シンプル過ぎるからもうちょっと内容を深くしてほしい」って言われるのが常じゃないですか。

4Gamer:
 確かにそういう声をよく聞きますね。

原田P:
 格闘ゲームにおけるストーリーの存在って,僕はこれまでないがしろにされていた部分だと思っていて,それは解決したいと思っているんです。だけど,BLAZBLUEシリーズのそれとは意味合いが違ってて……なんとうか,物語というよりもシチュエーションだと思うんだよね。分かりやすく言うと,1980年代のハリウッド映画みたいな。

森P:
 ああ,なるほど。すごくよく分かります(笑)。

原田P:
 ああいうアクション映画とか仁侠映画って,観るとちょっと勇ましい気持ちになれますよね。あれと同じで,心を奮い立たせることさえできれば,その背景とかはどうでもいいとさえ思ってる。そこへ行くと森さんは,どうも僕らとは違う発想で作ってますよね?

森P:
 僕の場合は,それこそラノベやアニメのような,確固たるストーリーのあるドラマをイメージして作ってますね。でも,僕は鉄拳のストーリーも大好きですよ。平八vs.一八っていう対立構造があって,「壮大な親子喧嘩だ!」って,当時興奮しながら遊んでいました。

原田P:
 もちろん鉄拳にもストーリーはあるんだけど,アーケードの場合,そこを求めているプレイヤーって,実はそんなに多くないんです。家庭用となるとまた違うんだけど,でもBLAZBLUEシリーズのファンには,そういう背景設定が好きな人達がたくさんいる。あれはどういうアプローチなんですか? キャラクターデザインありきなのか,それともちゃんとプロットを考えてからキャラクターを当て込んでいるのか。

森P:
 後者ですね。ストーリーの流れをある程度作ってから,必要なキャラクターや登場してもおかしくないキャラクターを逆算して作っていくという。でもこれは,我々が作るのであれば,格闘ゲームとしては必ず面白いものになるという自信があったからできたことでもあります。そこさえ押さえていれば,上にどんなストーリーが乗っかっていても問題ないだろうと。

原田P:
 じゃあ僕みたいに,「ストーリーがわけ分からん」って言いながら,とにかく対戦だけしているような層も,実は結構いたりするわけですか。

森P:
 正直言って,6〜7割がそうだと思います。

原田P:
 ああ,それを聞いて安心しました(笑)。

森P:
 でもストーリーをしっかり作ることで,7万本しか売れないものが10万本になるんなら,僕は喜んでやりますよ。皆が皆,フレームで格闘ゲームを語らなくていいわけですし,キャラクターの設定やストーリーで盛り上がるのが好きな人だっているわけだから。

原田P:
 なるほど。そういう観点から森さんはストーリーに力を入れているわけだ。

森P:
 鉄拳だって,僕らはゲーセン友達とストーリーの話で盛り上がってましたよ。いつ一八と準は仁を作ったんだ? とか(笑)。

ノエル=ヴァーミリオン
画像集 No.019のサムネイル画像 / 格闘ゲームと共に歩んだ情熱のあとさき――鉄拳・原田Pの不定期連載「原田が斬る!」,第2回はアークシステムワークス森Pとのガチンコ対談
原田P:
 ツッコミどころは多々ありますね(笑)。ちょっと話が戻るんですが,僕がBLAZBLUEに興味を持ったのって,ノエル=ヴァーミリオンがきっかけなんですけど……あれってガン=カタですよね?

※2002年の映画「リベリオン」(監督:Kurt Wimmer)に登場した架空の格闘技。2丁拳銃による銃撃戦とカンフー映画をミックスした斬新なアクションシーンで,その後の映像作品などに大きな影響を与えた。

森P:
 はい。ぶっちゃけガン=カタです(笑)。

原田P:
 ですよね。 実は昔,鉄拳でもガン=カタっぽいキャラクターを出そうと考えたことがあるんです。結局その時はボツにしたんですけど,その後にBLAZBLUEの彼女を見て「うわ,やられた!」って思った。それでノエルを使い始めたんだけど……彼女の銃って,あれ魔銃ですよね?

森P:
 ええ,魔銃・ベルヴェルクです。

原田P:
 魔銃なのに,薬莢が出ますよね。あれは,どういう理屈で?

森P:
 ……だってカッコいいじゃないですか!

原田P:
 あ,そこはご都合主義なんだ。良かった,我々と一緒です。いや,ストーリーにはすっごい難しいことが書いてあるから,あの薬莢にも小難しい説明があったらどうしようかと(笑)。あと,僕は未だにノエルの設定がちゃんと分かっていないんですけど,とりあえず,彼女はどうやら正義の側……でいいんですよね?

森P:
 そこは,今回のBBCFですべて分かるようになっています。

4Gamer:
 それって,裏を返すとBBCFまで行かないと分からないってことですよね(笑)。BBCFでは,アーケード版でもストーリーが3部構成になっていたりとか,これまでにも増してストーリーモードに力が入ってますよね。あれも森さんの発案ですか?

森P:
 いや,あれはディレクターの石川(辰則氏)が言い出したものです。そのせいで,僕はひたすらシナリオを書き続けるハメになったという(苦笑)。

原田P:
 でも,それは開発チーム内にも,物語に注力しようという土壌があったということですよね。

森P:
 そうなります。僕は「格闘ゲームはこうじゃなくちゃ」みたいな固定観念が好きじゃなくて,最初はとにかくやってみるかという感じでした。プレイヤーがゲームセンターに足を運ぶきっかけになってくれるなら,なんだって良かったんです。

原田P:
 そもそもなんですが,アークシステムワークスさんには,それまでにもGUILTY GEARという確固たるIPが,しかも相当に尖ったタイトルがあったわけじゃないですか。だから,同じ会社から2D格闘ゲームの新しいシリーズが出てきたときに,不思議に感じたんです。客層をそのまま移行させようとしてるのかとも思ったけど……どうもそういうわけじゃないらしい。

森P:
 はい。当時は「GUILTYGEAR X」(以下,GGX)から8年経っていましたし,それに応じてファンの年齢層も相応に上がってきていた。もちろん,続編のGGXXシリーズを遊び続けてくれている人達がいるのはとてもありがたかったわけですが,それよりももっと若い世代に向けたタイトルを作らなくてはと思っていました。

※今に続くBLAZBLUEシリーズの初代作品「BLAZBLUE -CALAMITY TRIGGER-」は,2008年の稼働タイトル。最新作BBCFは4作目に当たる。

4Gamer:
 ああ,それは個人的にも感じていた疑問です。BLAZBLUEの登場直後は,GUILTY GEARのリメイク的な印象を強く感じました。けれど,蓋を開けてみれば,実際のプレイヤー層は明らかに違っていたという。

森P:
 格闘ゲームとしての基本システム的なところでは,やはりGUILTY GEARの影響は大きいです。若い世代に向けたと言っても,自由度の高いアクションこそがアークシステムワークスらしさだとも思っていたので。そこはある程度,割り切った作りにしています。

原田P:
 継承すべき部分は,継承したわけだ。

森P:
 なにより,僕自身がGUILTY GEARのファンでしたし,クリエイターとしてもそれで育った人間ですからね。世界観やキャラクターにしても,やっぱりああいう,ちょっとSFが入ったようなものが好きなわけで。

4Gamer:
 それでも,GUILTYGEARとは違うものにしたかった?

森P:
 誰かに合わせるのではなく,自分が本気で面白いと思えるものが作りたかったんです。そうでないとプレイヤーには伝わりませんし,なにより一緒に作ってくれるスタッフに伝わらない。

原田P:
 それはやっぱり,グラフィックスデザイナー的な発想かもしれない。森さんは絵も描けるしシナリオも書ける,極端な話をすれば,一作まるごと一人で作ってしまえるタイプじゃないですか?

森P:
 いや,それはないです。自分に何ができて何ができないかは,一応理解しているつもりなので。できない部分はチームの人間に頼ります。

原田P:
 なるほど。そこは僕と同じなんだ。

森P:
 どうも当時の僕は,そういう“できるスタッフ”を探す目が冴えていたみたいなんです。それに,一緒に「GUILTYGEAR」を作っていたスタッフ達が,皆協力してくれたからこそ,僕は自分が好きな分野に注力できた。

4Gamer:
 ということは,主にゲームの“外側”で差別化を狙ったわけですか。

森P:
 そういうことですね。あの当時,中高生や大学生の間ではやっているコンテンツを必死で調べたんですよ。イスンピレーションは色々なところから受けましたが,中でも大きかったのは,音楽番組「HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP」(以下,HEY×3)でした。

4Gamer:
 ダウンタウンの? それはBLAZBLUEにどうつながるんですか?

森P:
 「ぶるらじ」です。HEY×3って,テロップを多用したトーク番組の走りだったんですよ。あの分かりやすさは,きっとラジオ形式でも活きるだろうと。もちろんそれだけではなく,僕がニコニコ動画でアイマスMADが好きでよく見ていたからとか,いろいろあったんだけど。そうしたアイデアを組み合わせてできたのが,あのぶるらじなんです。

原田P:
 確かにぶるらじは,プロモーションの手法としては,当時すごく新しかったですね。それが見事にハマって,新しいプレイヤーを獲得できたわけだ。

森P:
 まあ,ぶるらじがうまくいったのは,僕じゃなくメインパーソナリティの杉田さんや今井さん,近藤さんの手腕だと思ってるんですけどね(苦笑)。

ぶるらじ
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